「24Frameの邪道経営哲学」第20回:キャラクターを追加する時の哲学


 さて,有料DLCの売れ行きも好調となっておりますMETALDOGSですが,今月はまた新たな話題があります。


ラブラドールレトリバー,参戦!


METALDOGSの世界に,新たな仲間がやってきます!
「24Frameの邪道経営哲学」第20回:キャラクターを追加する時の哲学

 それは題して「METAL DOGS NEW DOG ADDITION:LABRADOR RETRIEVER」! 新犬種「ゾーイ」の追加です。

 これの発売は2024年5月24日でして,これが何を意味するかと申しますと,言わずもがなこれはMETALDOGSのスピンオフ元であります「メタルマックス」シリーズの初代「メタルマックス」が発売されてからちょうど33年が経過した日,であります。

 私はその時小学5年生でありましたが,何気なく友人の家で見た「戦車が出てくる渋めのドラクエ」が気になってその後自分でやってみる,するとあれよあれよという間にミスターカミカゼを除いたWANTEDをすべて撃破している自分がいた,というのが大まかな記憶です。

33年前の思い出


まさかこいつがラスボス以上に御しがたい敵であろうとは
「24Frameの邪道経営哲学」第20回:キャラクターを追加する時の哲学

 逆に「ミスターカミカゼ」は逃亡中を許したんかい,という声が有識者からは聞こえてきそうですが,これはもう,なんというかその後何度もこのゲームをやり直した身としては「いや,ハンターオフィスの情報微妙に間違ってない? 実際には●●っていうより△△で出る感じなんだけど!?」というイチャモンもそこそこに,この事象はスティグマとなって残り続ける苦みばしった思い出なのです。

未だに色褪せぬこの輝き
 ちなみに有識者以外の方に申し上げておきますと「ミスターカミカゼ」というのは初代メタルマックスに登場するWANTEDモンスターです。
 WANTEDモンスターというのはザコモンスターとちがってそれを撃破すれば各町に点在する「ハンターオフィス」から巨額の賞金がもらえるという存在のものです(ちなみに上述のWANTEDモンスターの所在地の「情報」をくれるのもこの施設です。まさに荒野のモンスターハンターたちのオフィス,といえるでしょう)。

 この普通のRPGのバランスからすると「ウソだろ?」というレベルの巨額が手に入り,それで好き放題戦車を改造できる,というのが1991年5月24日に発売されたとは思えないファミコンゲーム,メタルマックスの先進性であります。

 さらにこの「ミスターカミカゼ」はWANTEDというボスに近い立場の存在でありながら「すぐ逃げる」という個性アリアリの別な意味での強敵でして,そうするとこの先進的なゲームはエンディングでこのボスが「逃走中」と表示されてしまうという野放図な自由を湛えた作品なのでありました。

 当時若造だった僕がこんなトリッキーなボスを初回プレイでは取り逃がしてしまったとして,いったい誰がそれを責められるというのでしょうか。

これまたまったく色褪せぬ輝き
 余談ですが,続編の「メタルマックス2」で「シグナル弾」という「打ち込んでおけばその敵の所在地が分かる」という新システムの情報を耳にした時には狂喜乱舞して躍り上がったことはいうまでもありません。

 ただし,ここにもシリーズの先進性による罠が潜んでいました。「メタルマックス2」ではすべてのWANTEDモンスターが固有のドロップアイテムを持っています。シグナル弾は打ち込んだ後にそのモンスターを撃破すると残骸の中からシグナル弾を回収して再び使えるという優れものですが,これがマニアックなプレイ,特に「全WANTEDのドロップを集める」というプレイをしているときには若干バッティングしてきます。

 ドロップの抽選を1回はこのシグナル弾に奪われてしまう感覚。ちなみにこのドロップにおいてすでに「リセマラ」が発生している訳ですが,この時代のリセマラとはアプリキルというハードに優しい話ではなく,実際に電流を流してハードリセットするというマジモンの「リセットボタン」で「マラソン」するという由緒正しい儀式のことです。当然これにより(SFC時代には多少確率は減ったとはいえ)セーブデータが消えてしまうというリスクは引き受ける覚悟が必要でした)。

 その真偽はともかくとして,これはあくまで雑談として象徴性を取り出すとするならば,こういった先進性がシリーズの圧倒的な魅力でありつつ,時にその先進性に振り回される,それがこの「メタルマックス」というシリーズの33年だったように思います。


そしてDOGSへ

既発の有料DLCはこちらです
「24Frameの邪道経営哲学」第20回:キャラクターを追加する時の哲学

 そして先進的なばかりではいられない,という問題意識から「布教版」としての側面を背負って生まれたのが「METAL DOGS」でした。

 これもとてもここには書けないような(とはいえ一部当連載には書いちゃってますが)経緯を経て開発,パブリッシングされたわけですが,これは布教版,カジュアル層への訴求をテーマとしておりました。

 そして正式リリースから1年が経過してのまさかの有料DLC第1弾がリリースされたのが1か月前の2024年4月24日なわけでございます。

 このリリースの経緯も,これまたここに書ける内容ではないといいつつこの連載では触れていますね。まあ,説明が難しいだけで特に秘密があったわけではないですけれど。

 ここに至ってはカジュアル層向けという方向性も緩和しており,結果メタルマックスシリーズが本来持っていたドンパチ感の復活も見受けられる,というのは前回も書いた通りです。

 これは有識者の間ではDモード,なんていっていたりするものの再現でもありますね。

 これはコマンドRPGでありながら「行動者が前の行動者の行動終了を待たずに行動する」というか「みんな一斉に行動する」という処理により,奇妙なリアルタイム感が生まれるという独特なシステムです。まったくもって先進的なんだから……!

 そんなこんなを思い出しながらの制作は「METAL DOGS」に新たな可能性を付加してくれました。こちらの要素の発展にも,引き続き期待を持っていただければと思います。

そしてDLC第2弾へ……

そして今,最新のリリースはこちらです
「24Frameの邪道経営哲学」第20回:キャラクターを追加する時の哲学

 さて,ゲームバランスに新たな可能性を見出しつつも,ようやく本論,今回は新しいキャラクターの追加と相成っております。

 柴犬,ドーベルマン,ブルドッグと来たら……次は勿論(?)ラブラドールレトリバーですよね。

 今回追加のラブラドールレトリバーのゾーイ,この名前にはちょっとした意味があります。
 ゾーイ,はラテン語で「生命」といった意味があり,転じてこのキャラクターはちょっと頑丈な生命力あふれるキャラとなっております。

 性能差はありつつも少し大きなその体躯によるアクションを,存分に楽しんでいただければと思っております。

ゾーイの専用武器

当然ながら「ラブ」がかかっています
「24Frameの邪道経営哲学」第20回:キャラクターを追加する時の哲学

 最後に裏話を一つ。
 なぜこの犬種の追加に至ったかにつきましては,これもまた当然ながらいろいろとあるのですが,一つにはシリーズ作に登場した「ラブリーバースト」という武器の存在がありました。

 これは見た目もゾーイ同様にラブリーでありながら,発射した際にもラブリーなことが起ります。

 今回はシリーズ33周年を記念した思い出話多めで進んでおりますが,その線で申しますと,これの初出は「メタルマックスゼノ」というシリーズ近作でありつつも,その萌芽は「メタルマックス4」のWANTEDモンスターである「ボニエ&クライヤ」に端を発します。

このパロディの現在における機能性や如何に!?
「24Frameの邪道経営哲学」第20回:キャラクターを追加する時の哲学
 これも往年の名作映画「俺たちに明日はない」のボニー&クライドのパロディでありつつ,ゲーム的に出会うイベントの流れは初代メタルマックスのWANTED「マッドマッスル」のパロディであったわけです(マッドマッスルとは端的に言うと「ちっ,ハンターかーーー!」という捨て台詞の後にダンジョンを利用して主人公たちを徒歩状態のフロアにおびき寄せ,自分だけ戦車に乗って襲ってくるという卑怯なんだかマッチョなんだか,という先進性にあふれるキャラでした)。

 そのボニエとクライヤが乗っていた戦車にピンクのラブリーな大砲がついていたんですね。
 それをその後のシリーズで切り出し「ラブリー砲」として登場させたのがメタルマックスゼノであった,と記憶しております。

 33年の歴史の中にパロディとセルフパロディがこれだけ入り組んでいるのもまた,シリーズの先進性と言えるのではないでしょうか。

 そしてパロディという文化が死滅しつつある今,このシリーズは何を模索するべきなのか,答えは神のみぞ知る,というのが現在のシリーズの状況です。

 その状況の一助となるべく,今後もMETAL DOGSにはさらなるアップデートをかけていければと思っております。
 その経緯はもちろん本連載でもフォローしていきますので,乞うご期待!