【月間総括】2019年の振り返り,そして次世代機などの展望

【月間総括】2019年の振り返り,そして次世代機などの展望
 まずは,2019年を振り返りたい。2019年で最も特徴的だったのは,国内のスマートフォンゲーム市場での新規タイトルの低迷が誰の目にも明らかになったということであろう。
 新規の大型ヒットは,「ドラゴンクエストウォーク」ぐらいで,瞬間的に上位にきても安定化することはほぼなくなっている。外資系タイトルが上位にくることも多くなったが,新規のタイトルは少ない印象である。

 市場は拡大しているとされているが,各社にヒアリングしても,その印象はない。IPタイトルを投入する企業が多くなっているものの,現在も継続しているIPの大半はゲーム化されている。すでに終了したIPでは新規キャラの追加余地が乏しく,ユーザーがガチャを引くと,すぐにレアキャラを引き尽くしてしまう。エース経済研究所では,新規タイトルでの成功は非常に難しい状況にあると考えており,2020年は凋落が一層進むことになるだろう。

 ソニーは,この状況下で,アニメ事業に注力する方針を発表している。これは,成功したアニメタイトルをスマートフォン用ゲームアプリとすることで収益化しようというものである。原作権も自社で持つとしていることから非常に野心的な計画だが,簡単に成功できるとは思えないのである。
 1クール13話のアニメでは,登場人物を100人単位にすることは難しい。しかも,ヒットしてから2期を放映しようとすると,1年以上後になってしまう。スマートフォンゲームアプリでは,継続的なイベントやピックアップガチャの開催が収益と大いに相関するので,肝心のアニメ展開に時間がかかるようでは,安定的なヒットは難しいだろう。

 Fateが成功したのは,もともと同人系のゲームが出自だったことと,人物追加が行いやすい物語構造だったことが要因と考えている。
 スマートフォンゲームは,ガチャが収益の主体になっていることを考えると,キャラクターのコレクションがユーザーの主目的になっていると見られる。ゲーム→アニメには展開できても,アニメ→スマートフォン用ゲームには問題があると言って差支えないであろう。

 また,2019年はクラウドゲームが登場し,ゲーム専用機が危機に立たされると話題になった年であった。だが,今回も,そのような兆候はなさそうである。ここ10年以上,ゲーム専用機は,ほぼ絶え間なく,なくなるという風評にさらされてきた。携帯電話,スマートフォン,VR,クラウドゲームと,何度も危機が報道されたが,現時点ではオオカミ少年状態に見える。任天堂が多くの人に好感を持たれ,関心の高い企業となっているため,おそらく危機は絶えず語られることになるだろう。

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 次に,次世代機についてである。Microsoftは次世代機「Xbox」を発表した。最初に登場するマシンは「XBOX Series X」なるそうだが,いまひとつ分かりにくい印象である。スペックについては,サプライズはない。Xboxの特徴は,そのデザインと大きさであろう。

 正確なサイズは出ていないが,コントローラとの比較感からは,かなり大きいものだと推測される。エース経済研究所としては,縦置きにしたことですっきりとした見た目になることを評価する。だが,世界的な都市への人口流入で都心部の居住スペースが狭くなっており,このような巨大なゲーム機が果たして受け入れられるかどうかは疑問である。
 スマートフォンの普及に伴い,モニターレスの機器が着実に減少していることも考えると,テレビやPCディスプレイを必要とする据え置きゲーム機のプレイスタイルが何時まで受入れられるか考えておく必要があるだろう。

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 次にPlayStation 4である。今回の年末商戦期は,日本でも1万9980円と1万円値引きが実施された。これは非常に評価できる出来事である。この連載で以前,米国のみの値引きは問題があると指摘した。
 前回,米国に次ぐ市場である日本でゲーム専用機が売れることが認識されたとも述べた。このタイミングでの大幅値引きは,SIEが日本市場の重要性を認識している証左にほかならないと考える。

 先ほども述べたように,スマートフォンの台頭で,ゲーム機が売れなくなるということが生じていないことはNintendo Switchが証明した。任天堂が「WiiU,3DSで失敗したのは,スマートフォンに影響されたというよりも,デザインやスタイルを軽視したゲーム機を発売したためである。であるならば,SIEはゲームのプレイスタイルの革新を目指したほうが良いように思う。

 ソニーは,洗練されたデザインで20世紀後半に世界を席巻した。ウォークマンで新しいスタイルを提案できた。かつて実現したことが,今は不可能だということはないと,エース経済研究所では考えている。2020年には,PS4の落ち込みによって,反転への期待がPS5に集中することになるだろう。SIEの攻勢に期待したい。

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 最後に,「リングフィットアドベンチャー」について触れたい。以前,第1週の状況だけで失敗の可能性を指摘したが,第2以降の推移は過去あまり見られない推移となった(下図参照)。通常,ゲームソフトは初週をピークに落ちていく(供給が不足した場合はこの限りではないのだが),リングフィットアドベンチャーに関しては初週の消化率は高くなかったので,判断を見誤ったと言わざるを得ない。
 とくに9週めに販売が大きく増えるようなケースはまず見られない。これは,2週め以降に需要が増加し,供給が追い付かなったためと考えている。ダウンロード販売がある現世代機では,まず発生しないケースなのだが,リングフィットアドベンチャーは周辺機器が必須で,この点がボトルネックになったと言っていいだろう。

●リングフィットアドベンチャーの国内実売推移
(出所)ファミ通
【月間総括】2019年の振り返り,そして次世代機などの展望

 リングフィットアドベンチャーは,最初に公開された動画ではフィットネスが強調されていたため,エース経済研究所でも健康器具的な扱いをされると想定していた。
 しかし,ソーシャルメディアなどの反響を見ると,ユーザーはタイムアタックに挑戦するなど,ゲームとして認識しているようである。

 Nintendo Switchは,厳然たるゲーム機であり,ゲームソフトが好まれる傾向があること考えると,リングフィットアドベンチャーはゲームソフトであると認識が変わったことが,このような異例の販売推移になっているのでないかと考えている。
 やはり,成功失敗に関しては,最低2週間は見る必要があるということだろう。早計な判断は反省すべき事柄である。