Epic Gamesが「Unreal Engine 5」を正式リリース。これまで以上にリッチなゲームの開発が可能に
北米時間2022年4月5日,Epic Gamesは,独自イベント「State of Unreal」に合わせて,ゲームエンジン「Unreal Engine 5」の正式版をリリースした。Unreal Engine 5は,PlayStation(以下,PS) 5やXbox Series X/S(以下,XSX)といった最新世代の据え置き型ゲーム機やPCの能力を引き出したグラフィックスのゲームやコンテンツを実現することと,中小規模の開発チームでも,大規模なチームでしか実現できなかったような高品質の体験を実現可能にすることに重点を置いたものである。
すでにUnreal Engine 5の主な特徴は,本誌でも様々な記事で報じており(関連記事1,関連記事2),プレビュー版も2022年2月にリリースされている。改めて,本稿でも簡単に紹介しよう。
「Nanite」(ナナイト)は,Unreal Engine 5におけるジオメトリエンジンであり,Epic Gamesは「仮想化マイクロポリゴンジオメトリシステム」と呼んでいる。最大の特徴は,超多ポリゴンのアセットを直接読み込んだうえで,最適化した低ポリゴンモデルをコンテンツ制作者が生成することなくゲームエンジンが利用できるという点にある。映画品質のアセットを使いながら,現実的なフレームレートのゲーム映像を実現するという,Unreal Engine 5の新要素における中核を成すものと言えよう。
現状のNaniteは,地形や柔軟に動いたりはしない物体の表現に使うものだ。しかし,Epic Gamesでは,将来的に樹木のように動く物体や,水のような半透明の表現にもNaniteを使えるようにしたいと検討しているそうである。
Naniteと並んで,Unreal Engine 5のグラフィックスに関する大きな特徴が,大局照明エンジンの「Lumen」(ルーメン)である。
Lumenは,高品質で自然なバウンスライティングをリアルタイムで計算できるため,開発者はエディター上で光源やジオメトリを動かして,ゲーム実行時のバウンスライティングを正確に確認できる。たとえば建物の破壊や,扉の開け閉めといった動きにも対応できる完全に動的なグローバルイルミネーションがリアルタイムで可能になるため,開発者は実行時にシーンを静的に作成しておく必要がないという。
なお,Lumenが発表された当時は,PS5やXSXのGPUが有するリアルタイムレイトレーシング機能に対応していなかったが,正式版ではハードウェアに機能があれば,それを優先して使うようになっている。もちろん,ソフトウェアベースでのレンダリングにも対応するので,ハードウェアによるリアルタイムレイトレーシング機能がないゲーム機やGPUでも,Lumenは利用可能だ。
グラフィックス面ではそのほかにも,NaniteやLumenと連携して動作し,描画負荷を軽減して適切なソフトシャドウを実現する「Virtual Shadow Maps」(仮想シャドウマップ)や,ソフトウェアベースの超解像(アップサンプリング)機能「Temporal Super Resolution」といった新要素も,Unreal Engine 5における見どころと言えよう。
「World Partition」は,オープンワールドタイプのゲーム制作作業を改善するレベルストリーミングシステムである。複数人の開発者が,巨大な1つの世界を構築しやすくするために,ワールド全体を自動で適切なサイズのグリッドに分割して,必要に応じたセルをロードできるという。また,1つのワールドから複数のバリエーション,たとえば昼と夜や,破壊前と破壊後といった異なるジオメトリを作成,管理することも可能となる。
Unreal Engine 5におけるアニメーション制作関連の新要素は,制作の効率化を促進するものを多数盛り込んでいる。キャラクターのアニメーションやリギング付けをするツール類は,Unreal Engine内で直接利用できるようになり,外部ツールと行き来する必要がなくなった。
また,既存のアニメーションを再利用しやすくする「IKリターゲッタ」,動きや地形に合わせてルートモーションの位置を調整できる「Motion Warping」といった機能も加わった。
Unreal Engine 5では,新しいサウンドエディタ「MetaSounds」も見どころの1つである。サウンドデザイナーは,マテリアルエディタのようなUIで,動的なデータ駆動のサウンドをゲームに結びつけることが可能となった。
たとえば,ある動作のタイミングタイミングを調整するときに,サウンドを直接結びつけるといった調整が,これまでよりも簡単にできるようになるわけだ。
これまでにない高品位のゲームやコンテンツを制作するとなると,コンテンツ内部で使われるアセットを,どうやって制作,調達するかは大きな問題となる。Epic Gamesは,Unreal Engine 5のリリース前からアセットビジネスの拡充を目指して,高品位の3Dモデルを提供するQuixelや,フォトグラメトリソフトウェア「RealityCapture」の開発元であるCapturing Reality,モデルデータの共有,販売プラットフォームSketchfabを買収していた。
Unreal Engine 5においても,Quixelのライブラリにアクセスしてアセットを閲覧,取り込むツール「Quixel Bridge」が統合され,ドラッグ&ドロップでプロジェクト内に取り込めるようになっている。
Unreal Engine 5に合わせて,Epic Gamesは豊富なサンプルの提供も行う。とくに,大きな話題を呼んだ「The Matrix Awakens: An Unreal Engine 5 Experience」の都市や車両を含むサンプルプロジェクトのリリースは,それだけで注目に値する。
また,Epic Gamesは,マッチメイキングサービスも含んだマルチプレイヤーゲームのサンプル「Lyra」も提供するとのこと。開発者はLyraをサンプルとして,独自のゲーム制作を行えるそうだ。
Unreal Engine 5を活用した新世代のゲームが多数登場してくることを期待したい。
すでにUnreal Engine 5の主な特徴は,本誌でも様々な記事で報じており(関連記事1,関連記事2),プレビュー版も2022年2月にリリースされている。改めて,本稿でも簡単に紹介しよう。
Nanite
「Nanite」(ナナイト)は,Unreal Engine 5におけるジオメトリエンジンであり,Epic Gamesは「仮想化マイクロポリゴンジオメトリシステム」と呼んでいる。最大の特徴は,超多ポリゴンのアセットを直接読み込んだうえで,最適化した低ポリゴンモデルをコンテンツ制作者が生成することなくゲームエンジンが利用できるという点にある。映画品質のアセットを使いながら,現実的なフレームレートのゲーム映像を実現するという,Unreal Engine 5の新要素における中核を成すものと言えよう。
現状のNaniteは,地形や柔軟に動いたりはしない物体の表現に使うものだ。しかし,Epic Gamesでは,将来的に樹木のように動く物体や,水のような半透明の表現にもNaniteを使えるようにしたいと検討しているそうである。
Lumen
Naniteと並んで,Unreal Engine 5のグラフィックスに関する大きな特徴が,大局照明エンジンの「Lumen」(ルーメン)である。
Lumenは,高品質で自然なバウンスライティングをリアルタイムで計算できるため,開発者はエディター上で光源やジオメトリを動かして,ゲーム実行時のバウンスライティングを正確に確認できる。たとえば建物の破壊や,扉の開け閉めといった動きにも対応できる完全に動的なグローバルイルミネーションがリアルタイムで可能になるため,開発者は実行時にシーンを静的に作成しておく必要がないという。
なお,Lumenが発表された当時は,PS5やXSXのGPUが有するリアルタイムレイトレーシング機能に対応していなかったが,正式版ではハードウェアに機能があれば,それを優先して使うようになっている。もちろん,ソフトウェアベースでのレンダリングにも対応するので,ハードウェアによるリアルタイムレイトレーシング機能がないゲーム機やGPUでも,Lumenは利用可能だ。
グラフィックス面ではそのほかにも,NaniteやLumenと連携して動作し,描画負荷を軽減して適切なソフトシャドウを実現する「Virtual Shadow Maps」(仮想シャドウマップ)や,ソフトウェアベースの超解像(アップサンプリング)機能「Temporal Super Resolution」といった新要素も,Unreal Engine 5における見どころと言えよう。
World Partition
「World Partition」は,オープンワールドタイプのゲーム制作作業を改善するレベルストリーミングシステムである。複数人の開発者が,巨大な1つの世界を構築しやすくするために,ワールド全体を自動で適切なサイズのグリッドに分割して,必要に応じたセルをロードできるという。また,1つのワールドから複数のバリエーション,たとえば昼と夜や,破壊前と破壊後といった異なるジオメトリを作成,管理することも可能となる。
アニメーション制作ツール
Unreal Engine 5におけるアニメーション制作関連の新要素は,制作の効率化を促進するものを多数盛り込んでいる。キャラクターのアニメーションやリギング付けをするツール類は,Unreal Engine内で直接利用できるようになり,外部ツールと行き来する必要がなくなった。
また,既存のアニメーションを再利用しやすくする「IKリターゲッタ」,動きや地形に合わせてルートモーションの位置を調整できる「Motion Warping」といった機能も加わった。
MetaSounds
Unreal Engine 5では,新しいサウンドエディタ「MetaSounds」も見どころの1つである。サウンドデザイナーは,マテリアルエディタのようなUIで,動的なデータ駆動のサウンドをゲームに結びつけることが可能となった。
たとえば,ある動作のタイミングタイミングを調整するときに,サウンドを直接結びつけるといった調整が,これまでよりも簡単にできるようになるわけだ。
The Matrix Awakensで使われた都市のアセットもリリース
これまでにない高品位のゲームやコンテンツを制作するとなると,コンテンツ内部で使われるアセットを,どうやって制作,調達するかは大きな問題となる。Epic Gamesは,Unreal Engine 5のリリース前からアセットビジネスの拡充を目指して,高品位の3Dモデルを提供するQuixelや,フォトグラメトリソフトウェア「RealityCapture」の開発元であるCapturing Reality,モデルデータの共有,販売プラットフォームSketchfabを買収していた。
Unreal Engine 5においても,Quixelのライブラリにアクセスしてアセットを閲覧,取り込むツール「Quixel Bridge」が統合され,ドラッグ&ドロップでプロジェクト内に取り込めるようになっている。
Unreal Engine 5に合わせて,Epic Gamesは豊富なサンプルの提供も行う。とくに,大きな話題を呼んだ「The Matrix Awakens: An Unreal Engine 5 Experience」の都市や車両を含むサンプルプロジェクトのリリースは,それだけで注目に値する。
また,Epic Gamesは,マッチメイキングサービスも含んだマルチプレイヤーゲームのサンプル「Lyra」も提供するとのこと。開発者はLyraをサンプルとして,独自のゲーム制作を行えるそうだ。
Unreal Engine 5を活用した新世代のゲームが多数登場してくることを期待したい。