「株式会社24Frameの内情暴露日誌」第15回:プレゼンへの道


 西暦2009年,務めていた会社を辞めたものの,どうしていいか分からない僕は,企画書を書いては聞いたことのある企業に送り付けるという凶行に及んでおりました。

2009年の華やかなるゲーム業界の一幕
 意外にもリアクションはありました。大中小様々の企業から。
 しかし時はレイトン,イナズマのメガヒットによる「レベルファイブって何者!?」というセンセーションの最中。企画書の内容とは関係なく「関係者?」「とりあえず話聞いとくか」という流れでのご縁であり,僕の目論んだ「会社の力以外で自分に何ができるのか?」という一見高潔ながらも勘違い満載の目的意識とは実は全然かみ合っていない,そんな時代の出来事でした。

 さて,ここからはさらに大中小の企業さんとの間での出来事を記していこうと思いますが,まず最初は景気のいい話,ということで大中小の大から。
 もちろん社名は出せないのですが,こちらはゲーム業界の住人なら誰でも知っているような企業様で,ただ,2021年現在の時勢から考えると「え?そんな企業が独自企画の受付なんかやってたの?意外〜」と思われるような企業です。

華やかではないがある意味最高の居心地を提供してくれた友人宅の本棚
「株式会社24Frameの内情暴露日誌」第15回:プレゼンへの道
 当時僕は京都の豪奢な日本家屋(前回参照)に住んでおりましたから,メールの返信が来たことに驚きつつも考えることと言えば「ちょっとお話でも」と言われても,行くだけで半日,いや,今は貧乏だから新幹線も「のぞみ」とかじゃなく「ひかり」もしくは「こだま」で行くとして3/4日はかかる,だとすると泊る所が必要だけどホテル代ってそもそも……,あ,そうだ,東京で仕事している大学時代の友人がいたぞ。やつのところに転がり込めば……などという「健康で文化的な最低限度の生活」関連のことばかりで「これは何らかのビジネスチャンスだ。本懐である企画を通す通さない云々ではなく「何か仕事ください!」の一言を放つのが実は大目的なのだ!」などという多少なりとも大人な考え方にはたどり着くはずもなく。
 そして一も二もなくまずは東京,中野の友人宅を目指し出発したのでした(この時点で色々と目的がずれてしまってますね〜。ああそれも若さでしょう!)。

 「中野か〜,東京の一等地に済むなんてヤツもやるようになったもんだべ。ちょっと前までどん底の自主制作映画を手伝ってもらったりしていた気がするが,しょせん住む世界はもう違うってことかいのう」などと思いながら東京の中野に向かうわけですが,当時は中野駅降りてすぐのところに立ち食いソバ屋がありまして,それを見た僕は「おお,これが本場東京の立ち食いソバ屋か! やはり立ち食いのプロなどがいるのだろうか? 年季も半端ねえ佇まいだ,これは行ってみるしかねえ」と思い立ち寄る……というような奇妙に貧乏なおのぼりさんと化し,初手から目的を見失っておりました。

 立ち食いのプロは実在しなかったものの(したとしてプロであることを見抜くことは現実的に不可能です)東京のそばつゆは色が濃くて最高だぜ! などと一番安いかけそばに舌鼓を打っていると,その友人から不穏なメールが届きます。

こうみえて僕は映画のためにネカフェのセットを作ったこともある,いわばネカフェのプロです
「株式会社24Frameの内情暴露日誌」第15回:プレゼンへの道
 「ごめん,今日帰れなくなった」
 ……!? どういうことだ? 東京で労働基準法に守られながら純白のホワイト企業でセレブのように働いているはずの彼が,帰れなくなった? あれか,東京では連日合コンで,急遽美女といい感じになりそうだから帰れないとかそういうこと?
 と,思考が錯綜したのも束の間,「ってことはおなじみの野宿か……東京で野宿っていったらどこだろう,まずは川を探さないとな」。さらに一瞬後「ネカフェがあるか」と思い直すまで実に0.03秒。

 しかしさすがは我が友人,思考はさらにその先に行っていました。「郵便受けにカギ,入れといたから」とのメールが到着! さすがの手際です。
 そんな彼が15年を経た今,僕の作った24Frameという土台ガタガタのボロ屋の大家的存在(つまり非常に重要な社員のこと)になっているのだから,人生は分からないと言うか,人と人との合縁奇縁というか,むしろ何かの呪いのようなものを感じますが,まあそれは置いておいて。

 「初めて尋ねる家でおいてあるカギで入るとは,これはこれで新しい体験だ」と思いつつ,中野の友人宅にたどり着いたのでした。
 そしてそこでやることも「明日の打ち合わせはどの様に運ぶのか? 顔合わせがお題目とはいえある程度の幅のある進行を予測して必達で伝えるべき情報を整理しておこう」との一人ブレインストーミング……ではなく友人宅の山積みの本を目の前に「あ,この漫画の新刊が買ってある。さすがだな〜早速読ませていただこう」という大学生時代への回帰というか,何も進歩していない自分の体たらくの再確認なのでありました。

 明日は巨大企業でのどでかいプレゼンが待っていることを忘れ,無為な時間を過ごす青年友野に明日はあるのでしょうか(反語)。続く!


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