日本のスマホアプリ市場は構造的不況に陥りつつあるのか?
今月は,スマートフォン用ゲームアプリ各社の決算の話を進めよう。
まずは,この表をご覧いただきたい。これは,エース経済研究所がフォローもしくはウオッチしている12月末を四半期決算日とするスマートフォンゲームアプリ専業メーカーの業績をまとめたものである。
スマートデバイスゲームアプリ専業メーカーの直前四半期業績
前四半期比(QoQ),前年同期比(YoY)ともに大幅減益の企業が多いことが分かるだろう。前四半期比,前年同期比で増収増益なのは,ガンホー・オンライン・エンターテイメントのみで,前四半期比増収はボルテージ,前年同期比増収なのはサイバーエージェントのゲーム事業だけという状況だ。
とくに12月にイベントを開催するなど,固定費を掛けたコロプラは赤字に転落した。DeNAもゲーム事業は前四半期比,前年同期比ともに大幅減益となり,全社では赤字に転落となった。このほか,サイバーエージェントのゲーム事業も,「ドラガリアロスト」が好調な初動後に落ち込んだことに加えて,積極的な採用増が裏目に出て大幅減益となった。
ゲーム専用機向けを主力とするスクウェア・エニックス・ホールディングスもスマートデバイス向けは前四半期比,前年同期比ともに減収減益,ソニーのFGOを中心とするスマートデバイス事業も前年同期比で大幅減収だったようだ。エース経済研究所では普段フォローしていないKADOKAWAの手掛ける「テクテクテクテク」も不振だったことが発表されており,スマートフォンゲームアプリ市場は厳冬を迎えた印象である。
6月末を決算とする四半期業績について,ここで触れたときには,各社の説明は個別要因かつ一時的との見方が多かったが,徐々に構造的な問題ではないかという声も聞かれるようになってきた。
すなわち,スマートフォンゲームアプリ市場の成長局面が終わり,かつてコンシューマゲーム市場で起こったゲーム離れと呼ばれる現象が起こっている可能性である。
まだ,多くの経営者は,現状の落ち込みについて名称がついていないため,事態が悪化している認識に乏しいように思われる。
2012年に,ガンホーの「パズル&ドラゴンズ:パズドラ」を嚆矢として始まったスマートフォンゲームアプリ市場は曲がり角を迎えつつあるようだ。
一つは,ガチャである。ガチャが収益をもたらしていることは事実であるが,経営者と議論しても,アンケートの回答で多い不満点は,ガチャでレアキャラを引く確率が低いということのようだ。そのため,ガチャを当たりやすくしたゲームを出しているメーカーもあるが,エース経済研究所では,あまり効果がないと考えている。
最近では個別アイテムのガチャ確率も明記されるところが増えてきているが,非常に低確率だと分かっていてもガチャを回す人は絶えない。低確率が業績に影響しているわけでもない。
また,エース経済研究所では,定期的にユーザーとのインタビューを実施している。ユーザーインタビューで感じるのは各ゲームが肥大化して拘束時間が長くなっていることである。
「パズドラ」が隙間時間を利用して手軽に遊べることで市場を拡大したことを考えると,ボリュームを追求しすぎて,手軽にはスマートフォンゲームアプリが遊べなくなっているのかもしれない。
解決のヒントは,「パズドラ」を手掛けるガンホーが業績を回復しつつ点にあるかもしれない。これは子会社グラビティの「ラグナロクM」の好調によるものが大きいのであるが,ニンテンドーDSが手軽なゲームでプレイヤーを回帰,掘り起こした動きに似ている。これは,魔法石を大量に配ったことでプレイヤーが回帰し,単純なゲーム性が再認識されたということだろう。加えてガチャの確率を上げるよりも試行回数を増やしたほうがよいということを示しているのではないだろうか?
ガンホーは,「パズドラ」を「ラグナロクオンライン」と同様にリリース当初から10年以上の長期に遊ばれるコンテンツにすることを目的としていた。
驚かれるかもしれないが,スマートフォン用ゲームアプリ市場が拡大するかどうかも分からない時期に,10年以上の運用を想定して開発していたのである。
スマートフォンゲームアプリ市場に対する楽観論は大きい。商戦期がある1-3月は回復すると多くの経営者は想定しているからだ。しかし,前四半期で増えても,前年同期比ではどうだろうか? エース経済研究所では,構造的な問題を抱えつつあるように感じる。近い将来,モバイルゲームの経営陣はイノベーションを起こす必要に迫られるだろう。
まずは,この表をご覧いただきたい。これは,エース経済研究所がフォローもしくはウオッチしている12月末を四半期決算日とするスマートフォンゲームアプリ専業メーカーの業績をまとめたものである。
スマートデバイスゲームアプリ専業メーカーの直前四半期業績
前四半期比(QoQ),前年同期比(YoY)ともに大幅減益の企業が多いことが分かるだろう。前四半期比,前年同期比で増収増益なのは,ガンホー・オンライン・エンターテイメントのみで,前四半期比増収はボルテージ,前年同期比増収なのはサイバーエージェントのゲーム事業だけという状況だ。
とくに12月にイベントを開催するなど,固定費を掛けたコロプラは赤字に転落した。DeNAもゲーム事業は前四半期比,前年同期比ともに大幅減益となり,全社では赤字に転落となった。このほか,サイバーエージェントのゲーム事業も,「ドラガリアロスト」が好調な初動後に落ち込んだことに加えて,積極的な採用増が裏目に出て大幅減益となった。
ゲーム専用機向けを主力とするスクウェア・エニックス・ホールディングスもスマートデバイス向けは前四半期比,前年同期比ともに減収減益,ソニーのFGOを中心とするスマートデバイス事業も前年同期比で大幅減収だったようだ。エース経済研究所では普段フォローしていないKADOKAWAの手掛ける「テクテクテクテク」も不振だったことが発表されており,スマートフォンゲームアプリ市場は厳冬を迎えた印象である。
6月末を決算とする四半期業績について,ここで触れたときには,各社の説明は個別要因かつ一時的との見方が多かったが,徐々に構造的な問題ではないかという声も聞かれるようになってきた。
すなわち,スマートフォンゲームアプリ市場の成長局面が終わり,かつてコンシューマゲーム市場で起こったゲーム離れと呼ばれる現象が起こっている可能性である。
まだ,多くの経営者は,現状の落ち込みについて名称がついていないため,事態が悪化している認識に乏しいように思われる。
2012年に,ガンホーの「パズル&ドラゴンズ:パズドラ」を嚆矢として始まったスマートフォンゲームアプリ市場は曲がり角を迎えつつあるようだ。
一つは,ガチャである。ガチャが収益をもたらしていることは事実であるが,経営者と議論しても,アンケートの回答で多い不満点は,ガチャでレアキャラを引く確率が低いということのようだ。そのため,ガチャを当たりやすくしたゲームを出しているメーカーもあるが,エース経済研究所では,あまり効果がないと考えている。
最近では個別アイテムのガチャ確率も明記されるところが増えてきているが,非常に低確率だと分かっていてもガチャを回す人は絶えない。低確率が業績に影響しているわけでもない。
また,エース経済研究所では,定期的にユーザーとのインタビューを実施している。ユーザーインタビューで感じるのは各ゲームが肥大化して拘束時間が長くなっていることである。
「パズドラ」が隙間時間を利用して手軽に遊べることで市場を拡大したことを考えると,ボリュームを追求しすぎて,手軽にはスマートフォンゲームアプリが遊べなくなっているのかもしれない。
解決のヒントは,「パズドラ」を手掛けるガンホーが業績を回復しつつ点にあるかもしれない。これは子会社グラビティの「ラグナロクM」の好調によるものが大きいのであるが,ニンテンドーDSが手軽なゲームでプレイヤーを回帰,掘り起こした動きに似ている。これは,魔法石を大量に配ったことでプレイヤーが回帰し,単純なゲーム性が再認識されたということだろう。加えてガチャの確率を上げるよりも試行回数を増やしたほうがよいということを示しているのではないだろうか?
ガンホーは,「パズドラ」を「ラグナロクオンライン」と同様にリリース当初から10年以上の長期に遊ばれるコンテンツにすることを目的としていた。
驚かれるかもしれないが,スマートフォン用ゲームアプリ市場が拡大するかどうかも分からない時期に,10年以上の運用を想定して開発していたのである。
スマートフォンゲームアプリ市場に対する楽観論は大きい。商戦期がある1-3月は回復すると多くの経営者は想定しているからだ。しかし,前四半期で増えても,前年同期比ではどうだろうか? エース経済研究所では,構造的な問題を抱えつつあるように感じる。近い将来,モバイルゲームの経営陣はイノベーションを起こす必要に迫られるだろう。
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