【月間総括】SIEと任天堂の方針の違いは新型ハードにどう反映されるのか

 今月は,なんといっても次世代PlayStation(この表現では分かりにくいため,以降PS5とする)であろう(関連記事)。ソニー・インラタクティブエンタテインメント(以下,SIE)のMark Cerny氏が,メディアに語ったところによると,ハードウェアレイトレーシングをサポートし,超高速SSD搭載による驚異的なロード速度,PS4互換機能の搭載,AMD最新のZen2アーキテクチャ搭載ということのようである。
 以前からエース経済研究所では,PS5は,非常に高い演算能力を持つ高性能マシンになるだろうと予測していたので,予想どおりだったといえる。
 とくにPS4の互換とローディングの速さというのは,PS4でユーザーがよく取り上げる不満点だったこともあり,エース経済研究所の第1印象は,PS4の強みを追求したというよりも不満点の解消を優先したというものであった。

 このあたりから見えてくるのは,SIEはPS4の成功要因を高い性能とそれを生かしたフォトリアルなAAAタイトルによるものと見なしているということであろう。
 世間一般で強く信じられているソフトタイトルの強さこそが,ハード販売の趨勢を決めるという考えに則れば,これはとても正しいことになる。
 SIEは,きわめて常識的な判断に基づいて次世代機を投入しようとしている。おそらく,これに異を唱える人はいないのではないだろうか? 

 あわせて,SIEの行動規範は「メディアやユーザーから非難されないこと」であるというエース経済研究所の主張が正しいことが確かめられたということでもある。
 Wall Street Journalが先般,SIEが独自規制を導入し,その背景には「#Metoo運動」による非難を恐れての行動であると報道している。

 エース経済研究所でも,中堅の国内ゲームソフトメーカーにヒアリングすると,規制についてコメントする会社が増えたように感じるが,その是非ついてはここでは述べない。
 大事なことは,批判される可能性があるだけで,規制導入を是とする組織体質があるということである。エース経済研究所では,何度かこの連載でその点には触れていたのだが,それを補強するような報道があったということである。

 話を戻そう。PS5はSIEの行動規範である「叩かれない・非難されない」を具現化したゲーム機なるだろうと予想している。以前から指摘のとおり,高い性能,豊富なAAA,互換性。まさに非の打ちどころのないゲーム機になるのではないだろうか。

 しかし,残念なことにまだ販売の行く末は分からない。肝心のデザインとプレイスタイルが発表されていないからだ。いずれ行われるであろう正式な発表を楽しみに待ちたい。

 最後に任天堂,ソニーの決算が発表された。詳細は掲載のタイミングの関係で来月にしたいが,両者とも2019年3月期は好調な決算だった。
 Nintendo Switchは1695万台と第3四半期決算時に下方修正した水準にわずかに未達だったが,水準は次のグラフのとおり,販売台数自体は高水準と言ってよいだろう。そして,未達だったのは,在庫調整を行った影響が大きいようだ。
 とくに,日本の第4四半期は,出荷49万台に対して,実売は調査機関のデータを見る限り90万台から100万台だったようである。
 つまり,市中在庫が差分だけ減ったことになる。通常,旧正月には生産基地がある中華圏の工場は停止する。そのため,生産が少ないのだが,それにしても40万台〜50万台というのは大きな台数に見えるので,これは意図的なものだと思われる。

 すでに,新型Switchについて報道も相次いでいる(関連記事)。この動きはそれを示唆したものである可能性がある。

●発売から9四半期のハード販売台数(着荷)推移
(出所)ソニー,任天堂の決算説明会資料より
【月間総括】SIEと任天堂の方針の違いは新型ハードにどう反映されるのか

 どのような仕様になるかは,任天堂が公式には一切認めていないので,分からない。しかし,ヒントはある。2月に開催された経営方針説明会である。
 古川社長はプレゼンテーションで,遊べば圧倒的に面白くかつ一目で面白さが伝わる独創的な商品・サービスの企画開発を進めるとした。

 つまり,エース経済研究所では新型Switchはこの考えに基づくような製品なる可能性があると考えている。となると,性能を上げるより外見を変えてくる可能性が高そうである。日本のデータで見ても,販売の角度が変わるほど変化が出たケースにDS→DSLがあった。性能に大きな変化がないのに,スタイリッシュなデザインに変更したことで世界的な大ヒットにつながったのである。
 新型Switchは技術的なイノベーションではなく,デザイン・スタイル面での変化を期待したいものだ。

 それにしても,企業のトップが技術のイノベーションに頼らない製品開発を指示するケースは珍しいのではないだろうか? このような方針がどのような変化をもたらすか,興味深く見てみたい。