「24Frameの邪道経営哲学」第18回:周年を祝う時の哲学


 前回「JUMP de PON」というゲームを七転び八起きの精神で発売したことをお伝えした当連載ですが,その後の経過について少し。

 現在,各メディアでのビュー数(インプレッション数)は合計150万を超え,ダウンロード数は2万を突破。SNSでJUMP de PONと検索すればポンと出るのは我々の過去作の中でも中々に多い分量の情報数とプレイ動画ときたもんだ,という状態です。

おかげさまで,2万ダウンロードを突破しました
「24Frameの邪道経営哲学」第18回:周年を祝う時の哲学

 誤解を恐れずに申し上げれば,リリース前の我々はかなり複雑な心境でした。
 リソースの隙間を縫って作ったこのゲーム。そもそも別ラインでINUMEDAという我々にとっても謎なゲームを作っているのに,これ以上謎を増やしてどうする?

 そして案ずるより産むが易しのJUMP de PONのプチバズも含めると謎は増大するばかり。そうか,ゲーム制作というのは熱力学の第二法則のように,エントロピーのように,カオスが増大するんだ。道理で最近風が吹いたら桶屋が儲かる的に僕も花粉症の薬ばっかり買っているな。ブァーックショイ!ときたもんだ,であります。

これも知らぬ間に1.5万ダウンロード

 さらにそういうバタフライ効果について話しますと,JUMP de PONと同時期に無料配布をし始めた「Survirus」というゲームもありまして。(JUMP de PONはUnreal Engine 5の技術検証が制作のきっかけだったのですが,SurvirusはUnity開発を始めるときの技術検証用のタイトルでした)これも気が付けば1.5万本ほどダウンロードされております。

 こちらも無料化するなりのこの数字ですので,フリーゲームというジャンルは,フルプライス,インディーなどとはまたまったく別の沃野であるのだな,ということが今回の体感/発見の骨子であるということもできるかもしれません。

となると次はこれ……だったりします!?
「24Frameの邪道経営哲学」第18回:周年を祝う時の哲学

 まあ,それはともかくこれらをリリースしてみると予想を超えた反響があり,とにかくありがたいものです。これを糧にしつつ我々にとってもこれが「謎だ謎だ,自分が作ったゲームのはずが謎だ」などとつぶやきながら40時間連続(常に仕事をしている,とは言っていませんよ……)でデスクのディスプレイを眺める閉鎖的な生活を反省し,時には少し外界に視線を移してみよう,というきっかけになったことは間違いありません。

 そこでそんな我々が次に考えたこととは,ほかならぬ「METAL DOGS」のことでした。

 当然,今までも考えなかったわけではありません。しかしJUMP de PONのリリースに至る紆余曲折を見ても分かるように,社内のリソース管理は奇妙かつ絶妙な,超魔界村でいうところの「2周目は腕輪で」と言われる理不尽さに近しい難度を誇っていますから,なかなかに目途を立てにくい。

 これもスタッフが優秀なおかげで外からのお呼びがひっきりなしなせいですよHaHaHa,と手前味噌を繰り出すのも束の間,気が付けば3月24日というのはMETAL DOGSの正式リリースから,ちょうど1年となる記念すべき日であったことにフォーカスできる,ということに以前よりも明確な自信を持つことができたのでありました。

これと同じ日にJUMP de PONをぶつけるような我々です
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 そもそもJUMP de PONのリリースを,今年一番の大型タイトルと言っても過言ではない「FINAL FANTASY VII REBIRTH」にぶつけるような会社ですから,そのポリシーは極めてピーキーかバグっているかのどちらかです。

 FINAL FANTASY VII REBIRTHは言わずもがなスクウェア・エニックスという最大手パブリッシャの巨大予算によるUnreal Engineのテクノロジの最高到達点の一角であります。仕事柄,発売されたゲームはできるだけ買って触っていくスタイルの僕ですが,これにはさすがにその後の「ユニコーンオーバーロード」に手を出す時間がなくなるほどのインパクトを持って受け止めています。

 最初は駆け足で駆け抜けるつもりが気が付けばカードバウターを本業にしてしまうほど身を持ち崩しておりまして……。それにしても2024年の2〜3月は「龍が如く8」や「ペルソナ3 リロード」を筆頭に,素晴らしいゲームが出すぎです。

 ゲーム会社の決算システムというものはもう少し何とかならないものでしょうか,と思うのも束の間,我々も決算に追われてINUMEDAを国外アーリーアクセスしている訳ですからそんなことをいう権利も経緯もないことに思い至ります。

 FINAL FANTASY VII REBIRTHの対極とも言っていい場所,Unreal Engineによる小規模開発の可能性と無料ゲームという新たなジャンルによる謎のバズ,そこに我々のJUMP de PONは位置しています。

 とはいえ個人的には2月29日にはサンソフトから「へべれけ2」が出たことに重要な意味を見出さずにはいられなかったりもします。

まさかすぎる続編に感動が止まりません
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「10ミニッツ・オールダー」を含めれば,20年ぶり位だと思いますが
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 子どもの頃にメタルマックスと同じく「なぜみんなこれを知らないのか?」と叫びつつ何周もするというゲームの1本だった初代「へべれけ」。それがまさかの32年ぶりくらいの続編。しかも今年,2024年は僕が小僧だった頃にすでに「10年に一度しか作品を撮らない」という孤高の映画監督ビクトル・エリセ氏の新作「瞳をとじて」が公開される年ですらあります。

 それはすなわち「メタルマックス2」がスーパーファミコンで発売されてから31年が経過したということを示しており,それはまた同時にMETAL DOGSが発売1周年を迎えたということに,ほかならないのでありました。

 ちなみに「メタルマックス2」の発売日は平日でしたので中学生の僕は部活もどこへやらの勢いで帰宅するなり近所(といっても自転車で15分くらいかかります)のスーパー(昔はスーパーでゲームが売っていました)へダッシュして1万円近いソフトを買い求めたものであります。

未だにシビれるこのパッケージ!
 その圧倒的な面白さに陶酔しつつも,それは明らかに初代メタルマックス(へべれけと同じ年に出ています)とは別の濃度を満たす方向に進んでおり,それはそれで何周もクリアしつつも,その濃度の違いをいつしか埋めてみたいものだと思っていた。20年後にはそのリメイクに関わることになり,「メタルマックス2:リローデッド」に頼まれてもいないサブクエストを大量追加することに成功するとは,いったい誰が予想できたでしょうか。それができるのは神だけでしょうか。ということはやはり神は死んでいたのでしょうか。

 蛇足ではありますが,神殺しでスーパーファミコンで,という文脈となるとそこには「ロマンシングサ・ガ」という作品が浮かび上がります。

 これもまた間もなく「サガ エメラルド ビヨンド」が発売されますが,作品として楽しみであることはもちろん,僕の関心は「今回の失礼剣」がどのような表現をされるか,という部分に集約されております。この変遷もまた,初代ロマサガ,ひいてはゲームボーイ版初代サガ,から考えればあまりにも予測不可能な進化の歴史といえるでしょう。

サガ新作まで出る,今年は本当に大変な年です
「24Frameの邪道経営哲学」第18回:周年を祝う時の哲学

 と,まあ話もそれるだけそれきったところで,今回の主題に戻りますと,今月は「METAL DOGS」1周年であります。おかげさまで今も少しづつ売り伸ばしを続けており,ここになんとか1周年を記念してささやかながら(非常にささやかながら)アップデートとして「1周年記念ケーキ」という名のアイテムを追加する運びとなりました。

本日の主役
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 入手方法はいたって簡単,すでにSteamのMETAL DOGSをお持ちの方は起動していただいて敵がたまにドロップする「ドッグタグ」を集めて拠点の交換所にGO!という手順になります。

 上記に対して「何を言っているんだ?」となった人におかれましては,まずはSteamを起動して「METAL DOGS」という作品をチェックしてみてください。そうすればことのあらましはご理解いただけるかと思います。

 念のためですが,このアップデートは「METAL DOGS」の「Steam版」に対してのみ行われます。
 理由としましてはここでも触れているリソースの問題もそれは少なからずありはしますが,その他諸々のものも含めそれらを克服するという意味でも,この試みが実を結ぶように,歩んでいきたいと思う次第です。

今回は,Steam版のみのアップデートです
「24Frameの邪道経営哲学」第18回:周年を祝う時の哲学

 いろいろと申し上げましたが,今回の1周年記念企画はささやかではありますが,これはここまで支えてくださったプレイヤーの皆様への感謝を表現するためのものとなります。

 みなさま,本当にありがとうございます。そして,引き続きどうぞよろしくお願いいたします。