「株式会社24Frameの内情暴露日誌」第14回:24Frameの1年目


華やかなるゲーム業界とは一旦お別れ……?
 株式会社24Frameも12周年を迎え,13年目に絶賛突入中です。もうそんなに経ったのか,と思いつつも細部の記憶はいまいち曖昧。何せ僕も12年目の13期開始か,13年目の14期開始か,税理士に聞かないと分からない位でしたから。12周年ということは,遡ればこの会社の創立は2009年10月5日。その頃何をしていたのかをちょっと振り返ってみたいと思います。

 会社を始める前には,それまでにいた会社を辞める訳ですが,そういった意味ではこの年の前半は,まだレベルファイブという会社にお世話になっていましたね。イナズマイレブン2の作業が落ち着いて,退社の手続きを執り,特に何のアテもなくやめる,という29歳がそこにいました。恐ろしい話です。

当時住んでいた家の様子。屋根があるので大学時代よりかなり生活水準が上がっていることが分かります
 アテもないものですから,実家に帰ればいいやくらいに思っていたのですが,その話を切り出すと両親は怪訝な顔。おそらく,三十路を前にした引きこもりの長男が実家に発生することを懸念したのでしょう。実に慧眼です。

 とはいえ,ほかに行くアテもないもんですから,結局実家のほど近くに空いていた祖母の家に住み着き,1年ほど過ごすことになります。これが僕の起業1年目ということになりますね。

 で,住処を確保した後に何をするか? 普通は就職活動だろ,と思うのですが僕の場合は就職のための履歴書の代わりに,ゲームの企画書を作りました。会社員としてできる経験は,レイトンとイナズマイレブンで,ある意味これ以上ない形でさせてもらっていたので,そうじゃない冒険を求めたのでしょう。

 当時の僕の自己認識は以下のとおりです。
 「レイトンとイナズマが売れたのは全部会社の力」である。副産物として「自分のシナリオが100万人に読まれても大丈夫なシロモノだと分かったのは収穫」であり「じゃあ自分には何ができるのかもう少し試してみよう」ということでの退社決意です。

 で,自分の力,ということで作ってみた企画書がこちらです。

初めて書いたゲームの企画書です
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 当時はNintendo DS全盛期でしたから,タッチ画面を使って,プレイヤーは探索隊にダンジョンの探索ルートを指示する,舞台は忠実にそのルートをたどるのだが,進行すると同時に王国の予算が減っていく。予算が尽きる前に次の財宝を引き当てよう! というようなゲームです。
こんなゲーム内容でした
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 まあ今にして思えばはずればっか引いたときのハマり対策としてグルーヴ地獄Vみたいなミニゲームが必要だよね,とか色々と思うことがない訳ではありませんが,それなりに成立している気はします。

 とにかく成立したわけだから,あとは評価を下してもらうだけだ,とばかりに僕はいくらかの知り合いや,まったく面識のない大会社なんかにこれを送りつける,という暴挙にでます。その結果を待つ間は,不安ながらも不思議な「やりきった感」に包まれてもおり,結構幸せな時間であったと言えましょう。

こういった環境との戦いです。人生は
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 その傍らで刻一刻と減っていく貯金を尻目に,僕が壊れかけの日本家屋に住みながらやっていたこととしては「軒先に巣を作ったクマンバチの駆除」「屋根裏に住み着いた野良猫の撃退」など,主に野生との戦い。そのための装置もいくつか考案・制作しました。そんなに山の中に住んでいた訳でもないんですけどね。
 同時に僕がコンタクトしようとした巨大企業,なんかも言うなれば一つの生態系ですから,人の営みというのは常に環境との戦い,その中で如何に居場所を獲得するかという戦いの歴史にほかならないのかもしれません。

 自然界のすべてがそうであるように,時と共にお沙汰はくだされ,あらゆる生命体の生存可否は時々刻々と変化していきます。僕の立てた企画書とて例外ではありません。ジャッジメントは訪れます。思いの外多くの,大中小様々の企業からのリアクションととともに。

 このリアクションの一つ一つが,各々に確実に少しずつ,僕の人生の歯車を新たな方向に動かしていってくれるわけですが,その話はあまりに長く大量で,どの粒度で文章にしたものか見当も付きません。のでとりあえず今回はここまで,として,開いたのは新たな扉か,地獄の釜の蓋か,あるいはその両方か。次回の顛末をご期待くださいませ。


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