[TGS 2017]VR/ARコーナーでの非ゲーム系コンテンツに見る最新動向

 東京ゲームショウ2017のVR/ARコーナーをいろいろと紹介してきているが,今回は非ゲーム系のVRコンテンツを扱っているブースをまとめてみた。ツール系やシステム,技術デモ,ビジュアル作品までちょっと散漫になってしまっているが,新しいテクノロジーに挑んでいるところも少なくない。業界の次の動向を探るうえでも目を通してみてほしい。

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●ELROIS
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 韓国ELROISでは,撮影した写真から3Dアバターモデルを自動生成するシステムを展示していた。最終的にはMixed Realityがターゲットのようで,MRアバターと呼ばれている。生成されたモデルはリターゲティングされてすぐに動く,踊るといったアクションを展開できる。驚いたことに今回の出展が世界初公開のようだ。
 生成方法は,ターンテーブル上に立って,5段階くらいで高さを変えつつゆっくりと全周を3Dスキャナで撮影し,服装まで含めて全身の3Dキャプチャを行い3Dモデルとテクスチャを生成する。ある意味,これ以上ないくらいまっとうな方法である。

高さを変えてキャプチャしていく
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使われてるiPad用の3DセンサーはKickstarterで見たことがある。というか出資してた気がする(届かないけど)
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 作成したアバターがダンスしているところがブース内のディスプレイで示されていたが,見ていると脇がムササビ化した例もある。黒い服だと赤外線計測で誤認識が多くなるのだろうか。3体は黒い服だが,女性のものだけつながっている。ゆったりしていて身体の腺が出にくかったのか,素材のせいか,本当にこういう服だったという可能性も捨てきれない。なんにしても計測時はAポーズくらいで静止しておくのがよさそうだ。

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 そのほか,事前に作られたアバターは口が開いたりしていたので確認してみると,手や指に関しては修正を加えて最終形にするとのことだった。デモで使われている韓国製MMORPGにおける標準エルフ顔といった風情の金髪おねーさんは実在のモデルさんをキャプチャしたものだそうだ。
 ELROISでは,こういったアバターを使ってゲームやAIコンシェルジェサービスなどを展開していくとのこと。

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●EmbodyMe
 EmbodyMeも写真から3Dアバターを生成するシステムだが,こちらは正面からの顔写真1枚で3Dモデルを生成する。概要は公式動画を見るのが分かりやすい。


 ある程度は顔の動きにも対応しており,目を閉じたり,音声に対してのリップシンクなども行われることが分かる。スキャンした画像から作られたデータは,顔と髪といった具合にパーツごとに分けて管理されるので,簡単に顔や髪型を変更することが可能だ。具体的には,ツール内でカタログを開き,表示されたオブジェクトをつかんで自分にドロップ動作をするだけだ。
 基本的にRiftやViveでのVRアバターとして使われることを前提としているため,ハンドコントローラで手の位置を取ってIKで身体の動きを作っていると思われるが,モーションに少々ぎこちないところがあるのは否めない。
 なお,これは日本発のサービスなのだが,自分の顔のアバターというのはあまり日本人向きではないように思われる。可愛い系のSDキャラにする(それはそれで技術が必要だが)オプションなどはないのかと(CEDECで)聞いたのだが,制作をしているPaneoとしてはむしろ超リアルを目指したいとのことだった。

顔と髪は別パーツで登録される
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●Gugenka from CS-REPORTERS
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 CS-REPORTERSのGugenkaブースではVRやARを使ったいくつかのデモが多数行われていた。ここではいくつかをピックアップして紹介する。

 PARALLEL VR LIVEでは,リアルタイムモーションキャプチャを適用したVRキャラクターがスマホに配信され,多人数でリアルタイムVRライブを楽しめるというデモが行われた。iPhoine 6と簡易VRゴーグルでバーチャルなライブ会場に参加する。登場したのはバーチャルアイドルしノのメめぐちゃんだ。


 だいたい上の動画のようになるはずだったのだろうが,なぜかキャラクターの動きが粗いのだ。多くても秒間5回くらいしか描き変わっていないのではないかと思われる。首振りへの追従は問題なく,背景の3Dオブジェクトも滑らかに動いているのだが,キャラクターだけカクカクしていてときどきワープする感じだ。明らかにキャラクターのモーション情報がちゃんと伝わっていない。まあデモの場所の電波状況がいいとは到底思えないのでしかたないのだが,説得力には欠けるデモになってしまっていたかもしれない。

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 ARKitを使ったフィギュアのデモでは,壁に掛かっているパッケージからフィギュアを取り出し,任意の位置に配置できる。フィギュアによってはモーションなどが仕込まれており(最終的にはすべてに入るのだろうが),モーションを再生することも可能だ。そのほか,インタラクティブ要素として用意されているのがスプレー缶だ。これは着色用ではなく,アクションをさせるためのトリガーとなるものである。スプレーをかけると巨大化したりするのだ。

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 さらに,フィギュアには関節が仕込まれており,スマホ上で操作することでポーズを変更できる。円で表示される関節部をぐりぐり動かしていけばよい。IKで連動しているので複数の関節の調整も可能だ。これで登録すると,普通に立っていたフィギュアがスプレーを掛けると指定したポーズにアニメーションしたりするのだ。
 現在のところ,基本システムは無料にして追加フィギュアで課金といったマネタイズが検討されている。また,コラボなどのB2B展開も考えているとのこと。


 エロマンガ先生のめざまし!VR 義妹と同居生活は,スマホVRに6DoFの操作性を加味したものだ。デモが始まり,ドアノブを見つめると正面にあるドアが少しだけ開くのだが,そのままではドアしか見えない。そこで左側に回り込むと,ちょっとだけ顔をのぞかせた様が確認できる。AKKitを使うことで,いわゆるInside-Outのポジショントラッキングが実装されており,視点を変えることができるのだ。ARKitを使っているので,iOS専用となるが,Google ARCoreでの実装も視野に入れているとのことだ。
 スマホ内蔵のセンサーによる3DoF(3軸の角度)の視野だけでなく,3軸の移動を含めた6DoFの操作ができるようになると,モバイルVRは格段に進化する。視点固定を前提にした360度動画的なモノとの相性はよくないのだが,操作しての自由度と自然さがまったく変わってくる。ARKitとARCoreInside-Outにより,こういったことが簡単にできるようになるというのは誰にとっても朗報であろう。

横に移動して,視点を下げて見上げたところ(左)と視点を上げて見下ろしたところ(右)
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●ポケット・クエリーズ
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 昨年も紹介したポケット・クエリーズIVORIだが,これはVR対応のエンジン&ツールであり,ツールの機能としては昨年と大きく変わるところはない。このエンジンはUnreal Engineなどのゲームエンジンとは異なっており,モデリングデータなどのアセットとゲームロジックをExcelで記述したシナリオを用意してVRアプリをビルドするシステムとなっている。
 今回の出展では,竹中工務店が以前から進めていた災害対策シミュレーショタmaXimをIVORIで実装した例が紹介されていた。元はUnityで作成され,竹中工務店が請け負ったビルでの震災・水害・火災発生時の避難訓練用のツールだ。煙の流れなどもシミュレートし,「ここで火災が起きたら煙はこう流れるから避難誘導はこっちで」のように使うもののようだが,退避時の人の動きもシミュレートされて防災技術を可視化する。ポケット・クエリーズでは竹中工務店からビルデータなどを借り受けて,(まったく同じとはいかないだろうが)その機能をIVORI上で再現している。ビル内で非常に多くの人が逃げ回っている様子が再現できているあたりは,IVORIの性能を示すものなのだろう。

 右端にあるアニメ絵のデモはちょっと異質な感じだったのだが,これはアニメーション制作をIVORIで行うというデモだった。同社はアニメで使われる3Dモデルなどの納入も行っているとのことで,近い将来に3D部分はほぼリアルタイム化されるだろうとの予測の下,Excelでシナリオを与えることでアニメ制作が行えるシステムを開発しているのだという。アニメで違和感のないセルシェーダの開発なども行っており,その成果の一端が展示されているわけだ。また,IVORIを使ったAEONの英会話アプリなども紹介されていた。

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●ネストビジュアル
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 MicrosoftのMRデバイスHoloLens用のデモを展示していたネストビジュアル。一応,「JK Bazooka」はシューティング(?)ゲームということになっているが,技術デモの意味合いのほうが強そうだ。
 内容は,HoloLensを装着してあたりを走り回る「セーラー服おじさん」を撃つ(爆撃する?)というもので,HoloLensでのクリック動作で狙った位置を爆発させることができる。とくにゲームクリアというものもなく,エンドレスに見つけては爆破を繰り返す。
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 ちなみに私は知らなかったのだが,セーラー服おじさんというのは原宿界隈にときどき出没するセーラー服を着たおじさんとのことで,レアポップなので見つけるといいことがあるとかないとか。「おじさん」というか爺さん的な風貌のようだが,調べると私より若かった。本作は本人の協力の下に作られたそうだ。

 HoloLensでのクリック動作というのが,目の前で親指と人差し指をL字型にした状態から指を閉じる動作に相当するのだが,狙って撃つというのは結構シビアだった。また,視野は狭めなので一瞬目の前を通り過ぎた影を探すのにもかなり探し回らないといけない。周囲の深度を認知しているので,モノの陰に隠れたり,台に乗ったりと状況に合った動作をしていることが分かる。
 現状のHoloLensは,一般人が使えるようなものでもなく(製品版は50万円くらい)性能もまだまだだが,将来的にはコンシューマに降りてくるはずの技術だ。近未来のエンタテイメントの一端が確認できた。

プレイ風景とMRで認識された空間の様子
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●クラウドクリエイティブスタジオ
V-REVOLUTIONのアプリ選択画面
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 クラウドクリエイティブスタジオがデモしていたのはいくつかのVRゲームだったが,出展の主目的はゲーム自体ではなく,その配信プラットフォームのほうだ。V-REVOLUTIONは,VRアーケードゲームのコンテンツを一括配信し(インストールなどは個別でやる必要があるようだが),起動メニューから複数のコンテンツを選択でき,店舗内でのマルチプレイをサポートし,さらにはゲームプレイの集計などを行ってくれる。一般的なVRゲーム開発環境に同社のSDKを使うことで簡単に対応ゲームにすることができるとか。
 PCベースの機材でVRゲームを実行することは簡単になってはいるが,アーケードゲームなどの業務用のシステムにするにはいろいろな機能が必要になってくる。そういった部分をサポートするシステムである。

脱出ゲームとリズムゲームの1シーン
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●ダズル
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 ダズルのAccessiVRは,VR製品に特化した運用分析サービスだ。ゲームのどこで詰まっているか,どういう行動を取っているかなどをリアルタイムにモニタリングできる。ユーザー属性や一般的なKPIのほか,ユーザー位置のヒートマップやVRに特化した情報では注視点なども記録されるので,360度動画などでユーザーがどこを注視しているかなどを確認できる。
 また,別途心拍計を用意することで,プレイヤーのバイタルデータを取得し,緊張度などを記録することもできるようにする予定だという。こういった情報をもとにゲームの改善に役立てたりするわけだ。


 会場のデモ画面では,マルチプレイヤーゲームで,それぞれのプレイヤーの位置と向き,どこでどのようなイベントが発生しているかをモニタリングする様子が示されていた。プレイヤーの1人を選ぶことでより詳細なデータが画面下に示されている。

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 また,同社ブースではUnreal Engine 4で開発されたVRシューティングゲームRaysも公開されていた。撃つことでゲージが溜まり,銃が進化していく。最終段階では両手に持った銃を合体させることで強力なビーム攻撃を放つこともできるといった仕様だ。4人同時対戦に対応している。

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●フォーラムエイト
道路ツールで適当に線を引くと
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 フォーラムエイトは古くからVRやシミュレータを手がけている会社だが,昨年に引き続き東京ゲームショウに出展している。
 UC-win/Roadは,Roadという名前から察せられるように道路関係を重視したシミュレーション作成ツールだ。地形データ上に線を引いていくだけで簡単に道路が作成でき,すぐにドライブシミュレータでその道路上を走行できる。さらには,さまざまなオブジェクトを配置し,スクリプトを仕掛けることもできる。会場のデモでは本当に線を引いただけの状態で道路上の走行ができることなどが示されていた。高さ調整をしてないので地形が食い込んだりしているがとりあえず走ることはできる。適当に引いた線でも滑らかに曲線化してくれる。

道路が作られ走行できる
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 そんなツールで作られた,ローズオンラインのマップ内を車で走れるドライブゲームも別途展示されていた。VRではないが3画面筐体によるドライブゲームだ。なぜローズオンライン? というのは聞いてもよく分からなかった。
 さらにPlayStation 4用にリリースされる「鐵 KUROGANE」は鉄道アクションゲームだが,元データはUc-win/Roadで作成されているという。襲い来るモンスターや岩などを線路上で回避しろという,一見すると無理ゲぽい雰囲気のゲームでも速度調整やポイント切り替えを駆使すればなんとかなるらしい。

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●アルファコード
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 高解像度全周動画ソリューションVRiderを展開するアルファコード。
 リコーThetaの普及で全天球画像はかなり身近なものになったが,全周を2K解像度に収めるThetaでは,画質にはもの足りない思いをした人もいることだろう。VRiderは8Kの映像を扱うソリューションである。
 8Kといってもピンとこない人も多いだろう。全周分が8Kだとすると180度で4K,その半分の90度の視野角で2K。フルHDの液晶ディスプレイを使っている人なら,画面の横幅の半分の距離から画面を見たときの絵の粗さ/細かさとなる。少なくとも中央部はそうなる。
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 一般的なVRヘッドセットで視聴することを考えると,視野角110度で横1080ドット,360度だと4Kあればだいたい足りる計算になるのだが,変形時に引き伸ばされるので余裕があるに越したことはない。部分拡大にも耐える画質といえるだろう。
 会場では8Kで撮影された都内(?)の道路走行の映像やドローンによる空撮映像でデモが行われていた。また,ちょっと場違い感はあったが同社が扱っている乙女ゲースマホアプリも展示されていた。
 
●Production I.G
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 Production I.Gブースでは昨年と同じく「攻殻機動隊 新劇場版 Virtual Reality Diver」と「ブレイブウィッチーズ VR-Operation Baba_Yaga-雪中迎撃戦」が展示されていた。攻殻機動隊は昨年と同じ内容とのことだが,ブレイブウィッチーズのほうはバージョンアップされているとのことだった(というか,昨年が参考出品だった)。

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●MyDearest
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 従来印刷メディアベースだった文化のVR化を展開するMyDearestは,VRでの小説であるInnocentForestとマンガのVR化を目指した夢の相談所の2つの作品で体験デモをしていた。
 InnocentForestはFullDive Novelと名付けられたジャンルの作品で,部分的に活字が出てきて,部分的にカットシーンが再生されてと,小説の成分とアニメ的な成分をミックスしたものとなっている。


 あくまでも個人的にだが,小説がVRに向いていない理由としては以下のものを挙げることができる。まず,解像度が活字の表現に足りていないこと。そして自分のペースで読めないことだ。それを踏まえた表現方法を考えることもできるだろうが,ストーリーだけが問題ならフルアニメーションにするほうがいいだろう。現状では2つが組み合わさることで,小説部分もアニメ部分も流れが悪くなっているように思われる。

 もう一方のFullDive Mangaである夢の相談所には絵本モードとマンガモードが用意されている。
 絵本モードは,絵本的な画質の画面の中でときおり3Dモデルがマイムをする感じだ。マンガモードでは,マンガのコマがひとコマずつ現れてセリフが語られる。手描きの絵のほうが全体に雰囲気はあるのだが,3Dモデルのほうが動きは豊か。デモでは前半が絵本で後半がマンガでと固定だったが,どちらか好みで選択できるのであれば問題はないだろう。2倍楽しめるという話もある。


 マンガのVR展開ということでは,昨年体験したスクウェア・エニックスのプロジェクトHikariは,すでにあるマンガコンテンツをVRで再構成するというコンセプトで作られたものだった。

 一方,こちらはVR用にマンガを作っているようで,新規で作るならコマ割の制限などをあえてつける必要はあったのだろうかと少し疑問になる。まあ,「マンガ」というのは作品の最大のキーワードでもあるのでマンガらしさを出す必要はあったのかもしれないが。


●講談社
Steam VRでRiftという組み合わせだった
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 講談社は昨年も出展していたHop Step Sing!を体験デモで展示していた。なんでも昨年出展していた第1弾の「キセキ的Shining!」が黒髪(?分類的には紫系)ショートの虹川仁衣菜ちゃんがセンターの曲で,第2弾の「kiss×kiss×kiss」が黒髪ロングの椎柴職理ちゃんがセンターの曲なのに対して,今回出展されていた最新作の「気ままに☆サマーバケーション」は金髪ツインテールの箕輪みかさちゃんがセンターの曲ということらしい。ユニット名はたぶんKirakira。
 夏ということもあって後半は水着になるのがひとつのトピックであり,昨年のステージ鑑賞と比べると今回は視聴者も作品内の登場人物として扱われる(荷物持ちともいう)点が異なっている。これに伴って,隣に密着してくるなど距離感がぐんと近くなっているのも特徴だ。暗いところでの瞳のハイライトのシェーダがちょっと気になったが,概ねクオリティは高い。

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 このシリーズのSteamレビューを読むとやたら「パンツが見えない」ことが話題になっていて笑ってしまうのだが,今回は水着回ということもあってかスカート姿でもちらりとパンツが見える。その分(?)値段が4割増しという設定だが,前2作より圧倒的にクオリティが高いと好評のようだ。