【ACADEMY】受託開発ビジネスを成長させるには

Streamline Media GroupのAlexander Fernandez氏が,外部の開発スタジオを始める際に競合他社に差をつけるためのヒントを紹介する。

 かなり前には,15人のチームでAAA級のゲームを作ることもできたが,それからゲームは進化し,より複雑になった。現在のゲームは,コンセプト開発から品質保証,ポストプロダクションまで,大規模なサポートチームを必要としている。そのため,ゲーム業界では,自社開発を補完する外部開発のニーズが高まっている。

企業は,教えなくてもスキルを実行できる人を求めている

 アート,プログラム,デザインができる人は,自分自身の外部開発スタジオを作るチャンスがある。企業が求めているのは,教えなくてもそういったスキルを実行できる人材だ。

 しかし,外部開発は誰にでもできるものではない。外部開発会社になると,サービスマインドを持つように心がけることが重要だ。特定のニーズを持った他の組織のために仕事を提供し,実行することになるのだから。

 外部開発会社になることで得られるメリットは数多くあるが,最も重要なのは,ゲームデベロッパとしての能力を高めることができるということだ。さまざまなグループと一緒に仕事をすることで,学び,成長し,それを自分のオリジナルゲームに生かすことができるのだ。


1つのサービスを極める


 最初のうちは,1つのサービスを極めるのが一番だ。そのサービスを得意とし,自分の存在をアピールするのだ。そして,そこから派生していく。よくないのは,100万もの異なるサービスを提供する会社になることだ。何を得意としているのか,誰にも知られない会社になってはいけない。

 プラットフォーム,ゲームエンジン,アートスタイルは無数に存在するので,自分のニッチな部分を切り出し,それを完璧にするのは簡単だ。また,常に新しい技術に対応しなければならず,スタジオは,自分たちで移植する時間や専門知識がない場合,これらのプラットフォームに移植する必要がある。


自分の価値を知る


 過去にアウトソーシング会社と取引したことがなければ,自分のサービスに対してどのくらいの料金を設定すればいいのか分からないだろう。ここでは,自分の価値を算出するためのヒントを紹介する。

  • 自分の1日の業務コストを把握し,それを1時間あたりの料金に換算する
  • 通常の仕事時間の中で,自分がどれだけ期限を守れるかを検証する
  • あなたが必要とする機材,家賃,その他のアイテムの費用をパーセンテージで計算し,それぞれの地域のクライアントの平均費用と比較する

あなたの課題は,あなたの仕事が他の何千もの外部デベロッパよりも優れていることを明確に示す方法を見つけることだ

 ここで重要なのは,何かをするための基本的な単価を理解することだ。これが分かれば,雇用のコストと比較できる。

 自分の仕事の価値を下げることは,底辺競争に参加する最高の方法だ。クライアントが求めているのは,範囲,予算,品質のすべてにおいて優れたものを提供することだ。あなたの課題は,当たり前のことを超えて,自分の仕事がほかの何千もの外部デベロッパよりも優れていることを明確に示すことで,これを生み出す方法を見つけることだ。

 それは最終製品だけではなく,インタラクションの経験全体でのものになる。世界で最も優れたプログラマで,価格も非常に安い人がいるかもしれないが,対応が面倒であれば,リピーターを確保することはできないだろう。


3.開発パートナーを探す


 クライアントはあなたのところには来ないので,ネットワークを作り,自分を売り込む必要がある。そのためには,自分自身をアピールする必要がある。会社を調べ,適切な相手を見つけることに何時間も費やすことになるだろう。メールや電話,イベントを通じて,彼らの前に出ることを使命とすることをお勧めする。ここで重要なのは,能力表,明確な価値提案,優良顧客の将来的なニーズの理解など,最新の会社資料を用意して,常にビジネス開発を推し進める必要があることを心がけておくことだ。

 すべてが文法的に正しいこと。明確であること。簡潔であること。関連性があること。ピッチに関しては,ドストエフスキーではなくヘミングウェイを思い浮かべてほしい。さらに,あなたが誰かに話しかけようとしても,メールでのやり取りがうまくいかない場合もある。そのような場合は,あなたのネットワークを通じて心優しい紹介者を見つけるか,電話をセットアップするために短いメッセージを送ってみよう。

Alexander Fernandez氏
【ACADEMY】受託開発ビジネスを成長させるには
 地元の開発スタジオを知っているなら,そこにチャンスがあるかもしれない。質の高い製品を作っているデベロッパがいるところには,クライアントを確保するチャンスがある。たとえば,ラテンアメリカの開発シーンは成長しているので,もしあなたがその地域にいるなら,助けを求めているスタジオがたくさんあるかもしれない。

 依頼主と同じように,あなたも依頼主に質問することを忘れないでほしい。相手が,一緒に仕事ができるスタジオであるかどうか,お金をきちんと払ってくれるスタジオであるかどうか,仕様が現実的なものであるかどうかを確認するのだ。

 パートナー候補と話すときには,次のような質問をしてみよう。

  • 期待されていることは何か?
  • 短期的なニーズは何か?
  • 長期的なニーズは何か?
  • 予算はどのくらいか?
  • そのパートナーを管理するにはどのくらいの時間が必要か?

 一度,パートナー候補とコミュニケーションをとり,これらの質問をしてみてほしい。プロジェクトにどれだけの時間をかけたいか,パートナーとどのようなやり取りをしたいかを決めるのだ。


自分のビジネスを管理し,成長させる


 サービスを提供する方法を知っていることと,ビジネスを運営することは別のことだ。ビジネスを成功させるためには,契約や財務に関する知識が必要だ。自分を安売りしてはいけない。自分の価値やマージンを誰かに教えてもらうことはない。失敗してもマイナス評価以外の影響がない企業環境でと,独立してからとでは人生は大きく異なる。人を管理するのは大変なことだが,あなたが敬意を持って公正に対応すれば,問題を軽減できるだろう。

会社を経営することと,顧客に技術を提供することを,1人で兼ね備える人はほとんどいない。2つの異なる能力であることを理解すること

 成功すれば,いずれはビジネスを拡大する必要が出てくる。その際には,自分の得意なことに集中して,このサービスで自社を優れた状態にし続けられる人材を投入するのがベストだ。

 会社を経営することと,顧客に技術を提供することは,2つの異なる能力であることを理解してほしい。これらを1人で兼ね備える人は滅多にいない。

 早い段階でビジネスとハードスキルの役割分担をしておけば,将来的に会社を成長させることができる。また,リーダーとしての自覚を持ち,経営者としての自覚を持たなければならない。そして何よりも,常に取引を成立させること。それを忘れてはいけない。


自分のプロジェクトに投資するタイミング


 自分のプロジェクトに取り組みたいと思ったとき,どのような道を歩むかを決める必要がある。チームを分けて,半分は外部の開発プロジェクトに参加し,もう半分は自分のプロジェクトに参加するのがいいだろうか? 空いた時間に自分のプロジェクトに取り組むほうがいいのか。あるいは,外部開発の仕事を受けるのをやめて,自分のプロジェクトだけに集中するのか。答えは人によって異なるが,もしあなたが自分のゲームに投資するつもりなら,次のような質問を自分に投げかけてみてほしい。

  • 給料を払うだけの資金はあるか?
  • その投資が,プロジェクトの成功・不成功にかかわらず,最低限,サービスの選択肢を広げるものであると確信しているか?
 最初に述べたように,ゲーム業界では外部のデベロッパにも多くのチャンスがある。すべての人に当てはまるわけではないが,仕事に取り組む人にとっては,やりがいがあり,頑張ればちゃんと報われ,稼げる仕事なのだ。


Alexander Fernandez氏は,ラテン系の起業家で,CEO兼共同設立者として,スタートアップだったStreamline Media Groupを3大陸に180人以上の従業員を擁するグローバルビジネスに成長させた人物だ。氏は,テクノロジーは常に人々の前進を助けるツールでなければならず,クリエイティブエコノミーは発展途上の市場や経済の出発点になり得ると考えている。

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