Microsoft,ソニーの内部文書へのアクセスを許可:FTCの対応の詳細

Activision Blizzardの買収をめぐる夏の裁判に備えて,Xboxの会社がPlayStationの独占契約と4年間の会社記録を受け取ることになった。

Microsoft,ソニーの内部文書へのアクセスを許可:FTCの対応の詳細

 一見して分かること。

  • FTC判事,ソニーによる提供文書の期間制限とJim Ryan氏ら幹部への評価保留の要求を容認
  • ソニーは,2019年1月1日以降の独占契約を含む,その他の要求されたすべての文書をMicrosoftと共有する必要がある
  • Microsoft,PlayStationの情報は今年8月のFTC裁判での弁護に役立つと発表

 米連邦取引委員会は,Microsoft社による内部文書提出命令に対するソニー社の異議申し立てを取り上げ,その大半を却下した。

 FTCは,主任行政法判事D. Michael Chappell氏の署名入り裁定で,ソニーの要求のうち2つを認め,他の6つを拒否した(参考URL)。

 Microsoftは,ソニーに対し,今年後半に行われるFTCに対する弁護活動に役立てるため,さまざまな文書や情報へのアクセスを求める召喚状を請求した(関連英文記事)。米国の規制当局は,12月にXboxによるActivision Blizzardの買収案に対して法的な訴えを起こした(関連英文記事)。

 召喚状は1月17日に送達され,ソニーは1月23日に異議申し立てを行った。その後,ソニーがMicrosoftの要求のいくつかを「明らかな嫌がらせ」と表現したことが明らかになった(関連英文記事)。

 FTCは,ソニーとMicrosoftが5回にわたってこれらの異議申し立てについて話し合ったとしている。

 Microsoftは,ソニーのPlayStationビジネスに関する特定の情報は,同社がActivision Blizzardを所有することがビデオゲーム分野の競争に与える影響に関する懸念に対処するのに役立つと主張した。

 FTCのソニーに対する回答から,より多くの知見を得ることができる。以下のとおりだ。


コンテンツライセンス契約の保留を要求:一部否認


 Microsoftはソニーに対し,2012年1月1日以降にPlayStationとサードパーティのパブリッシャとの間で交わされたすべてのコンテンツライセンス契約のコピーを要求した。

 ソニーは,この契約書は本件に何の価値もないと主張した。さらに,ソニーのシステム上,契約書を企業の種類ごとに検索することはできず,名称のみで検索するため,約6万社との15万件以上の契約書を検索することになるとした。

 しかし,Microsoftは,この検索が,ゲームパブリッシャとの独占契約に関する疑惑に対処するのに役立つと主張している。その中には,パブリッシャがXbox Game Passにタイトルを追加することを制限されているものもあるという。

 独占契約は,FTCが買収案に対して抱いている多くの懸念事項の1つであるため,FTCはソニーの要求を拒否した。ただし,以下に詳述する決定に従って,検索対象を2019年1月1日以降に締結された契約に限定した。


従業員の業績評価と評価を保留するよう要請:許可


 FTCによるとソニーは,要求されたJim Ryan氏とその直属の部下,および同社の他の指導的メンバーの業績評価または査定に関する文書は,本件とは関係がなく,「社員のプライバシーを不当に侵害する」と主張したという。

 Microsoftは,「SIEの経営陣やビジネスが評価される指標」を理解するためには,こうした情報が必要だと主張した。しかし,FTCは,これは雇用のケースではなく,これらの指標はその苦情や買収案と論理的なつながりがないことを強調した。

 FTCはこの要請を認めた。


Jim Ryan氏のFTCへの申告書へのアクセス拒否要求:却下


 Microsoftは,ソニー・インタラクティブエンタテインメントの社長兼CEOであるJim Ryan氏がFTCに対して発行した買収提案に関する宣言書(すべての草稿を含む)を要求した。

Microsoftは,PlayStationのボスであるJim Ryanの社員審査に対し要求し拒否された
Microsoft,ソニーの内部文書へのアクセスを許可:FTCの対応の詳細
 ソニーは,これらの情報が関連性のあるものであることには抗議せず,これらの文書にはMicrosoftがすでに入手していないものはないと主張した。

 FTCはこの要求を却下した。


検索期間の制限を求める要求:許可


 前述のとおり,Microsoftの検索は2019年1月1日以降の文書に焦点を当てている。しかし,ソニーは,具体的に行われたリクエストのうち10件が2012年以降の情報を要求していると指摘した。

 プラットフォームホルダーは,10年前の文書は,反競争的な取り組みの将来に焦点を当てたこの事件とは関係がないと主張した。

 Microsoftは,2019年1月1日以前の文書が必要な理由を説明できなかったため,FTCはこのケースでソニーの要求を認めた。


保管文書の検索範囲を制限する要求:却下


 召喚状は,2019年1月1日以降の保管文書の検索に重点を置いている。ファイルを要求された人の中には,この日以降に入社した人もおり,ソニーは,入社後の記録にのみ焦点を当てて検索するよう要求した。

 彼らがソニーに入社する前の期間について,プラットフォームホルダーは前任者の文書は必要ないと主張し,代わりに文書が「重複」するため,直属の上司に集中して検索するよう提案した。FTCは,前任者の文書も直属の上司を通じて入手できるという考えは「推測の域を出ず説得力がない」とし,この要求を拒否した。


Lin Tao氏と西野秀明氏を文書保管者から除外する要求:却下


 資料請求された社員のうち,ソニーがとくに問題視したのは2名だ。ソニー・インタラクティブエンタテインメントの財務・経営企画・戦略担当シニアバイスプレジデントLin Tao氏とグローバル製品戦略・管理担当シニアビデオプレジデント西野秀明氏だ。

 PlayStationの会社は,この2人のファイルは無関係であると主張し,さらにTao氏のファイルの「高い割合」が日本語であるため,それを検索するのに必要な時間と費用がかかると主張した。

 しかし,ソニーは,これが過度の負担となる理由を説得的に説明せず,西野氏のファイルを含めるべきでない理由も主張していなかった。FTCはこの要求を却下した。


社内反トラスト弁護士Greg McCurdy氏を文書保管者から排除する要求:却下


 Microsoftは,McCurdy氏がActivision Blizzardの買収案をめぐって規制当局や立法府のスタッフ,その他の第三者とやりとりしており,彼のコミュニケーションは同社の訴訟に関連すると主張した。また,ソニーがアクセス拒否をするためには,これらの通信が特権的であることを証明する必要があるとした。

 ソニーは,社外弁護士やその他の関係者とのコミュニケーションは,法的助言を得るためのものであり,したがって特権があると主張した。また,McCurdy氏のファイルを検索することは,関連する非特権文書がほとんど見つからないと予想されることから,不当に負担がかかるとした。

 FTCは,ソニーの主張は「結論ありきで裏付けがない 」とし,この要求を却下した。


召喚状の定義を制限する要求:却下


 ソニーが言及した定義の詳細は明らかにされていないが,PlayStationの会社は,召喚状で使用された用語のうち20個が「過度に広範で,不当に負担が大きく,曖昧 」だと主張した。

 しかし,FTCは,ソニーが適切な例や法的論拠を示すことができなかったとして,この要求を拒否した。


 FTCの審議は8月2日まで開始されないため,Activision Blizzardの買収をめぐる注目は,25日までに買収を承認するかどうかの判断を下す予定の欧州委員会と,26日までに判断を下す予定の英国の競争・市場庁に集まっている。

 規制当局の懸念と,それがこの買収にもたらす障壁については,当社の広範な入門記事で詳しく説明している(関連英文記事)。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら