【ACADEMY】職場でハラスメントを受けたときの対処法
ここ数週間,ゲーム会社でのハラスメントや差別の話が再び浮上している。
7月20日,カリフォルニア州公正雇用住宅局は,Activision Blizzardに対し,女性への対応について「州の公民権法および同一賃金法に違反する」として訴訟を起こした(関連英文記事)。
有害な職場文化は,もちろんAAA企業だけで起こっているわけではなく,ここ数週間でインディーズスタジオFullbrightに関する報告が表面化している(関連英文記事)。
先週,我々はGames and Online Harassment HotlineのディレクターであるJae Lin氏に,企業が職場での有害性をなくすための方法や,あらゆるレベルのゲーム関係者が差別やハラスメントをなくすためにできることについて話を聞いた(関連英文記事)。
また,GamesIndustry.bizのポッドキャストでは,Splash Damageのダイバーシティ&インクルージョンアドバイザーであるCinzia Musio氏と,Roll7社のD&I委員会に所属し,メンターシッププログラム「Limit Break」の創設者であるAnisa Sanusi氏が,業界が舞台裏で健全化を行う方法について語った。
この記事は,そのポッドキャストをアレンジしたものだ。ここでは,彼らが被害者のために提供したガイダンスに焦点を当てるが,このページでエピソードの全容を聞くことで,このトピックに関するより幅広い見解や,ハラスメントや差別問題に取り組むために企業や人事ができることを知ることができる。
自分を第一に考える
「被害者になったときに最も重要なことは,自分自身と自分の精神的な健康を第一に考えることです。なぜなら,このようなことを口にするのは非常に難しく,自分自身に影響を与えることだからです」ハラスメントや差別の被害者ができることを聞いたとき,Musio氏はこう答えた。
ハラスメントや差別の被害者は何をすればいいのかという質問に対して,Musio氏は「会社であれ警察であれ,当局に報告することは,"トラウマの再現 "となるため非常に難しいことです」と答えた。
「だからこそ,何よりもまず,自分が安全で,傷かない方法でこれらのことを話すことができる状況に身を置くことが大切です」と氏は語る。「それが優先されるべきことです。勇気を出す必要はありません。勇気がなくても,自分を犠牲にするような人でなくてもいいのです。あなたにそのような精神的エネルギーがなくても大丈夫です」
「メンタルヘルス面でのサポートを受けられるようにすること,可能であれば,あなたのために本当に協力してくれる友人や家族の輪を作ることです」と氏は続ける。
Sanusi氏は,状況はそれぞれ異なり,どのような反応も起こった状況に応じて変わるものだと指摘する。しかし,どのような場合でも精神的なサポートを見つけることが優先されることは多いという。
「つまり,安心して話ができる人たちがいる安全な場所を見つけることが必要なのです」と氏は語る。「状況を少しでも明確にして,信頼できる人たちからフィードバックをもらうのです」
D&I委員会,または安全な場所であれば人事部に相談することを検討する
人事部に相談することはいつでも可能だが,すべての会社がハラスメントや差別の苦情に対応できる体制が整っているわけではなく,そうしたいと思っているわけでもない。もしあなたの会社にDiversity & Inclusion委員会があれば,そこに相談するのもいいだろう。
「人事部に相談しないでください。人事部は会社を守っているだけで,あなたを守ってくれませんから」とSanusi氏は語る。「そういった会社もあり,本当にひどいものです。会社によっては,外部に人事部を設置しているところもありますが,外部の人事部のほうがずっと公平です。彼らは非常に中立的で,何が起こったのかを調べようとしてくれます」
すべてを書き留めることが非常に重要です。名前,場所,何が起こったのか」 -Anisa Sanusi
「私の経験では,社内の人事に比べて社外の人事会社のほうが良い経験をしていました。D&I委員会やD&I担当者がいる場合は,彼らも協力してくれます。D&I委員会は労働者自身で構成されており,これらのシステムを導入することを気にかけている人たちの集まりだからです。人事部の場合は,きちんと調査をして,このメッセージがCEOやCOOに伝わることを確認してください。そうすれば『こんなことは知らなかった』ということにならずに済みます。物事を記録し,証拠を保管し,事件を保管する公式な方法があることを確認し,それを書き留め,失わないようにしてください。もし誰かが何度も苦情を言っても,その情報や記録がなければ,それはただの空気の無駄遣いですから。そもそも,なぜ我々があなたと話をしているのかってことになります」さらに,人事部に相談するときは,必ず自分ですべてを書き留めるようにしてほしい。
「証拠を残す」というのは,こういうことだ。「すべてを書き留めることが非常に重要です。名前,場所,何が起こったか。人事部とのミーティングでも,会うたびにメモしてください。いつ彼らと話したのか,その後フォローアップがあったのかを記録しておきましょう」
外部のサポートを受ける
会社があなたの味方になってくれない場合は,第三者に報告し,さらなるサポートを求めることができる。
我々は最近,職場でのセクハラ被害者のためのリソースのリストを発表したが(関連英文記事),その中にはこの点で役立つ連絡先も含まれている。
Sanusi氏は,組合が良い選択であることに同意した。英国では,BectuやGame Workers Uniteなど,いくつかの選択肢がある。米国ではまだ組織化されていないが,Game Workers UniteとCommunication Workers of Americaが昨年提携し,「Campaign to Organize Digital Employees(デジタル従業員を組織化するキャンペーン)」としてビデオゲーム従業員の組合結成を呼びかけた(参考URL)。
Sanusi氏は,「このような会議に出席するために,会社に組合(代表)を同行させることができます」と付け加えた。「たとえば,自分と他の誰かだけの会議で,1人でいるのは非常に気まずいと感じた場合,他の誰かを会議室に同席させることができます。これは同じ会社の人でも,信頼できる同僚でも,組合の代表者でもよいのです」
自分の権利を知る
Sanusi氏とMusio氏は,重大な犯罪であれば,警察に通報することもできると強調している。
「しかし,自分の権利が何であるか,利用できるシステムやプロセスがあるかどうかを知っておくことは非常に重要です」とSanusi氏は続ける。会社に従業員ハンドブックがあれば,それに目を通し,適切な手続きがあるかどうかを確認してください。証拠は保管してください」
自分の権利を知る必要があり,誰かに一緒にいてもらう必要があります。1人でやる必要はありません -Anisa Sanusi
「インディーズ,AAA,規模に関係なく,それぞれの会社は違います。それぞれが違った対応をするでしょう。しかし,あなたは自分の権利を知る必要があり,誰かに一緒にいてもらう必要がありあす。1人でやる必要はないのです」さらにMusio氏は,雇用法についての知識を深めることも重要なステップだと付け加えた。
「従業員としての最大の防御策は,地域の雇用法がどうなっているのか,どこが保護されるのか,何が味方になるのか,などを理解することです」と氏は語る。「自分の権利が何であるかを理解することはとても重要です。自分の権利がどこにあるのか,それをどうすればいいのか,どこで保護されるのかを簡単に理解できるように,いろいろなところで説明してくれています。これが鍵となるでしょう」
可能であれば,ためらわずに法律相談を受けてほしい。英国では,無料の法律相談を提供する慈善団体LawWorks(参考URL)がある。アメリカでは,American Bar Association Free Legal Answers(参考URL)というサイトで相談できる。
「自分の権利が何なのか,法的に何ができて何ができないのかを知らなければ,不利な立場に立たされることになります」と氏は語る。「ですから,ちょっとした下調べをしたり,雇用法について法的なアドバイスをしてくれる人に連絡を取りましょう。繰り返しますが,その点では組合の代表者が最適です」
同意は,何事もそうですが,いつでも撤回できます -Cinzia Musio
「ctivision Blizzardの件は,文字通り,起こりうる最悪のシナリオだと思います。国が大勢の人々に代わって会社を訴え,過去のトラウマを掘り起こし,インタビューを受けて,この大きなニュースがメディアに載るまでに丸2年かかったのです。このようなことはトラウマになりますし,また昔のトラウマを掘り起こすことになりますので,大変です」「もちろん,できるだけ早く決着をつけたいと思うので,そのようなことは起きてほしくありません。しかし,ニュースで見かけるのは,文字どおり最悪のシナリオです。願わくば,あなたがこのような状況に置かれたとしても,ここまで悪い状況ではありません。あなたには仲間がいます。世の中には助けを求めている組織がたくさんあります。それを探さなければなりません」
Musio氏は,このポッドキャストの最後に,非常に重要な点を述べた。
「同意は何事にも言えることですが,いつでも撤回できます」と氏は語る。「もし,あなたがこのような状況に置かれていて,そのことについて話し続けることができなかったり,そのことを見続けることができなかったりしたら,その状況から身を引いてください。いつ話をするかはあなた次第であり,いつでもその場から離れることができます。それは,決して不当な扱いを受けるようなことではありません。これは本当に重要なことです。あなたはその同意の責任者であり,そこから自分を取り除くことができるのです」
資料
ポッドキャストの中で,Musio氏とSanusi氏は,豊富なリソースとサポートネットワークについて言及している。ここでは,アルファベット順に紹介する。
- ACAS(職場での権利に関するアドバイスを提供する英国の公的機関)
- Citizens Advice(英国の独立した慈善団体のネットワークで,さまざまなテーマについて秘密裏にアドバイスを提供する)
- Code Coven(疎外されたジェンダーのデベロッパのキャリアアップを支援するオンラインブートキャンプ)
- Limit Break(社会的弱者を対象としたメンターシッププログラム)
- Out Making Games (LGBTQ+コミュニティのための業界ネットワーク)
- Pixall (包括性に関するリソースのコレクション)
- POC In Play(ゲーム業界における有色人種の認知度と表現力を高めることを目的としたアドボカシーグループ)
- Safe in our World(ゲーム業界でメンタルヘルス問題を抱える人々の意識向上とサポートを目的とした慈善団体)
- Take This(メンタルヘルスに関する支援活動を行っている団体)
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※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)