【ACADEMY】魅力的なオープンワールドの作り方

My.GamesのスタジオPixonicでリードレベルデザイナーを務めるVasiliy Skobelev氏が,興味深いオープンワールドを作り,ゲームレベルのさまざまなタイプを理解するためのヒントを紹介する。

【ACADEMY】魅力的なオープンワールドの作り方

 オープンワールドゲームは,探検と冒険の無限の可能性でプレイヤーを魅了する没入型の遊び場として人気が急上昇している。隠された宝物で溢れる広大な風景から,生命で脈打つ賑やかな都市まで,これらの仮想世界は現代のレベルデザインの頂点となっている。

 しかし,何がオープンワールドを魅力的にするのだろうか? この記事では,これらの広大なデジタル領域に生命を吹き込む重要な原則,テクニック,考慮事項を探る。


異なる世界観


 ビデオゲームは,大きく3種類に分けることができる。リニア,オープンワールド,マトリックスだ。

 リニアゲームは「クリティカルパス」が中心となっており,プレイヤーはそのパスに沿って利用可能な空間をすべてナビゲートしなければ先に進めない。これらのレベルでは,開始点と終了点が明確に定義されているが,メインパスと同等の代替手段を提供しない限り,オプションコンテンツを含めることができる。行き止まりやループ空間などである,Callisto ProtocolやDoomそして2013年のTomb Raiderなどは,すべてリニアゲームの好例である。

 ノンリニアなオープンワールド型は,与えられた時間枠内で利用可能なゲームプレイの選択肢を2倍,あるいは3倍に増やす必要があるため,制作コストがはるかに高くなる。このようなゲームでは,プレイヤーは決められた道筋をたどるわけではないので,どのようにゲームをプレイするかによって体験が大きく変わってくる。このようなゲームでは通常,同じ地点に至る複数の(一見等価な)クリティカルパスが導入される(マルチエンディング/複数主人公形式を採用している場合を除く)。Deus Ex,System Shock,Dishonored,Thief,Preyなど,プレイヤーの選択を重視する没入型シミュレーションゲームにその例が見られる。

 マトリックス型のレベル構造は通常,広大な屋外環境と多少の屋内空間で構成されており,クリティカルパスはあらかじめ決められた軌跡ではなく,ゲームを進めるためにプレイヤーが訪れるべき座標のリストになっている。このような設定では,プレイヤーの経験の大部分を指示する(つまり予測する)ことはもはや不可能であるため,レベルデザイナーはマップ全体に興味あるポイント(POI)をどのように配置するかについて戦略的でなければならない。

 ここで覚えておくべき基本的なルールがいくつかある。 たとえば,「同じゲームプレイを2回連続で繰り返さない」(つまり,別の戦闘シーンのあとに直接戦闘シーンを導入しない),「各観点に対して常に複数のエントリーポイントをデザインする」などだ。つまり,オープンワールドのデザイナーは,コアループスキルチェックの実装方法を慎重に検討する必要があるということだ。


スキルチェックとPOIの多様性ルール


 ビデオゲームには,ゲーム中にプレイヤーが通過するスキルチェックのゲーム内サイクルであるコアループがある。スキルチェックとは,ゲームの序盤で教わったメカニックをどれだけ使いこなせるかをプレイヤーに問うゲーム内の課題である。

 このフォーマットで遊ぶと,批評的に成功することがある。2013年にリブートされたTomb Raiderがその好例だ。トラバーサル,バトル,パズルの3種類のスキルチェックというシリーズの伝統的なコアループは,メインラインの進行に等しく使われる傾向があったが,複雑なパズルの仕組みは時間の経過とともに陳腐化していった。

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 よりハードコアな頭脳戦はオプションのサイドコンテンツとし,バトルやアクロバット,より短いパズルに重点を置くようフォーマットを調整することで,ストーリー進行は最適化され,プレイヤーはより自由でコントロールしやすい体験を楽しめるようになったのだ。このゲームはその後,Tomb Raiderシリーズで最も売れたタイトルとなり,1100万本を売り上げ,メタクリティックの平均点は87点だった。

 魅力的なプレイを実現するためのもう1つの重要な考慮点は,さまざまなゲームメカニクスの順序,頻度,設定だ。没入感とチャレンジ間の流動性を確保しつつも,新鮮さを保つことが重要である。40分間ずっと戦闘が続いたり,物理的なパズルやワールドでアニメーションやアクションが繰り返されたりすると,プレイヤーはすぐに飽きてしまう。

 レベルデザイナーはまた,プレイヤーが特定のスキルチェックに直面する順番を常に念頭に置かなければならない。オープンワールドのゲームでは,プレイヤー自身がイベントの順番を決めるため,これはとくに難しいことだ。しかし,長年の観察と経験を経て,私はオープンワールドの成功の鍵だと思うものを開発した。

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 ブレス・オブ・ザ・ワイルド(上)は,興味のある場所がいかに異なる体験につながるかを示している:

  • 左側の塔は,スタミナ管理によるクライミングの試練を示している
  • 中央にある霧の森は,祠へと続くナビゲーショナルパズル
  • 右側の火山にはその危険な環境に関連したサバイバル要素が導入されている

 POI多様性ルールだとこうなる: オープンなゲーム内環境でコアループのクオリティを維持するために,レベルデザイナーは水平線上に少なくとも3つのそれぞれ異なるゲームプレイを提供するPOIを配置するべきである。プレイヤーがどこに行こうともだ。

 プレイヤーが訪れる場所の順番をコントロールすることはできないが,特定のエリア内のメカニクスの多様性と分布をコントロールすることはできる。ランドマークや構図を目安に,少なくとも2〜3つのPOIをプレイヤーに見えるようにしておくのだ。

 しかし,ときにはそこから外れることもある。似たようなPOI同士を近づけることができる。もし,それらの間に明確な仕切りがあれば,プレイヤーが他のPOIの直後に体験することはないだろう。その良い例が,バイオハザードビレッジであり,正確には村そのものである。典型的なオープンワールドではないが,根底にある分配ロジックは同じだ。

 しかし今回は,村に配置されたゲームオブジェクトにロジックが適用される。そのため,少なくとも2〜3つのゲームオブジェクトが(シーンまたはミニマップで)いつでもプレイヤーに見えるように動作しているが,環境や構築された仕切りのため,すべてがすぐに入手できるわけではない。

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アウトドアの必需品


 オープンワールドの屋外エリアの基本的な考慮事項は以下のとおりだ:

  • 新しいイベントや見どころを導入するまでの平均時間。BOTWではおよそ40秒だ。これが2分だったら,その広大な世界はもっと空虚に感じられただろう
  • 有効攻撃距離。バトルエンカウンターの適切な実装に欠かせない
  • 最大視線到達距離。マップ全体を隅から隅まで見えるようにすることはできない。パフォーマンス的にもうまくいかないばかりか,探索の感覚も損なわれることになる。山や密集した建造物のような巨大な空間の仕切りはすべてのオープンワールドゲームに存在しているが,それはこれらが視線を最適化するために重要だからだ
  • 高度制限。ゲーム内で垂直性がどのように作用するかを理解することは重要であり,これは最新エンジンの垂直レベルストリーミングサポートの欠如によって妨げられている。Days Goneは,これが必要な理由を示している。プレイ中,視界から外れていても,下の洞窟にいるゾンビはあなたの音や行動に反応する。なぜなら,垂直方向で見るとまだ近くにいるからだ


都市空間


 屋外空間のための一般的なレベルデザインルールは有用だが,多くの厳しい制限のある空間で実装するのはずっと難しい, たとえば町や都市などだ。ここでは,少し違ったアプローチをしなければならない。

 Iuliu-Cosmin Oniscu氏(Watch Dogs,Assassin's Creed,Avatar: Frontiers of Pandoraのレベルデザイナー)によると,都市をデザインするときはマクロデザインから始めなければならないという:広場,目抜き通り,ランドマークなどだ。これらが最終的にプレイヤーのナビゲーションを定義し,何がプレイヤーの注意を引くかを決めるからだ。

 ひとたびこれらが確立されれば,次にこの都市空間への主要な入り口を強調し,プレイヤーを内部へと導くことができる。ここでは,導線,パンくず,フレーミング,相対性のあるオブジェクト,ランドマークといったナビゲーションの記号が非常に高い価値を持つ。

 ミクロなレベルになり,より基本的でない通りや小道具に取り組み始めたら,可能性マップの概念を理解することが重要だ。簡単に言えば,これは利用可能な経路の数とそれぞれの重み(プレイヤーがその経路を通る確率)に関してである。

Vasiliy Skobelev氏はPixonicのリードレベルデザイナーだ
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 可能性マップには,プレイヤーのルートに沿った重要なポイントが含まれる。これには十字路,ドア枠,ゲート,コーナー,戻れないポイントなど,プレイヤーがナビゲーションの選択を迫られる場所がある。

 ゲームTitanfallの街では,分かれ道や十字路で利用可能な道が4つを超えることはほとんどない。それに対して,Dishonoredのような他のゲームでは,プレイヤーがローカルナビゲーションに徐々に慣れられるように,最初は1つの利用可能なパスに沿ってプレイヤーを誘導し,あとから2つ,3つの分かれ道を追加するようになっている。

 プレイヤーが経験するストレスの量をコントロールするには,プレイヤーがそれぞれの道を通る確率ぶついても考える必要がある。メインの道が最も魅力的であるようにするには,広い入口,光,導線,開いたドアなどといった特徴を使って,明確に定義し,強調する必要があるのだ。一方,サイドコンテンツにつながる他のオプショナルルートに対しては,見えにくい入り口を使ったり,軌跡をカーブさせたりして,魅力的に見えないようにする必要がある。

 下のシーンはDishonored 2から持ってきたものだが,プレイヤーがゲーム内で初めて3方向分岐路に直面する場面を描いており,これをよく示している。この分岐点では,時間的プレッシャーのない,ストレスの少ない環境に意図的に配置されており,経路1経路3は,経路2よりも明らかに魅力的でない。

 これは不必要なストレスを回避し,プレイヤーにゲームを進めるために進むべき場所と,サイドコンテンツを探索するために選択できる場所を示している。

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ファストトラベルのネガティブ効果とポジティブ効果


 ファストトラベルの影響を過小評価してはいけない ― レベルデザインにおいて,ファストトラベルはあなたが最初に考える以上に重要だ。ファストトラベルポイントは,意図的であろうとなかろうと,ほとんどの場合,その利便性のためだけにゲームで最も訪問されるエリアの1つになる。ファストトラベルポイントのデザインと実装もまた,3つの一般的なカテゴリーに分類される:

  • 1.フレキシブル
  •  ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム,Fallout 4,Jedi: Survivorなどのゲームでは,いつでもどこからでもファストトラベルポイントに移動できる(必要な道具を入手していればだが,最初から入手できるとは限らない)。このため,プレイヤーは無駄なあと戻りをすることなく,自由で完全な移動制御を行うことができる。最後の街や移動ポイントからの距離を気にすることなく,必要であればいつでも撤退できるオプションがあるため,より深い探索の動機付けとなるのだ。
  • 2. 固定位置
  •  The Witcher 3やCyberpunk 2077(下のスクリーンショット)のようなゲームでは,ファストトラベルを利用するために,プレイヤーが固定されたファストトラベルポイントを訪れる必要がある。これは,プレイヤーがランダムなエンカウントやコンテンツ,環境の変化に直面することを保証するのであればうまくいくが,繰り返しの体験になるとフラストレーションが溜まりやすい。
 固定されたファストトラベルポイントは,ほぼ放射状の探索パターンを作り出し,プレイヤーにとって頻繁に訪れるポイントになり,最も遠いエリアや2つのトラベルポイントの中間地点は探索されにくくなる。

 レベルデザインの観点からは,有利なアイテム,スキルチェック,またはプロットデバイスをファストトラベルポイントから本当に遠くに置くことは,とくにキャラクターが徒歩で移動する場合,プレイヤーにとってより多くのバックトラックを意味するため,旅程,距離,報酬,経験値のすべてを注意深く考慮する必要がある。

 ファストトラベルポイントが固定されていると,レベルデザインの分析も難しくなる。プレイヤーは近くのファストトラベルポイントに戻るためにそのポイントを訪れたのか,それともそのエリア自体に興味や興味を惹かれたからなのだろうか?

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  • 3. 有料
  •  Red Dead Redemption 2やHorizon: Forbidden Westのようなゲームでは,ファストトラベルを使うためにリソースを消費する必要がある。この戦略は,プレイヤーが資源を集めるために特別な場所を訪れる動機付けになるが,開発した世界をただ探検したいだけなのに,自由感が損なわれ,反復的なゲームプレイを引き起こす可能性があるため,控えめに(あるいは絶対に必要な場合のみ)使用するのがベストだ。プレイヤーにとって必要だが,最初は行きたくないかもしれない場所を紹介するのは,常にリスクが伴う。


3つのC


 2002年のDICE Summitのプレゼンテーションで,Mark Cerny氏は3つのC,すなわちキャラクターカメラコントロールについて議論した。レベルデザインの定番で,ゲームがうまく機能するためには,3つのCが一致している必要がある。私は,これが考慮されず,結果としてゲームプレイに支障をきたした作品を数多く目撃してきた。

 よくある間違いの1つは,プレイアブルキャラクターを確定する前にワールドマップを深く開発してしまうことだ。その結果,デベロッパはキャラクターの移動メカニクスをワールドに後付けしなければならなくなる。また,乗り物の使い方も問題になる。徒歩から乗り物へ,あるいはその逆で,どちらか一方に適するように設計された環境でペースを切り替えることは,ワールドマップが意図したとおりに機能しなくなることを意味し,すべてをつなぎ合わせるために多くの時間と費用が必要となるのだ。

 だから,ワールドマップに生命を吹き込もうとするのであれば,まずキャラクターと,それに関連するすべてのメカニクスを最終決定してほしい。そうすることで,将来的にどれだけのお金と労力を節約できるか,いくら強調してもしきれない。

 多種多様なゲームプレイの設定や障害物があるテストレベルを組み立てることで,メカニックとデザインを最適化し,動きと物理の範囲を完全に評価する。メカニクスが定まってから,これらのメカニクスを真に輝かせるためのレベル開発に取り掛かるべきである。


Vasiliy Skobelev氏は,My.GamesスタジオであるPixonicのリードレベルデザイナーだ。ゲーム開発で10年以上の経験を持ち,モバイルランナーからAAAシューターゲームまで幅広いジャンルに携わってきた。現在は,同スタジオのWar Robotsのスピンオフ作品である最新作War Robots: Frontiersの開発に注力している。

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