「株式会社24Frameの内情暴露日誌」 第3回:傾国の犬


 「傾国の美女」という言葉を御ご存知でしょうか。読んで字のごとく,美人すぎる女性によって,時の支配者がおかしくなり,国が傾くというものですが,歴史の教科書なんかでそれっぽい事象を見るたびに子ども心に僕は思っていました。「なんてバカなんだろう」と。だって国と一人の女性,どちらが大事かなんて,それこそ子供でも分かることです。

 まあ,人類もクレオパトラの毒蛇を使うという斬新な自殺から時を経ること幾星霜,僕も生まれて数十年,人類も十分に進化したわけですし,僕も十分に年をとった。もはや少なくとも僕の人生には,その手の問題なんて起こる訳がないと高をくくっていた40代でした,……そう,あの子に出会うその時までは。

本人の意思は確認せず,いきなりの「あの子」近影
「株式会社24Frameの内情暴露日誌」 第3回:傾国の犬
 思い起こせば,「あの子」との最初の出会いは僕が小学生の頃だったりしますから,実はずっと側にいて,気づいたらとても大事な存在になっていた,というパターンです。こう書くとありがちに思えるのですが,実はここには一つ,ほかとは違う大きな特徴があります。それは「あの子」は人間ではないということ。さらに言ってしまうなら「犬」だったということです。

 これは別に唐突な僕のケモナーカミングアウトではありません。気づいてしまったのです。いつからかこのポチが,僕の人生の重要な局面に,いつもそっと寄り添っていてくれていたことを。とくにそれを痛感したのは「メタルマックスゼノリボーン」というゲームを,弊社始まって以来の「元請け受注」することになったときです。


 予算の問題からしばらく同シリーズへの登場は見送られていた「あの子」。それをわざわざ復活させておきながら「犬が戦場で戦車に撃たれたら,すぐ死ぬに決まっている」というリアリティにこだわったのかバカなのかわからないディレクター(友野)の方針により,異常に死にやすいパラメータに設定されていた「あの子」。制作が進む中で「いくらなんでも死に過ぎでは?」という各所からの抗議行動により,多少の強化はなされたものの,それでも死にがちであった「あの子」。この友野というディレクターは結局のところ,「あの子」を客寄せパンダならぬ客寄せ犬程度にしか思ってなかったのかもしれません。

これが戦場の犬の現実……
「株式会社24Frameの内情暴露日誌」 第3回:傾国の犬

 しかし,繰り返されるテストプレイの中,そんな彼にも静かに変化が生まれ始めます。死んでも死んでも生き返り,自分のために体を張ってくれる健気さ。それを500時間以上も見ていれば,気持ちも変わってくるというものです。いつの間にか友野は,世界中の誰よりも,この犬を愛し始めていたのでした。遅れ咲きの狂い咲きとはよく言ったもので,その異常な愛情は,中年特有の面倒くささを伴って,奇妙な社内提案へと形を変えて発露し始めます。

 「犬を主役にしたゲームを作ろう」

 老いらくの恋に落ちたディレクター兼社長である友野がそんな世迷い言を発して社員をうろたえさせるまで,さして時間はかかりませんでした。

 「ゲームを一本作る」。これにかかる経費は会社を使って行う以上,数百万円ではすみません。どんなにライトに済まそうとしても,1本のゲームを発売まで持っていくためには,数千万円が必要になります(もちろん,規模によりますし,Steamなどでよく見られる個人制作などはこの限りではありません)。そして,この様に思いつきだけで行動している経営者の会社に,数千万の内部留保(会社の貯金,みたいなものですね)など,当然存在するはずもなく。

 「なければ借りてくればいいんだ」

書類を見る友野の引きつり顔(どんな判断だ?)
「株式会社24Frameの内情暴露日誌」 第3回:傾国の犬
 恋は盲目なのか何なのか,事ここに至り,友野はいきなりそれまでついぞ付き合いなどなかった「銀行」との関係構築に目を向け始めたのであります。そして踏み込んだ「与信判断」という世界。(その過程の詳細は前回までの連載を御覧ください)。事ここに至るまで,動機は不純なものしか存在しておらず,経営者の能力にも大きく疑問符がついた状態の株式会社24Frameでありましたが,果たして融資は実行されます。

 この発表に,社内は大きくどよめきました。過程はともかくこれは「犬ゲームにまつわる事業計画」が銀行から見ても妥当性を持つものであり,また,これまでの12年における24Frameの会計処理が非常にクリアであることを証明するものだったからです。確かに経営者が無能だと節税なんて気の利いたことは一切できず,税金は多めに払いっぱなし,飲み会やらなんやらの雑費は全部友野の自腹(「経費」になる飲み会っていろいろと条件があるんですよ。ウチは変にまじめなせいで,「手続きの労力>経費で飲めるうれしさ」,という構図になりがちなんで自腹でいいや,頻度も少ないし,となりがちです),という放漫経営も,一気に色味を変えてきます。しかも一部の社員のほうが社長よりも給与が高いという矛盾も,友野が杜撰であるのが実態と言えなくもないのですが,「きちんと人材評価ができている」という風に,テイストが変わってくるのです。

遠くを見る友野の後ろ姿(俺たちは……間違ってなかった?)
「株式会社24Frameの内情暴露日誌」 第3回:傾国の犬
 かくして「自分が大好きな犬のゲームを作る」という蛮行が,実行可能となりました。後はこれをいかに無駄なく犬に貢ぐか……もとい,きちんと制作に反映させるか,というのがポイントになってきます。折しもコロナ禍でリモートによる生産性の低下が叫ばれる中での出来事でした。果たしてこの杜撰な会社に,完全リモートによるゲームの完成などという離れ業が実行可能なのでしょうか? しかし! 運命とは数奇なもので24Frameは以外にもこの時点ですでに「リモートワークの極み」にいたのであります。なぜ辺境の零細ゲーム会社がすでにリモートワークのノウハウを手に入れていたのか? その詳細については次回以降,お伝えしていきたいと思います。

「METAL DOGS」の画面(完全リモートで絶賛開発中)
「株式会社24Frameの内情暴露日誌」 第3回:傾国の犬


【次回予告】
 「METAL DOGS」を開発するための融資を受けることになった業界の辺境経営者・友野祐介。開発に着手するというタイミングで緊急事態宣言が発令され,リモートワークを余儀なくされてしまう。しかし,24Frameにはリモートワークのノウハウがあり,発令とともに社員全員がリモートワークにあっさりと切り替えられたという。果たして友野はどんなマジックをつかったのか? 次回「リモートワークの極み」,お楽しみに。
※次回の掲載は5月25日を予定しています

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今回の補足動画は近日UP予定(友野Dチャンネル)

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