【ACADEMY】モバイルゲームマーケティングにクリエイティビティをもたらす3つの方法(ハリウッドタレントを雇うだけでなく)

MetacoreのCEO Mika Tammenkoski氏が,Merge MansionでのPedro Pascal広告のバイラルを受けて,モバイルマーケティングのヒントを紹介する。

【ACADEMY】モバイルゲームマーケティングにクリエイティビティをもたらす3つの方法(ハリウッドタレントを雇うだけでなく)

 近年,モバイルゲーム市場は目覚ましい成長を遂げているので,その業界の歴史がいかに浅いかということが忘れられてしまいがちだ。しかしながら,コロナ後の市場の落ち込み(実際は市場の調整というべきもの:参考URL)や,プライバシー規制の強化などを受けて,ゲーム業界の経営者や投資家たちは,この業界の成長の可能性を疑うようになってきており,中には「モバイルゲームマーケティングは終わった」とまで言い切る人もいる(参考URL)。

 私は,このような懐疑的な見方に共感することはできない: モバイルゲーム市場はまだ10代であり,現在の状態が業界が提供できるもののすべてであると考えるのはいささか想像力に欠ける ― さらにはっきり言うと野心が足りない。しかし,法改正とプレイヤーからのフィードバックの両方が,ゲームメーカーやマーケティング担当者に新しいアプローチを要求していることも明らかだ。ここでは,モバイルゲーム業界がこの新しい環境に適応するために必要な3つの方法を紹介したい。



1. オーディエンスから始める:ポジショニングを後回しにしない


 歴史的に見て,ゲームスタジオは「最高のモバイルゲームを作る」という製品開発に固執していた。そして,その「最高」というのは,デベロッパが個人的に好きなものと直結していることが多いのだ。― たぶんゲームにおける表現がもたらした問題の歴史については,ここで詳しく説明する必要はないだろう。そして,ゲームが完成したあとに初めてはじめて,そのゲームを誰にどのように売り込むかを考えるのだ。

 このような作家的な考え方は,インディーズ映画や音楽では当たり前なのかもしれないが,このような大規模な消費者向け産業で,いまだにデベロッパ重視のアプローチを体系的に行っているのはゲームだけだと思われる。他の主要な消費者ブランドの製品開発は,ほぼすべて,自社のポジショニングを明確化し,オーディエンスのニーズをマッピングすることから始まる。

 2007年頃のNetflixを例に取ってみよう。彼らにとっては,製品第一主義を貫いて,ビデオをレンタルする新しい方法を開発するのは簡単なことだっただろう。しかし,彼らは視聴者のニーズを把握して,ストリーミングサービスを導入したことで,DVDの販売やレンタルがなくなったことは周知のとおりだ。

 ゲームメーカーにとって,ポジショニングを第一に考えるというのは,ゲームの開発初期段階において,オーディエンスに関する仮説を立てて検証すべきことであり,世界的な発売に向けて準備を進めているときにすることではない。


2. ナラティブが鍵:UAからクリエイティブへのシフトを開始する


 最近では,モバイルゲームのマーケティングを語るうえで,パフォーマンスマーケティング(ゲームスタジオで見て見ぬふりをされがちな存在だが)を抜きには語れない。ソーシャルメディア広告プラットフォームの運用方法はここ数年で大きく変化しており,ハイパーターゲティングキャンペーンに何百ものバージョンを投資することは,もはや必要ないどころか,賢明でもなくなっている。

 ゲーム会社は,主要な視聴者にリーチするために,広告費だけでなく,ナラティブにもっと重点を置くべきだろう。昨年,モバイルゲームの広告に費やされた620億ドルの大部分はUA(ユーザー獲得)に費やされたのだと思われるが(参考URL),このうちもっと大きな割合をクリエイティブに費やしていれば,ゲームのストーリーを異なるチャネル間でどのように伝えるかに焦点を当てることができたのではないだろうか。

 今後,幅広い視聴者の共感を呼ぶクリエイティブを実現できるゲームスタジオは,UAが死んでいないことを証明することになるだろう。新しい考え方が必要なのだ。我々は,ゲームの中だけでなく,それ以外の場所でも,長年にわたってこの素晴らしい例をいくつか見ていた。SupercellのClash-A-Ramaのミニシリーズ(参考URL),Angry Birdsの最初のアニメーション(参考URL),Red Bullのfreerunningキャンペーン(参考URL)などを参考にしてほしい。


3. より広い視野で考える:ゲームはアプリ以上のものである


 モバイルゲームの成長性は,いつでもどこでも遊べるということが大きな要因であることは間違いない。しかし,それは同時に,他のアプリやエンターテインメントと画面占有時間をめぐって最も激しい競争にさらされることをも意味している。永続的なものを作るには,単なるゲームやアプリではなく,もっと大きなもの(ログオフした後でも話題になるようなもの)であると感じられるものを作ることが重要だ。これには,ゲームマーケティングとブランディングが大きな役割を果たす。

 スターウォーズ帝国は,本なのか,映画シリーズなのか,ビデオゲームなのか,テーマパークなのか,考えてみてほしい。もし,5人のファンにその説明を求めたら,おそらく5つの異なる説明が返ってくるはずだ。というのも,ファンによって体験の仕方が異なるからだ。

 同じように,我々は,プレイヤーがMerge Mansionの物語を複数の方法で理解することを想像している: ある人はパズルゲームについて,ある人は伝承について(参考URL),あるいはTikTokのPedro Pascal氏(参考URL),あるいはKathy Batesが像の乳首をひねっていることについて(参考URL)。そして,ハリウッドのスターの力が,Merge MansionのNetflixやHBOのスピンオフシリーズを求める声を加速させていることは間違いない。しかし,我々は,ハリウッドの予算がつく以前から,同じ基本原則をマーケティングに適用していた。

  • オーディエンスを知り,過小評価しない
  • マーケティングと製品を一致させる
  • 1-つの強い感情を意識して広告を構築する
  • 他の人と同じように見えることを目指すのではなく,自分らしさを重視する

 次にUAキャンペーンや大規模なブランドマーケティングに取り組むときは,次のように考えてみてほしい:幅広いオーディエンスにアピールし,アプリをダウンロードさせるだけでなく,ゲームについても語らせるものは何だろうか?

Mika Tammenkoski氏は,Merge MansionのクリエイターであるMetacore GamesのCEOだ。2020年にMetacoreを共同設立するまでは,Remedy,Sumea,Digital Chocolateなどのスタジオでデベロッパ,投資家,起業家として働いてきた業界のベテランである。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら