「24Frameの邪道経営哲学」第26回:邪道を総括する時の哲学
そんな本連載も一つの曲がり角に来たな,という思いが出てきましたので,今回はそれについてお話しします。
思えばこの連載中にもいろいろなことがありました。
そもそも本連載は「MEAL DOGS」というゲームのパブリッシュを我々24Frameが担当することになったのが,開始のきっかけです。
ただこれが資金調達からなので,我々のような零細にはリスクが高すぎるだろう。内情を暴露気味にでも宣伝していかねば採算など夢のまた夢。誰か助けてください。
ということを考えていたときに,本連載の担当N氏に(当初はちょっと別の角度だったのですが)相談し,晴れてその機会を得たというのが開始の経緯です。
資金調達から制作まですべてを行ってはいるものの,「METAL DOGS」は「メタルマックス」という伝統あるRPGの派生作品です。故に(当たり前のことですが)「METAL DOGS」でなんでもかんでも暴露すると,必然的に「メタルマックス」自体の暴露をはらんでしまう可能性があるのでした。これには慎重にならざるを得ません。
そこで範囲限定の暴露を既定路線としつつ,僕の人生に向けた雑感を織り交ぜていくというのが「内情暴露日誌」の内容となっていました。
そして,その流れが高まっていき,いっそそれならより社内的なことに重きを置いて,外部への迷惑を,より「かけ得ない」方向に調整してはどうか,と生まれたのが当連載「邪道経営哲学」です。
ここではより内輪の話になっていくのですが,我々もMETALDOGSだけでなく,完全オリジナルの作品などを作っていくようになります。
その下地としてUEの話をしていたら当時の日本のEpic Gamesのスタッフさんにリポストしていただいて突発的にPVが増えたのもいい思い出。
ここで始まった社内開発は後に「JUMP de PON」として世に出ます。
これはフリーゲームだったのですが,多くのメディアさんが取り上げてくれて100万人以上の方の目に触れることになったようです。
その下地として,METALDOGSを片手に各地のインディーゲームイベントに出席するようになっていき,そこでさまざまな人と知り合い,その積み重ねの結果としてのメディア露出であったことは言うまでもありません。
これらはパブリッシャとして「広報」というものをいかにするか,という戦いの歴史だったのですがゲームの内容的な挑戦も続けておりました。
2023年8月にアーリーアクセスを開始した「INUMEDA」ですが,これのコンセプトは以下の通りでした。
・グラフィックを極限まで記号化する
・バトルシステムを面白くする
その先には「昔懐かしい2DRPGフォーマットの再現」というものもあるのですが,現在はまだそこに着手前の段階です。
そして上記の「バトルシステムを面白くする」の部分が大きな謎を抱えたまま我々の前に横たわっている(関連記事)。
これが現在まで続く「INUMEDA」のアーリーアクセスたる所以となります。
そこへの挑戦として,内部で結構な修正が施されたのですが,膨大なデータの落としどころと,その先にある「そこに物語を乗せていく」という作業は当面は終わるというよりそれに割けるリソースを捻出するのがいつになることか,というのが実情です。
自社制作だけで潤っていればともかく,そうではない場合は極めて現実的な理由から「隙あらば社内制作」ということになります。しかしそれは「ほかで上げた利益を社内制作に突っ込む」ということに他なりません。
(これもまた「邪道的」な経営のポリシーではあるのですが,ここには書けなかったさまざまなお仕事を経て「最初から期限を決めておく」という王道的なやり方にも悪くない側面を感じる今日この頃です)
そしてこの邪道的な流れは我々の最近作となる「OIHAGI STREAMER SURVIVAL」でも継続されています(関連記事)。
これもまたスタッフの空き時間,使用可能なリソースを前提に邪道的なマネジメントを経て制作されたものです。
これは
・内容的にはアーリーアクセスではなく最初から完成である
・価格も「JUMP de PON」と「INUMEDA」の中間に位置するもの
という我々の経緯からのハイブリッド型で,それを検証する直近の実験になります。そして当面の意味では,最後の実験になるかもしれません。
2年以上続いてきたこの邪道なる道のり。しかして,それはいずれにせよ王道へと接続する運命をはらんでいました。
社内制作というものはやってみたはいいけれど,「儲からないから続けられない」という結末に終わることがままあります。そのケースは我々も無数に見聞してきました。
そうならぬようにフレキシブルなアサインで会社の負担とならぬようにするバランス,それこそが邪道かもしれないが我々の経営である。
これが我々の「邪道経営哲学」でした。
しかしどうやら邪道というものは,最終的に王道に昇華されるもののようです。
意外だったのは「王道」というもののありようが「会社に仕事がたくさん来る」という形だったことです。
それには上記のさまざまなカオティックな試みへの評価もあったのかもしれませんが,基本的には「スタッフの真面目さが評価された」という非常に王道的な流れでした。
そしておそらく次に我々が社内制作の続報を出す際にも「王道」的な要素と対峙しつつ行うことになるでしょう。
最初に明確化されたスケジュールにより損失の最大額が計上され,それをマイナスからゼロ,ゼロからプラスにするための施策の構築,という風に。
これまでは邪道的に,ではありましたがゲーム制作の流れというものを普通は経験しない濃度で学ぶことができた。それがこの連載と共にあった2年間だったと思います。
そしてそれがあるからこそ,次は王道にもタッチしてみようと思える。
そしてこの連載も,どうやら我々の精神世界と共に約2年ごとにリニューアルされる運命のようです。
その内容は現在進行形で検討中ですが,おそらくより外向的で,個人的なものにシフトしていくのではないかと個人的には予想しています。
ここまでお読みいただいている皆様,いつもありがとうございます。そして,来年からの我々の精神的ステージにどうぞご期待ください。