【月間総括】PS5の初動はワンダースワン程度。ソニーは日本市場を見限った
結論から先にお話しすると,国内への供給が非常に少なく,大変失望した。ファミ通のデータでは,PS5は初週が11.8万台,2週目が4.3万台と惨憺たる数字である。Xbox series X/Sも同2.1万台,3600台,そして発売4年めでピークアウトがいつも囁かれるSwitchは11.6万台,16万台と両者を圧倒しているので,非常に少ない台数でのスタートとなったと言わざるをえない。
規模感ではPS4やSwitch初動の1/3程度にすぎない。そして,この台数は,撤退に追い込まれたセガのドリームキャスト,バンダイのワンダースワン,大きな損失を計上したPS3を若干上回る水準にすぎないのだ。
もう少し分かりやすくするために,グラフで視覚化してみよう。
●発売から2週間の実売推移
このグラフで一目瞭然だが,初週10万台程度で成功したハードがないのである。大失敗に終わったワンダースワン,ドリームキャスト,PS3のうち,ドリームキャスト,PS3は今回同様に供給が少なかったケースだが,ドリームキャストは事業撤退,PS3はPS2に比較して半分以下の1000万台程度の実売台数に終わっている。これは,初週にまとまった数を供給する必要があることを示している。
次に,前回も示した,発売から25週間の推移をご覧いただこう。
●発売から25週間のゲーム機の推移
非常に厳しいグラフである。この角度で推移すると,PS5はPS3以下になってしまう。
メルカリでの転売が10万円前後で推移していることや,店頭にPS5がまったくないことを考えると,これは明らかに供給量が不足していると言える。
以前,ブルームバーグがPS5の半導体の歩留まりが悪く計画を下方修正したという報道をソニー側は即座に否定した。エース経済研究所とのディスカッションでも,憶測に基づく報道だと明確にコメントしていた。
となると,製造できないことがこの供給不足の要因ではないことになる。考えられる理由としては,ソニーは日本市場をもはや必要としておらず,無視してもよいと考えているケースである。何度も指摘しているが,ソニーは日本のコンシューマーゲーム市場に対して極めて冷淡である。
Switchが1600万台も売れている市場なのに,何ら手を打っていないように見える。よって,今回も,発売こそ日米同時だったが,そもそも日本市場で成功に必要な供給を考えていなかったということではないだろうか。
先月,「業界的な目線で日本市場を考えると,ポイントは最初の2週間でどれくらい売れるかであろう」と書いた。そして,その数量は過去のゲーム機の成功例から見て45万台程度とした。これは憶測でも,妄想でもなく,過去のデータがハッキリと示している客観的事実である。これほど明確なデータがあるのに供給しないということは成功する必要がないから無視したと言われてもしかたないであろう。
さらに,PS4やVitaよりも初週の供給が少ないことに対して,ユーザーがSNSなどで不満を述べるのは当然で,我慢すべきことではないと思う。今回も,ソニーには耳の痛い話だろうが,前回まで実行していたことができないのは,メーカーとしてるの供給責任を果たしていないだけであろう。
スマートフォンは今や,年間12億台を超える台数が販売されているが,こんなに普及したのは大量に製造できたからである。ゲーム機は多くの人に行き渡って初めて意味あるものとなる。それができないというのは多く売れないと言っているも同然で,しかも,米国を優先するということに格別の意味があるとは思えない。
それでも,大市場である米国を優先することが正しいと主張する人がいるかもしれない。
ここで,地域別の販売(着荷)台数を開示している任天堂の据え置き機と比較してみよう。大失敗に終わったと認識されているWii Uの初年度10-12月は306万台で地域別では日本83万台,米大陸132万台,欧州その他90万台であった。日本の初週はファミ通のデータでは30.6万台である。
一方,成功したWiiでは日本114万台,米大陸120万台,欧州その他80万台である。
これは,日本を優先したような数字に見えるが,Wiiは世界で累計1億台を超える大成功だった。
そして最後に,Switchである。Switchは3月発売で3月のみの出荷台数を見ると,日本60万台,米国120万台,欧州その他94万台だった。この数字は市場規模に比例したもので,特定の地域を優先したわけではない。PS4の日本比率は10%と見ているので,あえて言えば日本を優先したように見えなくもないが,米国を優先することと成功に相関性があるように見えない。
●任天堂の据え置きハードの最初の四半期販売(着荷)台数
エース経済研究所では,米国優先論にはまったく賛同できない。もし,SIEが米国を優先しているというのであれば,それは米国で勝てば,ほかで負けても全体で勝てるという迷信を信じているだけではないだろうか?
このままでは,静かにゆっくりとユーザーがPlayStationから離れてしまうだろう。ゲーム機は必需品ではない。自分たちが相手にされていないと考えたら,ユーザーは消えさるのみ。そして,ソニーはいずれ後悔することになるだろう。
ところで,Jim Ryan CEOは,インタビューで年内450万台以上の出荷になるとコメントしている(参考URL)。ところが,エース経済研究所が,ソニー側に確認したところ,本社IRとしてはこのような発言はしていないとの回答で,事実確認が取れなかった。あくまでも年度でPS4の初年度760万台以上を目指すとのことである。
日本での実売の初動が16万台で,これはほぼ出荷数と同じであると見られることを考えると,年内450万台以上が事実ならば,これから相当供給が増えるか,米国の台数が著しく大きいということになろう。
実際,11月25日夜に,PlayStation公式Twitter(参考URL)が,市場最大の発売になったとコメントしている。なお,この件は何が史上最大なのか書かれておらず,SIEからのプレスリリースが出ていないため,詳細が判らないのは残念なことある(関連記事)。
そして,エース経済研究所では年内に450万台の売上台数(着荷)が実現できないと,年度の760万台以上は相当高いハードルになると考えている。ソニー側の説明を聞いていると,コロナ禍で,需要が非常に高いので,クリスマスの影響を受けずに年明けも飛ぶように売れることを想定しているように思える。
しかし,過去のゲーム機の販売推移からは,とてもそんな風には見えない。クリスマスを経過すると通常,需要は大きく落ち込むはずなのである。コロナ禍という特殊な状況が本当に年明けも需要が押し上げ続けるのか? 疑問に思えるが,ソニー側は私の予想を非常識なものとしているので,杞憂にすぎないのであろう。
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