【ACADEMY】インディーズデベロッパがCOOの採用を検討すべき理由

PowerWash SimulatorのスタジオであるFuturlabは,Chris Mehers氏を最高執行責任者として採用した。その理由を紹介しよう。

 最高執行責任者という仕事は,最大手のゲーム会社にしか存在しないという考え方がある。

 EA,Ubisoft,Activision……。これらの会社にはCOOがいる。1本や2本のゲームを作るインディーズスタジオではない。

 しかし,COOの役割は,あらゆる規模の企業,とくに成長を遂げているチームにとって,ますます重要なポジションになってきている。PowerWash Simulatorを開発したFuturlabは,その典型的な例だ。先月には,業界ベテランのChris Mehers氏を初のCOOに任命したばかりだ。

 「規模と方針によります」とMehers氏は説明する。「18年間,FuturlabはCOOを必要としていませんでしたが,PowerWashシミュレータでヒットを飛ばしました」

 「彼らは成長しているのです。20名から50名になりました。このままでは,成功を収めても,自分たちの仕事はゲームを作ることではなく,スタジオを運営することになるとクリエイティブリーダーたち(James Marsden氏とKirsty Rigden氏)が,突然気づいたわけです。人材,財務,オペレーションなど,あらゆる面でミッションクリティカルなことが起きますので,彼らは引き離されるでしょう」

Chris Mehers氏, Futurlab COO
【ACADEMY】インディーズデベロッパがCOOの採用を検討すべき理由
 「JamesとKirstyの場合,そして他のリーダーも同じだと思いますが,ゲーム業界に入った理由が,毎日やらなければならないことのほんの一部に過ぎなくなるときがあります。Jamesは,裏方の仕事をこなすのではなく,クリエイティブの現場で手を動かすことで,Futurlabに大きな付加価値を与え続けることができるのです……。システム,プロセス,人々,これらの課題は,誰かが世話をする必要があります」


スタジオが成長するにつれ,COOが重要な役割を担うようになります

 よく,COOを雇うことを「自分のボスを雇う」と語られるが,Mehers氏はそうは考えていない。

 「それは,企業的な意味合いがあります」と氏は語る。「インディーズゲームでは,ミッションがあり,ゲームがあり,生き残るか,成功の結果に対処するかが焦点となります。そして,今のところ,我々は成功の結果に対処しています」

 「うまくいっている企業では,肩書きはほとんど意味がありません。ミッションが重要なのです。そして,信頼できる人がいるかどうかです。リーダーシップチームには,さまざまな長所と短所があります。CEO,COO,チーフマーケティングオフィサー……どんな肩書きをつけても,全員が1つの決断に貢献するのですから,実は何の違いもないのです」

 COOはまた,新しい人材を呼び込む手助けをする存在だ。近年,業界全体でシニアポジションの空きが増え続けているため,この状況はますます困難になってきている。

多くのクリエイティブな創業者は,ゲーム業界に入った理由が,毎日やらなければならないことのほんの一部になる点に到達します

 「そのための大きな課題は,規模が拡大しても真に歓迎される組織を作ることです」とMehers氏は説明する。「20人程度の規模であれば,人間関係も良好で,一緒に仕事をしているようなものですから,非常に強い絆で結ばれています。しかし,30人を超え,60人を超えると,組織の柔軟化について考えなければなりません。COVIDのために遠隔地に行かなければならない場合は,さらに難しくなります」

 「私が入社した当時は,ほとんど人事のような役割でした。COOになると,人事,財務,オペレーション,法務,コマーシャル……と,そのときどきに必要なものが決まってきます。今は,本当に優秀な人事担当者を探している段階で,その人が決まり次第,私の役割の一部は譲るつもりです。その後,優秀な財務担当者を探すことになるでしょう」

 COO,とくに新規参入のCOOの重要な役割の1つは,会社の特徴を見極め,それを維持しながら拡大していく方法を見出すことだ。Futurlabはインディーズデベロッパで,ゲーム開発における反クランチ的なアプローチを声高に主張し,強い精神衛生を提唱している企業である。同社は「クリスマスツリー」のようなデザイン哲学を持っていて,ゲームの背骨(ツリー)とすべての便利な機能(玉飾り)に分けている。問題があれば,クランチするのではなく,玉飾りを削除していくのだ。

 これは,Mehers氏が学び,スタジオを成長させるためのアプローチに組み込まなければならなかったものだ。

 「(私が入社したとき)後輩たちに『ここで働く魅力は何か』と聞いたときの例を紹介しましょう。ちょうどPowerWashの開発時で,勝負どころでした。納期はもちろん,当時は金銭的なプレッシャーもあったことでしょう。しかし,Jamesはみんなを集めて,こう言ったんです。『ああ,プレッシャーはあるけど,クランチにするつもりはないよ。だから,スケジュールを守るために,ゲームから何を取り除くべきか教えてくれ』と。という話を後輩から聞いたのです。ですから,このカルチャーを維持し,成長させていくことが,私の使命だと思っています」

 「スタートアップ企業にはよくあることですが,創業者の人柄もその一因です。創業者たちは,そういう人たちなのです。ルールがないのは,みんなと触れ合えて,何が起こっているのかを感じられる会社規模だからでしょう。しかし,我々はその規模を超えつつあります。そこで,私はJamesと一緒に,次のようなことをしました。『OK. 頭の中にある直感的なものを取り出す必要があるね。ルールブックを作るためではなく,自分たちが何を守りたいのか,そのためにどうすればいいのかを本当に理解するために』 そのための方法として,とても良いプレイブックができたと思っています」

PowerWash Simulatorは「ヒット作になる」とMehers氏
【ACADEMY】インディーズデベロッパがCOOの採用を検討すべき理由

 FuturlabがCOOを迎えたのは,会社が飛躍的に成長し始めたことと,Marsden氏がゲーム作りに戻りたいという希望があったためだ。しかし,Mehers氏は,他のところでは違うだろうと語る。実は,過去2回のCOO職では,彼は最初から共同創業者の1人だったのだ。


COOを採用する際の注意点


 しかし,はっきりしているのは,手遅れにならないようにしないといけないことだ。COOの導入は,それが不可欠になる直前に行うのがコツだ。採用がうまくいかなかったり,人事の問題解決に時間がかかったりして,チームに不満が出るかもしれない。

 「FuturlabがCOOが迎えようしているとJamesから聞いたとき,『よく決断してくれた』とはっきりと思いました」とMehers氏は語る。「でも,『Chrisでよかった』という感覚はなかったかもしれません(笑)。しかし,必要なことだという実感はありました。ある人が言った例えに,『我々はミニに乗って高速道路を90マイルで走っているような感じだ』というのがあります。すべてが揺れ動き,何かが落ちてきそうな感じでしたが,それが何なのかは分からなかったのです」Futurlabは,規模を大きくする必要があったのだ。

 「しかし,我々が目指すスタジオのAフレームを作るという意味では,正しいことをすべて行いながら,ビジネスに過度の財政負担をかけないという綱渡りのような状態でした。あまり早くから上級者を採用しすぎると,それが問題になります。いきなりコスト負担が発生するからです。同時に,Futurlabのカルチャーの1つは,社内で採用できる上級職をできるだけ多く見極めることでした」


COOは,チームをどのようにサポートするのがベストなのかを考える


 FuturlabがCOOの役割を必要としたもう1つの理由は,スタジオが2つのプロジェクトを同時に進行させるようになったことだ。

遠隔地にあるスタジオでは,以前よりもっと慎重に人を優先させる必要があります

 「それは,それなりの複雑さをもたらすものです」とMehers氏は語る。「我々は今,過渡期にあります。20人のために作られた小さなインディーズ組織が,今では50人になり,65人になろうとしています。私のような人間がカバーしなければならない領域がたくさんあるのです。もちろん,自分1人の力だけではありません。この業界では旅を楽しまなければならなりませんし,その一環としてAからBへ,できれば私が始めたときよりも良い状態で移動させなければならないのです」

 FuturlabのCOOの役割は,チームをよりよく見守ることでもある。我々は今,前例のない時代にいる。世界的な問題や期待の変化など,企業は毎日のように対応しなければならないことが多くある。

 その中でもとくに大きな問題は,パンデミックと,それを取り巻く人々のさまざまな期待にどう対応するかということだ。Futurlabは,「リモートファースト」のスタジオになることを決めた。これは,世界中から人材を集めるためのアプローチだ。しかし,この決断は,Mehers氏が乗り越えなければならない課題をもたらすものだった。

 「Futurlabのために働く人は全国にいます」と氏は締めくくる。

 「ヨーロッパからの採用も始まっています。英国に移住する必要はないのです。地元から通える範囲のスタジオに限定されなくなったのは,人間にとって嬉しいことです。しかし,雇用主としては,他社との差別化を図る必要があります。それはもはや,豪華なオフィスや無料のコーヒー,金曜の夜のビールなどではありません。人と人をつなぐ新しい方法を見つけなければならないのです。最終的には,人々が交流する機会を作る方法を見つけることになります。ただ,『みんなで集まってビールを飲もう』というだけではダメなのです。もっと深く考えなければなりません」

 そして,パフォーマンスの問題に関しては……最初の質問は,「調子はどうか? どうしたんだ? 問題は,多くの場合,パフォーマンスではなく,その人にあるのです。親や子供が病気なのかもしれません。小さなオフィスで一緒に仕事をしていると,このようなことに気づくことがあります。リモートスタジオでは,以前よりももっと慎重に,その人のことを第一に考える必要があるのです。オフィスが一緒なら,ある程度は勝手にそうなっていたかもしれませんが,リモートだとそうはいきませんから。スクリーンに映るのは顔だけですからね」

 「毎日立ち話をしていても,それが他のメンバーとの主な接点なら,立ち話の20分間は我慢できても,その後は大丈夫とは言えないかもしれません。ですから,みんなが本当に大丈夫なのかどうか,どうやって確認すればいいのでしょうか?」

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