【ACADEMY】PCや家庭用ゲームをモバイルで成功させるデザインとは
多くのデベロッパやパブリッシャにとって,既存のIPをモバイルに移行するのは困難なことだ。操作方法からマネタイズ,そして消費者の期待の重さまで,この移行を行おうとするタイトルには,しばしば不利な条件がつきまとう。
この記事では,Call of Duty Mobileと原神がモバイルでどのように成功したのかを見ていく。また,モバイル市場で成功している他のMOBAから学ぶことができれば,素晴らしい可能性を発揮するであろうLeague of Legends: Wild Riftについても紹介する。
Call of Duty Mobile
おそらく家庭用ゲーム機やPCからモバイルへの移行を成功させた模範事例となるCoD Mobile(以降,このように呼ぶ)は,AAAデベロッパにその方法を示している。デザイン面に関しては,いくつかの点でこの成功に貢献していることが分かるだろう。
●操作方法とゲームプレイ
FPSにおいて,複雑なコントローラやマウス/キーボードの設定をモバイルスクリーンに移すことは,非常に大きなハードルだ。開発元のTiMiは,このハードルをクリアし,精度とコントロールをエミュレートすることで,モバイルや家庭用ゲーム機ゲーマーが期待するものに近い体験を提供している。
●継続性
CoD Mobileは,IPの伝統と懐かしさを利用して,プレイヤーに馴染みのあるマップや武器を提供している。
●大規模なコンテンツの流れ
CoD Mobileは,最も成功したモバイルゲームから学んでいる。それはプレイヤーを飽きさせないように,複数のゲームプレイイベント,期間限定のゲームモード,数多くの新しいマップや武器を提供することだ。
●大小のイベント
成功しているモバイルゲームは,イベントを活用する方法を知っており,CoD Mobileも同様だ。期間限定のゲームモードや新マップと連動した小規模なイベントが常に2〜3種類開催されており,ゲームプレイをすることで複数のアバターアイテムをアンロックできる。これに加えて,最近のSea of Steelイベントのような大規模なゲームプレイイベントが少なくとも月に1回は開催されている。
●バトルパス/ランクモードの新しいシーズン
バトルパスの成長と,それがモバイルの大作ゲームでどのように利用されているかについては,これまで何度も記事にしていた。また,PCや家庭用ゲーム機でもマネタイズの仕組みとして普及している。
●使えるアバターエコノミー
アバターエコノミーを機能させるためには,多様性と選択肢を提供する必要がある(誰もが同じアバターアイテムを購入したいわけではない)。CoDでは,大量のアイテムを定期的に投入することでこれを実現している。
●複数のマネタイズルート
CoDは,バトルパス,直接購入のバンドル,マイルストーンガチャ,最もレアなスキンが手に入るラッキードローガチャなどで収益を得ている。この仕組みでは,報酬プールに10個のアイテムが用意されている。ガチャを購入するたびにアイテムが1つ削除されるため,プールには9つのアイテムしか残らず,よりレアなアイテムを手に入れるチャンスが増えていく。
最大の賞品を手に入れるためには,9〜10回ガチャを購入する必要があることがよくある。これは,家庭用ゲーム機/PCのApex Legendsがコレクションイベントで非常にユニークでレアなエアルームアイテムを配布するのと似ている。
原神
原神が他のゲーム機やPC向けのIPと異なるのは,常にこれらのプラットフォーム上に存在することを想定して設計されている点だ。この意味では,将来のクロスプラットフォームタイトルの成功の青写真とも言えるだろう。本作の優れた点は以下のとおりだ。
●AAAクオリティのグラフィックス
モバイルゲームとしては期待以上のクオリティだ。
●ゲームの操作性・操作感
ほかの多くのモバイルアクションRPGと比較して,AAAプレミアム家庭用ゲーム機ゲームに非常に近いものだ。
●ゲームプレイの核心
ほとんどのモバイルアクションRPGは,非常にメタ的な要素が多く,ゲーム性がすべての中心にあるとは言えなかった。オートプレイは,メタ的な要素(キャラクターのアップグレードなど)に必要な資源を集めるためによく使われる。原神では,コアなゲームプレイに重点を置き,戦闘,ストーリー,探索,クエストなどをより魅力的なものにしている。
●両方の長所を活かす
家庭用ゲーム機でもPCでもお馴染みのコアなゲーム性と,サービスベースの無料ゲームでも通用する,実績のあるキャラクターコレクターRPGのメタシステムを融合させている。
●ライブオペでは常に高い生産性を実現
原神の毎月のイベントは大規模だ。新しいイベントモード,キャラクター,イベントエリア,クエストは,他の多くのモバイルゲームと比較して,プレイヤーを惹きつけてやまない。
キャラクターは,質の高いストーリーやミッションとともに登場し,多くの場合,さまざまなイベントと結びついている。プレイヤーは,これらのキャラクターを期間限定のバナーガチャで購入できる。これは本ゲームの主な収益化メカニズムだ。
League Of Legends: Wild Rift
League of Legends: Wild Riftは,モバイルMOBAとして一流のゲーム性を備えているにもかかわらず,収益面では順調なグローバルローンチを果たしたものの,その後は減少傾向にある。
全体的に見て,このゲームには目立った問題点はない。 ― 高い生産性を持ち,モバイルでスムーズに動作し,操作性もうまく移植されている。クオリティ,ゲーム性,グラフィックス,エフェクトのすべてがモバイル向けとしては最高レベルである。
一般的に,アバターエコノミーの収益化は難しいと言われている。とくにMOBAのジャンルでは,LoL: Wild RiftとMobile Legends: Bang Bangのみが米国のトップ500に入っている。これらのゲームで収益化を成功させるためには,巨大なコンテンツの頻度が重要な要因の1つとなる。Wild Riftでは,エモートやダンス,プレイヤーのアバターなどの新しいアバターアイテムや収集品を一貫して提供することで,これをうまく実現している。
それにもかかわらず,Mobile Legends: Bang Bangのようなゲームでは,収益化が遅れている。では,LoL: Wild Riftはどのような点を改善できるのだろうか?
●マネタイズの仕組みの多様性
最も成功しているゲームは,バトルパス,サブスクリプションプラン,イベント,ガチャなど,さまざまなマネタイズの仕組みを提供している。Wild Riftの収益化は,ヒーロー/スキンの直接購入とバトルパスにほぼ集中している。
●期間限定イベントとクロスオーバー
下のグラフを見ると Mobile Legends: Bang Bangでは,収益が大幅に増加している。これは主に期間限定のガチャイベントによるもので,キャラクター/スキンの直接購入やバトルパスのマネタイズに加えて,収益を大幅に向上させている。
たとえば,最近MLBBで大規模な収益増加が見られたのは,スター・ウォーズとトランスフォーマーのコラボイベントだ。これらのイベントの主な報酬(コラボスキン)は,直接購入することはできず,イベント専用のガチャの報酬となっていた。
それに比べて,LOL: Wild Riftのイベントは,非常に洗練されていて魅力的だが,直接的な収益化はされていない。その代わり,新しいスキンやキャラクターを紹介するために使われている。
●ガチャ
LoL: Wild Riftでは,アバターエコノミーを採用しているモバイルゲームの中でトップの売上を記録しているすべてのゲームがさまざまなガチャを利用しているため,最終的にはガチャに大きな収益機会がある。PC版のLoLでは,イベント限定のものも含め,さまざまなガチャが使用されている。
●プレイモードの充実
さらに,自動化されたトーナメントなどのプレイモードや,ギルドなどのソーシャル機能があれば,さらにユーザーを惹きつけ,リテンションを高めることができる。
まとめ
正しい方法で開発を行えば,デベロッパはPCや家庭用ゲーム機で制作した作品をモバイルでも動作させるチャンスがたくさんある。Apex Legends,Valorant,Diablo Immortal(などのBlizzardの次期タイトル)のように,魅力的な日々が待ち受けている。これらのタイトルのモバイルデザインがどれだけ商業的な成功に結びつくか,今後数か月間,注意深く見守っていきたいと思う。
Wilhelm Voutilainen氏は,GameRefineryのシニアゲームアナリストだ。
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