[月間総括]Switchの販売台数が示す国内コンシューマゲーム市場の可能性
フィーチャーフォンでのブラウザゲームの台頭,ガンホー・オンライン・エンターテイメントの「パズル&ドラゴンズ」を嚆矢とするスマートフォンゲームの台頭,それに加えて,Wii Uの大きな失敗,PlayStation 2を最後に,SIEのゲーム機のぱっとしない状態が続いていることもあり,国内市場ではコンシューマゲーム市場の悲観論は相当なものであった。
そのピークは,任天堂がDeNAと組んでスマートフォンゲームに進出すると発表されたときだったと思う。
当時の故岩田氏の資料でも「いろいろな専用デバイスが,スマートデバイスに呑み込まれてきたと言われているのと同じように,『ゲーム専用機もスマートデバイスに呑み込まれるのではないか』,というのがその代表的なものです」とコメントしている(参考URL)。
エース経済研究所では,そのような時期でも,コンシューマゲーム市場の低迷は主に任天堂がハード戦略を失敗した影響が大きく,今後,新ハードで挽回が可能であるとたびたび指摘していた(あまり支持されたとは言えないが)。今年はそれが証明された1年であったとも考えている。
また,Switchの成功はゲーム機の成否が性能や大作サードパーティソフトの有無でないことも明らかにしたと言えるだろう。DSやWiiにもそういう傾向があったのだが,ライトプレイヤーが多いからという,一見,正しそう見える論理で多くの人々は納得してしまっていため,問題視されなかった。Switchは純粋にゲームソフトが売れたことは明白だろう。なんといっても,ゲームらしくない「Nintendo Labo」が失敗だったからである。
ところで,10月末の任天堂の決算発表以降,Switchが販売不振であるかのような報道が相次いだ。内容としては年間2000万台の達成が難しく,Switchは正念場を迎えているのではないかというものである。上期のSwitchの販売台数(着荷)台数が507万台と前年同期に比べて4%程度の伸びに留まり,年間計画(同+32%)よりも弱かったのは確かである。そのうえで,以下のグラフをご覧いただこう。これは,発売から100週間の国内販売台数の推移をプロットしたものである。
直近のSwitchは大幅に販売を伸ばしていることが分かる。前述の通り,上期は「Nintendo Labo」の失敗もあり,販売を思ったほど延ばすことができなかったが,11月以降は昨年以上の角度で販売を伸ばしているのである。
11月第3週以降の国内販売はすでに120万台を大きく超えており,昨年を上回るペースである。米国も11月末に米国任天堂の発表では870万台のセールスを達成し,ブラックフライデー前後の期間でも前年比倍増以上の販売になったとあるので,おそらく11月は前年比で50%以上の成長を楽に達成したと思われる。12月はまだまったく分からないが,任天堂は11月よりも12月の販売が強い傾向にあるので,エース経済研究所では一段と増えるものと見ている。欧州そのほかの動向は,データも乏しく難しい部分があるが,比較的任天堂のシェアが低いとされる英国でのSwitch販売好調が伝えられているので(関連海外記事),悲観的に見る材料は乏しいと考えている。
以上の点から,年間計画の販売台数(着荷)2000万台はおそらく現状ではギリギリ到達,もしくは少し未達になる可能性があるというペースまで挽回できたと推察している。
年末商戦前は10%以上の未達になるとの見方も多かったように聞いているので,年末商戦はここまで非常に好調に推移していると言ってよさそうである。
12月がエース経済研究所の予想程ではなく,年度で計画に対して10%程度の未達水準である1800万台に仮になったとしても,実はSwitchの販売はとても好調なのである。ソニーPS4の発売2年目の売上台数(着荷)は1480万台である。これと比べて1800万台が少ないだろうか? とてもそうは思えない。しかも先ほどのグラフでも明らかなように,国内のゲームの販売水準としては過去に人気を集めたWiiに次ぐ高い水準で実際は売れているのである。また,米国任天堂は発売から21か月の販売台数はWiiを上回っているとしている。なぜ,販売不振に映るのかなかなか理解できないところだ。
しかも,この販売はサードパーティのAAAを伴わないものである。資本市場的には計画未達はネガティブな話だが,それでもSwitchが販売不振とはとても言えないということが読者の皆さんにも分かってもらえると思う。
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