成功例に学ぶ,リテンションレートを向上する6つのポイント

成功例に学ぶ,リテンションレートを向上する6つのポイント
 AppLovinは,モバイルゲームの収益化や新規ユーザーを獲得など,世界中のゲームスタジオおよび開発者を支援してきた経験を有しています。前回の記事では,モバイルゲームにおいてリテンションレートが重要視される理由とその計測方法について説明しました。今回はリテンションレートの計測タイミングや,リテンションレートを高める6つのポイントについて,プレイアブル広告を活用した成功事例を交えながら紹介します。

リテンションレートはいつ計測するべきか


 リテンションレートを計測するのに決まったタイミングはありません。計測する日によって,得られる情報は異なるため,自社の求めている情報を把握し,いつ計測するべきか決めるのがいいでしょう。以下に例を挙げてみます。

1日目
 新しいユーザーを効果的に取り込めたかどうかを示し,アプリやゲームをダウンロードしたばかりの人にどのような第一印象を与えたかを知ることができます。ある調査によると,21%のユーザーは期待通りのアプリの使用感を得られなければ,1回の使用だけでアプリをアンインストールしてしまうそうです。

7日目
 初日から7日目までのユーザー数の増減は,アプリのパフォーマンスに対するフィードバックであると同時に,ユーザーがゲームやアプリをどれだけ長い期間プレイするかを判断するのに役立つ指標です。

30日目
 この時点では,最初の頃に比べてユーザー数が大幅に減少していることが予想されます。ここまで残っているユーザーは,アプリを定期的に利用している可能性が高く,貴重な収益源につながることが予想できるため,課金につながる施策の実行を検討しましょう。


リテンションレートを向上させる方法


 実際に,リテンションレートを向上させるためにはどんな施策が効果的でしょうか。AppLovinがモバイルゲームにおいて実践している6つのポイントを紹介します。

1.新規ユーザーが使いやすいかどうかを見直す
 1つめは,新規ユーザーにストレスを与えないよう,デザインやコンテンツを見直すことです。ユーザーが使いにくいと感じた瞬間,すぐアンインストールされてしまい,せっかく獲得した新規ユーザーを失ってしまうことになります。どのアイコンをタップするべきか一目で分かるように表示するなど,誰でも直感的に使えるような工夫をしましょう。アプリのユーザビリティを改善することで,より長くアプリを楽しんでもらえるようになります。

2.ゲーム内でのプレイヤー同士の交流を促進
 2つめは,ゲームの内容について,ユーザー同士でコミュニケーションできる場を設けることです。よく見落とされがちですが,アプリの成功においてコミュニティは非常に重要な要素です。プレイヤーがゲームプレイについて話し合えるチャットや,攻略方法の共有ができる掲示板などをゲーム内に設置することで,プレイヤーのエンゲージメントを高めつつ,アプリの滞在時間を伸ばすことができます。Twitterなどのソーシャルメディアもほかのユーザーと交流する場としては人気ですが,一方でアプリの起動時間の減少や離脱の可能性を高めるリスクもあります。そのため開発者はゲーム内でユーザー同士が交流できるよう工夫することが求められます。

3.離脱してしまったユーザーを取り戻す
 3つめに,一度ダウンロードしたにも関わらず,離脱してしまったユーザーへの再アプローチです。メール,ソーシャルメディア,または各種広告などのプラットフォームを利用し,ゲームへの関心を呼び戻します。もちろん,この施策を行う前には,なぜ離脱してしまったかの原因を分析したうえで,開発者と連携してアプリ自体の改善を検討することも必要です。

4.ユーザーと開発者の交流の場を作る
 4つめは,ユーザー同士だけでなく,「プレイヤー感謝祭」など,ユーザーと開発者の交流の場を作ることです。モバイルゲームアプリ内でイベントや期間限定のトーナメントを開催し,ユーザー向けのギフトや賞品を用意するなど,ユーザーと開発者が実際につながる場を作りましょう。AppLovinでは,モバイルゲームスタジオのMachine Zoneと共に,ユーザーへの日頃の感謝を伝えるため「Machine Zone プレイヤー感謝祭」を開催しました。イベントでは,ユーザーへ感謝を伝えるだけでなく,ゲームに対するフィードバックを受け付けるなど,より良いゲーム体験を提供できるよう様々な取り組みを行いました。アプリ開発者は,ユーザーがどのようにアプリと関わっているのかを確認し,将来の戦略に役立てることができます。

5.「ゲーミフィケーション」要素を取り入れユーザーを惹きつける
 ゲーミフィケーションとは,ゲームの要素をアプリに応用することを指し,ユーザーのエンゲージメントを向上させる効果があります。ユーザーに競争心ややりがいを感じさせる効果があるゲーミフィケーション要素は,新規ユーザーの維持および既存ユーザーのリテンション向上にもつながります。ゲーミフィケーションは,企業向けソフトウェアを含む様々なアプリで使われています。例えば,あるゲーミフィケーションを応用したプロジェクト管理ソフトウェアでは,ユーザーがタスクを終えると,お祝いするキャラクターが画面上に飛び出します。その他にも,水を飲むようユーザーにリマインダーを送り,達成した印にコインやバッジを付与するなど,継続して使ってもらうための工夫が様々なアプリで見受けられます。

6.プレイアブル広告を活用する
 様々な種類の高品質な広告の活用は,リテンションレートおよびLTVが高い,いわゆる”質の良い”ユーザーを流入させるのに効果的です。中でもプレイアブル広告は,ユーザーに実際にゲームを体験させることによって,よりダイレクトにゲームの面白さを伝えることができます。

Project Makeover(iOS / Android
(C)2020-2021 Magic Tavern, Inc.
成功例に学ぶ,リテンションレートを向上する6つのポイント
 一例として, AppLovin のパートナースタジオである Magic Tavern は,自社ゲーム「Project Makeover」のユーザー獲得においてプレイアブルおよび動画広告を積極的に活用し,リテンションレートの高いユーザーを獲得することに成功しました。その結果,ROAS(Return On Ad Spend, 広告費用対効果)が142% 上昇し,アメリカや日本をはじめとする主要マーケットにおいて大きくビジネスを成長させることができました。


リテンションレートの向上でアプリビジネスを成功させる


 DAU(Daily Active Users)やCPM(Cost Per Mille)などのKPIと同様に,リテンションレートはアプリのパフォーマンスを計測できる重要な指標です。リテンションレートに着目することで,モバイルアプリの開発者は,アプリに必要な改善策やマーケティング戦略の方向性を決めることができます。アプリビジネスの成功には,リテンションレートを上げることが不可欠なのです。

 以上,2回にわたり,リテンションレートの重要性や計測方法,またその向上方法について,成功事例を交えて考察してきました。本記事がモバイルゲームに関わる皆様にとって,少しでも参考になりましたら幸いです。

片木智也(かたぎ・ともや)
AppLovin日本事業責任者。P&Gジャパン合同会社でデータアナリストとしてサービス導入業務などに従事し,2017年にAppLovinに参画。Business Developmentとして個人から大手まで数々のデベロッパーのビジネス成長に寄与し,2020年11月よりAppLovin日本事業の責任者を務める。