【ACADEMY】英国の新ガイダンスに見られるゲーム内課金の10大注意点

WigginのPeter Lewin氏は,アプリ内取引に関する新しい法律と,それがデベロッパにどんな意味を持つかを説明する。

 2021年9月20日,英国の広告規制を決定するCAP(Committee of Advertising Practice)が,ゲーム内課金に関する新しいガイダンスを発表した。

 これは,ゲーム内ストアのプレゼンテーション,仮想通貨のバンドルからLoot Box,外部ゲームマーケティングまでのトピックをカバーしている。わずか12ページのガイダンスだが,現在の業界慣行に大きな変化をもたらす可能性があり,英国にユーザーを持つ世界中のゲーム事業者に関連するものだ。

 このガイダンスは,施行されるにつれて進化していくと思われるが,現段階での重要なポイントは以下の10点だ。


1. 仮想通貨


 ガイダンスでは,(a)リアルマネーで購入しなければ入手できない仮想通貨と,(b)リアルマネーで購入でき,ゲーム内でも獲得できる仮想通貨を区別している。この新しいガイダンスは,前者には適用されるが,後者には適用されない。

 つまり,「ソフトカレンシー」と「ミックスカレンシー」が,この新しいガイダンスに引っかかる可能性は「非常に低い」のだが,この表現では,CAPガイダンスを執行する機関であるASAが,例外的状況において,その扉を開く余地を残していることになる。両方の通貨を扱うゲームや店舗は,一部規制されるようだ。「クレジットシステム」を提供する家庭用ゲーム機/プラットフォームも範囲内だ。


2. ブランドコンテンツ


Pete Lewin氏, Wiggin
【ACADEMY】英国の新ガイダンスに見られるゲーム内課金の10大注意点
 ガイダンスでは,「マーケティング契約に起因する第三者の広告主からのブランド品またはその他の販促品」によってもゲーム内店舗が規制範囲に入る可能性があることを示している。

 現実世界のブランドが購入できるコンテンツ(新しいスポーツチームのキット,車のパックなど)を特徴とするゲームについて,これが何を意味するかは完全には判明していないが,これらは広告と見なされるため規制の対象となることが示唆されているようだ。


3. 仮想通貨の価格設定の明確化


 とくに「バンドル」コンテンツについては,仮想通貨購入の真のコストを明確にする必要がある。とはいえ,どの程度の明確化が必要なのか,ガイダンスでは詳しく述べられていない。

 このため,店舗が1回の購入ごとに「単位当たりの」価値(例:100ジェム=1ドル,1ジェム=0.01ドル)を記載する必要があるとすれば,とくに画面スペースが限られているモバイルでは問題となる可能性がある。また,"best value "や "cheapest "などのタグをどのように使用すべきかという点についても制限がある。


4. 購入価格の明確化


 ゲーム内アイテムを購入する際には,そのアイテムの現実世界での価値が明確でなければならない。「ユーザーは,そのアイテムに相当する現実世界の価格がいくらなのか,および/または,さらに仮想通貨にお金をかける必要があるかどうかを簡単に判断できるようにすべきだ」となっている。

 最初の選択肢(たとえば,購入ごとにXアイテム=Y通貨=Zドルと表示する)は,2番めの選択肢(購入には追加の仮想通貨が必要であることを示すだけ)に比べて,企業が遵守することが著しく困難であることから,ここではとくに「または」が重要であると言える。


5. 変則的な価格設定


不必要に短いフェイルステートカウントダウンタイマー,複雑なオファー,購入が成功につながることを示唆するメッセージングを避けるべきだ

 変則的な価格設定とは,提供される通貨の束と,商品の購入に必要な通貨の単位が一致しないことを指す。たとえば,ある通貨が100通貨単位で販売されているにもかかわらず,ゲーム内の各アイテムの価格が30通貨単位である場合などだ。

 奇数価格はまだ認められているが,購入可能な仮想通貨の最小バンドルがゲーム内の最小購入額よりも高い外部ゲーム広告については,広告に「最小通貨購入額はXです」などの情報開示を含める必要がある。


6. 購入時の提示


 ゲーム内の広告,たとえばポップアップなどで,プレイヤーに購入を促す「不当な圧力」をかけてはならない。たとえば,企業は不必要に短いフェイルステートのカウントダウンタイマー,複雑なオファー,購入が成功につながることを示唆するメッセージングを避けるべきだ。

 これは,長年にわたって子供に適用されてきた「直接的な勧誘の禁止」ルールに類似しているが,現在はすべての人に適用されている。


7. Loot Box


 Loot Boxは禁止されていないが,レアアイテムの当選確率に関するメッセージは,誤解を招くものであってはならない。少し意外なことに,このガイダンスでは,Loot Boxのドロップ率を開示するよう求めることはどこにも書かれていない。追加購入を促すために,プレイヤーにレアアイテムや特定のアイテムがもうすぐ手に入ると主張することは避けるべきだろう。また,外部広告では,ゲームがLoot Boxを備えているかどうかを明らかにする必要がある。

 ASAは,最低限,店舗ページで一般的なIAP情報の横に記載することを要求する。PEGI「ランダムアイテム」ラベル(2020年4月発表)を使用すれば十分だが,義務ではない。


ゲームの広告は,追加購入または相当なプレイ時間によってのみアンロック可能な機能が,すぐにまたは無料で入手できることを暗示してはならない

8. 期間限定オファー


 事業者は,「あるアイテムが,のちに再び,あるいはより一般的に利用できるようになる場合,特定の期間,あるいは特定の購入経路でしか利用できないようなことを暗示してはならない」とされており,これはとくに,季節限定のアバターアイテムやバトルパスについて呼びかけているものだ。

 これは,季節限定/バトルパスのコンテンツが後日決して再販売されないということではないのに,特定のコンテンツの期間限定性を悪用して,その後逆転させてはいけないということだ。


9. 購入済みコンテンツに関する広告


 ゲームの広告では,追加購入や長いプレイ時間によってのみアンロック可能な機能,アイテム,コスチューム,レベルなどが,すぐにまたは無料で入手できるようなことを暗示してはならない。

 広告では,タイトルの最もエキサイティングな要素(多くの場合,ゲーム後半の要素)を強調することが多いため,これは企業にとって困難な課題だ。無料プレイのゲームもとくに影響を受け,外部広告で追加の情報開示が必要になる可能性がある。


10. 購入形態の開示


 事業者は,外部マーケティング資料,たとえばストアページやその他の広告で,利用可能なゲーム内課金の種類に関する追加情報を提供することが推奨されるが,必須ではない。これには,購入が完全にアバターアイテムなのか,DLCや時間的制約のあるシーズンパスに限定されているのかの開示が含まれる。

 注意点として,ASA自体には罰金権限はないのだが,これまでにも,名指しで非難を浴びせるような形でうまく運用されていた。また,ASAは,重大かつ継続的な違反者を,より大きな権限を有する競争市場庁(CMA)などの他の規制当局に照会する権限も有している。

 ASAは,ゲーム内コンテンツの変更について2022年3月まで6か月間の猶予期間をゲーム事業者に提供することを表明している。過去には,その他すべての広告に対して2021年12月までの3か月間,非公式に苦情に対応することを約束していた。


Peter Lewin氏は,英国に拠点を置く法律事務所Wigginのシニアアソシエイトだ。

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