成功例に学ぶ:動画広告の効果を最大化する6つのポイント

 AppLovinには,ゲームデベロッパへのクリエイティブのサポートに特化した「SparkLabs(スパークラブズ)」というチームがあり,データドリブンで成功につながるモバイルアプリの広告クリエイティブについて,豊富な知識と経験を有しています。

 そこで前回の記事では,現在広がりを見せる「プレイアブル広告」にフォーカスし,ユーザーの興味を引き立てる効果的な広告を作るうえで,押さえるべき6つのポイントについて紹介しました。第2回となる本稿では,モバイルゲーム業界において最も多く利用されている「動画広告」にフォーカスし,クリエイティブの観点からその広告効果を高める6つのポイントについて,成功事例を交えて紹介します。


1. 説得力があり明確なストーリーを伝える


 1つめは,「説得力があり明確なストーリーを伝える」ことです。動画広告は一般に約15〜30秒という短い動画による広告フォーマットです。短い時間でありながら多くの情報を伝えることができるのが特徴です。ただし,そこに明確なストーリーを組み込めなければ,ユーザーの印象に残るクリエイティブにはなりません。

 たとえばMondayOFFの「Be a Pong」では,初めは失敗するシーンを見せることでユーザーのプレイ意欲を高めようとしましたが,本来の「ビアポン」のコンセプトに合わせて,「ゲームを失敗したあとにビールを1杯飲む」(だんだん酔っぱらう)というゲームルールを反映したところ,IPM(1000回表示あたりのインストール数)が4倍も向上しました。




2. 最初の3秒でユーザーを引き付ける


 一般的に,動画広告はプレイアブル広告と比べて,視聴者にスキップされる確率が高い傾向にあります。そのため,いかに動画広告を最後まで見てもらえるかという工夫が必要になります。肝は「再生開始後の3秒間」です。すべてのクリエイティブチームの知識を結集し,ユーザーの印象に残る工夫をしましょう。

 Lion Studiosの「Ancient Battle」(2020年10月13日リリース)の動画広告では,ゲームのキャラクターと実在する人物とのダンスバトルから始まります。トレンドとなっているダンス動画を広告に取り入れることによって,冒頭の数秒間のうちにユーザーを引き付ける効果があります。ダンス対決のシーンの合間に実際のゲーム内のシーンも入れることでユーザーが最後まで楽しめるように工夫しています。



3. 定期的に「すごい!」と思わせる瞬間を入れる


 動画の中でメリハリをつけると,視聴の継続につなげることができます。適切なタイミングで視聴者に強いインパクトを与えて,ダウンロードへつなげましょう。ユーモアのあるフレーズなどを入れることでユーザーの興味を引くこともできるでしょう。

 Lion Studiosの「女の子を救え! (Save the Girl!)」では,予想外な回答を見せています。ユーモアがあり意外性のある部分を見せることによって,ユーザーがプレイしてみたいという気持ちを引出します。



4. 感情をくすぐるような「満足感」を与える


 4つめは,ユーザーの感情をくすぐる「満足感」を与えることです。短い動画の中でユーザーにネガティブな印象を与えてしまうと,ユーザー自身のやってみたいという感情を妨げしまう可能性があります。

 Redemption Gamesの「スイートエスケープ」の動画広告の例を紹介します。上側のキャラクターがユーザーにポジティブな言葉をかけているバージョンと下側のネガティブな言葉をかけているバージョンでは,上側のほうが良い成果となりました。下側の動画では,ユーザーをイライラさせてしまう可能性があります。このように,ポジティブな要素を取り入れるとユーザーに達成感を与え,より効果的な広告に近づきます。




5. 最もエキサイティングな機能に焦点を当てる


 短い動画の中でエンゲージメントを高めるには,ゲームの中でユーザーが一番楽しめる機能に絞ることが重要です。ゲームの特徴となる機能を選定し,その機能を広告内でアピールしましょう。ユーザーがゲームをダウンロードしプレイしてみたいと思わせることを意識してみてください。


6. テキストやUIなど,表示される機能の簡素化


 6つめは,「テキストやUIの簡素化」です。前回のプレイアブル広告に関する記事と同じように,UIは洗練されたものが良いと思われがちですが,ここで一番重要なのはユーザーにシンプルで分かりやすいメッセージを伝えるように意識することです。たとえば,キャラクターの頭上に吹き出しを入れてあげるとユーザーは考えを巡らせ,ゲームの流れを理解しやすくすることができます。一方で,コインやレベル名など,具体的なUIを追加しても,必ずしもユーザーへの付加価値が上がるとは限らないため,「良いユーザー体験を提供するには何が必要なのか」を考えることが重要です。


 以上,モバイルゲームの動画広告の効果を高める方法について,クリエイティブの観点からポイントを紹介しました。次回は,今まで紹介したポイントを踏まえて,効果の高い広告クリエイティブを作成するために必要なプロセスについて解説します。

林 宣多(はやし・のりかず)
AppLovin日本法人代表取締役。GREE,Yahoo! Japanでの広告プロダクト立ち上げ後,米国に拠点を移し,設立直後のAppLovinに参画する。AppLovin本社の営業責任者として事業の成長をけん引した後,2016年4月にAppLovin日本法人の代表取締役に就任する。