【ACADEMY】モバイルゲームに有名IPを持ち込む際の注意点
映画,コミック,ビデオゲームなどの分野から生まれた世界有数の知的財産(IP)の多くが,モバイルゲーム分野でも活用されるようになってきている。モバイルゲームメーカーが利用できるであろうIPが非常に多いことは誰も否定しないだろうが,どのIPがモバイルゲームの成功につながるかを適切な基準で判断することが非常に重要になっている。
この1年,FunPlusはAMCおよびDCと協力し,それぞれThe Walking DeadとJokerをState of Survivalに統合したことが特筆される。その過程で多くのことを学んだが,すべてのモバイルゲームパブリッシャが望むことは,混雑し競争が激しい市場において,自社が行ったIP統合を際立たせることだろう。
大手パブリッシャにとって,現在のマーケティングでサポートされていないIPを扱うことは意味がない
ほかの大手パブリッシャと同様に,FunPlusも新しいゲームの可能性を探るために,常にティア1の可能性に関心を持っている。正直なところ,ティア2やティア3,あるいはエバーグリーンのIPと仕事をしても,リターンは少なくなってしまうだろう。だからこそ,今この瞬間にインパクトのあるIPを持つことが重要なのだ。今日のグローバル環境におけるゲームプレイの競争は激しいので,ティア1 IPの選定は,実際のゲーム開発と同じくらい重要なのだ。今日の時代性に合わないIP,グローバルに通用しないIP,ブランドに合わないIPには目を向けないことだ。大手パブリッシャにとって,現在のマーケティングで支持されていないIP,つまり映画やテレビのプロパティに取り組むのは意味がない。
あるIPが特定の市場で有効な場合もあるが,そのIPをその市場で選択する労力と費用を正当化するためには,非常に特殊なキャンペーンや理由が必要だ。
何をライセンスするのかを知る
ゲーム用のIPの確保に乗り出す前に,いくつかのライセンシング要素に注意する必要がある - 言い換えれば,何をライセンスしようとしているのかを意識することだ。
IPのライセンスを決定する前に以下の権利問題を100%クリアしておく必要がある。プラットフォーム,ゲームおよびマーケティング資料でのキャラクターの使用,グローバルな使用,その他キャラクターに関する潜在的な制限の完全な認識などだ。
法務部門がライセンス契約を慎重に検討することを許可してほしい。なぜなら,他社のIPを利用して人気ゲームを開発するこの機会を,最大限に生かしたいからだ。
最終的に,あなたは,視聴者にとって有意義で魅力的なものにし,これがあなたの作品であり,あなたがその体験を所有しているという印象を残したいと思うだろう。
たとえば,State of Survivalでは,DCに代わってWarner Bros Interactive Entertainmentからokerのライセンスを取得した。DCと協議の末,我々はコミックからJokerのライセンスを取得したのだ。その理由は,ビジュアル的に違和感なくゲームに溶け込めるJokerを作るのに最も自由度が高く,かつゲームのユーザーにとって受け入れられやすいパワフルな要素を加えることができたからだ。
JokerがState of Survivalに馴染まないことは認識していたが,我々はこのキャラクターと彼の世界をストーリーに慎重に組み込んでいった。その結果,信頼性の高いストーリーが生まれ,長期的なプレイヤーのエンゲージメントを高めることができた。
IPオーナーとの協働
IPをライセンスしたあとは,IPオーナーと強固で協力的な関係を維持するのが賢明だ。IPのDNAを熟知している彼らの存在は,あなたの会社に大きな利益をもたらすだろう。したがって,自律的に行動するのではなく,協調的に考える必要がある。
ゲーム開発とマーケティングの両方の観点から,常にIPオーナーに進捗を報告すること。彼らには,遅延を最小限に抑えるための窓口がありアドバイスをしてくれる可能性が高く、実際にあなたのやっていることをサポートすることができるのです。
2021年には,AMCのネットワークが開拓したさまざまなマーケティング活動を利用することができた。加えて,独自のプロモーションも実施している。
Daryl DixonとJokerが加わえたときに,人気のあるキャラクターをそのままストーリーに組み込むことはできないことを理解した。それゆえ,我々は常にState of Survivalの基本的な前提を維持し,ゲーム自体の整合性を損なうことのないように,プレーヤーのコミュニティとの緊密な関係を維持した。
互いの取引をWin-Winにする
IPパートナーとの協業では,双方が価値の交換を模索し,Win-Winのシナリオを確立することが目的となる。ゲームデベロッパは視聴者にエンゲージメントを提供するが,IPパートナーはこの新しい視聴者を開拓し,エンゲージする機会を得るわけだ。
ゲームデベロッパは,これまで直線的だったIPに,まったく新しいインタラクティブな体験と文脈を作り出すことができる。ゲームには,リニアな世界でのIPの課題である,物語やストーリーの幅を広げる能力があるのだ。そうすることで,ゲームとIPは,より新しい,より多様なオーディエンスを惹きつけ,ユーザー獲得をより効率的に行うことができるのだ。
注意点は,新規IPを単なるマーケティングツールとして扱ってはいけないということだ。IPのロゴをゲームに貼り付け,その見返りとして大きな数字を期待することは,ゲームだけでなく,評判にも悪影響を及ぼすだろう。
それは1つのことに帰結する:信頼だ。たとえば,知名度の高いIPのライセンスを取得した場合,まずコミュニティにコンタクトを取り,プレイヤーが最も期待しているものは何かを尋ねる。コミュニティやステークホルダーとの膨大なリサーチが,我々の成功のカギを握っているのだ。信頼が,より確かなつながりを生み出す。
それとは別に,リサーチの一環として,より幅広い業界トレンドに傾注すれば,ゲームに本物志向の情熱と願望があることがすぐに分かるだろう。
新年を迎え,我々はIPのルールや通常のサイクルが覆されつつあるのを目の当たりにしている。たとえば,Arkaneを見てほしい。League of Legendsは,Ruined Kingによって再びゲームに統合され,基本的に好循環を生み出しているのだ。
FunPlusでは,次のビッグIPはゲームから生まれると考えている。
Bob Slinn氏は,FunPlusのビジネス開発担当副社長で,欧米市場の戦略的ビジネス開発を指揮している。
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※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)