フォトリアリズムから銀幕へ:Unreal Engine 5の次なる目標は?

Epic Gamesが,エンターテインメントの融合,「新しいタイプのクリエイター」,そしてその両方を実現するUEの役割について語る。

 先月開催されたGDCのState of Unrealでは,FortniteのUnreal Editorとそのクリエイターエコノミーが主役となり,Epic Gamesのメタバースに対するビジョンが示された。

 CEOのTim Sweeney氏は,メタバースが(Appleが潰そうとしない限り)「現実にやってくる」理由と方法を説明し(関連英文記事),EVPのSaxs Persson氏は,Fortniteの作品をシューティングゲーム以外にも拡大し,公平性に基づいたエコシステムを構築することについて詳しく話してくれた(関連英文記事)。

 しかし,State of Unrealでは,Epic Gamesがエンジン分野とそれを超えた領域でメジャーなツールになるという目標と,その一翼を担う主要な機能やツールも数多く紹介された。

フォトリアリズムから銀幕へ:Unreal Engine 5の次なる目標は?

創造性という人間的な要素は常に必要です -Nick Penwarden氏

 その1つが,Unreal 5.2アップデートとEpicの幅広いフォトリアリズムの目標の一部である,新しいプロシージャルツールだ。State of Unrealの会場では,このデモに誰もが息を飲んだ。この新しいツールは,デベロッパが最初の人工的なアートディレクションに基づいて,数クリックすればフォトリアルの葉を生成したり,岩や道をシミュレートしたり,より自然な要素を生成できるのだ。

 「我々がUE5とそのツールや技術について構想していたとき,プロシージャルコンテンツの生成は,大きなテーマの1つでした」と,エンジニアリング担当副社長のNick Penwarden氏GamesIndustry.bizに語ってくれた。「そして,当初の予定どおりに5.0を出荷するためには,これを作るのはちょっと遅れそうだと分かったのです」

 「我々は,デベロッパがより効率的に,よりクリエイティブになれるような新しいツールを作ることにはとても興味がありましたので,デジタルコンテンツ生成ツールについては,かなり前から取り組んでいました。昨年はずっとそれらに取り組んでいました」

 Unreal Engine 5のリリースとNick Penwarden氏との最後のインタビュー(関連英文記事)から1年が経った。Epic のコミュニケーションディレクターである Dana Cowley氏は,State of Unrealで,Unrealユーザーの77%が UE5を使用しており,エンジンのアクティブユーザーは現在75万人であることを発表している。

 「最初の1年間はとても素晴らしいもので,お客様がこのエンジンで何をしているのか,どれだけの人がUnreal Engine 4からUnreal Engine 5に移行したのかを見るのは,本当に素晴らしいことでした」と Penwarden 氏は語る。「できるだけ簡単に移行できるように努めましたが,これほど多くのデベロッパが,移行に時間とエネルギーを費やす価値があると考えてくれたことは,本当に素晴らしいことだと思います」

 「最も難しい問題は,次に何をどのような順序で行うかを決めることでしょう! やりたいことがたくさんあるのです」

GDCで行われたEpicのElectric Dreamsデモでは,最初の人工的なアートディレクションに基づき,フォトリアルな葉やより自然な要素を生成できる新しいプロシージャルツールに焦点を当てていた
フォトリアリズムから銀幕へ:Unreal Engine 5の次なる目標は?

 ステージで新しいプロシージャルツールを紹介したとき,Penwarden氏は,プロシージャルシステムがいかに環境に生命を吹き込むことができるかが重要だと語った。しかし,人為的な要素は常に必要でもある。我々は生成型AIへの思いとその課題について話を聞いた。

 「クリエイティビティという人間的な要素は常に必要です」と氏は語る。「ツールは人間がより表現力を高めるのに役立ち,非生成型AIツールのような異なるタイプのAIツールは……アーティストがより簡単に創造性を表現できるようにするための強力なツールになる可能性がたくさんあります」

 さらに氏はこう付け加える: 「AIが学習するために使用されるあらゆる種類のデータは,倫理的に調達される必要があると考えています」

フォトリアリズムから銀幕へ:Unreal Engine 5の次なる目標は?

今後10年で,あらゆる形態のエンターテインメントが1つの溶鉱炉に統合されると考えています -Kim Libreri氏

 Epic GamesのCTO Kim Libreri氏は,生成型AIの議論に参加し,人間の創造性に取って代わるものではないことに同意している。

 「そして,人がいなければ存在しないものでもあります」と氏は語る。「しかし,ツールとしては,アーティストにとっては,どちらかといえば,より創造的になるよう人々を鼓舞するのに役立つと思います。機械が生み出せないものは何でしょう? どんな新しいレベルの芸術性,アートフォーム,ストーリーテリングが可能になるのでしょうか?」

 機械が生み出せるものといえば,GDCでのEpicのプレゼンテーションでもう1つ印象的だったのは,Metahuman Animatorだ。2年前,EpicはMetahuman Creatorを発表し(関連英文記事),1時間以内に高忠実度の人間キャラクターを作れるようにすることを約束した。Libreri氏は壇上で,それ以来,100万人のユーザーによって400万人のキャラクターが作成されたことを紹介した。

 Metahuman Animatorは,その続編として,わずか数分でアニメーションキャラクターを作成することを約束している。ステージ上のデモでは,携帯電話で撮影した女優Melina Juergens氏の数秒間の映像が,わずか数クリックでそのアニメーションバージョンにつながることが示された。

 デジタルヒューマン技術担当副社長のVlad Mastilovic氏は,「Metahumanには長期的な計画があります」と語る。「最初のコンセプトは10年前に描かれたもので,アニメーターは常に計画に入っていました。というのも,超リアルなキャラクターを作るのも大事ですが,それをアニメーション化するのも重要な要素だからです」

 「結局のとこころ,デジタルヒューマンに関して言えば,実際に全体の最終的な品質を決定するのは,一番弱いコンポーネントの部分なのです。レンダリングは数年前に非常に良くなり,テクスチャなども良くなりましたが,アニメーションは常に難題でした。なぜなら,静止画が動き始めると,その時点で幻想が壊れてしまうからです」

 「Metahuman Animatorの重要なイノベーションの1つが,このMetahuman DNAファイルです。これは同時にキャラクターリグであり,アニメーションソルバーでもあります。リグであれば,何らかのベースとなる要素からできていますので計算して,最終的な表現にします。
しかし,その表現がどのように見えるべきなのかという最終データもあれば,それを基本的な要素に逆解決することもできるのです。つまり,そういう仕組みになってて,DNAは,まさにその両方を解き放つ鍵なのです」

Metahuman Animatorは今夏発売予定だ
フォトリアリズムから銀幕へ:Unreal Engine 5の次なる目標は?

 プロシージャルツールやMetahumans,あるいはそれ以外でのEpicの進化は,映画とゲームの融合が進んでいることを考慮しており,同社のエンジンは,映画やテレビ業界の大作でますます使用されるようになってきている。Cowley氏はGDCで,これまでに550以上のテレビや映画のプロジェクトがUnreal Engineを使用して制作されたことを明らかにした。

 「(Epicは)業態として大部分はゲームメーカーですが,残りの大部分は映画産業に由来します」と20年間映画界で活躍して10年前にゲーム界に転身したLibreri氏は語る。「我々の多くは,この2つの業界で同じツールを使っています。映画業界は,CGを使ったフォトリアルな映像ではある種のパイオニアであり,そして我々はゲーマーが常により美しい映像に関心を持っていることは知っています。しかし,写実的でなければならないというわけではありません。Fortniteはフォトリアリスティックではありませんが,非常に高品質な(画像の)恩恵を受けています」

 「そして我々ができたのは,たくさんのテクニックを取り入れることでした。その技術をリアルタイムに変換し,実際に改良していくのです。我々の多くは,映画ビジネスやゲームビジネスに携わってきたため,その直感が自然と身に付いているのです。そして,今後10年の間に,あらゆる形態のエンターテインメントが1つの溶鉱炉に統合されると,我々は本気で信じています。IPを作り,キャラクターを作り,環境を作り,ゲームになり,映画になり,体験になり,何ができるかは誰にも分かりません! 我々はこのことを理解し始めているのです」

何年か前は『映画用にどのようにスケールアップするか』というようなことはあまり考えてられていませんでしたが,現在では,それがUnreal Engineの開発方法のまさに中核となっています -Nick Penwarden氏

 Penwarden氏は,このことは常にEpicの頭の片隅にあるものだと語る。Unrealは,モバイルの小さなゲームから映画の大作まで,幅広く対応できるような,スケールアップ,スケールダウンの機能を備えている。

 「エンジンを開発する際に,我々は常にビジネスのスケーラビリティについて考えています。家庭用ゲーム機ゲームを作って携帯電話で動かすだけでなく,その技術を映画にも使って,映画のようなクオリティを実現するためのツール,技術,アルゴリズムを提供するにはどうしたらいいのでしょうか?」

 「何年も前に Xbox 360 のゲームを作ることだけに集中していたのであれば,『これを映画用にどうスケールアップするか』ということはあまり考えなかったと思いますが,現在では,Unreal エンジンの開発において,それが非常に重要な要素になっているのです」

 そして,映画への関心の高まりは,Metahuman Animatorのビジョンの中核でもあるとMastilovic氏は付け加える。

 「映画とゲームが混在する未来がやってきます。映画を見てから,ほとんど同じように見えるゲームをプレイできるようになるかもしれません」と氏は語る。「そのためには,俳優がその空間に存在できるようにする必要があるのです。インタラクティブなメディアに関しては,その3D空間に変換する必要があります」

 氏は続けて 「我々はこの問題を解決したわけではありませんが,それなりの品質でそれを実現できます。しかし,我々にとってより重要なのは,他の誰もが同じことができるようにすることであり,1人の俳優のために何百万ドルも費やす必要がないようにすることだと思います。Metahumans Animatorは,その一環だと考えています」と語る。

 ゲーム業界は,映画とゲームの融合を肯定的に捉えているようだが(少なくとも技術的な観点からは),映画産業がインタラクティブな媒体に大きな関心を寄せているかどうかは,まだ分からない。我々は,映画がゲームにあまり興味がないのではないかと一同に聞いてみた。

 「ああ。それは関係ないと思いますよ」とLibreri氏は反応する。「重要なのは,消費者だと思います。多くのテレビ番組で,それを目の当たりにしてきました。The Last of Usを見てみなさい,あのゲームを作った人たちによって大成功を収めたんですよ。では,映画ビジネスはどうかというと……それは人それぞれです。古いタイプの映画制作者の多くは,直線的なストーリーを語ることに執着しています。

Vladimir Mastilovic氏
フォトリアリズムから銀幕へ:Unreal Engine 5の次なる目標は?
 「しかし,今,ビデオゲームをする人の割合を考えると……。新しい世代の映画監督たちは,単にオープンなだけでなく,あらゆるメディアで自分の語る物語を探求したいと願っています。ですから,次の世代では,クロスオーバーが自然に起こるようになると思うのです。新しいタイプのクリエイターが登場することになるでしょう」

 最後に,Libreri氏,Penwarden氏,Mastilovic氏の3人に,Epicの今後の展望を聞いた。

 「我々は,フォトリアリズムへの歩みを続けていくと思います」とPenwarden氏は語る。「それは,Epicの文化に組み込まれているものです。私は,アーティストが可能な限り技術的な詳細を気にすることなく成功できるような,より優れたツールを提供するために,統一されたツールセットを構築し続けることにとても興味があります」

 Mastilovic氏は,Metahumansに関する限り,彼らのミッションはフォトリアリズムを実現するだけでなく,データセットの多様性を実現することだという。そのために「地球上のほとんどの人,すべての人を表現できるようにします。これは,信じられないほど難しいことです」と語っている。

 「そして,人々がMetahumanになることを可能にしたいですね」と氏は付け加える。「将来的には,未来のデバイスで数枚の画像を撮影するだけで,人々がMetahumanになれるようになるといいですね。しかし,最終的には行動のモデル化も行いたいと考えていて,それによってこのバーチャルな世界に非常に興味深い没入感が得られると思います。NPCのような存在ではなく,知性を持ったエージェントのようなキャラクターが,あなたの周りにいたら。それはとても素晴らしいことでしょう」

Travis ScottやAriana Grandeと行ったコンサートは,可能性の氷山の一角にすぎません -Kim Libreri氏

 これはもちろん,EpicのGDCショーケースの中核をなしていたメタバースのビジョンにつながるものだ。Saxs Persson氏は次のように語っている: 「メタバースには人間の住人が必要です。今回の基調講演では,それらがどのように1つのストーリーに変換されていくかを紹介しました」

 しかし,Libreri氏が指摘するように,それだけではない: 「メタバースエコシステムの面では,通常のビデオゲームとは異なるエンターテインメントの実験を始めたいと考えています。仮想世界だから,巨大だから,何百万人もの人を見たことのない方法で楽しませることができる可能性があるのではないかと(私は)思っています。Travis ScottやAriana Grandeと行ったコンサートは,何が可能なのかの,氷山の一角にすぎないのです」

 「プレイヤーが気になるスターに,その交流が意味のある形で近づいていけるようにしたいと考えています。バーチャルな世界に音楽を持ち込むことは,とてもクールなことで,無限の可能性があると思います。そして,実際の基礎となるエンジンが,人々の夢に対する見えない障壁にならないようにしたいのです」

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら