ポストコロナも勢い止まらぬゲーム配信。世界のゲーム”視聴”最前線

Twitch インターナショナル・インサイト&メジャメント担当ディレクター Paul Nesbitt
 世界のゲーマー人口は2023年には30億人に上ると推定されており,ライブ配信サービス「Twitch」のデータでは,日本の総人口の60%以上がゲームを楽しんでいることが分かっています。また,eスポーツ人気と共にゲームは競技性を帯び,「娯楽・気晴らし」といったイメージから,「生き甲斐・情熱」という,より真剣なイメージを持たれるようになりました。特に顕著なのがZ世代からの人気で,Z世代の約8割がゲームをプレイしたことがあり,その利用時間や消費金額は他のコンテンツよりも多い傾向にあります。

 2030年までに世界の所得の27%を稼ぐと予測されるZ世代。同世代がこぞって集まるデジタル空間が,ライブ配信です。ライブ配信は,ゲーム実況をコンテンツの柱としてコロナ禍に台頭し,今も成長を続けています。本稿では,ゲームの配信者とその視聴者を中心とした最新トレンドを3つ紹介します


「コミュニティファースト」が確立

 コロナ禍を経て,人々が集まる場所はリアルだけでなくデジタルの世界にも拡大しました。ミレニアル世代,Z世代,アルファ世代にとって,デジタルのコミュニティは,友人と充実した時間を過ごし,新しいスキルを学び,自分の興味や趣味に没頭する場所となっています。このことは,ライブ配信サービスのユーザー数や視聴時間をみても明らかです。
 TikTokは2020年から急成長し,2020年7月から2022年7月の間に月間アクティブユーザー数が45%増加し,Twitchの視聴者数は,2020年には2011年の86倍以上となり,2021年以降もこれまでのところ,すべての月で2020年以前のどの月よりも視聴者数が上回っています。

 ライブ配信を通じたコミュニティは今後さらに深化していくでしょう。ライブ配信やオンラインゲームなどの仮想空間は,様々なコミュニティを形成しています。そうしたデジタル空間は,いわば共有体験のハブとして存続することが期待されています。例えばあるストリーマーを,複数の視聴者が長期間にわたって応援していた場合,視聴者間で共通の記憶が出来上がり,共同体としての親近感や連帯感が生まれます。視聴者が多いライブ配信の場合,その規模は大きく,時に世界的になり,また,少数で楽しむようなコミュニティでも,視聴者は配信中のチャットを通して自分たちの居場所を築き上げるようになります。


フィルターを通さない,より「本物」の体験が加速

 ミレニアル世代,Z世代,アルファ世代がライブ配信を好むのは,ライブ配信がSNS上での「映え」や過剰な演出による「完璧主義」と相反するものだからです。彼らは,率直で,フィルターを通さないリアルな生活が表れたコンテンツを求めています。写真や動画を簡単に加工できる時代だからこそ,偽りのない姿が重視されるようになりました。Twitch が行った調査でも,67%のZ世代視聴者が「人間味のある」ブランドに好感を持つと回答しており,このトレンドは企業のブランディングやマーケティングにも影響を与えています。

 また,この流れはゲーム実況が中心だったライブ配信に,新たな動きを呼んでいます。例えば,Twitchには「Just Chatting」という雑談の配信カテゴリがあり,ここ数年で爆発的な人気を博しています。実際,ゲーム配信者の多くが雑談配信をするなど,「本物」の人間同士の交流や「本物」の体験を通じて,ストリーマーと視聴者の距離はぐっと近づいています

ポストコロナも勢い止まらぬゲーム配信。世界のゲーム”視聴”最前線

ゲームも,もはやプラットフォーム

 デジタル上でも「本物」の体験が求められた結果,実生活とデジタル体験の境界線は曖昧になりつつあり,特にミレニアル世代,Z世代,アルファ世代がその間を流動的に移動しています。この世代をターゲットにした広告や企業キャンペーンを成功させるには,スポンサー付きのライブ配信やストリーマーとのコラボレーション,あるいはゲームそのものを広告のプラットフォームにするなど,新しい手法が必要です。

 高級ファッションブランドも例外ではありません。イブ・サン・ローラン・ボーテはTwitchストリーマーと組んで,香水「ブラック・オピウム・エクストリーム」のプロモーションを行い,成功を収めました。3人のストリーマーと組んだ本キャンペーンでは,「ブラック・オピウム・エクストリーム・チャレンジ」にストリーマーが挑戦し成功すると,ストリーマーにも視聴者にもリワードが送られることで,シームレスなインタラクションを実現しました。その結果,本キャンペーンは46万5000人ものユニーク視聴者数を記録しています。他にも,バーバリーとラルフローレンは,それぞれマインクラフトやフォートナイトとファッション・コラボレーションを実施し,話題を呼びました。

 ここで紹介した最新のトレンドからも分かるように,ゲーム配信を取り巻く環境は常に変化しています。ゲームユーザーは,Z世代,さらにはアルファ世代が大きな割合を占めており,彼らは新しい大衆文化と消費行動を牽引しています。このエキサイティングな変化により,ストリーマーも新たな挑戦と機会に恵まれていくでしょう。


Paul Nesbitt(ポール・ネスビッツ)
 Twitch インターナショナル・インサイト&メジャメント担当ディレクター。同社にて,消費者インサイトをビジネスや広告戦略の中心に据え,若い世代に向けたブランドのコミュニケーションを支援。ライブ配信,コンテンツ,Twitchの視聴者に関する知見を提供し,様々なブランドのキャンペーンに従事している。Twitch入社以前は,メディアやエンターテイメント業界を専門とし,グローバルなリサーチやインサイトを提供する職務を数多く経験。