「24Frameの邪道経営哲学」第6回:会社のロゴを新しくする時の哲学
「ロゴ変更は突然に」
これまで,あるプロジェクトの中止から,自分たちを見つめ直し,いかに再スタートを切るかを模索してきた本連載ですが,自分たちを見つめなおすついでにちょっと別の角度からの必然もありまして,我々の中には「企業ロゴ」を見直す流れが生まれていました。結論は上記のように出オチ,もとい結論ありきの弁となってしまいますが,なぜ今回変更の運びとなったのか,また一口に我々の企業ロゴといっても色々な変遷がありまして,それを語ることでも自分たちのコア,ルーツを見つめ直し説明するいい機会になるのでは……という所で,今回はロゴの話をしたいと思います。
「24Frameのロゴの変遷」
まず,そもそも以前も連載で触れたように手違いで起業した感のある僕ですが,その当時は当然ロゴなどありません。はじめてその必要性に駆られたのは2012年ごろ,起業してから優に3年が過ぎた時点での話となります。ちなみにその時のロゴはこれです。
しかし,これは実は企業ロゴとして準備されたものではなく,会社の公式サイトに使われていた画像パーツで,しかもそのサイトも僕が独立するとなった際の餞別的に知人のウェブデザイナーが用意してくれたものだったのです。「使えるものがあるとすればこれ」というなんだか邪道な理由からこれが我々の最初のロゴとなりました。(まあ,「24fps」ですから,そもそも社名の正確な表記ではなく,映像的な注意書きと間違われかねない形状だったりするのですが)ともかく,メタルマックス4など同じくディレクションだったりシナリオだったり,プランニングの主な部分だったりを担当した案件ではこれを使っていくことになります。
「初めての本格ロゴ」
やがて,会社が若干の安定性を見せ,ゲーム以外の色々なことに手を出し始めた際に,次のロゴを,初めて「企業ロゴ」として発注して使っていく,ということになります。それがこれですね。この時期は(今もそうなんですけど)家庭用ゲーム以外に,NHK関連のお仕事だったり,プロジェクションマッピングみたいなイベントのお仕事だったり,スマホアプリの開発だったり,かなり業務が多岐にわたりだした頃でした。
初の自社作品である「サバイバールPG」というタイトルをスマホにで制作したのもこの頃です。家庭用の制作も一段落した頃に「このノウハウでいっちょやってみっか」ということで唐突に「サバイバールPG」の制作を開始。マーケティングなど特に何も考えずに自分のできること,やりたいことの発露,という感じで作ったゲームでしたが,ある日深夜にスタッフから「えらい勢いでガチャが回りだしたぞ」という連絡を受けて急遽電話をつなぎながら事の成り行きを見守る……どうやら掲示板で軽くバズって「クソゲーだけど神ゲー」という評価とともに一部がザワついた……というのが真相のようでした。知る人ぞ知る,でしたが一部ではうれしい評価
もいただきつつ,人数がいない中でも「レイドバトル」を実装しようとしてそれが結果として「特許」を取ることになる,というなんだかよく分からないイケイケ感に包まれていた時代ですね。
その仕組みに目をつけていただいて「ニコニコ超会議」への参加や「トラウマスター」というタイトルの自社での受注制作も始まります。「トラウマスター」ではキャラデザに当時は「楽園追放」,のちに「ゼノブレイド」シリーズで名をはせるSaitom(齋藤将嗣)氏を迎え,音楽にはFF12などで個人的にも憧れであった崎元 仁氏率いる「ベイシスケイプ」を擁して,ゲームシステムは「サバイバールPG」からのへんてこながらもまっとうな美少女ゲーム,という野心的なタイトルだったのですが,いかんせん運営タイプだったため,少人数の我々では体力が追いつかず,買い切り方に切り替えてリリース,というまさに怒涛の時期でした。
そんな経緯を踏まえて「やっぱ企業体力って大事だよな」との思いから人数を増加へと舵を切り,スタッフも3〜4人から10人以上になっていきます。会社周りの法律なんかの知識もついていく中で「法人格(すごくざっくりいうと「企業はそれはそれで一つの人格として扱う」という考え方)」という概念に出会ったりして,「みんなで一つの人格を作っていくんだ」というコンセプトの下,このロゴは考案されました。
デザインは映画の業界にいた時代に僕の監督作品の上映チラシを作ってくれたサタケシュンスケ氏にお願いし,その出来栄えからイギリスのロゴの特集なんかにもとりあげれたりして,かなり評判の良かったロゴです。この頃移転した事務所の壁にもプリントしたりして僕らも気に入り,長く付き合ってきたロゴでした。
「端境期のロゴ」
この頃もやはり激動でしたね。実際にはこのロゴの運用開始時期の少し前からの話ですが(それがロゴ変更の理由にもなっていく訳ですが)「大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL」や「Tales of Arise」などの大規模作品への参加や,スマホでは「Tales of The Rays」などの長期運営タイトルへの参加,さらに同時に「メタルマックスゼノリボーン」などの家庭用における社内開発も始まり,同時に「より大きな規模の人数をどう回すか」がかなりそれまでの手法とはあ異なることもあり,壁を感じていた頃でもあります。
その後,不慣れな規模への課題をある程度克服する形で「METAL DOGS」というタイトルを自社制作により制作しました。これは最終的にはSteamを含め,SONYさんや任天堂さんのプラットフォームでもパブリッシャとなり,初の資金調達(本連載のきっかけになった出来事です)や,果ては「メタルマックス・ワイルドウエスト」の開発中止も含め,多くの教訓を得た時代でした。
特にパブリッシング面ではSteamでのおっかなびっくりのリリースから矢継ぎ早に家庭用でのやり取りも始まり,さらに短期間でそれをこなしていくスタッフたちの力強さを強く感じたことも大きくありました。
また,「メタルマックス」や「テイルズ オブ」シリーズに参加させていただいたことで「歴史のあるIPとはいかにあるべきか?」というバランスについても,この頃に多くのことを考えました。そういった意味ではわが社における「迷いと課題と克服の時代」ということもできるかもしれません。
そんな時代を表象するコンセプトとしては,とがりながらも成長していく,ということと,色は成長とか勢いの赤,ということでこうなりました。
ロゴの納品直前まではけっこう複雑なものが進んでいたのですが,土壇場でシンプルに変更を希望してこうなりました。人数が増えた分,コンセプトはシンプルに表現されているべき,というところがどうしてもあったんですね。そんなバタつきの中で作られたこともあり,これは結局耐用年数が一番短いものでした。
「そして現在のロゴへ」
そして,上記の悩みと課題にある程度の結論を得て,新たな節目が始まるのだな,という予感とともに,このたび,わが社のロゴは以下へ変更と相成りました。そのコンセプトを受けてデザインは再度先の顔のロゴを手掛けてくれたサタケシュンスケ氏にオファー。この時の彼の仕事ぶりはさすがのもので,あまりに素晴らしいのでその作業の変遷なども(本人の許可を受けつつ)ここに開陳していきたいと思います。
まず,上記のコンセプトをZOOM会議で彼に伝えたところ,ありえない速度でいくつかのアイデアが上がってきました。
「今回のロゴができるまで」
結論を知っている今の我々としては,最初の提出で彼の中でも正解に近いものが一番上の候補として挙げられているのがポイントです。
しかしクライアントとは強欲なもので「どれもいい!この中で数点を選んでさらに可能性を掘り下げたい!」と言い出した我々に対し,多少刈り込んで提出されたのがこれです。
またも捨てがたいアイデアばかりだったのですが,やはり最初の案が強い。また,以前に比べればやや安定してきたものの「黄金期」はいいすぎでしょうということで最初の案の形状で,後は色の検討に移りましょうということになりました。
そして早々に届くカラバリの提案。これもグラデのおしゃれ感に最後まで後ろ髪を惹かれたものの,よりエレガントにグラデではない赤熱のオレンジを残し,デザインは決定となりました。ここも面倒くさいことにいくつかの可能性をさらに考慮したいという我々の願いを聞き入れ,いくつかグラデのパターンもいただきました。
「デザインの終わりは終わりではない」
そして決定。なのですが彼の仕事の見事さはここでは終わりません。最終的にこのデザインはこのような「運用マニュアル」とともに納品されます。
最後のおかしな使い方に注意,という部分は「当たり前だろ」と思うかもしれませんが,デザイナーさんの画材って意外な(うちは今のところないはずですけど)使い方をされたりすることもあるらしく,こういうのが必要なんですよね。
光栄なことに我々のロゴはゲームの開始時のスプラッシュ画面(ゲームの起動時にいろんな会社のロゴが次々と出てくるアレです)に使っていただけることも少なくない,という話をしたら,その際の配置までの指定がいただけ,安心度は半端ないものがあります。
現在進行中のプロジェクトも社内外含めて今まで以上に大規模かつ刺激的なものが多く,スタッフたちもしっかりしてきて何でもできる感が半端ないのですが,人数が多い分細かな問題も多く発生します。そんな時こそシンボルとしてのロゴマークの号令は大事なんだよな,と思う次第です。
このロゴとともに(あるいはこのロゴを含みつつ)世に出ていくタイトルも結構な数に上りそうです。人数・規模の割に面白い仕事をオファーしてくださる付き合いのある会社さんには感謝しきりですし,それを実現させていくスタッフにも,これまた感謝しかありません。
「今後ともお見知りおきを」
と,まあそんなこんなでこのたび決定と相成りました当社ロゴ。ぼちぼちと運用も始まってまいりますので,今後ゲームをやっていて下記のロゴを見かけることがあったら,皆様どうぞよろしくお願いします。そしてこれを掲げ,さらに我々は何をしていくのか? という考察に戻っていくわけです。ここで述べることができるのは主に社内開発を中心とした情報になるわけですが,皆様何卒,乞うご期待!