【ACADEMY】ビデオゲームにライセンスIPを導入する際に考慮すべきこと
現在,ビデオゲームでは非常に多くのIPライセンスが行われている。FortniteやPUBGのようなライブサービス型ゲームがドラゴンボール,スター・ウォーズ,スパイダーマンなどのフランチャイズとのコラボでライブサービスを拡大することから,HypergamesのSnufkin: Melodyのような新しいビデオゲームの創造に至るまで,さまざまなことが起きている。既存のフランチャイズをベースにしたゲームもあり,有名なフランチャイズを利用して観客動員数を増やそうとするビデオゲームが後を絶たないようだ。
IPを使ったゲームやコラボレーションは日々増えているが,ゲームデベロッパは,有名フランチャイズとのコラボレーションが成功へのチートコードではないことを覚えておく必要がある。スーパーマン64や,90年代に散見されたIPベースのプラットフォームのクローンゲームを遊んだことのある人なら分かるように,IPベースのビデオゲームでは長年にわたって多くの失敗作が生み出されてきた。世界最強のスーパーヒーローたちでさえ,トラブル続きでローンチされたMarvelのAvengersを救えるほど強くはなかったのだ(関連英文記事)。
もしあなたがゲームスタジオで,既存のフランチャイズをゲームに取り込もうと考えているなら,それが新作ゲームであれ,単発のコラボレーションであれ,ライブオペレーションを盛り上げる期間限定イベントであれ,実行に移す前に考慮しなければならないことがたくさんある。
- ターゲット案件とそのオーディエンスを分析する
- どのようなコラボレーションが最適か?
- 現実的な予算で,魅力的なサービスを提供する
- アクセシビリティ,成功の測定,LiveOpsのためのライセンシング
- ビデオゲームにおけるライセンスIP ― 次はどうなる?
ターゲット案件とそのオーディエンスを分析する
ターゲット案件のオーディエンスとユーザー層を徹底的に理解することは,多くの理由で重要である。期間限定のイベントやコラボレーションを検討している場合,そのパートナーシップは既存のプレイヤーに適しているかどうかを判断するのに役立つ。このコラボレーションはプレイヤーを興奮させるだろうか? ゲームのブランドにふさわしいと思われるか? 現在のプレイヤーの間で,コラボレーション先のIPは十分に認知されているのか? その場合,彼らはどのように感じているだろうか?
IPの活用は,新規プレイヤーをゲームに取り込む重要な機会にもなる。そのため,オーディエンスとユーザー層に関する初期調査は非常に重要であり,とくに,既存のプレイヤーと新規プレイヤーにうまく遊んでもらうようにすることが重要だ。IPベースのモバイルゲームに関する最近のNewzooのレポートによると(関連英文記事),モバイルゲームの高額消費者は,自分が好きなIP/ユニバースに基づいたゲームであれば,2.84倍もダウンロードする確率が高いことが分かっている。
また,IPベースのゲームを発売するにしても,期間限定イベントを開催するにしても,発売前にできるだけ多くの人に知ってもらいたいので,そのIPの視聴者に直接アプローチできる獲得チャネルを考えておこう。2016年から2021年に発売されるIP系モバイルゲームの中では,テレビ系IPが最も多く(33%),次いで漫画(22%),文学(19%)の順となっている。
とくにIPが複数のフォーマットで活躍している場合,複数の会社に権利が分散しているとアクセスできる内容に影響が出る可能性があるため,IP保有者にプロモーションのために提供できるチャンネルを必ず確認するようにする。また,大きな記念日や製品の発売日などのイベントがあれば,それを利用することも検討すべきだ。
ソーシャルチャンネルでの景品や特別なイベントなど,物理的な活性化でコラボレーションを促進する機会もたくさんある。最近の例では,Subway Surfersがソーシャルメディア上でコンテストを行って,幸運な当選者の1人がゲーム内のキャラクターに変身したという事例がある。また,Metal: HellsingerがGamescomで最近行ったメタルコンサートでは,ゲームに登場するTrivium,Arch Enemy,Refusedのボーカルが出演した。
どのようなコラボレーションがよいのか?
ライセンシングは,もはや完全にライセンスされたゲームだけではない。現在では,有名なフランチャイズを既存のゲームに統合する方法は,とくにライブサービスゲームの中で,何百通りも存在する。新しいキャラクターや武器,キャラクターや武器のスキン,コスメティックアクセサリ,期間限定イベント,DLC,季節限定コンテンツなどは,複雑な条件でないため,権利者との交渉が非常に容易だ。ほとんどの場合,コスメティックに焦点を当てたコラボレーションでは開発コストやクリエイティブコストが軽く,承認が非常に早くなる。
このようなコラボレーションが効果的に行われれば,自然な形でプレイヤーに受け入れられ,大きなヒットにつながるだろう。Dead by Daylightとバイオハザードのコラボは理想的であり(もしくは破滅的というべきか?),パイレーツオブカリビアンとSea of Thievesのクロスオーバーは両フランチャイズでのお祭りであり,完全無料だった。また,アサルトライフルを構えた悟空がかめはめ波でマップを照らすのを見て,Fortnite を再ダウンロードした人は私だけではないはずだ。
あなたのコラボレーションに対して,異なる市場がどのように反応するかを意識することも重要だ
また,異なるマーケットがあなたのコラボレーションにどのように反応するかを意識することも重要だ。ルイ・ヴィトン,アウディ,日産,コカ・コーラとコラボしてきたファイナルファンタジーは,ビッグブランドの世界と無縁ではない。しかし,ファイナルファンタジーXVのサイドクエストで,プレイヤーがカップヌードルを作らなければならない場面は,ほとんどのプレイヤーから,露骨なプロダクトプレイスメント(※ドラマなどでスポンサー製品を小道具に使うこと)だと肩透かしを食らったようだ。欧米では日清食品の認知度が低いため,スクウェア・エニックスが期待していたような反応は得られず,このコラボレーションはより奇妙に映ったようだ。とはいえ,ゲームソフトのIPとゲーム以外のIPのコラボレーションで,自然な組み合わせとは思えないのに大成功を収めた例はたくさんある。多くの場合,2つのフランチャイズを融合させ,新しいゲームプレイスタイルを生み出すという,クリエイティブ面での巧みな演出が功を奏しているのだ。バトルロイヤルゲームでのバーチャルコンサートは,MarshmelloがFortniteでDJセットを披露するまで前代未聞だったが,この統合により,ゲームは本来のメカニクス(この場合はシューティング)から離れ,よりソーシャル性やエンターテインメント性に重点を置いたアプローチができることが示された。現在ではPUBG Mobile とGarena Free FireでBlackpinkとJustin Bieberによる独自のコンサートが開催されている。次はCall of Duty Warfareだろうか?
現実的な予算で,魅力的なサービスを提供する
ライセンサーは,IPをビデオゲームにライセンスする前に,ブランド価値やリーチ,PR効果など,多くのことを考慮する必要があるが,コラボレーションが金銭的に価値があるかどうかも確認したいと思うはずだ。
ほとんどのIP権利者,とくにIP使用権を扱う代理店は,社内の管理費や法的コストをカバーするために,できるだけ早く,リスクなく達成したい「ベッドから出る」数字を持っている。基本的に,これは取引を成立させるための基本コストだが,この数字はあなたが思っているよりも低いことがよくある。もし,この金額を算出して,その金額をリスクなく迅速に達成するためにあなたの取引がどのように役立つか(前金,最低保証,料金体系を考える)を示すことができれば,リターンの確度が低い残りの取り決め(IAP,変換など)を構成し交渉する際に,より柔軟性を持つことができるようになる。
ほとんどの知的財産権所有者は,できるだけ早く,できるだけリスクなく達成したい「ベッドから出る」数字を持っている
そこで,ライセンサーがあなたのゲーム,つまりIPをどのように使いたいか,そして(とくに割合の分割が合意されたライブオペレーションのコラボレーションにおいて)マネタイズの計画を理解するのを助けることがとくに重要になるのだ。ゲーム内市場が活況を呈している場合,ライセンシングのコストは思ったほど高くはならないだろう。とくに,基本コストを簡単に回収できるルートをすでに用意している場合はなおさらだ。ただし,それを裏付ける数字があることを確認すること。ここで,ライセンサーがコラボレーションから得られる利益を長期的に予測するのを助けることができる。ゲーム以外のフランチャイズとコラボしたことがなくても,既存のライブサービスイベントで何が起きたか,とくに記念日やテーマ別のイベントを開催したことがあれば,それらをどのように収益化したか,その後のSNSの数字やユーザー獲得にどのような影響があったかを含めて実証してほしい。
ライセンサーがあなたのゲームの仕組みやマネタイズ 方法を包括的に把握できれば,コラボレーションのリスクを 軽減し,イエスと言う可能性を高めるだけでなく,ライセンサー側で創造的なアイデアをひらめく手助けになるかもしれない。このようなオープンな会話は,さらに大きなコラボレーションにつながり,また,ライセンス契約に対する彼らの動機の理解を深めるのにも役立つ。彼らは,特定のオーディエンスをターゲットにしようとしているのだろうか? 新しいプラットフォームへの移行に興味があるだろうか? 大きなメタバースゲームを探しているのだろうか?I Pが持つ非金融的な主要目的の一致を見つけることは,より良い取引につながる可能性がある。
アクセシビリティ,成功の測定,LiveOpsのためのライセンシング
新しいゲームアップデートをインストールしたり,イベントを起動するためにゲーム内の特定のエリアを訪れることは,一部のプレイヤーにとっては自然なことかもしれないが,非ゲームフランチャイズとのコラボレーション,とくにモバイルコラボレーションでは,ゲームに馴染みのない人々を取り込むことを考慮する必要がある。
これは,最近行われたBlackpinkとPUBGモバイルのコンサートで私が気づいたことだが,プレイヤーはRedditや他のフォーラムでコンサートに参加する方法について質問していた。追加コンテンツのダウンロードやコンテンツを遊ぶために事前準備が必要なコラボレーションの場合,その情報をできる限り透明化することが重要だ。
そこで,ライセンサーが提供するプロモーションチャネルを活用し,IPをテーマにしたコラボレーションやイベントに関する最も重要な情報を網羅したガイドとFAQを発行するのもよいかもしれない。また,コラボレーションのタイムラインを検討し,新規プレイヤーに十分な告知を行い,ベースゲームを体験したあとですぐに体験に入れるようにする必要がある。とくに,BlackpinkコラボレーションがPUBG Mobileで行ったように,デイリーミッションを統合する場合には,プレイヤーにゲームの遊び方を知ってもらい,不満を抱かせないようにすることが重要だ。
コラボレーションに前提条件がある場合は,可能な限り透明性を高めることが重要だ
また,ライセンス契約しているコラボレーションやイベントの成功度を測ることも重要だ。ゲームデベロッパにとって最も重要な指標は,日々のダウンロード数,収益,CPI,リテンションカーブであり,コラボレーションの効果を追跡できる。また,アニメや漫画のフランチャイズなどの特定の案件は,一般的に中国や日本でより人気がある一方,Marbelは世界的に認知されており,場所に関係なくうまくいく傾向があるため,新規プレイヤーがどのようなものか,どこから参加しているのかも確認する必要がある。このデータは貴重で,将来のライセンス機会にどうアプローチするかを形成するために使用できる。最初のライセンス提携がうまくいった場合,とくに特定の市場でのユーザー獲得を目指している場合は,それを基にライブサービス戦略の一環としてライセンサーと再び協力できる方法を考えることを検討する。Dead by Daylight,PUBG,Fortniteのようにコラボレーションが定期的に行われれば,あなたのライブサービスがプレイヤーにとって最大のヒット作となり,プレイヤーやライセンサーまでもが将来のイベントのアイデアを思いついて,接触してくる可能性があるのだ。
ビデオゲームにおけるライセンスIP ― 次は何か?
ビデオゲームにおけるライセンス契約やブランド提携は目新しいものではないが,ここ数年,ビデオゲームやメタバースに自社のIPを展開しようとするグローバルブランド,とくにビデオゲームとは通常結びつかないようなブランドからの関心が爆発的に高まってきている。
では,その狙いは何だろうか? 多くの場合,多くの企業は,メタバース空間におけるフロントランナーとしての地位を確立することを目的としている。Gucci, Givenchy and Ralph Laurenなどの企業がRobloxでバーチャルショップや体験を展開したり,ホンダがFortniteで独自のブランド世界を構築するなど,大規模な没入型世界には,こうしたメタバース体験をリアルに感じさせるブランドコンテンツが必要だ。この分野でのライセンシングは,将来にわたって長く成長し続けるだろう。
ライセンス契約やブランド提携は目新しいものではないが,自社のIPをビデオゲームに移行させようとするグローバルブランドからの関心は爆発的に高まっている
ビデオゲームの適応性と,オープンワールドやより大きな空間環境の人気の高まりは,ファン体験を今すぐ統合することが容易であることも意味する。MarshmelloがFortniteでDJセットをする以前は,バトルロイヤルゲームとライブ音楽体験を結びつけることはなかったろうが,その後,そうしたコラボレーションが普通になってきている。直近では,BlackpinkがPUBG Mobileで,Justin BieberがGarena Free Fireで演奏しているのを見た。ビデオゲームにおけるライセンスIPといえば,多くの人々やライセンサーはRobloxとFortniteの2つを思い浮かべるだろうが,それ以外にも多くのことが起きていることを忘れてはならない。ライセンス契約とブランドコンテンツは,展開の速さとモバイル向け開発のコストの低さから,とくにモバイルゲームにおいて,ライブサービス戦略の不可欠な要素となっている。これらのコラボレーションがダウンロード数にどれだけのプラスの影響を与えるかは,その背後にある数字を見れば一目瞭然だ。
しかし,ライセンサー,ビデオゲームスタジオ,メタバース/Web3プラットフォームは,そのコラボレーションがブランドとして,主要なオーディエンスが望むものと一致していることを確認することが重要であることに変わりはない。メタバースに進出するブランドであろうと,新しい映画やテレビの立ち上げの興奮を利用したいゲームスタジオであろうと,観客のニーズや欲求よりも,収益やメディアストーリーによる迅速なPRの欲求を優先させると,コラボレーションを急ぐと両者にとって失敗に終わることがある。DecentralandでSantander(※英国の銀行)のブランド体験をしたい人,必要な人は本当にいるのだろうか?
Rachit Moti氏は,ゲームデベロッパが権利者とつながり,交渉できるようにすることを目的としたオンラインIPマーケットプレイスLayerのCEO兼創設者である。彼は2021年,今は亡き自身のバンドの楽曲をNASCARのレースゲームにライセンスすることに成功し,ライセンスプロセスの法的複雑さと不透明さに衝撃を受け,このコンセプトを思いついたという。
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※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)