【月間総括】IRイベントに見るソニーのストリーミング戦略
まず,ソニーのゲーム事業について話を進めよう。
2019年3月期の決算説明会,そして5月21日に開催されたIRDAY(参考URL)では,Googleが発表したクラウドゲームサービス「Stadia」(ステイディア)に対するコメントが目立った。
Webにある資料の23,24ページが端的であろう。
ソニーはクラウドゲームで500万のキャパシティを持ち,拡大に努めるとしているが,決算説明会で,PlayStation Nowの全世界プレイヤー数が70万人であることが明らかになった。この会員数はPS4タイトルのダウンロードプレイサービス開始後に増えた会員が含まれると解説があったことから,純粋にクラウドゲーム目的で楽しんでいる人は,これより少ないことになる(関連英文記事「PS Nowでダウンロードゲームのプレイ時間はストリーミングの倍」)。
読者の方々は,PS Nowの会員数70万,キャパシティ500万という数字についてどう思われるだろうか? PS4の累計販売台数が9680万台に達していることを考えると,現時点ではたくさんの顧客に楽しまれているとはとても言えないのである。
そして,IRDAYでのエース経済研究所の質問に対するSIE小寺氏の回答は,「超長期的にはともかく,中期的にクラウドゲームに移行するとはSIEは考えていない」であった。SIEは,すぐにはStadiaが脅威になるとは見なしていないということである。
私自身の15年以上のアナリストのキャリアにおいて,テクノロジーが一夜にして世界を一変させたようなケースは記憶にない。
仮に,Stadiaが成功したとしても,移行は徐々に進むものと考えるほうが妥当に思える。SIEの回答も順当なものといえるだろう。むしろ,StadiaでPlayStationが直ちに危機に陥ることを想定したような資本市場の動きにはギャップを感じざるを得ない。
また,今回のソニーとMicrosoftの提携も,クラウドゲームサービスにおいて,Microsoftのクラウドサービス「Azure(アジュール)」を使うとのことであった。SIEが,本当にクラウドゲームサービスが普及すると考えているなら,自前でデータセンターおよびサービス網の構築を行うべきだろう。
根幹部分を他社にアウトソースするというのは,プラットフォーマーとしては,なかなか考えられない事態なのである。これも,エース経済研究所の主張を補完する証左を考えている。
次世代PS(PS5とする)に関しては「スパイダーマン」を使った超高速ロードの実演があった。先月も指摘したように,「不満点の解消を優先した」ということであろう。
すでに,PS4は今期中には1億台の普及となる見込みだ。これほど成功したのであれば,不満点を解消するほうが,ユーザーにアプローチしやすいと考えたのであろう。
エース経済研究所では,PS5は2020年の年末商戦に4万9980円,499ドルでの販売を想定している。これほどの高性能マシンである分,コストはかかるだろうと見ている。
台数については,初年度600万台,翌年度1500万台の台数予想としている。現時点では,このような不満点が少ないゲーム機であるPS5については,PS4並みの販売を想定するのが妥当であろう。
あとは,SIEが新しいスタイルとデザインを提案できるか? である。先ほども述べたように,イノベーションは,テクノロジーから持たされたことは少ないとエース経済研究所では考えている。PS5はぜひ,イノベーションを起こすようなゲーム機になってもらいたいものだ。
さて,最後にポケモンカンパニーが事業戦略発表会を開催したことについての話をしたい。いくつかの発表があったが,テーマとしては「人間の基本行動である睡眠の娯楽化を狙う」という意外なものであった。睡眠と聞くとかつて任天堂が発表したQOL事業を思い浮かべるかもしれないが,基本的には違うものと考えてよさそうである。
ポケモンGOプラスプラスと呼ぶ新しい加速度センサー内蔵の機器で,寝ている間にポケモンGOに変化が出るようだ。これを収益化できるかは予想するのが難しい。とくに睡眠は人それぞれでスタイルが違うものだからだ。詳細を待ちたい。
もう一つ,「ポケモン ホーム」が発表された。従来のゲーム専用機だけでなく,スマートフォンにも対応しているのが特徴で,相互運用ができるようになっているようだ。長く遊んでもらうためには過去の蓄積をいかせることは重要である。
子供からお年寄りまでがお客様が同社,そして任天堂の考える顧客層である。ややニッチな市場と断言するソニー(参考URL)と基本姿勢が大きく違うといっていいのではないだろうか?
2019年3月期の決算説明会,そして5月21日に開催されたIRDAY(参考URL)では,Googleが発表したクラウドゲームサービス「Stadia」(ステイディア)に対するコメントが目立った。
Webにある資料の23,24ページが端的であろう。
読者の方々は,PS Nowの会員数70万,キャパシティ500万という数字についてどう思われるだろうか? PS4の累計販売台数が9680万台に達していることを考えると,現時点ではたくさんの顧客に楽しまれているとはとても言えないのである。
そして,IRDAYでのエース経済研究所の質問に対するSIE小寺氏の回答は,「超長期的にはともかく,中期的にクラウドゲームに移行するとはSIEは考えていない」であった。SIEは,すぐにはStadiaが脅威になるとは見なしていないということである。
私自身の15年以上のアナリストのキャリアにおいて,テクノロジーが一夜にして世界を一変させたようなケースは記憶にない。
仮に,Stadiaが成功したとしても,移行は徐々に進むものと考えるほうが妥当に思える。SIEの回答も順当なものといえるだろう。むしろ,StadiaでPlayStationが直ちに危機に陥ることを想定したような資本市場の動きにはギャップを感じざるを得ない。
また,今回のソニーとMicrosoftの提携も,クラウドゲームサービスにおいて,Microsoftのクラウドサービス「Azure(アジュール)」を使うとのことであった。SIEが,本当にクラウドゲームサービスが普及すると考えているなら,自前でデータセンターおよびサービス網の構築を行うべきだろう。
根幹部分を他社にアウトソースするというのは,プラットフォーマーとしては,なかなか考えられない事態なのである。これも,エース経済研究所の主張を補完する証左を考えている。
すでに,PS4は今期中には1億台の普及となる見込みだ。これほど成功したのであれば,不満点を解消するほうが,ユーザーにアプローチしやすいと考えたのであろう。
エース経済研究所では,PS5は2020年の年末商戦に4万9980円,499ドルでの販売を想定している。これほどの高性能マシンである分,コストはかかるだろうと見ている。
台数については,初年度600万台,翌年度1500万台の台数予想としている。現時点では,このような不満点が少ないゲーム機であるPS5については,PS4並みの販売を想定するのが妥当であろう。
あとは,SIEが新しいスタイルとデザインを提案できるか? である。先ほども述べたように,イノベーションは,テクノロジーから持たされたことは少ないとエース経済研究所では考えている。PS5はぜひ,イノベーションを起こすようなゲーム機になってもらいたいものだ。
さて,最後にポケモンカンパニーが事業戦略発表会を開催したことについての話をしたい。いくつかの発表があったが,テーマとしては「人間の基本行動である睡眠の娯楽化を狙う」という意外なものであった。睡眠と聞くとかつて任天堂が発表したQOL事業を思い浮かべるかもしれないが,基本的には違うものと考えてよさそうである。
ポケモンGOプラスプラスと呼ぶ新しい加速度センサー内蔵の機器で,寝ている間にポケモンGOに変化が出るようだ。これを収益化できるかは予想するのが難しい。とくに睡眠は人それぞれでスタイルが違うものだからだ。詳細を待ちたい。
もう一つ,「ポケモン ホーム」が発表された。従来のゲーム専用機だけでなく,スマートフォンにも対応しているのが特徴で,相互運用ができるようになっているようだ。長く遊んでもらうためには過去の蓄積をいかせることは重要である。
子供からお年寄りまでがお客様が同社,そして任天堂の考える顧客層である。ややニッチな市場と断言するソニー(参考URL)と基本姿勢が大きく違うといっていいのではないだろうか?
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