【月間総括】薄型軽量化はハードの販売トレンドを変えうる重要な要素
今月はE3の話から始めよう。
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が出展しなかったこともあり,E3の来場者数は,過去最高となった2018年との比較では微減となったようだ。
次世代ゲーム機は来年になるため,今年は,サプライズを演出することが難しかったということもあるのだろう。
今年は,ソニーのゲーム部門にとって辛抱の年という印象である。PS4も,発売から6年めに入っており,ピークに比べて販売が落ちているのは否めない。今年は,ハードのてこ入れも難しいと考えているので,費用を抑えながら収益性の維持を図りたいということであろう。
任天堂は,E3ダイレクトを配信した。Switchの発売から3年めに入って,販売台数も3474万台(2019年3月末)と一定の存在感を示せるレベルになったこともあり,インディーズから中堅のサードパーティタイトル,自社の大型タイトルが揃った印象であった。
サプライズはなんといっても,Switchの代表作となった「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」の続編が発表されたことであろう。
このほか,「大乱闘スマッシュブラザーズ スペシャル」の有料DLCに「バンジョーとカズーイの大冒険」のバンジョーとカズーイ,スクウェア・エニックスの「ドラゴンクエスト」シリーズの勇者,が登場することが発表された。Wiiのころとは違い,ネットワーク接続が当然となった現状では,このようなアップデートによる関心の維持が可能になったことは有益だとエース経済研究所では考えている。
総合的に見て,任天堂のE3ダイレクトは,ゲーマーの関心を呼ぶには十分なラインナップだと思われる。
ただ,残念なのは,「あつまれ どうぶつの森」の発売が2020年3月20日へ延期になったことである。エース経済研究所では,2019年中の発売を前提に業績予想を行っているため,この点はややネガティブな印象である。
Switchタイトルは,昨年から発売が遅れている印象がある。任天堂にこの点をヒアリングすると,開発者がボリューム・クオリティを追求すれば,より多くの結果を得られると考えて,工数が増大する傾向があるということのようだ。
もちろん,クオリティは重要であるが,この考え方は,危険と裏腹であることを指摘しておきたい。エース経済研究所では,何度か指摘しているが,ソフトウェアのハードを牽引する効果は限定的と見なしている。
「マリオカート8」や「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」はSwitch版での販売本数が多く,Switchを牽引したタイトルだと
言う人もいるが,同じタイトルはWii Uにも投入されていたのである。Wii Uには任天堂の持つ強力なラインナップを投入しても,歴代ハードで最低の販売台数になってしまっている。
PlayStationで見ても,大型タイトルがほぼずっと出ていたにもかかわらず,PS3は約8000万台と3DSより少し多い程度で成功したとは言い難い。
これらのデータを見ていると,AAAタイトルがハードの普及を決定する要因になっているようには見えないのである。
話を戻そう。任天堂は,クオリティと販売時期のバランスを考慮する必要があるように思える。ハードの販売に影響がないのであれば,年に複数の大型タイトルが発売可能なスケジュールを考慮すべきではないだろうか?
もう一つ,以前から指摘しているが,デザインが与える影響である。
●発売から250週のゲームハード販売推移
ゲーム機販売の趨勢が「デザイン」と「スタイル」で決まると考えていることは,これまでも,何度か述べてきた。今回はさらに販売トレンドを変えたケースを見てみよう。
上記のグラフは発売から250週の販売推移をグラフ化したものである。250週といえばほぼ5年であり,全体を見るには最適であろう。
これまでの歴代ハードを見ると,まず,DS Liteが通常,年末商戦で起こる販売の急伸を季節外れの5月に起こしている,DSとDS Liteは機能,性能には大差がなく,違うのは外観だけである。小型化され,デザイン性も大きく改良されたのだ。このDS Liteは,DSシリーズの販売(着荷)台数1億5402万台のうち,実に9386万台と大部分を占めているのである。ニンテンドーDSと言えば,この改良されたDSLiteであると言っても過言ではない。
(参考資料)https://www.nintendo.co.jp/ir/finance/historical_data/index.html
次に,PSPでもPSP-2000が発売されたタイミングから,販売の傾向に変化が見られる。一般にPSPはモンスターハンターポータブルの販売で勢いを取り戻したとされているが,モンスターハンターポータブル2ndが2007年2 月22日発売,モンスターハ ンターポータブル2ndGが2008年3月27日発売で,この中間かつ,PSP2000の発売以降に販売の角度に変化がでたことは,ソフトの影響とは考えにくいといって差し支えないと思う。
グラフから言えることは,薄型軽量化のマイナーチェンジが奏功したということだろう。とくに日本は住環境の影響もあり,薄型軽量化が好まれる傾向もあることが,PSPにはより影響したのではないだろうか?
実際,当時SCE(現SIE)の広報から,DSに後れを取ったPSPに改良を施し,薄型,軽量化して販売を伸ばしたとのコメントも得ている。ソニーは伝統的にデザインを優先してきた傾向が強い。ソニーはハード販売の根源にデザインがあることを暗黙知としてもっていたと考えている。
以上から,携帯ゲーム機では薄型軽量化のマイナーチェンジが(劇的ではないにせよ)販売トレンドを変えている傾向が確認できた。
とくにDS Liteで注目したいのは,任天堂のゲーム機においては,外観だけの変化,それもデザイン性を重視した変化はこのときだけであるということだ。任天堂は,プレイスタイルは重視するものの,デザイン性を重視してきたとは言い難い,もう少し具体的にいうと格好がよくないデザインだったとエース経済研究所では考えている。
また,Wiiは5年でライフサイクルが終了したのも,デザインの変更を伴うマイナーチェンジを行わなかったからではないだろうか?
エース経済研究所では,情報の拡散が早くなっていることを踏まえ,2年程度でのデザインチェンジ,その3倍の期間である6年での世代交代を提唱したい。古川社長はこの6月で2年めに入った。ぜひ,デザイン性にも注目してもらいたいものである。
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が出展しなかったこともあり,E3の来場者数は,過去最高となった2018年との比較では微減となったようだ。
次世代ゲーム機は来年になるため,今年は,サプライズを演出することが難しかったということもあるのだろう。
今年は,ソニーのゲーム部門にとって辛抱の年という印象である。PS4も,発売から6年めに入っており,ピークに比べて販売が落ちているのは否めない。今年は,ハードのてこ入れも難しいと考えているので,費用を抑えながら収益性の維持を図りたいということであろう。
任天堂は,E3ダイレクトを配信した。Switchの発売から3年めに入って,販売台数も3474万台(2019年3月末)と一定の存在感を示せるレベルになったこともあり,インディーズから中堅のサードパーティタイトル,自社の大型タイトルが揃った印象であった。
サプライズはなんといっても,Switchの代表作となった「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」の続編が発表されたことであろう。
このほか,「大乱闘スマッシュブラザーズ スペシャル」の有料DLCに「バンジョーとカズーイの大冒険」のバンジョーとカズーイ,スクウェア・エニックスの「ドラゴンクエスト」シリーズの勇者,が登場することが発表された。Wiiのころとは違い,ネットワーク接続が当然となった現状では,このようなアップデートによる関心の維持が可能になったことは有益だとエース経済研究所では考えている。
総合的に見て,任天堂のE3ダイレクトは,ゲーマーの関心を呼ぶには十分なラインナップだと思われる。
ただ,残念なのは,「あつまれ どうぶつの森」の発売が2020年3月20日へ延期になったことである。エース経済研究所では,2019年中の発売を前提に業績予想を行っているため,この点はややネガティブな印象である。
Switchタイトルは,昨年から発売が遅れている印象がある。任天堂にこの点をヒアリングすると,開発者がボリューム・クオリティを追求すれば,より多くの結果を得られると考えて,工数が増大する傾向があるということのようだ。
もちろん,クオリティは重要であるが,この考え方は,危険と裏腹であることを指摘しておきたい。エース経済研究所では,何度か指摘しているが,ソフトウェアのハードを牽引する効果は限定的と見なしている。
「マリオカート8」や「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」はSwitch版での販売本数が多く,Switchを牽引したタイトルだと
言う人もいるが,同じタイトルはWii Uにも投入されていたのである。Wii Uには任天堂の持つ強力なラインナップを投入しても,歴代ハードで最低の販売台数になってしまっている。
PlayStationで見ても,大型タイトルがほぼずっと出ていたにもかかわらず,PS3は約8000万台と3DSより少し多い程度で成功したとは言い難い。
これらのデータを見ていると,AAAタイトルがハードの普及を決定する要因になっているようには見えないのである。
話を戻そう。任天堂は,クオリティと販売時期のバランスを考慮する必要があるように思える。ハードの販売に影響がないのであれば,年に複数の大型タイトルが発売可能なスケジュールを考慮すべきではないだろうか?
もう一つ,以前から指摘しているが,デザインが与える影響である。
●発売から250週のゲームハード販売推移
ゲーム機販売の趨勢が「デザイン」と「スタイル」で決まると考えていることは,これまでも,何度か述べてきた。今回はさらに販売トレンドを変えたケースを見てみよう。
上記のグラフは発売から250週の販売推移をグラフ化したものである。250週といえばほぼ5年であり,全体を見るには最適であろう。
これまでの歴代ハードを見ると,まず,DS Liteが通常,年末商戦で起こる販売の急伸を季節外れの5月に起こしている,DSとDS Liteは機能,性能には大差がなく,違うのは外観だけである。小型化され,デザイン性も大きく改良されたのだ。このDS Liteは,DSシリーズの販売(着荷)台数1億5402万台のうち,実に9386万台と大部分を占めているのである。ニンテンドーDSと言えば,この改良されたDSLiteであると言っても過言ではない。
(参考資料)https://www.nintendo.co.jp/ir/finance/historical_data/index.html
グラフから言えることは,薄型軽量化のマイナーチェンジが奏功したということだろう。とくに日本は住環境の影響もあり,薄型軽量化が好まれる傾向もあることが,PSPにはより影響したのではないだろうか?
実際,当時SCE(現SIE)の広報から,DSに後れを取ったPSPに改良を施し,薄型,軽量化して販売を伸ばしたとのコメントも得ている。ソニーは伝統的にデザインを優先してきた傾向が強い。ソニーはハード販売の根源にデザインがあることを暗黙知としてもっていたと考えている。
以上から,携帯ゲーム機では薄型軽量化のマイナーチェンジが(劇的ではないにせよ)販売トレンドを変えている傾向が確認できた。
とくにDS Liteで注目したいのは,任天堂のゲーム機においては,外観だけの変化,それもデザイン性を重視した変化はこのときだけであるということだ。任天堂は,プレイスタイルは重視するものの,デザイン性を重視してきたとは言い難い,もう少し具体的にいうと格好がよくないデザインだったとエース経済研究所では考えている。
また,Wiiは5年でライフサイクルが終了したのも,デザインの変更を伴うマイナーチェンジを行わなかったからではないだろうか?
エース経済研究所では,情報の拡散が早くなっていることを踏まえ,2年程度でのデザインチェンジ,その3倍の期間である6年での世代交代を提唱したい。古川社長はこの6月で2年めに入った。ぜひ,デザイン性にも注目してもらいたいものである。
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