【ACADEMY】ビデオゲームのサウンドデザイナーになるには
我々のガイドは,あなたが夢見るゲーム業界の仕事への正しい道を見つけるのに役立つだろう。このページでは,ゲーム業界に就職するためのさまざまな専門分野を網羅したガイドを読むことができる。
ゲームに没頭した経験がある人は,クオリティの高いサウンドデザインのおかげで,ゲームに没頭できたのではないだろうか。
DishonoredのDunwallやBloodborneのYharnamのような場所を探索するときに聞こえる,ガラスのチャリンという音から獣の鳴き声まで,すべての音はサウンドデザイナーによって作られ,実装される必要がある。
サウンドデザイナーはゲームの全体的な品質やクリエイティブなビジョンに明確な影響を与えることができる,魅力的な役割だ。しかし,サウンドデザイナーが実際にどのような仕事をしているのかは,外から見ているだけではよく分からないかもしれない。
サウンドデザインの日々の現実はどんなものか?
●ゲームサウンドデザイナーに必要なスキルとは?
Hi-Rez StudiosのオーディオディレクターであるAndrea Chang氏は,サウンドデザイナーの役割は,担当するゲームの種類や,スタジオに所属して社内で仕事をするのか,外部の業者に依頼するのかによって異なると語る。
インハウスの場合,サウンドデザイナーは,ゲームがクリエイティブなビジョンを達成しているかどうかを確認するために,ミーティングなどで開発チームと密接に連携する。
デザインするキャラクターについて知ることができれば,より良いサウンドが生まれます -Andrea Chang氏,Hi-Rez
また,より大きなオーディオチームの一員として働くこともある。デザイナーは,サウンドアセットの作成とゲームへの実装に専念する。これらの役割はさまざまで,専任のオーディオプログラマ,テクニカルサウンドデザイナー,ダイアログエディター,Chang氏のようなオーディオディレクターなどが含まれる。Hi-RezのSmiteのようなアクションゲームの場合,デザイナーは設計書を分析し,調査をすることから始める。「デザインする対象のキャラクターについて知ることができれば,より良いサウンドを作ることができます」とChang氏は説明する。「キャラクターの素材や服装,性格など,すべてがサウンドデザインの参考になるのです」
サウンドデザイナー兼コンポーザーのMartin Kvale氏は,Manifold Gardenや最近発売されたSableなどのゲームで知られており,Krillbite StudioやNoknok Audioでの仕事と並行してコントラクターとしても活動している。
砂漠の惑星を舞台にした探索ゲームSableでは,Kvale氏は1人で作業を行った。予算の制限の中で作業を行う必要があったが,リスクを取る余裕もあった。そのおかげで,スター・ウォーズのようなSFサウンドスケープとはまったく異なるアプローチをとることができたのだ。Sableの世界は,静かでアンビエントな雰囲気で,テントの羽ばたきや砂の音などに加えて,カスタマイズ可能なホバーバイクなどから出る超現実的な音が挿入されている。
●ブレインストーミングによるオーディオアセットのアイデア出し
サウンドキットを開発するためには,デザイナーはブレインストーミングでアイデアを出す必要がある。たとえば,魔法をどのように伝えるか? 明るい妖精の魔法なのか,不吉な闇の魔法なのか。キャラクターが氷でできていたらどうするのか?
オーディオや演劇のサウンドデザイナー,ゲームのボイスディレクターとして経験を積んできたKirsty Gillmore氏は,この仕事の創造的な側面にスリルを感じている。最近のオーディオドラマThe Sandman: Act IIで,Gillmore氏は浮遊するクリスタルの心臓の効果音を作る必要があった。複数の効果音のバリエーションを試したあと,彼女は血糊や血の滴の音を取り入れ,高周波フィルターを加えてクリスタルの効果を出し,チャイムや心音も加えた。ギルモアは,サウンドデザインには,既成概念にとらわれずに考え,創造することが好きな人が向いていると感じているという。
「このような創造性を発揮できる人は,音の中に入り込み,音を分解し,面白いものを録音して遊んでみることを心から楽しんでいます」とGillmore氏は語る。「創造力のある人は,そのようなことに夢中になるでしょう」
視覚的,機械的に起こっていることに加えて,プレイヤーを世界に定着させるための追加要素を加えることになるのです -Kate Kelly氏
Kvale氏は,サウンドデザインを,パズルゲームを逆から作るようなものだと考えている。つまり,作業しているうちにピースが組み合わさっていくのを見て,その創造的な流れを作曲や演奏に例えるのだ。「私は非常に実験的に仕事をしているので,自分がその日に何をしているのか,何に取り組んでいるのか,まったく分からないときがあります。しかし,これらの(いろいろな)要素が徐々に集まってきて,最終的にSableのように誰かに感情を与えることができるものになるというのは,私にとって非常に素晴らしいことなのです」とKvale氏は語る。
サウンドデザイナーは,ゲームプレイの一部として機能する音を作らなければならない。たとえば,ゲームでは,ドラマチックな究極の能力に加えて,あらゆるサーフェスタイプの足音が必要になるかもしれない。ゲームでは,Wwiseのようなミドルウェアツールを使って(参考URL),デザイナー自身がサウンドエフェクトを実装する必要がある。
ほかのメディアではクリエイティブな制約が少ないかもしれないが,細かな部分にまで関わることで,サウンドデザイナーはゲームに大きな影響を与えることができる。さらに,制限があるからこそ創造性が生まれるのだ。
Psychonauts 2にコントラクターとして参加したサウンドデザイナー兼ダイアログエディターのKate Kelly氏は,Double FineのシニアサウンドデザイナーPaul O'Rourke氏とテクニカルサウンドデザイナーSteven Green氏とのグループインタビューの中で,「私にとってゲームで好きなことの1つは,多くの部署と協力して仕事をしているので,サウンドが単独で成立しないことです」と語っていた。
「視覚的,機械的に起こっていることに加えて,プレイヤーを世界に定着させるための追加要素を加えているのです」
どんな教育が必要か?
●特定のスキルを身につけるにはコースが有効
Chang氏は当初,作曲を専攻していたが,南カリフォルニア大学の大学院で,学生のゲームプロジェクトに携わるようになった。約30の学生ゲームプロジェクトで経験を積んだ後,プログラム責任者の助けを得て,フリーランスとして活動を開始した。
「最初は自分が何をしているのかよく分かりませんでしたが,とにかく飛び込んでやってみたんです」と氏は語る。「たくさんのことを学びました。そのおかげで 『これはより現実的な道で,私が本当に興味を持てるものだ』と思えるようになったのです」
しかし,Chang氏は,とくに大規模なAAAゲームで働きたいと考えていたため,サウンドデザインと技術的なスキルをさらに強化したいと考え,アリゾナ州テンピにあるConservatory of Recording Arts and Sciencesのオーディオエンジニアリングのマスターレコーディングプログラムに参加した。これにより,ゲームオーディオだけでなく,ミュージシャンのレコーディングやフィールドレコーディングなど,さまざまな分野の経験を積むことができたという。
その後,2013年にEAで初めて「本物の業界」の仕事に就き,最終的にキャンセルされたMOBAタイトルDawngateの開発に携わった。
「世の中にはさまざまなものがありすぎて,自分を律することができなかったり,どこから手をつけていいのか分からなかったりする場合には,ある程度の学校教育を受けておくことが役に立ちます。学校に通うことで,より集中的に,より構造的に,よりスムーズに物事を進められるようになるのです」とChang氏は説明する。「学校に行かなければできないというわけではありませんが,4年制のプログラムよりも専門学校のほうが少しは役に立つと思います」
学校は,学生がデザインスキルを向上させたり,WwiseやUnreal Engineなどのツールに習熟したりするのに役立つという。
GameSoundConが2020年の4か月間に実施したサウンドデザイナー向けの100件弱の給与制求人情報の分析で(参考URL),Wwiseの知識は経験(69%)に次いで2番めに希望されたスキル(63%)だった。その他の希望スキルとしては,スクリプティング(48%),Unrealの習熟(41%),正規の教育を受けていること,ProToolsやReaperなどのデジタルオーディオワークステーション(DAW)の使用経験などが挙げられている。
Chang氏は,メーカーであるAudiokineticのWebサイトで提供されているコースで,Wwiseをオンラインで学ぶことを勧めている(参考URL)。モジュールは無料だが,オプションで有料のテストもある。
●ハンズオンでの経験が重要
Chang氏は,サウンドデザインを学ぶためには,本を読んでもあまり意味がないと考えている。
「経験が第一です」とO'Rourke氏も同意する。「Kelly,Green ,私の3人は,オーディオの学校に通っていました。初期の履歴書は,専門的に学んだことを示すためには重要でしたが,学校に通っていたことを証明しろと言われたことはありません。これから先も,学校のことを聞く人はいないでしょう。ほとんどの人は,私が手がけた仕事やプロジェクトを見て,それが自分のやっていることにどう応用できるかを考えているはずです」
誰も私の学校について尋ねることはないでしょう ― 彼らはほとんど私が行ってきた仕事の成果を見ているはずです -Paul O'Rourke氏,Double Fine
Kvale氏はノルウェーで音楽とオーディオ制作を学んだあと,オーストラリアに渡り,オーディオ制作とサウンドデザインをさらに学んだ。帰国後は,学生プロジェクトやゲームジャムに参加し,The PlanやAmong the Sleepを手がけてブレイクした。「この方法は私にとっては有効でしたが,私は社会的に外向的な人間です」とKvale氏は語る。「私がキャリアを築いたのは,食っていけるだけの仕事に恵まれていたからであり,ゲームジャムやカンファレンスに参加したり,旅に出たりする自由もあったからです」
氏は続ける。「それがなければ不可能だとは思いませんが,時間がかかるのは確かです。しかし,とくに昨年のパンデミックでは,ソーシャルメディアを使って人々がネットワークを作ることができるようになったことは素晴らしいことです。これは,私がやっていることをより多くの人ができるようにするための,良い均衡手段だと思います」
ポートフォリオを作って仕事を始めるには?
●オーディオリールを目立たせる
O'Rourke氏がサウンドデザインリールでよく見かけるミスは,有名なトレイラーを自分の音でオーバーダビングしてしまうというものだ。その代わりに,ミュージックビデオのようなあまり知られていないものを題材にして,ドラマチックで大げさな効果ではなく,小さくてシンプルなデザインに集中することを勧めている。
「とくに,UnrealやUnityのようなソフトウェアを使って,"これは私が作った小さなシステムだ "とアピールしている例です」とO'Rourke氏は説明する。
「私がこれらのゲームに何かを実装していることを示したものです」とGreen氏は語る。「確かに手を加えられてはいましたが,デザインをやり直すのではなく,『実際にこれをやったぞ』という感じでした。当時はそれが目立っていたのだと思いまっす。私がこれまでに学んだ大きなことは,ユニークであること,つまりトレンドをできるだけ追わないことです」
Kelly氏は,デザイナーは応募するゲームの種類に合わせてリールを作るべきだと付け加えている。インディーズゲーム用のリールとAAAアクションゲーム用のリールでは,聞こえ方がまったく異なる。たとえば,彼女は,パズルプラットフォーマーSnake Passのゲームプレイの音声を,リール用に再設計した。
「私は最終的に,単にSteamで,美的感覚が好きなゲームや自分が手がけたいと思うゲームを見つけて,それを再構成するようになりました」とKelly氏説明する。「しかし,いい題材がない場合や,何か違うものを見せたい場合は,次の方法があります。ゲームプレイのビデオを撮って,自分のサウンドを加えるのです」
●人脈作りは重要だが,無理強いはしない
何か重要なアドバイスはないかと聞かれたKelly氏は,シンプルにこう答えた。「友達を作りましょう」
氏は,プロジェクトで働いている人に声をかけたり,イベントでボランティアをしたりすることで,自分をアピールできると語る。仕事を得ることよりも,何よりもまずイベントで友達を作ることに集中すれば,将来的に応募書類を送るときに有利になるかもしれない。
たとえば,Kelly氏は毎年開催されるGame Developers Conferenceでカンファレンスアソシエイトとして働き,さまざまな業界の著名人と交流を深めたという。
「顔馴染みになるだけで,大きな違いがあります」と彼女は語る。「積極的に活動していなくても,顔を出すだけで大きな効果があります」
ゲームのサウンドデザイナーになるためには,どのようなスキルが必要か?
●サウンドデザインのコアな知識と優れたコミュニケーションスキル
サウンドデザイナーとして就職し,生計を立てることを目標とする場合,O'Rourke氏は,できるだけ多くの新しいスキルを学ぶことの重要性を強調している。
「実装技術,ミドルウェアの習得,人々が使っているさまざまなプログラムの習得に励むべきです。もし,UnityやUnrealの経験者を募集している応募先があったら,できるだけそれらのツールを学ぶべきです」とO'Rourkeは語る。
たとえば,The Last of Us Part IIのような大規模なゲームでは,オーディオエンジニアリング(オーディオの録音とミキシングのプロセス)に詳しいデザイナーが必要になるかもしれない。
Gillmore氏は,ほかのメディアからゲームオーディオに簡単に移行することはできないと語るが,ゲームのサウンドデザインは他のメディアのサウンドデザインと多くのコアスキルを共有していると感じているという。
「サウンドがどのように機能するかを知る必要があります」と氏は語る。「シグナルフローやコンプレッションの仕組み,プラグインだけでなく,EQの仕組み,ダイナミクス処理の仕組み,ノイズフロアの意味など,サウンドの基本的な概念をすべて理解している必要があります」
とくにゲームのサウンドデザインは,映画のような直線的なメディアとは異なり,制作プロセスの中でより統合された部分であることが多いため,コミュニケーション能力が最も重要であるとKvale氏は感じている。さらに,ゲームプレイにおけるオーディオの機能性を常に念頭に置いておく必要がある。
「平均的な音でも,適切な方法で入れれば,良い音よりもずっと良い音になります」とKvale氏は語る。
さらに,厳密には必要ではないが,プログラミングをある程度理解していると,サウンドデザイナーは,自分のアイデアをプログラマが実装するのにどれだけの労力が必要かを知ることができ,予算の少ないゲームに取り組む際にはとくに重要であると語る。
●作曲は役立つが必須ではない
2020年にGameSoundConが分析した求人の23%で,作曲のスキルは必須または好ましいスキルとして挙げられており,インタビュー対象者の多くは音楽の学歴を持っている。しかし,サウンドデザインを始めるのに,音楽的な知識は厳密には必要ないという。
Chang氏は,コンポーザーと一緒にゲーム音楽の全体的なスタイルや方向性を決定する際に音楽の知識を活用しているが,純粋なサウンドデザインではそれほど重要なスキルではないと感じているようだ。
また,サウンドデザインの仕事の中には,技術的な側面により重点を置いているものもある。テクニカルサウンドデザイナーであるGreen氏は,サウンドやアイデアをゲームに実装し,それらが正しく機能し,サウンドデザイナーの意図どおりに実現されていることを確認する。
「性格的なものかもしれませんが,私は物事がうまくいくのが好きなんです。壊れているのは好きじゃないんです」とGreen氏は笑う。「私は文字どおり作曲家ではありませんので,一生音楽を作ることはできないでしょう。サウンドデザインのスキルには自信がありますが,物事が壊れていないことを確認するのが楽しいんです。整理整頓が好きなんですね」
●健全で安定したペースで仕事をすること
とくに契約社員の場合は,自分自身をチェックすることも重要だ。Kvale氏は,常にプロジェクトに参加していなければならないという意識があることを認めている。これは,ゲームの発売日が特定の期間に集中することが多いために起こる現象で,Kvale氏は自分が手がけた6つのゲームが6週間で発売されたことがあると語る。
SableやManifold Gardenを聴くと,何百時間にもわたって小さな調整が行われ,大きなストロークが決定され,よりフィットするようにゆっくりと削られていることが分かります -Martin Kvale氏
氏は,デザイナーが構造的なアプローチを実施し,継続的かつ均等に作業を行いながら,失敗する時間を設けることを勧めている。また,燃え尽きてしまわないように,友人や同僚のサポートネットワークを持つことを勧めている。「SableやManifold Gardenを聴くと,何百時間もかけて小さな調整が行われ,大きなストロークが決定され,よりフィットするようにゆっくりと削られているのが分かります」氏は続けた。「すべての作品には,何度も何度も小さな修正が施されています。それは,毎日少しずつ,そして継続して行うことで初めて得られるものなのです」
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※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)