「株式会社24Frameの内情暴露日誌」第4回:リモートワークの極み

 とある街頭インタビューで「コロナで仕事はどう変わったか」というお題目が掲げられていたのですが,それを見て僕はハッとしました。「ウチらー,コロナの前から結構リモートでー,もともとクソみたいな上司の顔色とか超カンケーなくなってたんでー」と,いかにもヤンキー風の女性が発言しています。うーんなんだか知っている声と顔だなあ,あ,なんだうちの社員か。髪の毛完全に金色じゃん。誰だよこんなやつ採用したのは……,あ,俺か。なんてことが本当にあったかどうかはさておき,午前中から寝間着でパソコン片手に,ワイドショーを見ていられるのも,まさに完全リモートワークを実現した会社ならではの光景でといえるでしょう。

がんばってやったおしゃれリフォームも全部ムダという悲劇
「株式会社24Frameの内情暴露日誌」第4回:リモートワークの極み
 しかし,コロナ前からのリモートワークの実践は,別に「社員の負担を減らすためにぜひとも実現せねば」などという,高潔な意識が経営者である僕にあった訳ではなく,単に「その方が効率的」というか「そうでもしないと作品が完成しそうもない」という,必要に迫られてやむなく実施した,というのが実情だったりします。

 現在弊社で絶賛制作中の「METAL DOGS」は発足当時から完全リモートワークでしたが,その前身の作品と言える「メタルマックスゼノリボーン」では「完全」ではない,部分的リモートワークの実施でした。何しろ我々にとっては初めての,ビッグタイトルの制作です。発足当時は関わる外部のスタッフも多く,しかも各パートの中枢部分に,当時の最新技術とセンスを持つ「何故あなたのような人がこの作品に関わっていただけるのでしょう?」と逆にこちらから聞きたくなるような,すごく聞いたことのあるタイトルを手掛けていらっしゃる,錚々たるメンバーが,雁首揃えていらっしゃったりしたのです。

 しかし,期待と夢にゾクゾクしながらいざ制作を始めてみると,致命的な問題が早速露見し始めたのでした。それは「ディレクターが無能」であるという問題です(ちなみにこの無能なディレクターというのは,リモートワークをいいことに,家の近くのマクドナルドで100円のコーヒーで3時間粘りながらこの原稿を書いている僕のことです。無能さというのは,実に様々な形で顕現するものですね)。

犬も首をかしげる……それは終わりの始まりでした
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 リーダーが無能だと,問題が起きたときにどう対処するのでしょうか? それはゲームの現場でも,それ以外の仕事でも,きっと何も変わりません。その職を辞するか,自分で時間をかけてなんとかするか,だけです。行きがかりじょう,ここで僕がディレクターを降りてしまうと余計にいろいろな人に迷惑がかかる,という状況判断から,愚かにも僕は後者を選択したのでありました。

 自分で時間をかける,となると今度は使える時間を最大化せねばなりません。そのためにはまず「無駄な時間」を探して削除するしかない。例えば通勤,例えば会議,例えば無駄なおしゃべり。まず僕はこれを全て自分に禁じました。するとどういうことが起きたか? 結論から言うと,善悪の両面があります。

 まず善なる部分。これは当初の狙い通り,業務が効率化されました。各パートすべての質問は立ち話ではなくチャットツールを通じて行われ,30分を超える会議は禁止され,社屋にいないので無駄な私語やいさかいは消滅します。こういった良い部分は自己管理ができている一部のスタッフにも許可されて,社屋にいる人数が減ります。まだ経験が浅いスタッフは,のびのびとしたワークスペースの確保が可能になります。いいことばかりですね。

 では悪しき部分はどこにあるのか? これは端的に言うと,無駄を極限まで削除することができたとき,人間には何が起こるか? ということを想像してもらえると良いかと思います。そう,無駄のない人間,それはすでに人間とは言えません。つまり,人間性の崩壊です。

 まあ,それはちょっと大仰かもしれませんが,完全リモートという環境で「進捗率」を基準にすべての無駄を省いていくと,睡眠と食事,ときには排便の時間さえ,一部の人間は惜しみ始めます。(それの大切さが分からないほど無能な人間であれば,尚更です)さらに端的に言ってしまうと,1日20時間働き続けると,人は鬱になるということです。至極簡単な結論ですよね。

完全リモートワークの達成
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 これこそが「リモートワークの極み」を経験した我々が,声を大にして言いたいことです。気をつけるべきは「リモートを利用してサボる」ことではなく「働きすぎてしまう」ことなんです。僕自身は無能でしたがうちのスタッフは優秀だったので,すぐに異変を察知して,衣食住の大事さを僕に説いたり,分散可能な負荷を引き受けてくれたりしました。時を同じくしてCOVID-19に対する緊急宣言が発令され,うちの会社にはリモートをいいことにサボるバカなどいない,ということが証明された状態で,発令即日,全社員がリモートワークとなりました。

 いくつかの問題は残りました。新人が先輩に質問できる機会が減る,上位者が近くにいないことでタスクの優先順位があやふやになる,一部の人の仲が悪くなる,などです。これらは毎朝オンライン朝礼で各自の予定作業を報告したり(ちがう,そこじゃない,となった場合はここでアジャスト可能です)Discordで常時つながったりしておくことで,集中できないときに雑談やブレストをして良い(Discordの各部屋には「5階休憩室」や「アイアンベース」などの具体的な名前がつけられました。これを思いついたスタッフは偉大ですね。僕には事務所が何倍にも広くなったように感じられました)。

 ただ,最終的に解決が難しい問題も残ります。すべての進捗がクオリティと共に数値化されてしまうため,それらが「不足している」ことも明確化されてしまうのです。サボっているわけではないのに横並びのパートで出来不出来がついてしまう。例えばちょっと不器用だけど,ムードメーカーなスタッフの価値が低く見えてしまうといった問題です。ここでの解決は結局のところ「信頼関係」という数値化不能な領域の話になってくるので,いわゆる会社の「人間力」が試される瞬間だと言えましょう。

メタルドッグス初期モック画面(これがリモートワークにより,どうなっていくのか? 乞うご期待)
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 テクノロジーでデジタルにタスクを管理可能なリモートワーク。しかしそれは行き過ぎると「人間性」を破壊する可能性がある。そしてリモートワークの最終課題になりがちな「個人差」の問題は,まさにその「人間性」によってしか解決できない。これは極めてシニカルで,パラドクシカルな話かもしれません。まるでこの世界そのもののように。

 さて,次回はそんな極限のリモートワークの実践は,実際にどの程度の効率を生み出すのかについて,実際のゲームの映像を時系列で比較しつつ,お話しできればと思います。続く!

※次回の掲載は6月22日を予定しています

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今回の補足動画は「こちら」(友野Dチャンネル)

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