ユーザー獲得キャンペーンの自動化は当たり前? モバイルアプリの新常識。キャンペーン自動化による3つのメリット

 2020年,モバイルアプリ業界は消費者の支出額が世界で約15兆7000億円,モバイル広告支出額が約26兆3500億円に達するなど,爆発的に成長しました。市場の成長とともにモバイルアプリの競争は一層激しくなっており,より多くのアプリデベロッパーが,アプリマーケティングツールやソリューションを活用して,収益性の向上に力を入れています。その中で人的リソースをより効率的に配分するため,様々な作業の「自動化」が進んでいます。今回はその中でも「ユーザー獲得」(User Acquisition,以下,UA)キャンペーンの自動化について,そのメリットとともに,ハイパーカジュアルゲームの成功事例を紹介します。


ユーザー獲得キャンペーン自動化のメリット(1):デベロッパーの負担を軽減

 デベロッパは通常,複数のアプリを同時並行で開発しています。それぞれのアプリにおけるUAキャンペーンを,同時に管理することは容易ではありません。また,効果的なUAキャンペーンを行うには,異なるソースから複数のマーケティングチャネルを利用し,様々なクリエイティブを活用する必要があります。

ユーザー獲得キャンペーンの自動化は当たり前? モバイルアプリの新常識。キャンペーン自動化による3つのメリット

 その一方で,同時に複数のキャンペーンを手動で最適化しながらのアプリ開発は,デベロッパにとって大きな負担となってしまいます。また,複数のキャンペーンが複雑に絡み合っているために,チャネルやターゲット地域を限定してUAを行うこともありますが,これは機会損失にもつながりかねません。

 このように,手動によるUAキャンペーンの運用はますます複雑になっているため,デベロッパが時間とエネルギーを節約するために「自動化」は非常に有効な手段です。自動化によって,デベロッパは少ない作業でUAキャンペーンを設定および最適化することができ,本来の仕事であるアプリ開発に集中できます。


ユーザー獲得キャンペーン自動化のメリット(2):数値に元づく判断が素早くできる

 最近では AppLovin をはじめとする多くの企業が,アプリのローンチ後一日で,初期の指標に基づいてユーザーの顧客生涯価値(LTV)を予測するシステムを構築しています。デベロッパはこれらシステムを活用し,すべて自動化されたプラットフォーム上で,予測数値を基に目標を設定してUAキャンペーンの広告枠を購入することができるようになっています。

 また,UAキャンペーンの自動化によって得られた情報を活用すれば,デベロッパはキャンペーンにどれくらいの予算をかけるべきかを予測しやすくなります。これはキャッシュフロー管理を理解するうえでも有用です。さらに,キャンペーンや国,ソース,クリエイティブごとに,より詳細で複雑な予測値に応じて入札を行うこともできるでしょう。このような作業を一つ一つ手動で行うと,時間が大幅にかかるのはもちろんのこと,人為的なミスによって大きな差が発生してしまう可能性もあります。こういった観点でも,自動化の活用は大きな意味があります。


ユーザー獲得キャンペーン自動化のメリット(3):クリエイティブやターゲティングの最適化が可能

 UAキャンペーンの自動化により,細かなセグメンテーションが可能となり,デベロッパはそれぞれのセグメントにあわせて数百種類にも及ぶクリエイティブをテストできます。その結果,膨大なデータに元づいて細かなクリエイティブを改善でき,キャンペーンや地域ごとにアプリのクリエイティブの最適化を図れるようになります。それぞれのUAキャンペーンで5%でも数値を改善することができれば,マーケティング全体にポジティブな効果をもたらします。

 このUAキャンペーンの自動化に成功した代表的な事例として,ドワンゴが開発したハイパーカジュアルゲームの「Draw Coliseum」があります。ここでは,ゲームをローンチした際,AppLovinのUA及び広告収益化ソリューションである「AppDiscovery」のROAS自動化機能を活用し,全世界のユーザーを対象にキャンペーンを最適化して,質の良いユーザーの大規模獲得に成功しました。

 UAキャンペーンを自動化する前は,全体の売上の70%を北米地域が占めていましたが,自動化してからは,北米以外の地域の売上を30%から50%まで引き上げ,より安定的な収益構造に改善することができました。

 冒頭で触れたように,モバイルアプリの市場は活性化し続けており,いまなお多くの企業がモバイル市場の重要性を認識し,新規参入を図っています。競争が激化する中で,アプリ開発企業は従来のユーザーを維持しつつ,新たなユーザー獲得にも注力することが求められます。今回紹介した「UAキャンペーンの自動化」は,あくまで一つの手段に過ぎませんが,自社アプリ開発の加速に向けて,本稿が少しでも参考になりましたら幸いです。


片木智也(かたぎ・ともや)
 AppLovin日本事業責任者。P&Gジャパン合同会社でデータアナリストとしてサービス導入業務などに従事し,2017年にAppLovinに参画。Business Developmentとして個人から大手まで数々のデベロッパのビジネス成長に寄与し,2020年11月よりAppLovin日本事業の責任者を務める。