【ACADEMY】最大のゲームは,そのコミュニティがあってこそ成功する

Keywords StudiosのJames Gallagher氏は,最近の成功事例を分析し,コミュニティを構築するためのさまざまな方法を示している。

 2016年,Quantic Foundryが25万人のゲーマーを対象に調査したところ(参考URL),男性の8.8%,女性の9.5%,それ以外のプレイヤーの7.5%が,プレイするうえで最も重要な動機としてコミュニティを挙げていることが分かった。

 これを簡単に言うと,調査対象となったプレイヤーのほぼ10人に1人が,チャレンジやストーリー,デザインよりも,コミュニティがプレイする理由として大きいと考えていることになる。それなのに,積極的で活発なコミュニティがセールスポイントとして宣伝されることがどれほどあるだろうか。

 ゲームプレイヤーが引きこもりだという固定観念は,決して正しいものではない。

 チップショップ(※フィッシュアンドチップスを売る軽食店)でのストリートファイターの勝ち抜き戦,初代PlayStationでの飲み会後のワイプアウトのプレイ,LANパーティ,MMOなど,ゲーマーは常に自分たちの娯楽を共有する方法を見つけてきた。

 世界のコミュニケーションがオンラインに移行するにつれ,ゲームは主要な話題の1つとなっていた。

 「ゲーム」がサブレディットで4番めに多く登録されているのは偶然ではない。また,Discord,Gaia Online,d2jspなど,世界最大のオンラインコミュニティプラットフォームのいくつかが,さまざまなニッチのゲーマーにサービスを提供することで成長したことも偶然ではない。

 コミュニティに参加することには多くの利点があり,最近のよく知られた成功例でも証明されている。


草の根プロモーション


 gamediscover.coのSimon Carless氏は,InnerslothのデベロッパがTwitterで語った内容を参考にして(参考URL),Among Usの成功について語っている。

ゲームが成功し続ける中,Innerslothのコミュニケーション戦略は,プレイヤーにつながりや価値を感じてもらうという原点に立ち返っている

 Among Usがコンテンツ制作者やストリーマーによって成功を収めたことはよく知られている。しかし,Steamでのタイムリーなプロモーションによって,突然現れた新しい視聴者に購入を促したことはあまり知られていない。

 InnerslothのプログラマであるForest "ForteBass" Willard氏は,この成功の初期の兆候をitch.ioにまとめており,公式Discordサーバー(現在のメンバー数は約50万人)は大盛り上がりだった。殺到するトラフィックによるサーバーの問題にもかかわらず,新しいプレイヤーは,素晴らしいゲームと,その旅を率直に分かち合うデベロッパに出会ったのだ。

 Among Usのコミュニティでは,いつ,どのようにしてこのゲームを知ったかが話題になり,ファンはこのサクセスストーリーに共感した。

 ゲームが成功し続ける中,Innerslothのコミュニケーション戦略は,何よりもプレイヤーに親近感と価値を感じてもらうという原点に立ち返っている。彼らのアプローチについては,コミュニティディレクターのVictoria Tran氏が「handing the Among Us」のTwitterアカウントで語っているので,ぜひ見てほしい(参考URL)。

【ACADEMY】最大のゲームは,そのコミュニティがあってこそ成功する


リテンション


 カラフルでカオスなバトルロワイヤルFall Guys: Ultimate KnockoutのデベロッパであるMediatonicは,2020年のパンデミックの最中にゲームを発売し大成功を収めた。

 瞬く間に記録を塗り替え,PlayStation Plusで最もダウンロードされたゲームとなり,Steamでは700万本以上の売り上げを記録した。それ以来,彼らのソーシャルメディアアカウントは爆発的に増加し,現在までにTwitterで130万人,Discordで23万5000人のフォロワーを維持している。

 コミュニティディレクターのOliver Hindle氏は,真正性を中心とした直接的かつ個人的なアプローチを選んだ(関連記事)。プレイヤーは,デベロッパが率直に語り,自分のミスを認め,「ジョークに参加」する姿を目にした。これにより,ゲーム開発やMediatonicのチーム全体が,より親しみやすいものになった。
Twitterのスクロールの途中には,笑顔になれるコンテンツがたくさんある。

Twitterがうまく機能しているのは,共有性を重視したプラットフォームだからで,Fall Guysは愉快な瞬間を生み出すのに適している

 Fall Guysがここまで成功したのは,クリエイターがゲーム自体のDNAを掘り下げ,視聴者がオンライン上のどこに住んでいるのか,どうすれば彼らに切り込むことができるのかを考えたからだ。

 とくにTwitterは共有性を重視したプラットフォームであり,Fall Guysは面白い瞬間を生み出すのに適している。

 このようにしてプレイヤーにエンターテイメントを提供することは,長期的に見ても価値があると思う。

 全体的なアイデアとしては,Fall Guysのようなアクティブで親しみやすいコミュニティは,それ自体が話題を生むということだ。今日まで,ゲームのソーシャルチャンネルは,ミーム,ファンアート,笑い,そして多くのエンゲージメントで満たされている。

 単なるコミュニティを超えて,インターネット上の現象にまで成長したFall Guysは,今後も存続していくことだろう。


継続的な改善


 ビデオゲームの歴史の中で,最も成功したプロパティは,フランチャイズだ。FIFA,Call of Duty,Sonic the Hedgehog,Resident Evil,Final Fantasyなどのゲームは,常に進化し続けている。

 FortniteやRocket Leagueなどのライブサービスゲームは,続編を作るのではなく,アップデートやシーズンを経て継続的に進化していく。

 もし,これらのゲームに何百万人ものファンやアンチの人たちがオンラインで語り合っていなかったとしたら,と考えてみよう。もし,これらのゲームのアップデートが,何もないところで考えられたものではなく,デベロッパのビジョンに基づいて改善されたものであるならば,それらのアップデートは非常に異なったものになるだろう。

James Gallagher氏
【ACADEMY】最大のゲームは,そのコミュニティがあってこそ成功する
 メタルギアソリッドシリーズの方向性は,デベロッパがプレイヤーの気持ちを深く理解していることを示す例だ。MGS IVでは,批評家から最高レベルのファンサービスと評され,MGS Vでは,前作のカットシーンの長さに関する意見を意識して,プロットの多くがオプションの音声記録によって伝えられた。

 フランチャイズの新作やライブゲームのアップデートが成功したかどうかは,前の状態と比較して表現される。コミュニティの声がなければ,ゲームデベロッパはプレイヤーが何を求めているのか理解できず,プレイヤーのためのデザインもできない。


帰属意識の醸成


 Life is Strangeでは,いじめや家族の問題などの困難なテーマや,親密で親近感のある友情の物語を扱っている。

 プレイヤーは登場人物だけでなく,お互いに共感しあっていた。1つのエピソードが数時間で終わるこのゲームは,ファンアートやファンフィク,ディスカッショングループ,人気ポッドキャストなどを次々と生み出した。

 Life is Strangeのプレイヤーは,インタラクティブなストーリーテリングへの愛,キャラクターへの共感,そしてDontnod Entertainmentによってもたらされたキャラクターの生き生きとした姿を共有することで,最強のコミュニティに所属する感覚を得ている。

 The Guardian紙に掲載されたKeith Stuart氏の記事は(参考URL),発表から数年経った今でも的を得ている。つまり「ゲームとは,相互作用と所有権によって非常に強力なものとなる,共有された経験のことです」

 Life is Strangeコミュニティのメンバーは,自分が共感できるキャラクターが登場するゲームを見つけ,さらに,家族や現実の仲間には決してできない方法で,ファンアートや不明瞭なキャラクター理論を評価してくれる,同じ気持ちを持つ人々の集団を発見した。

 それがファンダムの力だ。

 ゲームを作っている人にとって,規模の大小にかかわらず,このようなコミュニティは最大の財産なのだ。


James Gallagher氏は,Keywords Studiosのシニアソーシャルメディアマネージャーだ。それ以前は,Techland,ソニー,Rockstarなどでソーシャルメディアマネージャーを務めていた。

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※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら