【ACADEMY】テーマパーク向けVRゲーム開発のベストプラクティス
あなたがバーチャルリアリティのデベロッパで,コンシューマ向けのVRゲームをいくつか作ったものの,目立った形で文化的な流行に浸透することができなかったとしよう。
生き残るためには,VR開発に精通している必要があり,理想的にはゲームに関連する契約を探す必要がある。バイオハザードやBattlefield,ファイナルファンタジーなどのメジャーな作品では,VRテーマパークのライセンスを取得したアトラクションの開発が考えられる(当社が手がけた例を挙げれば)。
コンシューマ向けVRゲームの開発経験があれば,テーマパークのアトラクションのVR体験をデザインするエキスパートになれると思われるかもしれないが,実際にはそれよりもはるかに複雑だ。
VRは素晴らしいツールであり,テーマパークでは,有名なゲームIPを利用して観客を呼び込もうとしている
だからといって,それをやる価値がないとは思わない。バーチャルリアリティは素晴らしいツールであり,テーマパークでは,有名なゲームIPを使って観客を呼び込もうとすることがよくある。実際,ゲームは720億ドル規模の産業だ。そのため,アミューズメントパークのイマジニアたちは,これらの体験をデザインするために,経験豊富なVRデベロッパを必要としている。ここでは,VRゲームデベロッパがこの工程に参入する際の参考になるよう,商業用VRゲーム開発からテーマパーク向けVRコンテンツのデザインに移行する際に,Gamitronicsで学んだことを紹介したいと思う。
時間が重要である
市販のVRゲームは数時間にも及ぶため,複雑な操作を覚えたり,広い空間をじっくりと探索したりできる。しかし,テーマパークのアトラクションはそうはいかない。テーマパークのアトラクションは,数分しかない。
しかも,アトラクションに乗るまでのワクワク感を持続させるためには,行列時に見る装飾でストーリーを盛り上げる必要がある。また,次の来場者がスムーズにVR機器を取り外せるように,簡単で直感的な方法を用意しておく必要がある。
市販のVRゲームは数時間かかることがある。テーマパークのアトラクションには,そのような余裕はない
限られた時間の中で,参加者が何をすればいいのかを把握し,最後まで飽きずに楽しめるようにする必要がある。たとえば,バイオハザードのライドでは,1回45秒のセクションを6つに分けた。各セクションでは,カートが新しい部屋に入るのをきっかけに,プレイヤーはリアルタイムで向かってくる仮想のゾンビを撃つことになる。各プレイヤーは自分のスコアを得ることができ,競争心を高めることができた。市販のゲームでは,このようなハイテンションなシューティングギャラリーはすぐに疲れてしまうが,長い時間並んで体験したあとでは,キレのあるアーケードアクションはアドレナリンラッシュとなり,シリーズのファンだけでなく,初めての人にもスリリングな体験をさせてくれる。
観客を知る
商用ゲームの場合,あなたのタイトルをプレイしている人は,ゲームに興味がある人だと考えて間違いない。だって,プレイしてくれているんだから。しかし,テーマパークのアトラクションはそうはいかない。多くの来場者は別の目的で遊園地を訪れ,原作を知らなくてもアトラクションを体験したいと思っている。
そこで我々は,ライセンスを取得したアトラクションには,必ずプロローグを設けて,これから体験する世界やシナリオを紹介するようにしている。これはシーンの設定に役立つ。また,ゲームが始まってからは,市販のゲームのようなメニューはなく,初めてこのシリーズのゲームをプレイする人でも分かりやすいように,視覚的にも聴覚的にも十分な操作性を確保している。
また,シリーズのファンには,原作の魅力を十分に伝えられるような工夫をしている。バイオハザードでアンブレラのロゴを見つけたり,ファイナルファンタジーでケルベロスに遭遇したりするだけで,ファンボーイやファンガールは歓喜の声を上げてくれる。ときには,象徴的な効果音のような小さなものが,体験を構築するフランチャイズの精神を表現するうえで大きな違いを生むこともある。
迅速な導入が重要
市販のビデオゲームでは,新しいプレイヤーを迎え入れるためのルールが確立されている。一般的には,ゲームの遊び方を有機的に教えるために,チュートリアルや,簡単なチャレンジが用意されている。しかし,テーマパークの場合は3〜5分しかないので,何をどうすればいいのかを一瞬で理解してもらわなければならない。
そのためには,メニューや操作方法を一切排除する必要がある。だからといって,人々が巻き込まれるシナリオの種類を減らす必要はない。大規模で派手な銃撃戦を行うことはできる。しかし,プレイヤーに提供される操作やハードウェアは,すぐに理解できるような直感的なものでなければならない。
ゲストが何をどうすればいいのかを瞬時に理解できるようにする必要がある
もし,プレイヤーが銃のリロードの仕方を理解できずにもがいているとしたら,それは問題だ。しかし,最初から何をすべきかを理解してもらえれば,質の高いコンテンツをたくさん詰め込むことができる。たとえば,Battlefieldでは,5つのレベルが用意されている。これは,市販のゲームに期待されるようなバラエティに富んだ内容だが,基本的な要素だけに削り込まれている。導入を効率的に行うことで,5分間の移動を1つの冒険のように感じさせることができるのだ。
ハードウェアについては,予想外のことも想定しておく必要がある
市販のVRタイトルを開発する場合,使用するハードウェアが分かっているので,それに基づいてゲームを作ることができる。Beat Saberのようにヘッドセットとモーションコントロールを使った体験を提供する場合もあれば,DualShock 4やレーシングホイールのコントローラと組み合わせて開発する場合もある。いずれにしても,自分が何をしているのかを知ることができる。
しかし,遊園地の乗り物の場合は,ハード面での新しさがある。まず,コントローラの大きさは,自分が座っているポッドをライダーが操作できるのであれば,部屋全体の大きさになる。また,乗り物全体にセンサーやカメラを設置して,乗り物に反応させることもできる。テーマパークでは,チームを雇って何かを作る前に機材を購入することが多いので,これまでに使用したハードウェアのうち,約70%はまったく新しいものだった。
テーマパーク向けの開発では,商業ゲームのようにリモートでテストすることができないため,実際にアトラクションを操作する必要がある。すべての人に当てはまるわけではないが,多くのVRデベロッパは,このような物理的なものをいじる機会を楽しみにしている。遊園地のプロジェクトは,毎回,新しいおもちゃ箱を開けるような気分になる。
ローカル・マルチプレイを推奨
ローカル・マルチプレイヤーゲームは,20世紀のゲームの礎の1つだったが,オンラインゲームが主流になったここ10〜20年の間に,ほとんど使われなくなってしまった。今でも画面分割などのローカルマルチプレイに対応したゲームはあるが,その数は少ない。
しかし,テーマパークのアトラクションでは,人々は物理的に近くにいなければならないので,この機会を利用して,競争的または協力的な方法で彼らの経験を結びつけることを強くお勧めする。
たとえば,同じカートに乗っている参加者同士が,ゾンビを撃ちながら競い合うことができる。また,参加者同士が協力してハイスコアを出し,リーダーボードや殿堂入りを目指すこともできる。どのようのデザインするにしても,テーマパークのアトラクションを,できるだけ多くの共有体験にすることを我々は強くお勧めする。そうすれば,参加者は拳を振り上げたり,冗談で友人や家族を挑発したりしてくれるだろうし,再戦したいというリピーターも生まれるかもしれない。
VRテーマパークのアトラクション開発では,市販のゲームでは問題にならないような課題を解決するために,既成概念にとらわれない発想が求められる。これは確かに大変なことではあるが,新鮮で楽しいことでもある。観客層,アトラクションの規模と時期,使用するハードウェアの種類を念頭に置いておけば,既存のフランチャイズのファンだけでなく,休日にどんな技術的なドッキリが待ち受けているのかを知りたいと思っている通りすがりの人たちにもアピールする,ワイルドで独創的なものを作ることができる。
VRテーマパークのアトラクション開発は簡単ではないが,常に斬新で魅力的なプロジェクトであり,市販のゲームと同様に創造的な充実感を得ることができるのだ。
Rajat Ojha氏は,インタラクティブエンタテインメント業界で25年めを迎え,GamitronicsのCEOを務めている。アメリカとインドで会社を設立し,ゲームからテーマパークやアーケードへの事業移行を成功させ,世界各地のテーマパークに貢献していた。
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※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)