【月間総括】クラウドゲームや5G通信網はゲームを快適にするのか?
今月は,先月の補足から始めよう。まず,この表をご覧いただこきたい。これは,DeNAのゲーム事業の売上高推移を示したものである。
●DeNA ゲーム事業の四半期業績推移
前回,「スマートフォンゲームアプリ市場に対する楽観論は大きい。商戦期がある1-3月は回復すると多くの経営者は想定しているからだ」と述べた。実際,DeNAのゲーム事業の第4四半期計画は第3四半期比で+16%と高い伸びを達成する見通しになっている。これは,正月(とくに元旦)の商戦期を含む,足下の状況を勘案してのものだと,会社側は説明している。しかし,エース経済研究所では,1月は問題がないにしても,3月の動向が不透明であるため,達成できるかどうか,3月初めの時点では不透明と考えていた。
ところが,3月に同社が展開する「メギド72」に大きな動きがあったのだ。
●メギド72のアップストアランキング推移
3月14日のホワイトデーイベント以降,同タイトルのランキングが急上昇したのである。デイリーでは11位であるが,瞬間的には10位にランキング入りした。おそらく過去最高になったと推測される。
今回のホワイトデーイベントでは,BGM「俺らイケメン」が非常に独特であり,SNSで盛り上がったことが大きい。加えて,プレイヤーと運営がお互いを尊重していること,戦略性の高いゲーム性などが口コミで広がっていることも寄与したと考えている。
それにしても,メギド72は,スタート時はランキングも低調であり,1年以上経過してから人気化するとは予想外だったといえる。
現状のスマートフォンゲームアプリは,オリジナルのタイトルはまずヒットしないというのが資本市場での共通認識となっていたことを考えると非常に驚きである。
エース経済研究所では,序盤の低調さを許容したDeNAの功績は大きいと考えている。DeNAは今後,このオリジナルコンテンツをどこまで発展できるかが見物と考えている。続報を待ちたい。
次は,3月19日にGoogleが発表したクラウドゲームサービス「Stadia」(※ステイディア。スタディアは間違い)で,年内に欧米でサービス開始を発表する予定である。クラウドゲームとは,ハードウェアを必要とせず。ゲームの処理をすべてデータセンター側で行うサービスだ。
エース経済研究所ではこのクラウドゲームにはこれまで問題があったと考えている。クラウドゲームサービスはコントローラに入力した移動や,コマンド選択,視点移動の情報を,サーバーに送信,サーバーが処理したうえで画像を生成,再度ネットに送信して,画像をモニターに表示するのが基本的な処理になる。
この処理に要する時間(遅延)が長すぎるのである。筆者は,かつてNTTドコモが展開した「dTAB」の「ドラゴンクエストX」を体験したことがあるが,コマンド入力が遅延しており,大回復を行おうとして,小回復呪文になってしまうケースや,「とくぎ」のつもりが「どうぐ」になってしまった経験がある。要するに実用性に問題があるのである。
今回,Googleは,専用回線と高性能サーバーなどを駆使することで遅延を大幅に削減できると考えているようだ。
顧客が,遅延があるから遊ばないというのであれば,遅延が削減できれば一気に普及する可能性はあるだろう。エース経済研究所では,「ハードウェアがないものが普及するか?」という疑問を提唱しているが,まだまだ多くの人は,「ハードウェアは,ソフトのために必要ないにもかかわらず,しかたなく購入するもの」と認識しているという。これが事実ならば,クラウドゲームも大いに普及する可能性があるということなるだろう。年内に始まるというサービス開始を待ちたい。
そのうえで,別の視点で考えてみたい。現在,ハイエンドのフォトリアル系ゲームの市場のベースとなる普及台数は,パソコンを入れて3億台を超えていると推測される。
人気ゲームは,発売から数日で1000万本以上売れる。ということは,StadiaはPS4 Pro以上のスペックのサーバーが1000万台近く必要になる。日米欧で展開するならば時差が存在するので,一か所のサーバー群であれば,時間差を利用して少なくできると思われるかもしれない。しかし,回線速度は地球規模になると無視できないほど遅延が大きくなってしまうため,ある程度地域別にしなければならないのである。
大量のサーバーと専用回線容量の維持には相当な資金が必要になるはずである。土地,建物,サーバー,専用回線,これを低廉なサービスとして提供するのは難しいように思えるが,Googleはレンタルサーバーサービスに大規模な投資をずっと継続していたので何らかの手当があるのかもしれない。
プレイヤーがハードウェアコストを必要としなくても,別の形で負担しなければならない。価格設定も興味深いところだ。
最後に,GoogleはStadiaでとくに言及していないのだが,メディアの方々から今回のクラウドゲームと合わせて必ず質問を受けた項目である「5G」についてコメントしておこう。つまり,5G携帯電話通信である。
次世代携帯電話通信網5Gには,レイテンシを削減する仕様が実装されることになっている。しかし,このレイテンシの削減は「フェーズ2」で実装予定であり,来年始まる5Gの最初のフェーズでは含まれないのである。
しかも,2022年頃(エース経済研究所の想定)にフェーズ2が開始されても,当初はエリアが相当限定される見込みである。しかも,エリア拡大ペースはそうそう早くできない。
NTTドコモやKDDI,ソフトバンクは政府からの通話料金の引き下げ圧力や,資本市場からの株主還元策強化の声を無視できない状況にあり,設備投資を増やす環境にないのである。
5Gに対する期待は大きいが,大幅な革新よりも,少しずつの変革しかできないことは理解しておく必要があるだろう。
●DeNA ゲーム事業の四半期業績推移
前回,「スマートフォンゲームアプリ市場に対する楽観論は大きい。商戦期がある1-3月は回復すると多くの経営者は想定しているからだ」と述べた。実際,DeNAのゲーム事業の第4四半期計画は第3四半期比で+16%と高い伸びを達成する見通しになっている。これは,正月(とくに元旦)の商戦期を含む,足下の状況を勘案してのものだと,会社側は説明している。しかし,エース経済研究所では,1月は問題がないにしても,3月の動向が不透明であるため,達成できるかどうか,3月初めの時点では不透明と考えていた。
ところが,3月に同社が展開する「メギド72」に大きな動きがあったのだ。
●メギド72のアップストアランキング推移
今回のホワイトデーイベントでは,BGM「俺らイケメン」が非常に独特であり,SNSで盛り上がったことが大きい。加えて,プレイヤーと運営がお互いを尊重していること,戦略性の高いゲーム性などが口コミで広がっていることも寄与したと考えている。
それにしても,メギド72は,スタート時はランキングも低調であり,1年以上経過してから人気化するとは予想外だったといえる。
現状のスマートフォンゲームアプリは,オリジナルのタイトルはまずヒットしないというのが資本市場での共通認識となっていたことを考えると非常に驚きである。
エース経済研究所では,序盤の低調さを許容したDeNAの功績は大きいと考えている。DeNAは今後,このオリジナルコンテンツをどこまで発展できるかが見物と考えている。続報を待ちたい。
エース経済研究所ではこのクラウドゲームにはこれまで問題があったと考えている。クラウドゲームサービスはコントローラに入力した移動や,コマンド選択,視点移動の情報を,サーバーに送信,サーバーが処理したうえで画像を生成,再度ネットに送信して,画像をモニターに表示するのが基本的な処理になる。
この処理に要する時間(遅延)が長すぎるのである。筆者は,かつてNTTドコモが展開した「dTAB」の「ドラゴンクエストX」を体験したことがあるが,コマンド入力が遅延しており,大回復を行おうとして,小回復呪文になってしまうケースや,「とくぎ」のつもりが「どうぐ」になってしまった経験がある。要するに実用性に問題があるのである。
今回,Googleは,専用回線と高性能サーバーなどを駆使することで遅延を大幅に削減できると考えているようだ。
顧客が,遅延があるから遊ばないというのであれば,遅延が削減できれば一気に普及する可能性はあるだろう。エース経済研究所では,「ハードウェアがないものが普及するか?」という疑問を提唱しているが,まだまだ多くの人は,「ハードウェアは,ソフトのために必要ないにもかかわらず,しかたなく購入するもの」と認識しているという。これが事実ならば,クラウドゲームも大いに普及する可能性があるということなるだろう。年内に始まるというサービス開始を待ちたい。
そのうえで,別の視点で考えてみたい。現在,ハイエンドのフォトリアル系ゲームの市場のベースとなる普及台数は,パソコンを入れて3億台を超えていると推測される。
人気ゲームは,発売から数日で1000万本以上売れる。ということは,StadiaはPS4 Pro以上のスペックのサーバーが1000万台近く必要になる。日米欧で展開するならば時差が存在するので,一か所のサーバー群であれば,時間差を利用して少なくできると思われるかもしれない。しかし,回線速度は地球規模になると無視できないほど遅延が大きくなってしまうため,ある程度地域別にしなければならないのである。
大量のサーバーと専用回線容量の維持には相当な資金が必要になるはずである。土地,建物,サーバー,専用回線,これを低廉なサービスとして提供するのは難しいように思えるが,Googleはレンタルサーバーサービスに大規模な投資をずっと継続していたので何らかの手当があるのかもしれない。
プレイヤーがハードウェアコストを必要としなくても,別の形で負担しなければならない。価格設定も興味深いところだ。
最後に,GoogleはStadiaでとくに言及していないのだが,メディアの方々から今回のクラウドゲームと合わせて必ず質問を受けた項目である「5G」についてコメントしておこう。つまり,5G携帯電話通信である。
次世代携帯電話通信網5Gには,レイテンシを削減する仕様が実装されることになっている。しかし,このレイテンシの削減は「フェーズ2」で実装予定であり,来年始まる5Gの最初のフェーズでは含まれないのである。
しかも,2022年頃(エース経済研究所の想定)にフェーズ2が開始されても,当初はエリアが相当限定される見込みである。しかも,エリア拡大ペースはそうそう早くできない。
NTTドコモやKDDI,ソフトバンクは政府からの通話料金の引き下げ圧力や,資本市場からの株主還元策強化の声を無視できない状況にあり,設備投資を増やす環境にないのである。
5Gに対する期待は大きいが,大幅な革新よりも,少しずつの変革しかできないことは理解しておく必要があるだろう。
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