「株式会社24Frameの内情暴露日誌」 第2回: 煉獄の書類審査。ああっ女神さまっ,私をお許しください


 友野祐介友野祐介友野祐介友野祐介友野祐介友野祐介平友野祐介東京都新宿区喜久井町喜久井町株式会社24Frame代表取締役……おっと,失礼しました。上記の乱文は,別に経営の重責に耐えかねて僕の精神が崩壊したわけではありません。どちらかというと崩壊しているのはゲシュタルトってやつです。同じ文字を連続で書きすぎるとそれがもう文字に見えなくなってくるっていうアレでございます。では,なぜそんなにも自分の名前やら肩書やら会社の住所やらを書きまくっているかというと,必要だからです,銀行さんに金を借りるための書類に。

友野の署名(どんなに字が下手でも,ゲーム会社の社長にはなれます)
「株式会社24Frameの内情暴露日誌」 第2回: 煉獄の書類審査。ああっ女神さまっ,私をお許しください
 前回,初めて銀行員さんを弊社にお招きしたのですが,その彼女が持ってきたのが見たことがないほどの書類の束。それの説明を逐一受け,内容を理解し同意しました,という欄に署名押印。これをかれこれ数時間続けているわけですから,ゲシュタルトや精神の1つや2つ,崩壊するのも当然といえましょう。

 しかも目の前には見慣れぬ現実の女性。(若い美女です)。カタギ中のカタギである彼女にはゲーム屋などという商売をしている僕のような人間は,生ゴミか微生物のように見えていることでしょう(筆者のイメージです)。その証拠に彼女の表情はここに来てから一切替わらず,目は一ミリも笑っていません。せめて「このブタ野郎が」とでも解釈できる蔑みの光でもそこにあれば,それをご褒美になんとか頑張れそうなものですが,コンプラ全盛のこのご時世,「これは拷問である」と無理やり結論づけて,自分の名前を書き連ねているわけです。

 「ああ,それにしても女王様,緊張感のあまり3回に1回は自分の名前を書き損じる哀れで無能なブタであるこの僕をお許しください」。しかし女王様もそこは心得たもので「ああ,またミスですか」というつっけんどんな言葉と共に「お見通しよ」と言わんばかりに,即座に予備の書類を差し出してきます。これはまるでご褒美の,いや拷問のわんこそばのようだ……と若干意識が遠のくのも束の間,物事には終わりというものが必ずある訳で,絶望と恍惚を繰り返すうちに,書類への署名はいつの間にか終了したのでありました。

 「じゃあ,今日はとりあえずここまでで」と女王様はおっしゃいました。ああ,ありがとうございます女王様,ご褒美をいただいただけ,そのうえお金まで貸していただけるなんて。銀行員様はやっぱり福音の使徒だったのですね。地獄の使者なんて言ってごめんなさい……って,え?「ここまで」とおっしゃいましたか今? と思った刹那彼女はさらに酷薄なる信託を哀れな僕に授けます。「これでだいたい全体の三分の一です。次は,ブタさん側に用意してもらう書類がありますから」と実際に言ったわけはありませんが,要約するとそのようなことをおっしゃって,女神様はお帰りになられました。

書類の山に突伏する友野(ストレスのあまり,苦痛にゆがむ零細企業経営者の顔)
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 すでに「名前と住所と肩書を手書きで数十回書く」というかつてない肉体労働を成し遂げた僕でしたが,真の肉体労働はここからだったのです。ここからは「持参した書類を読んで署名する」という受動的なものではなく,数多の役所に出向き,指定された書類を取得する(全部有料で)という新たなフェイズに突入するのです。

 取得すべき書類は大雑把に言って以下のタイプがあります。

(1)「自分が友野祐介だと証明する」
(2)「押印された印鑑が法的効力を持つものだと証明する」
(3)「個人・法人ともに税金をきっちり収めていることを証明する」

 基本的にこれらは会社を作る際にすべて用意してあるのですが,いざ改めて取得するとなると「え?これは都税?これは国税?これは家にしまってあるやつ?」などと,まず所在の確認で軽く半日は潰れるレベルです。とくに「友野個人の証明」系は事務員と手分けして取得するにも限界があり(事務員さんにお願いすると「確かにこの人は僕の代理です」と証明するための「委任状(実印が必要)みたいなことになってきて,だまし絵の中をさまよっているような気にさえなります),時間と精神力が消えていきます。

 「そもそも融資を申し込んだ際に決算書とか貸借対照表を全部見せているじゃないですかあ,その時点でケツの毛まで見せているようなものなのに,さらにこんなに求めます? 生業が多少ヤクザだからって,そこまで疑うことないじゃないですか」,などと泣き言を言っていても始まりません。それどころかモタモタしていると大体の提出書類に条件づけられている「発行から3か月以内」という期限をオーバーしてしまい,せっかく集めた書類をもう一度取り直し,という憂き目にもあいます。

各種書類(どれがなんの書類か,もはや記憶は虚ろです)
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 忘れちゃいけないのはこの間も,日々の業務はある訳で(小さい会社なので,弊社では僕は社長でありながらも一労働者としてのノルマがあります),結局,コロナで事務員さんが動けたり動けなかったりするなどの紆余曲折を経て,結局この「与信判断」というプロセスには3か月あまりを要したのでありました。

 そもそも,この借り入れの端緒となった弊社開発のインディーズ作品「METAL DOGS」の開発は,絶賛見切り発車中です。いろいろとはじめちゃっているけど,この先「やっぱりあなたにお金を貸すのはリスキーすぎると判断しました」みたいなそれはそれで納得するしかないような正論の結論がくだされたら,僕とか社員は一体どうなっちゃうワケ? などという疑問ときちんと向き合う時間もないままに,ついにその日はやってきました。結局例の女神様は弊社に5回以上お越しくださいまして,6回目についにその是非が言い渡されるのであります。続報を待て。

「METAL DOGS」タイトル画面(この犬たちのために,まさか借金まですることになろうとは)
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【次回予告】
お金を借りるために,ひたすら自らの名前を書き続けた業界の辺境経営者・友野祐介。そんな苦行に耐えたのは「METAL DOGS」を開発するためだった。果たして無事に融資は受けられたのか。また,そもそもなぜ犬が主人公というゲームを作ろうと思ったのか。その謎がついに明かされる。次回「傾国の犬」,お楽しみに!
※次回の掲載は5月11日を予定しています

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今回の補足動画は「こちら」(友野Dチャンネル)

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