「株式会社24Frameの内情暴露日誌」第5回:カネがないのは首がないのと同じ


 ヤバい。カネがない。これは何も僕の小遣いが底を尽きたという話ではない。会社にカネがないのだ。まあ落ち着いて考えてみれば今までカネが十分だという状況もなかったのだから,ある意味でこれは平常運転ともいえる。しかし,この連載でも暴露してきたように,「カネがなければ借りてくればいいじゃない」とばかりに銀行との付き合いを開始してウン千万円の債務者となった今も現金がないとはどういうことだ。よし,思い出してみよう。

原因その1:犬
 まあもともとこいつに貢ぐために借りてきたカネだし。それがこいつのエサ代になったとして特に疑問にはならないだろう。ただ,結果だけみると「何て高いわんわんグルメなんだ」という感想は禁じ得ない。「何喰ってるの?」という質問ぐらいは許されるんじゃないだろうか,バウリンガル(バウパシー?)さえあれば。

原因その2:犬費用の内訳「3Dモデル」
 まあ実際に犬を飼って高級なエサをあげていた訳ではなく,犬のゲームを作ったわけだから,そのゲームのどこにどうカネがかかったワケ? というのを腑分けしていくのが正しい(?)会計ということになる。だが,まずは犬のゲームには犬がいなくちゃ始まらない。で,今回は柴のポチ,ドーベルマンのベル,ブルドッグのボナンザ,という三匹の犬が登場するから,三匹分の犬の3Dモデルが必要になるわけだ。そして,モデルが必要だからといって,いきなり「オーケーグー〇ル,犬の画像」などと言って手に入れた画像から3Dモデルを作ることはできない。まず本作用の「キャラ」としてデザインしてもらうことが必要なわけだ。この時点でもう個人的には当初の想定を越えてきている(想定がバカすぎる問題)。

「株式会社24Frameの内情暴露日誌」第5回:カネがないのは首がないのと同じ

 今回は幸運にもメタルマックスゼノリボーンに引き続き,緒賀岳志さんに犬をデザインしてもらうことができた(たとえタダで済むにせよ,拾ってきた画像ではいけない,色々な意味で,ということがよく分かってもらえたと思う)。もちろん彼は一流のアーティストなのでそれ相応のギャラは発生する(当たり前だ)。さらにそこから3Dモデルを起こすわけだが,みなさんはモデルの制作費ってものの相場をご存知だろうか。幅がありすぎて僕も「ご存知です!」とは即答できないレベルの話ですが,例えばいわゆる家庭用の最前線で使われている有名タイトルなんかだとウン千万円とかですね多分,っていう。そこをうちは「驚愕のウン十万円でご提供!」みたいなことをしないと,残念ながらモデルを作り切った時点で僕の借入が底を尽きます。まあ三匹の形状をあんまり大きく変えないとか,動きを少しずつ差をつける,みたいなことでいろいろと上手くやったとしても大体予算の10%はここに持っていかれますね。まあ,主人公だししょうがない! こんなにかわいいモデルもできたしね!

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原因その3:マップ
 で,次は出来上がった犬たちが走り回る地形,マップがないと始まらない。マップの工数は地形のバリエ―ション次第,まさに「地形の沙汰もカネ次第」を地で行く地獄のデスマーチ。まず,最低限,砂漠,岩場,地下ガレージぐらいは必要だよね……え? これもモデル同様にデザイン? いや緒賀さんに頼めなくはないけどここでも犬と同じフロー通してたら間に合わん(時間もカネも),なんとなくこんな感じで……後はイロイロうまくやろう。色替えとかで。とはいえマップは広い。予算はすでに23%消化。

 よし,これでなんとか犬が走り回る体裁は整ってきたぞ…って,えっなに? 今回はどんなゲームにするのかって? アクションゲームのイメージなんだけど。え? アクションゲームの社内開発は初だから考える時間が欲しい? うーん,考えるだけならタダだって桝田省二さんも言ってたんだけどな。会社だとそういう訳にもいかないのか。時代は変わったな。仕方ない,スタッフが考えている間も仕事をしているとみなして給料を払おうじゃないか。うちは完全リモートだから「考えてま〜す」と言いながら家でApexのエイム練習をしていたとしてもそれを感知する術はないけれど君を信じようじゃないか。これで予算消化率32%。

 で,結果としては紆余曲折ありつつも以下のような状態異常やらギミックがいい感じで動くゲームの完成が近付いて来る訳ですが。今回もこの連載でもどこまで言っていいのか分からない紆余曲折がありました。「ゲーム会社ってみんな毎回こんなことやってんの?ねェ,マジで?」と言いたくなるレベルで。とりあえずここからのゲーム内容の決定プロセスなんかを書いていきたいのですが,どうやら今回はお時間のようです(文字数的に)。なのでとりあえずゲームの内容を写真でお見せしつつ,さようなら〜。次回をお楽しみに!

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【次回予告】
 ついに会社のお金を使い果たしてしまったという業界の辺境経営者・友野祐介。とりあえず何にいくら使ったのかの計算を始めてはみたが,思いのほかに大変な作業で現実逃避してしまう。とはいえ,やはり振り返らなければ話は進まないということで,バフ,ギミック,ラッシュ,ボスの企画,ローグライクダンジョン生成などの実装にそれぞれ予算の何%が割かれたかを計算し始めたが……。次回「かくも永き不在(カレーの具の)」お楽しみに!

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※次回の掲載は7月6日を予定しています

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