Limit Breakのトレーニングコンサルタントで研究者のCinzia Musio氏が，良いメンターの条件と，メンター経験を最大限に活用する方法についてアドバイスを提供する。

　メンター制度は，キャリアアップを支援する優れた方法として常に注目されていた。Oprah Winfrey氏（※米テレビの人気司会者）がMaya Angelou氏（※詩人，公民権活動家）の指導を受けたことを語るなど，大物ビジネスリーダーの中には，その成功の一因をメンターに求める人もいる。

　また，メンターシップは企業の多様性を高める方法としても注目されており，いくつかのメンタープログラムでは，管理職での彼らの割合を9％から24％に高めることに成功したと報告している（参考URL）。

　Limit Break Mentorship（参考URL）は，英国のゲーム業界における多様な才能を支援するために設立され，少数派のグループの人々とのつながりを促進し，彼らのスキルとキャリアを成長させ，向上させるための支援を行っている。

　今年で4年めとなるが，非常に人気があり，この種のプログラムとしては英国で最大のものとなっている。参加者からは，メンターシップがメンターとメンティの双方にとっていかにやりがいのあるものであるかという声が常に聞かれる。この記事では，メンターとなることの意味と，メンターシップを成功させるためのヒントについて紹介する。

誰もがメンターになれる

　メンターというと，長年にわたってスキルを磨き，その道のエキスパートであるビジネスリーダーをイメージすることが多いだろう。しかし，そうではない。自分の経験を他の人に伝えたいという熱意があれば，誰でもメンターになれるのだ。

たとえあなたがその業界に入ったばかりだとしても，その業界に入ろうとしている人を指導し，あなたの経験から得た教訓を共有することは可能だ

　たとえば，あなたが最近この業界に入ったばかりだとしても，この業界に入ろうとしている人を指導し，あなたの経験からの教訓や知識を共有できる。

　このサイクルを断ち切り，ゲーム業界のトップ層を多様化するためには，リーダー的立場の人が，多数派でないグループのメンターとなることが非常に重要だ。メンターシップはそのための素晴らしい方法であり，また，話す相手のグループを多様化することで，あなたが解決しようとしている問題に新しい視点をもたらすかもしれない。

時間をかける

　メンターシップを始めるにあたって，メンターシップはあくまでも人間関係であることを忘れないようにすることが本当に重要だ。

　最も成功するメンターシップは，メンターとメンティが，いきなりビジネスを始めるのではなく，お互いを知り，お互いの視点を理解するために時間をかけているものだと証明されている。そうすることで，2人ともずっと良くなるはずだ。

前もって計画を立てて構造を導入する

　メンターシップを始めるときは，メンティがそこから何を得たいかを理解するために，メンティと一緒に時間を過ごすようにしよう。

　メンターシップをどのくらいの期間続けるつもりなのかを理解することが重要だ（ただし，2人がそうすることに価値があると思えば，いつでも延長できる）。そして，メンティが達成したい主要な目標をいくつか定義し，ミーティングがどのように行われるべきかの大まかな内容を一緒に考えてほしい。

　あまりに厳しすぎるのもいけない。これは関係であり，方向性を変えるための余地を作る必要があるが，会話が脱線したときに軌道修正できるように準備しておこう。

会話のきっかけを作る

　あなたのメンティが最も気になることについて話すようにする最善の方法の1つは，単に， "何があなたの心にあるか？"，またはこの質問の任意のバリエーションを尋ねることだ。

これは関係であり，あなたは方向性を変更するためのスペースを持っている必要がある

　この質問をオープンにしておくことで，メンティに彼らの最大の関心事について話す機会を与え，彼らが望むところに話をもっていくことができる ― 先月した会話をそのまま続けたい誘惑に駆られることもあるので。

　あなたの役割は，メンティが気が散ったときに軌道修正し，会話を集中させることだ。

すべてのミーティングで無理をさせないこと

　これは，メンターシップで陥りやすい罠の1つだ。話し合うことがたくさんあり，すべてを解きほぐし，そのすべてについて話そうとしたくなることだろう。

　メンティに意図的に誘導するような質問をし，いくつかの重要な問題に集中するように仕向けることで，これらの問題を深く掘り下げ，どのようにアドバイスするのがベストかを理解するのに役立つ。

　そのための1つの方法は，3つのPを使うことだ。

• Project（コンテンツ自体の問題点）
• People（チームメンバー，上司，クライアント，顧客などに関する問題）
• Pattern（メンティが自分自身の邪魔をしていないか？）

あなたの後知恵を使う

　あなたは経験から，メンティが直面している問題を独自の視点でとらえることができる。あなたは似たようなことを経験しているかもしれないので，自分が何に直面し，それをどのように解決したかを説明する良い機会になるだろう。

　その違いや共通点を話し合い，あなたの経験からメンティの課題解決に活かせそうなことを見つけることができるのだ。

Cinzia Musio氏

　このように，後知恵を駆使して，相手が直面していることを重要視していない，あるいは相手の気持ちが妥当でないと思わせないことも重要だ。

　この問題には必ずアプローチし，共感をもって類似点を共有しよう。質問したいことがあれば，相手がどう感じたかを尋ね，なぜこれが重要だと思うのかを尋ね，相手の経験を認めてあげよう。

正直で透明であること

　信頼は築くのが難しく，壊すのは簡単だ。メンティは，あなたを信頼し，重要な情報を共有できると感じる必要があり，そうでなければ関係はうまくいかない。

　自分が失敗したところを話し，メンティに弱音を吐くことで，相手も同じようにできることを示し，あなたの援助が純粋に助けたいというところから来ていることを示すことができるのだ。相手に100％の注意を向けることほど信頼を築くものはない。だから，積極的に傾聴することを心がけてほしい。

　相手が話しているときに頷くといったボディランゲージも有効だ。これは，リモートでミーティングを行う場合，メンティと目を合わせることができないかもしれないので，とくに重要なことだ。

宿題をスキップする

　宿題は説明責任を果たすための素晴らしい方法のように思えるかもしれないが，メンティの仕事が忙しすぎるかもしれず，あなたと会うのが嫌になったり，罪悪感を感じることになるかもしれない。

　余分な仕事を与えるのではなく，前回持ち上がった問題に対してどれだけ進歩したかを頻繁に確認するようにしよう。

メンターシップは双方向に作用する

　メンターシップは，話す相手を多様化させ，自分も解決しようとしている問題に新鮮な視点をもたらす絶好の機会だ。

メンティが経験しているかもしれないことについて，自分自身を教育するために時間を費やすことを確認してほしい

　ミーティングにオープンマインドと正直さを持ち込み，自分も直面している問題について話すことで，メンティは他の方法では得られないような経験と洞察を得られるだけでなく，この問題を解決する手助けをしてくれるかもしれないのだ。

味方になる

　あなたは，自分が属していないかもしれない，少数派のグループから誰かを指導することになるかもしれない。自分自身の経験について話すとき，無意識の偏見や差別，あるいは異なる生活体験の問題から，自分の解決策がメンティに通用しない可能性があることを認めることが重要だろう。

　少数派のグループの人を指導するときは，オープンマインドでいること，共感をもって話し合いに臨むこと，また自分についての話が中心にならないようにすることが大切だ。可能であれば，自分の特権を利用して，メンティを積極的に宣伝し，彼らの声を増幅させるようにしよう。

　もし彼らと話しているときに間違いを犯した場合は，自分の間違いを認め，自分中心で話をしないようにしよう。単純に謝罪し，自分の犯した間違いを認め，それを解決するためにどのような行動を取るかを話し，次に進んでいこう。メンティが日常的に経験していることについて，自分自身を教育する時間を持つようにしてほしい。メンティに教育する重荷を負わせるべきではないのだから。

　どんな優れたメンターも，どこかで始めなければならない。もしあなたに熱意があり，業界の次世代の才能を支援し，投資したいと思うなら，メンターはあなたとメンティの両方にとって素晴らしい経験になる可能性を秘めている。

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Limit Breakは，英国のゲーム業界で働く，性別，志向，民族のいずれかに偏りがある人を対象としたメンターシッププログラムだ。Cinzia Musioは，英国で受賞歴のあるダイバーシティ＆インクルージョンの専門家で，交差性に焦点を当てたアプローチを行っている。Musio氏は，Limit Breakのトレーニングコンサルタントと研究者，Splash Damageのダイバーシティ＆インクルージョンアドバイザー，UK Games Industry Slackの管理などを担当している。

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