特許探索:PSVR 2は今最もホットなVRヘッドセットになるかもしれない

眉をひそめる/焦がすようなソニーのアイデアの調査と,米国初のゲーム特許の捜索から最新連載を始めたい。

ゲーム業界の特許には,未来的なアイデア,実用的なアプリケーション,そしてまったくの無意味なものが混在している。特許は,企業が次に何を計画しているのかを教えてくれたり,企業がビジネスのある部分についてどのように考えているのかを教えてくれたり,昔の成功例を再訪して,元々どのように構想されていたのかを考えさせてくれたりする。今回の新企画である特許探索(※Patent Trawl:Patent Trollと掛けている)は,上記のすべてをミックスしたものを意図している。ここで紹介したことがすべて実を結んだわけではなく,これからも実を結ぶとは限らないが,この業界がなぜこのような状況にあるのか,そして次にどこに向かっていくのかについての洞察を提供してくれることを期待している。

 私はしばらくの間,特許に魅了されていた。2012年にTumblrで「Context-Free Patent Art」というBlogを立ち上げ(参考URL),ゲーム関連の特許や特許出願のアートを,読者が何を見ているのかを何も説明せぬまま紹介していた。

 その結果はそれぞれ,困惑させられたり(参考URL),興味をそそられたり(参考URL),ノスタルジーを感じさせられたり(参考URL),さらに美しいものになったりすることさえあった(参考URL)。

Clingy Ruxpin氏の特許がこちらだ
特許探索:PSVR 2は今最もホットなVRヘッドセットになるかもしれない
 長い間の休止期間を経て,最近またBlogの更新を始めたのだが,だんだんと自分の中で人々に何か文脈を提供したいという気持ちが強くなっていた。彼らが見ている表情に乏しいテディベアは人々の視線を追跡しており,彼らの注意がそれたときにはもう一度見てくれるようにせがむのは,ソニーのデバイスの特許申請(参考URL)からきているといった具合にだ。

 私は,遠くに2台の自転車を置いて巨大なハンバーガーに登っているこの女性が(参考URL),2002年のゲーム内広告の特許出願の文脈では,もはや意味はなかったことを知ってほしかったのだ(参考URL)。

 このようなことは通常,それ自体でニュースになるようなことではないが,特許探索は,企業が模索してきた行き詰まりや,企業が実際に取り組んできた次の大きなもの,そしてまだ証明されていない技術を振り返って見ることができる。特許出願のプロセスを興味深く,価値あるものとして垣間見ることができるようになることを願っている。


ブレインストーミング:PSVR2 の特徴


 多くの大企業がそうであるように,ソニーも特許に積極的で,さまざまなアイデアの特許を出願している。多くの場合,ソニーが求める特許は,すでに提供されている製品に手を加えたものである。その多くは,実際に製品化されることはないが,ソニーやその設計者が何を考えていたのかを知る手がかりにはなる。

 たとえば,ソニーはバーチャルリアリティやモーションキャプチャに関する特許を多数保有しており,PlayStation VRヘッドセットの後継機を開発する際には,これらのアイデアを活用できるはずだ(PlayStationのCEOであるJim Ryan氏は,次世代ヘッドセットの発売が迫ってはいないことを示唆している:関連記事)。

 PSVR の最も魅力的な特徴の1つが,ローンチ時の市場で他のVRヘッドセットと比較した価格であったことを考慮すると,ソニーは,2019年に特許出願された環境マッピング/プレイヤーのモーショントラッキングシステムのための技術(参考URL)を使用することを検討するかもしれない。この特許には,熱データを使用したトラッキング方法が記載されており,同様のシステムでの潜在的に高価な複数のカメラのセットアップを,部屋の周りに配置できる熱ビーコン(安価な赤外線ダイオードのような)とコントローラ内の一連のサーモパイルアレイで置き換えることができる。

特許技術から判断すると,ソニーのサーマルトラッキングシステムはXbox Oneでも動作するようだ

 また,同社のいくつかのわずかに古いアイデアのほこりを払うこともできる。2013年,ソニーは「温度フィードバックモーションコントローラ」の特許を取得した(参考URL)。これは,ゲームでユーザーの手がゲーム環境でどんな場所にあるかを追跡し,それに応じて手を暖めるか,または冷却できるように,熱電加熱および冷却システムを内蔵したMoveコントローラのようだ。

扱うには熱く,握るには冷たすぎるか?
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 それは次の特許と組み合わせることができる。「温度制御ヘッドセット装置」のために2016年に出願された特許だ(参考URL)。VR ヘッドセットのアイピースに発熱体が組み込まれており,プレイヤーが,たとえば,ロケット推進グレネード(RPG)の発射によって生成された火球から熱を受けたり,または仮想的に内側の環境から外側の環境に移行するときに太陽からの熱を感じるといったことができるようになっている。

 2018年に提出された別のソニーの特許出願は(参考URL),同様のアイデアをカバーするものだが,加熱または冷却された気流を指向性ファンを使用して行うものとなっている。その特許はまた,ヘッドセットの気流を使用して,ゲーム内の特定の場所にプレイヤーを誘導するのに役立つことを示唆している。またはプレイヤーがゲーム内の環境の匂いを嗅ぐことができるように香りエミッタで強化できるとしている(一気に下水道の底までいける)。おそらくそれは,香りの合間に空気を澄ませ,適切な香りが長引くのを防ぐための「フレグランスプレゼンテーションデバイス」の2016年ソニー特許出願に頼ることになるだろう(参考URL)。

ソニーの「香り提示装置」は悪臭を放つだろうが,それは想定されていたときだけだ

 もう少し賢そうな別の2018 年ソニー特許申請は(参考URL),ユーザーの体温,心拍数,瞳孔の拡張,動き,および使用者が病理学的状態 (てんかん発作,心臓発作,脳卒中,パニック発作) にあったかどうかを判断し,ユーザーがそのような状況の場合には事前に設定されているであろう一連のアクションを実行する VR ヘッドセットを含むものだ。

 ソニーがプレイヤーの利益のためにそれを使用する方法を検討することは賞賛に値するが,このようなシステムを動作させるには,率直に言って恐ろしい量の個人情報を,掛かりつけの医者ではない誰かに定期的に監視させることが必要だ。前述のような感情を操るテディベアの特許を取得していたり,映画を中断して広告を表示し,視聴者が広告されているブランドの名前を言うまで広告を表示し続けるようなディストピア的な広告アイデアの特許(参考URL)を取得している会社に,すべての情報を任せるのはちょっと気が休まらない。

この家では,我々は国歌とマクドナルドのコマーシャルのために立ち上がる
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アメリカで最初のゲーム特許?


 特許探索の第1回は,米国初のビデオゲーム特許を追跡するのが面白いだろうと思った。何がビデオゲームとみなされるかについての定義がさまざまであることを考えると,最初の段階ではちょっとした無謀なことだったと思う。また,文字どおり何百万件もの初期特許を調べて,そのどれもがどんな定義にも当てはまらないことを確認したいとは思っていないので,これは正式な宣言というよりは,ちょっとしたお楽しみだと思ってほしい。

 私が最初に考えたのは,最初のゲーム特許は,1958年にオシロスコープを使って「Tennis for Two」というゲームを作ったWilly Higinbotham氏が所有しているのではないかということだ。しかし,彼は実際には特許を取ったことはなかった。彼が働いていたブルックヘブン国立研究所で公開イベントのための展示品として作ったのだから,特許権は政府が持っていたはずだ。

 「政府が興味を持っているものではありませんでした」と氏は語り(参考URL),「それに価値があるとは思わなかったのです」と付け加えたと報じられている。

Baer氏の最初のゲーム用特許の1ページ
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 もう1人の目星は,「ビデオゲームの父」と呼ばれるRalph Baer氏だった。60年代後半にSanders Associatesで開発したゲーム機の世界を切り開いた人物である。幸いなことに,Baer氏の公式Webサイトには(参考URL),亡くなった発明家の特許のリストが掲載されている。

 残念ながら,ビデオゲームとの関連性が明らかな最も古いもの(録画CRTライトガンと方法)はBaer氏の特許ではなく,多層ボートの船体の特許を指す特許番号でリストされている。特許データベースでは発明者の名前や特許のタイトルからその古い特許を検索することはできなかった。

 Baer氏の次の最も古いゲーム特許は,1969年に提出された「テレビゲーム装置」のもので(参考URL),後にMagnavox OdysseyになったBaer氏の 「Brown Box」に強い類似性を持っている。

 しかし,この特許には,Thomas T. Goldsmith,Jr.氏(テレビ技術の黎明期に多大な貢献をしている:参考URL)とEstle Ray Mann氏が出願した「ブラウン管アミューズメント装置」(参考URL)の特許をベースにした過去の特許がいくつか記載されている。

 この特許には,飛行機のターゲットを管の上に置き,プレイヤーが電子ビームを管の表面をなぞってターゲットに当てるゲームが描かれている。

Goldsmith氏の特許のゲームプレイイラストと,ゲームの最初のスクリーンショット
 その説明によると,「ターゲットが当たったときにブラウン管ビームで視覚的な爆発を起こさせることで,ゲームをより壮大なものにすることができ,プレイヤーと観察者の両方の立場からゲームの面白さを高めることができる」とのことだ。

 これまでの特許には,さまざまなブラウン管技術やパイロット用の銃照準器が含まれているが,ビデオゲームに特化したものはない。

 Goldsmith氏とMann氏が特許を出願したのは1947年で,Baer氏の先駆的な仕事の数十年前であり,Hillary Clinton, David Bowie, Tom Clancy が誕生したのと同じ年である。彼らは自分たちの発明を商業製品に使用したようには見えないが,ビデオゲーム業界は技術的には団塊の世代であることを主張するには十分だと思う。


お馴染みの防衛策


 Baer氏の著作の中で言及されている以前の特許を調べているうちに,1958年に出願されたテレビのダーツゲームに関するこの特許に出くわした(参考URL)。この特許自体は,ダーツ銃とテレビを覆う透明なシールドで,子供たちが通常の番組で画面に出てくるキャラクターに向かって安全にダーツを撃つことができるようにしただけのものだが,その背景にある説明はかなり興味深いものだ。

 「商業テレビの出現以来,テレビが子供の環境に対する認識を広げ,支配するようになったことを考えると,子供に悪影響を及ぼす可能性のある心理的影響は,大きな関心事となってきました。テレビ番組は子どもの精神エネルギーを非常に激しい感情レベルにまで刺激するという点で,子どもにとって有害な可能性があるとよく言われています。このようなエネルギーは,大人が利用できるような効果的な表現手段がないために,子供たちには効果的に放出することができないのです」

 「本発明は,子供が自分の攻撃性および他の感情状態を表現することを可能にし,テレビ画面上に現れるキャラクター,パーソナリティおよび他の画像に無害なダーツを撃つことによって,テレビ番組に積極的に参加することを可能にすることによって,テレビのこれらの有害な側面を回避しようとするものであります」

 暴力的なゲームが子供に与える影響をめぐって業界が頻繁に争っていることを知っている人は,おそらくその議論のいくつかのバージョンを聞いたことがあるだろう(関連英文記事)。おそらく最も驚くべきことは,60年間,どれだけの研究が行われたか誰も知らないということだ。いまだにこの議論がどれだけの正当性があるかについてのコンセンサスが得られていないようだ(参考URL)。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら