Yves Guillemot氏「我々は自らを誇れる企業であると思います」

UbisoftのCEOが有害な文化を修復する取り組みの継続についてやブロックチェーンベンチャーの最新情報,Tencentの最近の投資後に独立性を保持したことについて言及した。

Yves Guillemot氏「我々は自らを誇れる企業であると思います」

 「我々は,すべての人にとって包括的で,やりがいがあり,尊敬に値する職場を確保したいと考えています。確かに我々はつまずき,それを認めています。しかし,その過程で多くのことを学び,有意義な進歩を遂げました」

 UbisoftのCEOであるYves Guillemot氏は,パリの本社で世界中のジャーナリストを前に語っている。このイベントは、今後数年間の目標を描くための5つのプレゼンテーションのうちの1つだ。「独自のゲームエンジンの改良,クラウドコンピューティングへの投資,スタジオ間の協力体制の強化,サブスクリプションサービスの拡大,そしてAssassin's Creed, Far Cry and Tom Clancy を10億ドル規模のマルチメディアフランチャイズに育て上げることです」

 しかし,未来に目を向ける一方で,過去にも取り組む必要があると同社は認識している。

 GamesIndustry.bizは,Guillemot氏の講演の直後に,2020年に起こった同社に対する疑惑,つまり,多くの場合,指導的役割や影響力のある立場にあるスタッフのさまざまなメンバーが虐待,差別,嫌がらせなどを行っていると非難されて以来初めてインタビューの機会を得た。

 「最初に起こったときはショックでした」と氏は語る。「自分たちは正しいことをしていると思っていましたが,改めるべき点がいくつもあることに気づきました。そこで,二度とこのようなことが起こらないよう,何人かの従業員の仕事を減らし,さまざまな方面で迅速に対応したのです」

 「また,何か問題があれば,匿名で相談できるシステムを導入しました。そして,その情報を,何が起こっているかを分析,調査し,解決策を見つけることができる独立した会社に送られるようにしたのです。我々は,本当に存在するすべてのものを見て,我々ができる最善の方法でそれらを解決することを検討していました」


Ubisoftで起こったこと


 2020年夏,Ubisoftは,虐待者を匿ったという非難にさらされた数あるゲーム会社の1つだったが(関連英文記事),おそらく最も目立つ会社でもあり,特定の個人による影響が最も広く共有された企業でもあった。この疑惑を受けて,クリエイティブディレクターのAshraf Ismail氏(関連英文記事)とPRディレクターのStone Chin氏(関連英文記事)が,性犯罪の主張に関する調査の結果,同社を解雇された。

 編集・クリエイティブサービス担当副社長Tommy Francois氏(関連英文記事),Serge Hascoet氏(関連英文記事),Ubisoft Canadianスタジオ代表Yannis Mallat氏,グローバル人事部長Cecile Cornet氏など(関連英文記事),複数の主要リーダーがさらなる不正疑惑に直面し,会社を去った。Cornet氏が所属する部門もまた厳しい監視の目にさらされた。フランスの新聞Libérationは,性犯罪や有害な職場文化に関する事件の多くが人事に持ち込まれたものの,対処されなかったか,完全に却下されたとする詳細な報道を行った(関連英文記事)。

 1年後,フランスの別のパブリッシャLe Telegrammeは,Ubisoftが職場文化の問題に対処するために行った変更はほとんど影響を与えなかったと報告したが(関連英文記事),Guillemot氏はこれに対し,パブリッシャが「かなりの進展」をしたと主張する声明で反論している。

我々は迅速に行動し,何人かの仕事を排除し,二度とこのようなことが起こらないように,多くの面で行動を起こしました -Yves Guillemot氏,Ubisoft

 当時,氏は1万4000人以上の従業員が記入した評価と匿名のアンケート,そして社内の問題をよりよく理解するためにフォーカスグループとリスニングセッションに参加した数千人のことを指摘した。また,Accentureのコンサルタントを招き,人事方針と手続きを見直した結果,全従業員が署名しなければならない公正な行動規範を新たに制定した。

 チーフピープルオフィサーのAnika Grant氏(関連英文記事),職場文化担当のLidwine Sauer氏(関連英文記事),グローバルダイバーシティ&インクルージョン担当副社長のRaashi Sikka氏(関連英文記事)など,新しい視点を取り入れて,リーダーシップを多様化するために重要な人事が行われた。ローカルスタジオの経営陣も一部入れ替えられ,元BBCの重役Lisa Opie氏がUbisoft ReflectionsとLeamington Studiosのマネージングディレクターに就任した(今年初めに話を聞いた)。

 先週,Grant氏とSikka氏は,Ubisoftのサイトに,採用と社内人材開発の両方を通じて多様性を改善する5か年戦略や,2万人のスタッフの多様性をよりよく理解するための自発的な自認プログラムなどの追加導入イニシアチブについてのブログ記事を投稿したばかりだ(関連英文記事)。

 このブログの記事と,その後行われたオペレーション担当上級副社長Marie-Sophie de Waubert氏との会話の両方から,この取り組みが継続的なものであることが分かる。「もちろん,これだけでは十分ではありません。そして,Ubisoftの外部批評家も同意見です」

Ubisoftはおそらく2020年に虐待者を匿ったという疑惑に直面した最も著名な企業であり,現在でもその問題に対処する方法を見いだしている
Yves Guillemot氏「我々は自らを誇れる企業であると思います」

 今週,Assassin's Creed ファングループAC Sisterhoodとのインタビューで(参考URL),Activision Blizzardが同様の疑惑で独自のスキャンダルに直面した頃に設立された現・元従業員のグループ,A Better Ubisoftは,パブリッシャがもっとうまくやる必要があると主張している。解雇されたり退任した人たち全員に対して,他にも虐待者 ―あるいは虐待者を庇った人たち― が会社に残っているだけでなく,その後昇進を果たしていると同団体は主張している。

 A Better Ubisoftは,Ubisoftの労働条件を改善し,パブリッシャとのオープンな対話を確立するために,ソーシャルメディアを利用して1年以上にわたって公にキャンペーンを行っており,今回のインタビューは,今夜のForwardプレゼンテーションを前にUbisoftを取り巻く論争を思い起こさせるタイミングであった。


我々は多くのことをやってきており,自分たちを誇りに思える会社だと思います。我々は常にもっと良くできます -Yves Guillemot氏,Ubisoft

 批判が続く中,Guillemot氏は,チームがUbisoftの状況を正すために努力を続けていることを断固として表明している。「我々は多くのことを成し遂げており,自分たちを誇りに思える会社だと思います」と氏は語る。「我々が常にもっと良くできるので,あれを直すべきだ,これを直すべきだと言っている人たちは,我々がもっと良くするのを助けてくれているのです。我々は批判を受け入れ,それが正当な指摘であれば,それを解決するために追及しています」

 氏は付け加えて「Ubisoftはすべての疑惑を極めて真剣に受け止めています。具体的な事案についてコメントすることはできませんが,報告書に名前が挙がっていてUbisoftに残っているチームメンバーは,そのケースを厳密に検討し,疑いを晴らすか,適切に懲戒処分を受けており,その進捗をサポートし監視するための個別の行動計画を与えられていると断言できます」と語っている。

 A Better Ubisoftはまた,会社の文化の将来についてのオープンな議論にまだ招待されておらず,パブリッシャは代わりに従業員調査に頼っていると主張している. Ubisoftの広報担当者は,これは不正確であると語っている。

 「全社的な調査の開始は,従業員の見識が我々の行動計画に反映されるようにするために取った多くの措置の1つです」と彼らは語る。「さらに,グローバルとローカルで定期的にタウンホールやオフィスアワーを開催し,社員リソースグループは,四半期ごとにグローバルERGリーダーと会うYvesを含め,リーダーシップチームと頻繁に議論しています」

 「また,経営陣は各地域の従業員代表と定期的に意見交換を行い,取締役会には3名の従業員代表が選出されています。我々は,チームメンバーとの有意義な議論に参加することを約束しており,彼らのフィードバックが我々の進むべき道を形作ることを確実にしていくのです」


Guillemot氏のリーダーシップ


 Guillemot氏自身は,別の形で批判を浴びている。このような問題を抱える企業のトップに立つ多くのリーダーと違って,なぜ彼はCEOの座を退かないのかという疑問が投げかけられているのだ。氏は兄弟とともに会社を設立した2年後の1988年からCEOの座に就いている。もし,氏のリーダーシップのもとで,このような有害な行動が起こっているのに,なぜ氏が回復のための努力をリードするのだろうか? 

 「Ubisoftを成功に導いた要因の1つは,ここで働いていた人たちの多くが非常にポジティブな経験をしていたことです」と氏は語る。「そのおかげで,他の優秀な人材が採用され,成長することができたのです。私が会社を設立したときの目標は,常に自分らしくいられる場所,非常に頭のいい人たちに囲まれた場所,業界で最高のゲームを自由に作れる場所を作ることでした」

 「それがUbisoftの社員が経験していることではないことに気づいたとき,私はすぐに何が問題で,どうすればそれを解決できるかを理解することに集中しました。そして,この状況を打開し,元の状態,つまり,社員が自分らしくいられる会社であり,最高のゲームを作るために集まってくる会社に戻すことが私の責務であることは明らかだったのです。それが,私が当初から抱いていた哲学です」

人々が自分らしくいられる会社に戻すために,私はこの状況に対処する責任があったのです -Yves Guillemot氏,Ubisoft

 「我々がその基準に達していないことに気づいたとき,私は本当に不安になりました。ですから,私にとっての主な焦点は,あらゆる問題を解決し,再び最高の職場となるように会社を適応させることでした」

 Guillemot氏は,我々との対話を通じて,Ubisoftを,人々が働きたいと思うような場所に戻すことについて話してくれた。それが,過去30年間,Ubisoftが成功を収めてきた理由の1つだと氏は語る。

 「人々はUbisoftで良い経験をしました」と氏は語る。「それが我々の採用方法でした。Ubisoftでは,自分らしく,賢い人たちに囲まれて,自由に,業界最高のゲームを作ることができるようにする,それが,我々の会社づくりであり,会社で感じてほしいことだったのです」

 「それが実現できていないことに気づいたとき,私がその状況に対処するのは当然のことです。長い間,我々がやってきた状態に戻ることができました。この会社では最高のゲームが作れるということで,人が辞めても戻ってくるのです。それはここが最高のゲームを楽しく作るために最高の環境だと感じてくれるからです」

 この最後のコメントは,先のイベント参加者への挨拶で,Ubisoftがこの1年で採用した4000人のうち,600人以上が元社員からの出戻りであることを報告したときと同じものだ。

 Ubisoftを取り巻く疑惑や反感は,これらの新入社員の目に触れないはずはないが,それでもパブリッシャが雇用主として彼らを取り込むことができたのは,そのためだ。イベント中,そのような新入社員の1人に話を聞いてみた。Ubisoftのエディトリアル担当バイスプレジデントで,入社1年目を迎えるFawzi Mesmar氏だ。有害性への非難が集中する職場に入ることについて,どう考えているのだろうか。

 「このことについては,採用プロセスを通じて皆に話をしました」と氏は語る。「会社に対する情熱や,多くの疑惑を真摯に受け止めて,それに対処しようとする努力を目の当たりにしました。このことは,私にとって非常に刺激的でした。彼らは本気で,この問題に取り組むために多くの努力を払っており,前向きな変化をもたらすためのワークフローを導入しているのです」

 「そのため,私は入社を決めました。なぜなら,これは社内の多くの人に影響を与えるクールな変化であり,できることならその変化にポジティブに関わりたいからです。私の個人的な価値観に合ったスタジオで,ポジティブな影響を与えられるのなら……。私は,人々がより良いゲームを作る手助けをしたいので,仕事でそれができるのであれば,それは天国のような一致です」

 「入社以来,まさにそのための力をもらっていると感じている。Igor(Manceau氏,チーフクリエイティブオフィサー),Yves,そしてチームと密接に仕事をし,導入されたプロセスや採用された人材を見て,まさにそのとおりだと感じています。入社前には見ることのできない,さまざまなことが起きています。本当に素晴らしい経験でした」

みんなで良い経験をすれば,より革新的になり,よりリスクを取るようになります。なぜなら安全だと感じるからです -Yves Guillemot氏,Ubisoft

 先週のブログでは,Ubisoftが企業文化の改善に取り組んでおり,過去2年間パブリッシャを取り巻く話題を独占してきた非難から前進していることをあらためて示した。Guillemot氏は,スタッフが「Ubisoftで働くとき,本当にくつろげる」ことを望んでいると語り,社内の問題に対処するためのさらなる提案にも前向きであると付け加えている。

 「我々は,我々全員がより良い経験をするために役立つ,あらゆるアイデアや,どこかで発明された新しいものを常に探しています」と氏は語る。「より良い体験ができれば,より良いゲームを作ることができます。安全だと思うからこそ,より革新的で,よりリスクを負うことができるのです」

 これに関する最後の課題は,企業文化を修復する努力と,ビジネスを運営することのバランスをとることだった。今回の疑惑を受け,Ubisoftでは Ubisoftが,1か月も経たないうちに発表した消費者向けのUbisoft Forwardで,この疑惑を取り上げなかったことについて議論があり,Guillemot氏は,続く9月のプレゼンテーションに先立って短いビデオ声明を発表したほどだった。現在も一部の消費者はUbisoftの発表にスキャンダルを持ち出しており,現在進行中のA Better Ubisoftキャンペーンも同様だ。しかし,Guillemot氏はパブリッシャが内部改善と日常業務の両方に対処できると確信している。

 「我々は人間ですから,これからも意見が対立することはあるでしょう。だからといって,我々の仕事が続けられないというわけではありません」と氏は語る。「Ubisoftの社員は皆,プレイヤーに愛される体験を作りたいと願っています。自分の作品が話題になり,成功するのを見たいと思っています。我々は,そのような素晴らしいゲームを作るために集まっているのですから,ゲームを改善し,宣伝し,プレイヤーの手元に届けることを続けるのは当然のことなのです」

 「我々の文化を向上させ続けることと,プレイヤーのために素晴らしいゲームを開発し続けること,この2つを同時に行うことができると確信しています」


ブロックチェーンブレイクポイント


 Ubisoftがこの1年で直面した論争は企業文化だけではない。パブリッシャはブロックチェーンとNFTとの戯れで怒りを買っている。

 同社は,戦略的イノベーションラボがTezosブロックチェーンエコシステムのノードになるなど(関連英文記事),早い段階から賛否両論のテクノロジーに関与する数少ないAAA企業の1つである。そして,その最も顕著な取り組みは,Ghost Recon: BreakpointにNFT(Ubisoftでは「Digits」と呼んでいる)を追加する動きだった(関連英文記事)。このニュースは消費者とマスコミの両方から批判を浴び,Ubisoft社内の一部スタッフからも混乱が生じた(関連英文記事)。

 Ubisoft Strategic Innovations LabのVP Nicolas Pouard氏はインタビューで,NFTを否定する人たちは単にそのメリットを「理解していない」と述べ(関連英文記事),Ubisoftがこのモデルの実験を続けることを確認した。それにもかかわらず,4月にはBreakpoint用にトークンを作成しない(関連英文記事)ことが発表された(最初に追加されてからわずか3か月後のことだった)。

QuartzはUbisoftがNFTを取得・販売するためのプラットフォームで,最初のトークンはGhost Recon: Breakpointに追加された
Yves Guillemot氏「我々は自らを誇れる企業であると思います」

 その後,DigitsやQuartz,つまりNFTを取得・取引するために設計されたUbisoftのプラットフォームについては,ほとんど情報がない状態だ。また,パリのイベントでGuillemot氏が,クラウドコンピューティング,拡張現実,仮想現実など,ゲームと自社のビジネスの両方の未来を定義するとUbisoftが考える技術についてメディアに語った際に,ブロックチェーンについて言及がなかったことも注目された。

 その直後の質疑応答で,我々の姉妹サイトであるEurogamerが最新情報を求めて,Guillemot氏が回答している。「我々は本当にすべての新しい技術に目を向けています。我々は,クラウドや新世代のボクセルにとても注目しており,Web3の機能についてもすべて検討しています。最近,いくつかのテストを行い,ビデオゲームの世界でどのように使用できるか,何をすべきかについて,より多くの情報を得ることができました。現在,いくつかのゲームでテストを行っており,それが本当にプレイヤーのニーズに応えるものなのかどうかを確認する予定です。しかし,我々はまだ研究モードと言えるでしょう」

 我々自身はGuillemot氏に質問した際には,メディアやUbisoftがターゲットとしているエンドユーザーからの反発を受けながら,こうした研究,とくにBreakpointのような公開テストを行うことの難しさについて聞いてみた。

 「我々の,研究していますという言い方がよくなかったのかもしれません」と氏は認めた。「しかし,お客様に本当に有益なものを提供できるようになれば,それをお客様にお届けするつもりです」

 「会社として,我々は早くからVRに参入し,早くからWiiに参入していました。うまくいくこともあれば,うまくいかないこともありますが,常に革新的で面白い新しい体験をプレイヤーに提供できるようにするためです。会社の目標は常に最高の体験を作り出すことであり,新しいテクノロジーは常にそのために有効です。なぜなら,競争が少なく,人々は新しい技術で新しいことを試すことに興味があるからです」


(ブロックチェーンを)研究することは,立ち上げることを意味しません。この業界は急速に進化しており,それがもたらす影響については非常に慎重に考えています -Yves Guillemot氏,Ubisoft

 この新しい技術の大きな論点は,もちろん,環境への影響だ。これは,Ubisoftの持続可能性を促進するための他の取り組みと相反するものである。同社はRiders Republic 内で気候危機を意識したイベント(デジタル気候デモを含む)を実施し(関連英文記事),役員のボーナスはパブリッシャの二酸化炭素排出量削減と連動している。また,Guillemot氏のパリ講演では,Ubisoftが2018年に買収したサーバー会社I3Dに供給される電力の95%が再生可能エネルギーであることに触れていた(サーバーファームから発生する熱は,近くの建物を暖めるために回送されている)。では,Ubisoftはどのようにしてブロックチェーンの実験と地球を救う試みの両方を行うことができるのだろうか。

 「研究することは,立ち上げることを意味しません」とGuillemot氏は語る。「この業界は急速に進化しており,それがもたらす影響については非常に慎重に考えています。多くのものがそうであるように,初めのうちはうまくいかなくても,他の新しい技術と同じように,正しい方法が見つかるでしょう」

 Ubisoftの広報担当者は,分散型技術も同社の環境に対するコミットメントの例外ではないとし,ブロックチェーンの研究をリードする戦略的イノベーションラボが,そのすべての活動において企業の社会的責任チームと協力していると付け加えている。

 また,エネルギー消費の多さは,主に「proof of work」プロトコルに基づく第一世代のブロックチェーンにおける問題であり,Ubisoftは,より消費量の少ない「proof of stake」ブロックチェーンでの作業に注力していると,広報担当者は語っている。

 「我々の技術で最初の大規模な実験であるUbisoft Quartzは,電子メールを送信するよりもトランザクションあたりのエネルギー消費量が少ないproof of stake Tezosブロックチェーンに依存しています:標準メール1通はCO2 4gに相当しますが,Tezos上のトランザクションはCO2 2.5g に相当します」


Tencentとのつながり


 また,質疑応答では,Tencentが最近Guillemot Brothers Ltd.に投資したこと(関連英文記事)についても言及された。Ubisoftの株式を5%保有していた中国のハイテク企業は,Guillemot家の事業の49.9%の株式を取得し,Assassin's Creedのパブリッシャへの出資比率を10%に引き上げるオプションを獲得したのだそうだ。

 Guillemot氏は,出席したジャーナリストに対して,兄弟の会社は依然として兄弟自身が51%を支配していることを強調した。この契約は,将来的にTencentとのさらなるビジネス,とくにUbisoftよりも成功を収めている中国企業であるモバイル分野でのビジネスを可能にするためのものだと語る。

 「我々は,パートナーシップを拡大したかったのです」と氏は語る。「ビジネスを成長させ,より多くの収益を上げ,我々のブランドを世界のあらゆる場所に浸透させたいと考えています。モバイルでAAAゲームを作るのは本当に難しいことですので,社内でいくつか作っていますが,Tencentのようなパートナーとも協力して作っています」

我々がやりたいことをやる権利を持つ(独立性を保つ)ことができるようにするのは,Tencentとの大きな交渉課題でした -Yves Guillemot氏,Ubisoft

 しかし,この出資のニュースは,Ubisoftの株価を15%下落させることになった。このことについて尋ねられたGuillemot氏は,「おそらく,会社の手っ取り早い売却のために買う人のインセンティブが少なくなった」からだと示唆している。

 このニュースに関する議論では,TencentがUbisoftを買収するためのステップであることが示唆されているが,Guillemot氏は,パブリッシャは「完全に独立している」ことを望んでいると主張し,次のように付け加えた。「我々が望むことを何でもできる権利を持つことができるようにすること。それがTencentとの大きな交渉課題でした」

 さらに氏はこう続ける。「株価の下落は,我々が1つのパートナーとしか取引していないと思われていることが原因ですが,そうではありません。我々は誰に対してもオープンですが,短期的,中期的には,我々のスタジオで達成できることを示し,業界で最高のゲームを作ることによって株価を向上させることが目標です」

 Twitterでは(参考URL),Kantan GamesのアナリストSerkan Toto氏が株価下落に関する自説を披露し,パブリッシャが変化を示唆するパイプラインがほとんどない凡庸なゲーム,ブロックチェーンとeスポーツ事業の苦戦,モバイルゲームの不足,企業文化のスキャンダルに苦しんでいることを示唆している。

 Guillemot氏にこれに対する考えを尋ねると,同氏は同社の主力シリーズ最新作であるAssassin's Creed Valhallaが初めて10億ドルの収益を達成し,昨年のFar Cry 6も好調なセールスを続けていることを指摘する。また,エクストリームスポーツタイトルのRiders Republic,一風変わったストラテジータイトルでメジャーIPとのクロスオーバーを果たしたMario + Rabbids,最近刷新された教育ツールのRocksmith+,継続的に成功を収めているFor HonorやRainbow Six Siege,Just Danceなど,パブリッシャのラインアップがかつてなく多彩になっていると主張した。

 「我々は,プレイヤーの声に耳を傾け,すべてのゲームが革新的であることを確認しています」と氏は語る。「モバイルでは,それが実現されています。COVIDのせいで少し時間がかかりましたが,人々が気に入るような新しいゲームがたくさん出てきています」

Guillemot氏は,Tencentの投資により,Ubisoftは中国のハイテク企業,とくにモバイルでより多くのビジネスを行うことができるようになったと語る
Yves Guillemot氏「我々は自らを誇れる企業であると思います」

 しかし,Tencentによる買収は,Ubisoftがかつて直面した危機を思い起こさせる。Vivendiが経営権を握ろうとしたことだ(関連英文記事)。フランスのマスメディア企業であるVivendiは,Ubisoftの資本金の27.3%を保有するまでに順調に株式を拡大しており,これが30%に達していれば買収を申し入れざるを得なかったろう(皮肉なことに,VivendiがUbisoftの全株式を売却したとき,Tencentは最初の5%を購入したのである:関連英文記事)。

 パブリッシャにとっては緊迫した時間であり,E3 2018のプレゼンテーションで,笑顔のメンバーに囲まれたGuillemot氏が,Ubisoftは今後も誇りを持って独立し続けると宣言した瞬間で最高潮に達した。

我々はプレイヤーを驚かせるために,新規IPに一生懸命取り組んでいます。そのための最良の方法は,独立した存在であることが非常に多いのです -Yves Guillemot氏,Ubisoft

 Q&Aセッションでは,Eurogamerが「その気持ちは今も変わらないのか」と質問し,Guillemot氏が次のように回答している。「そうです。我々は,Ubisoftの全社員に長期的な展望を与え,彼らが本当に業界でベストになると思うゲームを作れるような状態にしたいと思っています。ですから,他社との提携や移動,一緒に何かをすることがないように,常に競合の中で自分たちがどの位置にいて,何を達成できるかをチェックしているのです」

 「我々の第一の目標は,自分たちの運命を自分たちで切り開くことです。そのために新しい技術に投資し,その技術を使って新しいブランドを作ることを検討しています。我々の目標は,我々のブランドとチームが業界で最も認知されるようなツールを持つことによって,この業界で成長することです」

 Guillemot氏とのインタビューを終えるにあたり,我々は,業界再編の時期に独立を保つことがより困難なことなのかどうかを問うた。AAAゲームのライバルであるActivision BlizzardもMicrosoftに買収されようとしており,AmazonやDisneyといった巨大企業がElectronic Artsを買収しようとしているとの噂も絶えない。

 Guillemot氏は,改めてUbisoftの目的,すなわち「新しく革新的なゲームを作ること」にポイントを戻す。

 「我々はプレイヤーを驚かせるために,新しいIPに一生懸命取り組んでいます」と氏は締めくくる。「そのための最良の方法は,多くの場合,独立することです。自分が何をしたいかを決めることができるからです。ですから,我々はその可能性を支持します」

開示情報:Ubisoftは,このイベントに関するGamesIndustry.bizの旅費と宿泊費を負担した。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら