【月間総括】Stadiaの苦境,そして任天堂とソニーの四半期決算の明暗
ソーシャルメディアでも,ユーザーからの評価がほとんど聞こえてこないことを考えると,サービス自体も低調な出足のようである。
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発表当初は,Googleの資本力で多くのタイトルが集まるのではないか? との期待もあったようだが,タイトル数も不十分,帯域の不安定さからくる画質の低下(※主にユーザー側の環境による問題だが),サーバーの能力不足※と不完全な印象を拭えない状況に見える。以前,「クラウドゲームは実用に至っていない」「大量のサーバーと専用回線容量の維持には相当な資金が必要と書いたが,そのとおりであったということであろう。
Googleの挽回に期待したいところだ。
※「Red Dead Redenption 2で4K 60fps?」海外レビュアーの多くはそこまでは期待してなかっただろうと思うのだが,わざわざ「できらぁ!」と言ってしまったのが敗因だと思われる。パフォーマンス自体は十分に出ている
次に,任天堂(7974)とソニー(6758)の上期決算について触れたい。ゲームビジネスに関しては,両社の明暗が分かれる形となった。
任天堂の決算は,上期のNintendo Switch販売が693万台と大幅に伸びたことが寄与し,大幅増収増益となった。とくにSwitch Liteの販売(着荷)台数が195万台と,エース経済研究所の想定150万台を大きく上回った。さらに特筆すべき点は,米大陸の販売(着荷)台数が80万台と,日本の39万台の倍になったことであろう。
DS以降の携帯ゲーム機の初動は,米国では据え置き機を大きく下回る販売となることが通例であった。このため,携帯ゲーム機は,米国では受け入れられないと資本市場では見られていた(下表参照)。
●ニンテンドーDS,3DSの発売から3期間の日本,米大陸販売(着荷)台数推移
今回は,据え置きゲーム機と同じような動きとなった。
任天堂の古川社長は,エース経済研究所の質問に対して,米国でSwitch Liteが好調な要因として,
- 据え置き機クオリティのゲームを持ち運べること
- これまでのリビングの大画面テレビで遊ぶだけでなく,ソファーやベッドの上で遊べるという自由なプレイスタイルが受け入れられたこと
を挙げた(参考URL)。
お気づきだと思うが,エース経済研究所が提唱している「形仮説」そのものである。任天堂は,Switch Liteが受け入れられた要因は,ゲームタイトルではなく,プレイスタイルが受け入れられ,米国のゲームの遊ぶ文化を変化させたからだと,任天堂はコメントしているのである。
これまで,ゲーム機の販売好調はソフトによるものとして語られるのが当然であっただけに,これは大きな変化だといっていいだろう。同社以外でも,日本ファルコムも米国でゲーマーがSwitchにシフトしていると決算説明会(IRミーティング)※の会場でコメントしており,米国で何かしら大きな変動が起こっているようである。これはPlayStation 5の販売に大きな変化を与えかねない兆候であり,注視する必要があると考えている。
※「日本ファルコムは決算説明会を開催していない」というご指摘をいただきましたので説明しておきます。日本ファルコムでは,東証マザーズの規定により年に2回,アナリスト向けのイベントを開催しています。これは日本証券アナリスト協会が提供している「IRミーティング」と呼ばれるサービスを利用したものです。多くの企業が利用しており,イベント名は各社がそれぞれ設定するのですが,名称の設定が行われないことも多く,日本ファルコムでもとくに名称は設定しないまま,決算説明会と会社説明会を兼ねたイベントを開催しています(日本ファルコムに確認済み)。名前の代わりに「IRミーティング」と呼ばれることも多くあります。2019年11月に行われたものは年度末決算の説明会と会社説明会,製品説明会を兼ねた名前のないイベントです。話が込み入っていますので,記事では単にその一部を取って「決算説明会」と記述しています。また,決算説明会には一般向けとアナリスト向けのものがありますが,上場規定により公開企業でアナリスト向けのイベントが行われないというのは通常ありえません。
同時に,国内でもNintendo Switchの販売に変化が起こっている。
通常年末商戦期にしか起こらない角度の変化が出ているのである。この辺りについては年明け以降に,もう一度お話ししたい。
エース経済研究所では,第3四半期のNintendo Switch販売(着荷)台数を950万台と予想しているが,例年よりも早い角度変化が起こったことを考えると,記録的なセールスになる可能性があると見ている。
●発売から250週のゲームハード販売推移
ソニーのゲーム事業(上期)は大幅減収減益となった。PS4の売上台数(着荷ベース)は600万台と前年同期の710万台から110万台の減少となった。また,前期に自社の「ゴットオブウォー」や「スパイダーマン」,サードパーティのF2Pタイトル(フォートナイトのことだと思われる)がヒットした反動によるものとしている。
PS4は2018年11月のブラックフライデーセール以降,低調が目立つ。とくに日米では,2019年に入って実売が大幅に落ち込んでいるようだ(下図参照)。
ソニーは,通期見通しも下方修正しており,主な要因として,
- PS4の売上台数見通しを第1四半期決算時に続いて150万台下方修正の1350万台としたこと
- 自社タイトルの「ラストオブアス2」を来期に延期したこと
を挙げている。
同社に対するヒアリングの感触では,PS4の販売が想定を下回る状況に戸惑いを感じているようである。サードパーティから発売されるタイトル数は大きく変わっておらず,AAAも多数発売されているにもかかわらず,PS4の販売は急激に落ち込んでいる。
日本では,小島秀夫氏の最新作「デス・ストランディング」や「スターウォーズ」,「コールオブデューティ」などが発売されたにもかかわらず,週販は1万台前後で昨年の同時期の半分程度でしかない(ファミ通調べ)。
サードパーティのAAAがゲーム機の販売を左右するのであれば,このようなことは起こらないはずである。そうであるならば,別に要因があると考えるのが妥当で,エース経済研究所では,前回のモデルチェンジから3年以上が経過し,デザイン面での新味が薄れたことが大きいと考えている。
これが正しいのであれば,マイナーチェンジの投入がないPS4の販売低迷は当分続くことになり,2020年はPS5がソニーのゲームビジネスを反転させる起爆剤になるとの期待が大いに高まるだろう。
●2018年と2019年のPS4の累計実売推移
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