【ACADEMY】ゲームビデオの制作:ベスト・プラクティスと避けるべき落とし穴
Alconostはローカライズを主とする会社だが,ゲームの映像制作も行っている。
2013年からゲームの映像を制作しており,その間にかなりの制作経験を積んできたので,皆さんにも参考にしていただけると思う。このデモリール(参考URL)では,我々の経験がどのようなものであるかを見ていただける。
映像にはさまざまな種類がある。しかし,市場向けの予告編であれ,広告キャンペーンのティーザーであれ,どんな映像であっても,我々はプロジェクトごとに同じ映像制作のワークフローを用いている(参考URL)。顧客の皆さんが自身で映像を制作する際にも,簡単に同じプロセスを踏むことができる。
当社の標準的な制作パイプラインは以下のとおりだ。
今日は,このプロセスをガイドし,皆に誇れるようなゲームビデオを仕上げるための実践的なヒントをお伝えしたい。
概要:頭からゲームの機能に優先順位をつける
すべては,枠組みを決める短い質問から始まる。我々の概要書には12の質問があるが,その中から4つの質問を紹介したいと思う。ここで決めたことは,その後の制作段階での判断に影響してくる。
●「ゲームのページに来させる」か「ゲームをインストールする」か,ゴールを選ぶ
まず,自分自身に問いかけよう。ユーザーをゲームのページに誘導することが目的なのか? それとも,ゲームページに来た訪問者をユーザーにすることが目的なのだろうか? 目的を知り,ユーザーが動画を見る状況を理解することで,アイデアを練りやすくなる。
●視聴者を決める:年齢,知識,文化的背景,ゲーム経験など
次に,動画の対象となるユーザーについて考えてみよう。視聴者の文化的背景やゲーム経験などによって,視聴者の認識やレッドライン,伝えたいアイデアを理解してもらえるかどうかが変わってくる。これは,ビデオのコンセプトやスタイルに関するクリエイティブな決定に影響する。
●要求事項:技術的および創造的な制約
また,動画を掲載するプラットフォームのルールによっても判断が左右されることがある。たとえば,App Store用の動画を作成する場合,動画の長さは15秒から30秒で,それ以上でもそれ以下でもない。
さらに,App Storeの推奨事項を満たすためには,ゲームの世界観を伝えることよりも,実際のゲームプレイを見せることに重点を置く必要がある。App Storeのガイドラインをよく読んで,ビデオを大幅に作り直す必要がないようにしよう。
●ゲームの重要な機能を優先させる
最後に,上記のことを念頭に置いて,ゲームの重要な機能に優先順位をつけよう。たとえば,ゲームにあまり慣れていないユーザーをターゲットにするのなら,戦闘方法などの上級者向けの機能よりも,基本的な機能に重点を置いたほうがよいだろう。
下のスクリーンショットでは,優先順位付けされたリストの例を見ることができる。
もちろん,デベロッパであるあなたにとって,優先順位付けはそれほど簡単なことではない。それぞれの機能はあなたの子供のようなもので,何を省略すべきかを選択するのは難しいことだ。しかし,視聴者の興味を引く可能性が最も高い機能を強調するためには,これは不可欠なステップだ。
枠組みができたら,次は脚本を考えていこう。
脚本:シーンの機能,フレーム内のアクション,ナレーションなどを同時に考える
脚本作りはワクワクする作業だが,そのワクワクが集中力を失わせることもある。思考が散乱しているときは,包括的なアプローチが有効だ。
下の別のスクリーンショットのサンプルを見てみよう。
これは各シーンにそれぞれ独自の機能があることを示す脚本の構成例だ。たとえば特定のゲームの機能について詳しく説明するもので,その機能はビジュアルだけでなく,バナーによる行動喚起やナレーションのテキストでも同じストーリーを表現し,シーン内のすべてがつながっていることが必要になる。
さらに,視聴者が考えを理解しやすいように,「1つの機能,1つのシーン」という原則を守るようにしよう。そうすることで,ストーリーが明確になり,オーバーロードを防ぎ,1つの機能から次の機能へとスムーズに移行できる。
観客があなたの考えに従いやすくするよう,「1つの機能,1つのシーン」の原則にこだわるようにしよう
台本の作成は夢中になって取り組めるものだが,自分が置かれている状況で制作に影響を与えるものを押さえておくことが重要だ。限られた予算,限られた人員,締め切り,あるいはそのすべてがあるかもしれない。ビデオのビジュアル部分を考える際には,各シーンをどのようなアセットで構成するかを考えてみよう。特定の機能を説明するには,実際のゲームプレイの映像だけで十分だろうか? もしそうでなければ,その機能のより複雑なデモを行うためのリソースはあるだろうか? 少なくともこの質問は予備的に検討してほしい。もしミスがあれば,それはストーリーボードの段階で現れる。
ストーリーボード作成:アセットを賢く配置する
ストーリーボードを作成する際には,シーンによっては複数のステージをデザインする必要があることを覚えておこう。ゲームプレイのキャプチャを見せるシーンでは,この段階でゲームプレイを録画し,キャプチャを確認して,シーンのアイデアを十分に伝えられるかどうかを検討する。
もしキャプチャが思ったとおりにいかなかった場合,トラブルを避けるための選択肢は少なくとも3つある。まず,台本に戻って修正する方法だ。これはいつでもできる。
もう1つの方法は,ゲームエンジンでシーンを構築するためのリソースを確保し,必要な調整をすべて行って,ゲームプレイを構築からではなくエンジンから記録することだ(間違いなくよりよい方法だ)。もう1つの方法は,ビデオのために特別にデザインした新しいアートや,既存のゲームアセットを使って,アニメーショングラフィックスで機能を表現することだ。
異なるアスペクト比の映像が必要な場合,これらの追加バージョン用のストーリーボードは必須ではないが,考慮すべき点があるだろう。たとえば,あるシーンが縦長のバージョンではトリミングの関係でちゃんと理解できないことがある。また,あらかじめバリエーションを想定しておくことで,リソースを節約できる。
アスペクト比の異なる映像が必要な場合,その分の絵コンテは必須ではないが,考慮しておいたほうがよいだろう
制作チームの作業を簡素化するために,すべてのビジュアルアセットを賢く整理しよう。必要なものだけを選び,簡単に見られるようにしておこう。ここでは,絵コンテが非常によく練られた映像の例を見てみよう。この映像は,アニメーションのシーンで構成されている。絵コンテの段階ですべてのアートを整理しておくことで,アニメーションの段階での作業を簡略化することができた。ゲームMonster Hustleのティザー映像だ(参考URL)。
このように,自分のゲームに必要な映像が,アセットに存在しないものだったりすると,映像のために特別に描く必要が出てくる。
絵コンテが完成したら,次はアニメーションではなく,BGMとナレーションの制作に入る。
音楽とナレーション:アニメーションの前に行う理由
まず,音楽から始めよう。最善の方法は,アニメーションの作業を始める前にBGMを選択することだ。そうすれば,音楽のテンポに合わせてアニメーションを「踊らせる」ことができ,オーディオとビデオのシーケンスがお互いに響き合うようになる。これにより,視聴者はより没入感を得て楽しむことができる。
なお,ゲーム内の音楽にこだわる必要はない。たとえば,ロケ地の環境音は単調すぎて,映像のドラマチックな構成や感情的な負荷にそぐわないことがある。解決策としては,ロイヤリティフリーのマーケットを閲覧するか,プロジェクトで作曲家を使っている場合は,ビデオ用にカスタムの音楽テーマを作ってもらうことだ。
ナレーションについては,ネイティブのプロと一緒にテキストを録音する前に,自分でナレーションを録音して,そのドラフトをストーリーボードや音楽と組み合わせてみよう。そうすることで,声と絵が意味的にサポートし合っているか,同じストーリーを語っているかをダブルチェックできる。もし,不備があれば,この段階で簡単に修正できる。
続いて,読み上げられるテキストだけでなく,絵コンテや音楽,具体的な指示書などをプロのナレーターに渡す。たとえば,どのような語り部を演じてもらいたいか,話し方や声のトーン,テンポなどを詳しく説明する。
最後に,キャラクターの名前やゲームのタイトルの発音を,ストレスも含めて説明する。些細なことだが,とても大切なことだ。
音楽が決まり,プロのナレーションが録音されると,いよいよアニメーションの段階に入る。
音楽に合わせてアニメーションする
この段階では,モーションデザインを重視する。制作プロセスを簡略化し,スピードアップするために,シーンごとに映像を組み立ててみよう。1〜2シーンをアニメーションにして,その中間結果を評価する。
また,チーム内でも意見が出てくることがある。矛盾したアイデアが出てきた場合,あなたの仕事は,異なる視点を調整し,チームのコメントを構成し,一貫性のある一貫したフィードバックをモーションデザイナーに提供することだ。
見栄えのするアニメーションでなく,注目を集めるビデオが必要だ
中間結果を評価する際には,見栄えのするアニメーションだけではなく,注目を集める映像が必要であることを忘れないでほしい。そのためには,視聴者の注意をどのようにコントロールするかに注目しよう。たとえば,以下のようなことが考えられる。- ズームインする
- キーとなる物体をカメラで追いかける
- その物体を強調する
- 拡大する
- ポインターをアニメーションさせる
これはすべてを網羅したリストではない。このような仕掛けは,映像を見やすくするためには,それだけでは成り立たず,アニメーションの中に組み込まれていなければならない。
さらに,BGMのビートに合わせて動きを同期させることも必要だ。そのためには,音楽のテンポに合わせてメトロノームを作成し,強調されたビートに合わせて重要なアニメーションアクションを表示してみよう。
下の例を見てほしい。このスクリーンショットでは,メトロノームの強調されたビートがトラックのビートに対応しているのが分かる。信じられないかもしれないが,このような単純なものが,アニメーションの骨格として非常によく機能するのだ。
もちろん,このほかにも,アニメーションを素晴らしいものにし,逆に印象を悪くするポイントはたくさんある。しかし,それだけではない。アニメーションは,単なる装飾ではなく,アイデアを伝える手段であると考えてほしい。アニメーションには意味がある。感情が伝わるような動きを心がけよう。適切なアイデアと適切な感情が出会うと,結果的に魔法のようになるのだ。
アニメーションの準備ができたら,いよいよ最終段階のサウンドデザインに入る。
サウンドデザイン:手を抜いてはいけない納得のいく理由
この段階では,音楽トラックをアニメーションの時間に合わせてカットしたり,音楽の特定の部分をビデオシーケンスの特定のイベントに合わせたりする必要がある。
サウンドエフェクトを使うと,ワクワク感,ドキドキ感,恐怖感など,特定の感情を高めることができる。場面転換やキャッチコピーの挿入,ゲームロゴの登場などのアクションも,効果音で強調できる。しかし,やりすぎは禁物だ。強調したい部分だけを強調するように,賢く効果音を使おう。
映像のサウンドデザインに投資することを躊躇してしまう要因が1つある。実は,ユーザーの3分の1から2分の1は,動画をミュートで見ているのだ。ゲーム動画制作者の仕事は,音を入れて見る人と,入れないで見る人の両方に最適な動画を作ることだ。長い目で見れば,サウンドデザインにはお金がかからないので,手を抜く意味はほとんどない。
音楽と音が重要な要素となっているゲームInfinitode 2のビデオを見ると(参考URL),サウンドデザインを重視することに納得できるだろう。
落とし穴とつまづき:避けるべき12の間違い
ビデオをカッコよくしている秘密の成分を探すために,ビデオをバラバラにするのは簡単にはいかないことがある。通常,それは考え抜かれたコンセプトと完璧な実行力の組み合わせだ。しかし,ゲームビデオ制作において最もよくある間違いを評価するとしたら,以下の12点を挙げることができるだろう(下の画像を参照)。
左側に挙げたものは,コンセプトの部分にルーツがある。ブリーフィングや脚本作成の段階での緩みが原因だ。
また,右に挙げたものは,視覚的なアクセントがない,手ぶれ,ピクセル化など,不完全な制作の結果だ。
最後に,中央の三角形に記載されているものは,決定的な問題ではないが,これがなければビデオはより洗練されたものになる。たとえば,ゲームのタイトルやスタジオのロゴが冒頭に過度に表示されていたり,シーンの長さのバランスが悪かったり,アニメーションと音楽の同期が取れていなかったりすることだ。
さらには,視聴者の心を揺さぶるチャンスを逃してしまうこともある。これらの欠点が重なると,せっかくの魔法が台なしになってしまうだろう。
これらの罠に陥らないためには? もちろん,銀の弾丸はないが,アドバイスをさせてほしい。あなたのビデオが上映される状況を想像し,ゲームについて何も知らない,もしかしたらこのようなゲームをプレイしたことがない人に,あなたのゲームを説明しなければならないことを想像してみてほしい。その人を助け,あなたのゲームを試してみようという気にさせてみよう。
Natalia Shuhman氏は,情報コミュニケーションのスペシャリストで,社会学の修士号を持っている。Alconostでは,ゲームやソフトウェア製品に関するビデオの脚本を書いている。Alconostは,70以上の言語にゲームをローカライズし,あらゆる言語のゲームのビデオを作成している。
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※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)