ゲームが大ヒットしたら,どう対処すべきか?

1047のIan Proulxは,Splitgateの突然の成功への対処について語る。

 オンラインゲームのデベロッパにとって,発売時に予想していたよりも数百万人も多いプレイヤーがいることは,かなり良い問題に分類されるだろう。

 しかし,それでも問題はある。とくに,ゲームの技術的な処理能力を超えるプレイヤーが押し寄せてきて,その問題に対処するための小規模な開発チームしかない場合はなおさらだ。そんなとき,ゲームデベロッパはどうすればいいのだろうか?

 これは,1047 Gamesが7月にSplitgateのオープンβテストを開始したあとに提示した問題だ。Splitgateは,無料でプレイできるオンラインアリーナシューターだ。Valveの一人称視点のパズルゲームのテレポーテーション機能を,より伝統的なSFシューターに導入していることから,「Halo meets Portal」とも表現されている。

 デベロッパは,7月に行われたSplitgateのオープンβがうまくいくことを期待していた。しかし,それが200万人のプレイヤーの注目を集め(関連英文記事),そこまでのトラフィックを想定していなかったゲームに緊急のアップデートが必要になるとは想像もしていなかった。

 GamesIndustry.bizの取材に対し,1047のCEO兼創業者であるIan Proulx氏は,プレイヤーコミュニティの関心事に対応することと,それを実現するためのチームの能力に配慮することの間で,バランスを取ることが必要だと語る。

 「我々は一生懸命働いています。これは我々の赤ん坊であり,みんなには『死なないように』とも言っています」とProulx氏は語る。

 「我々は,もっと規模を大きくできるでしょう。しかし,無理をせず,もう寝よう。明日になったらやろう,というのがここのダイナミズムなのです。現在は興奮しているから,みんな一生懸命働いているんです」

 Splitgateの成功はチームをさまざまな面で圧倒しているが,Proulx氏とチームは,ゲームの勢いが止まることを歓迎していると説明する。

 「Apex (Legends) に新しいシーズンが追加されたのは,ちょっと嬉しかったですね。そのおかげで,プレイヤーのトラフィックを1日分持っていってくれました」と氏は語る。

 「プレイヤーの数が増えたり減ったりしなかった初めての日でしたね。1日だけ横ばいで,次の日には増加しました。おかげで24時間余裕ができましたが,これはありがたいことでした」

 今後の展望については,1047 Gamesはあまり先のことは考えていないとProulx氏は語る。

 「ロードマップについては,我々はあまり先のことは考ていません。コミュニティの要望を聞きたいと切実に考えています」と氏は説明する。

 「小規模なチームだからこそ,非常に機敏で迅速な対応が可能なのです」

ロードマップでは,将来の計画はあまり立てず,コミュニティが何を望んでいるのかを聞きたいと思っています -Ian Proulx氏, 1047 Games.

 Proulx氏によると,プレイヤーコミュニティが特定の機能を求めている場合,開発チームはその要求に対応するために方向転換できる。また,その決定が現在の作業の方向性と一致するかどうかをチームで話し合っていると語る。

 「それはバランスの問題ですね。ただやみくもにコミュニティの意見に耳を傾けるのではなく,常にバランスを取る必要があるのです」とProulx氏は語る。

 その証拠に,Proulx氏は,Splitgateのオリジナルのランキングシステムを削除する決定をしたことを説明しているが,これはプレイヤーから好評だったそうだ。


 ランキングシステムは好評だったのだが,その問題点は,腕前に関係なくプレイしている全員がランク1からスタートし,ペアを組むことだった。つまり,腕前に関係なく,全員が一緒になってしまうのだ。

 これでは,誰にとってもバランスの悪いゲームになってしまうだろう。ランクの低い試合では,FPSゲームに慣れている人とこの手のジャンルは初めての人が混在するようになった。初めての人が負け続け,数試合でタイトルを辞めてしまうこともあったのだ。

バランスですね。ただやみくもにコミュニティの意見に耳を傾けるのではなく,常にバランスを取る必要があります -Ian Proulx氏, 1047 Games.

 新規参入者は低ランクの試合で苦労していた一方で,経験豊富なプレイヤーにとっては試合が簡単すぎた。

 このシステムのもう1つの問題は,ランクのレベルアップに時間がかかることだった。最高ランクに到達するまでには何十時間もかかり,そこまで到達しても,マッチメイキングでは,そのレベルに近いプレイヤーがほとんどいないため,試合を見つけることができなかったのだ。そうすると,いつまでたっても対戦相手が見つからずに辞めてしまうのだ。

 すると,一部のプレイヤーは無料で新しいアカウントを作成し,ランク1からやり直すことになる。そうなると,新しいプレイヤーが経験豊富な人と対戦するというサイクルが生まれる。みんな,最初からプレイすることを繰り返すか,そのままゲームをやめてしまうことになるのだ。

 Splitgateは,いくつかのつまずきや,無料でプレイできるFPSゲームの分野が飽和状態であることにもかかわらず,成功を収めている。1047はSplitgateがオープンβを開始して以来,1億ドル以上の資金を調達していたが(関連英文記事),競合他社の存在を理由に「多くの」投資家が同社を見送ったとProulx氏は語る。


 それでも,Proulx氏は,このスタイルのゲームの人気は,持っていて損はない問題の1つだと考えている。1047がすべきことは,何か新鮮なものを提供し続けることだ。

 「人々はアリーナシューティングが大好きです」と氏は語る。「20年前と同じものをプレイしていても,それは流行らないでしょう。大衆にもプレイできて,かつスキルの上限が高いものを作らなければなりません」

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら