「株式会社24Frameの内情暴露日誌」第6回:かくも永き不在(カレーの具の)
前回,予算を32%まで使い切った話をしたので,今回は残りの68%がいかに花と散ったか,ではなく! いかに有効かつクレバーに使われていったかをご説明しましょう。
再三申し上げているように,我々にカネはありません。正直言って,カレー味の何が今一番ウマいんだ? なんてことを全員で議論している時間は時間を,つまりカネを(しつこい)ドブに捨てているようなものです。スタッフ10人で5時間会議したら50時間,50時間って1/3人月だよ,という使い古された人月の神話を,自戒も込めてここに再掲しておきます。
なのでここは考える間もなく,新料理の発明などには目もくれず,作るものは「カレー味のカレー」一択です。要するに,単なるカレー。新たに「カレー味の寿司」なんかを開発して,ジャパニーズ・スシの旋風が一周して定着した感のあるニューヨークに攻め込もう,などとは,我々は考えている場合ではないのです。
それよりも荒川区の道端で尿意を催したおっさんが公衆便所に迷い込み,そこで便器かと思ったらカレー皿を見つけ「あれ?う○こかと思ったらカレーが入ってるぞ。食えるな。ていうか意外とイケるな。周囲の便所臭さが若干ノイジーだけど」というところが我々の直近のゴールなのです。おっと,話がまたも形而上的になりすぎました。現実に還りましょう。
まあ,普通にカレーを,アクションゲームを作ると言ってもやることはまあまあ山積みです。カレーを作る以上は,やっぱり美味いカレーを作りたいのが人情ってものです。カレーを選択した時点で,ある程度うまそうな予感はするけど,カレーをまずくする方法とて,この世界には無数にあります。例えば具がない,ご飯が足りない,ルーを入れ忘れた……など。まあこのレベルの手抜かりをゲーム制作でいくつか侵せば,いわゆるクソゲーと呼ばれるものが出来上がり,それは奇しくも失敗したカレーがう○こになることと酷似した現象です。
よくないものが排泄物に例えて形容される,というのは第一次から第三次の産業まで同じ経路をたどるものであり,さりとてその排泄物も,そもそも人間が生きるために産み落としたものであるということも含めて,我々の原罪と業の深さを考えさせられます(原罪といえばエデンの園のリンゴですが,カレーにリンゴを入れるとうまくなるなんていう話もありましたね)。
それはともかく,我々が排泄物をわざわざ作らないための具の一つめがこちら。炎の攻撃を食らったら,犬が燃える。犬が燃えるのは耐えられないから早く何とかしなきゃ! 燃え尽きる前に消化剤で鎮火しよう! というゲーム体験も引き出せて一石二鳥! 同じ調子で毒,感電,凍結,なんかもあります。
毒はスリップダメージが入る,感電はそれ自体にダメージはないけど動きがスローモーションになる,凍結は完全に止まってしまう! ちなみに,テストプレイで凍結だけはアイテムでの治療を廃止しました。完全停止は効果てきめんすぎ,今回のゲームにはめ込むには強すぎ,食らったらストレスマッハ,なんですね。なので運用としては食らっても停止は数秒,としておき,その間に「アイテムを使用,クイックスロットに入ってなかったらメニューから使用」なんてことをやるのはちょっと面倒だし,せっかくの凍結を味わってもらうベストの形とは思えなかったので,「げっ!止まっちゃったよ!」で,アセアセ,していたらすぐに「おお,動けた! ヒヤヒヤさせてくれるぜ。凍結だけに!」という体験を単品でじっくり味わってもらったほうがいいだろうと判断してのことです。
ちなみにこれらの炎上,凍結,感電なんかは敵から食らうだけじゃなく,こちらのお犬様が,敵に食らわせることもできます。あと,それ以外の発生源もあって……という話もあるのですが,ここからがまた長くなるので,詳細は次回で。次回は今回のように排泄物という単語の頻出を控え,お食事中のみなさまにも,安心して楽しんでいただける原稿を目指します。以上,友野でした。
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※次回の掲載は7月20日を予定しています