モバイルゲーム広告のエンゲージメントを高める6つの手法

 現在,世界人口の3分の1に当たる24億もの人がプレイしているモバイルゲーム。そのゲーム数は年々増加しており,あらゆるマーケティングや広告を通じて,各社がユーザー獲得にしのぎを削っています。そしてユーザー獲得の主要な手法となるのがモバイル広告です。
 本稿では,この競争が激しいモバイルゲーム業界において,どうすれば,あまたある広告の中から,自社のゲーム広告を差別化することができるのか,エンゲージメントを高めるための6つの施策について紹介します。


モバイルゲーム広告の種類について


 まず,広告のエンゲージメントを高める施策を紹介する前に,モバイルゲームでよく利用される広告フォーマットについてご紹介します。代表的な広告フォーマットは動画広告プレイアブル広告ディスプレイ広告の3種類があります。

 動画広告は一般に約15〜30秒という短い動画による広告フォーマットです。短時間で大量の情報を伝えることができ,ゲームをプレイする人の関心を維持するのに効果的です。中には,プレイ中のゲームを次のステージに進めたり,ボーナスを得るために動画広告を見てもらう動画リワード広告という手法も存在します。ある動画広告では1000インプレッション当たりのインストール数(IPM)が250%増加することがあるそうです。

 プレイアブル広告は,いわゆる「ゲームの簡易版を体験できる」広告フォーマットであり,ユーザーは製品をダウンロードすることなく,表示されている広告上でゲームを試しにプレイすることができます。これにより,ユーザーはそのゲームでどんな遊び方ができるのかを体験したうえでダウンロードできるため,コンバージョン率が高く,長期的にプレイするユーザーを獲得しやすくなります。このプレイアブル広告を上手に活用することでIPMが200%増加することもあるとされています。

 3つめはディスプレイ広告で,従来より最も使われてきた広告フォーマットです。このディスプレイ広告の中には,静止画やアニメーションを使ったバナー広告や,コンテンツの中に溶け込んだ形で掲載するネイティブ広告,そして画面の切り替え時などに広告をポップアップで表示させるインタースティシャル広告など,さまざまな種類があります。


モバイルゲーム広告のエンゲージメントを高めるための6つの施策


 それでは,実際にモバイルゲーム広告に関する事例を交えながら,モバイルゲーム広告のエンゲージメントを高める施策を,6つに分けてご紹介します。

1:勝敗を分ける最初の"3秒間"
 1つめは「冒頭でユーザーの注意を引くこと」です。具体的には最初の3秒のビジュアルで,いかにユーザーの目を引けるがポイントとなります。その好例として,ハイパーカジュアル ゲームデベロッパーKwaleeの「JetPack Jump」というゲームの動画広告では,テンポの良い音楽とともに,キャラクターが助走してジャンプする姿がユーザーの印象に残るようにされています。


2:"予想しやすさ"でユーザーを掻き立てる
 2つめは,「見ている人が予想しやすい内容であること」です。例えばPeopleFunの「Quotescapes」というゲームの動画広告では,「PIECE OF」の下に「C」「A」「K」「E」の文字が表示されており,「C」「A」「K」まで文字をつなげて,最後の「E」をつなげる手前で動画広告が終わります。このあとに「E」を結びつけることは簡単に予想がつきますが,それでどのようなことが起こるのかは分かりません。このように,途中までゲームプレイを見せ,ユーザーの「最後まで見たい」という気持ちを掻き立てることで,ダウンロードにつなげることができます。


3:ユーモアを取り入れる
 3つめは「ユーザーに感情を抱かせるような工夫をすること」です。ある研究によると,ユーザーの感情に訴える広告は売り上げ向上に非常に効果的であるという結果が出ています。ここではユーモアについて取り上げます。ユーモアは記憶されやすく,見ている人との距離を縮め,エンゲージメントを高めるのに効果的です。Lion Studios の「Mr. Bullet」は,壁などに弾を当てて跳ね返らせて敵を倒すというゲームですが,広告では何度も失敗するシーンを紹介しています。まるでトムとジェリーのような展開にユーモアがあり,ユーザーとの距離を縮めてくれます。


4:ユーザーとのつながりを見せる
 4つめは,「ユーザーとのつながりを見せること」です。広告上で実際にゲームをプレイしている人の反応や様子を見せたり,ゲームでどのような効果が得られるのかを紹介したりすることで,ユーザーとのつながりを見せ,ユーザーに対して「ゲームを試してみたい」という気持ちを促すことができます。日本のデベロッパー,カヤックの「Park Master」の広告では,画面の右上にこのゲームをプレイする男性を表示して,その反応を見せています。失敗するたびに悔しがる男性を見ると,ついチャレンジしたい気持ちになってしまいます。


5:短い時間でも伝わるストーリーを
 5つめは,「ストーリーを伝えること」です。モバイルゲーム広告では配信時間が限られるため,短い時間内でゲームの世界観やストーリーをできるだけ伝えられるような工夫が必要です。そのため,広告向けのストーリーを作る際には,ゲーム内のクリエイティブを活用しつつ,明確にストーリーの始点と終点を決め,ゲームストーリー全体を想起させることを意識して制作することが重要となります。Vizorの「クロンダイクの冒険」の動画広告では,宝探しであることを最初に紹介して,実際にゲームの主人公が世界を探検し,宝を見つけるまでを見せています。この動画広告だけで,ユーザーはどのようにゲームを進めていくのかを理解することができます。


6:すべての要素を「シンプル」に
 そして最後のポイントである6つめは,「シンプルであること」です。ユーザーにとって分かりやすい広告であることは最も大切です。シンプルな広告にするための4つのポイントは以下のとおりです。

  1. 紹介するゲームの内容を絞ること
  2. 不要なUIやテキストは広告から取り除くこと
  3. 繰り返しをなくし,短くまとめること
  4. 理解しやすい内容にすること

 ユーザーにはなるべく多くの内容を紹介したくなるものですが,詰め込みすぎてもユーザーは興味を持ってもらえません。上記の4つのポイントをもとに広告で伝えるべきものを絞り,不必要なものは取り除いて,ユーザーにとって理解しやすいクリエイティブにしましょう。


広告効果の分析方法: A/Bテスト


 これらの施策をした広告の効果を最大化するためには,A/Bテストが有効です。A/Bテストは,パターンの異なる広告を用意し,ある一定期間の広告効果を比べて検証するものです。基本的な進め方は,次のとおりです。

  1. 初めに,キャラクターや設定テーマ,機能,そのゲームの特徴など,広告で紹介する内容を絞り,それぞれ複数の広告パターンを作成し,ユーザーがどの広告パターンを好むのかを分析しましょう。

  2. 裏付けされたデータで結論づけられるように,テスト項目をしっかりと管理しましょう。一度に多くの広告パターンをテストすると,どの要素がその結果に導いたのかを知ることが難しくなります。

  3. 最後に,テストで得た結果から最も効果の高い広告を活用して,さらにテストを繰り返すことで,広告クリエイティブを最適化しましょう。

 前述の「クロンダイクの冒険」では,広告クリエイティブのA/Bテストを継続的に行って,最も効果の高いクリエイティブを活用することで,インストール数が全四半期比で50%増加し,他のチャネルと比べても15-30%高いコンバージョン率を実現しました。

 また,A/Bテストは広告効果の最適化のみならず,将来的なゲーム製品の開発にも役立つことがあります。とくに,ユーザーの反応が予想できないような新機能やデザインは,実際に採用する前に「プレイアブル広告」を活用して,その効果・反応を測定することが可能になります。これにより,事前にユーザーの反応を知ることができ,費用対効果の高い形で新しい施策を取り入れることができます。


Amanotesの広告事例


 これらの施策を踏まえて作成した広告を,実際に運用した事例を紹介します。Amanotesの「Magic Tiles 3」という音楽ゲームは,上から降りてくる黒い長方形をタップすることで音楽を演奏することができる音楽ゲームで,プレイヤーは白い横線より下の部分に降りてくる黒い長方形を長押しし,それを続けていくことで音楽を奏でます。

 このゲームのプレイアブル広告のA/Bテストでは,左のピンク背景のデザインのクリック率(CTR)は42.13%,右のデザインでは26.06%と広告効果に大きな開きがありました。このゲームの場合,シンプルでビビッドな背景に加え,ゲームのプレイ方法が分かりやすいことが理由と考えられます。

モバイルゲーム広告のエンゲージメントを高める6つの手法
CTR 42.13%
モバイルゲーム広告のエンゲージメントを高める6つの手法
CTR 26.06%

 続いてインタースティシャル広告のA/Bテストでは,INSTALLの部分の背景がオレンジ色のほうが,ゲーム画面と同系色のピンク色のバージョンよりもクリックレートが高いことが分かりました。

モバイルゲーム広告のエンゲージメントを高める6つの手法
CTR 61.78%
モバイルゲーム広告のエンゲージメントを高める6つの手法
CTR 52.73%

 上記のようにさまざまな広告パターンでA/Bテストをした結果,このアプリは収益を右肩上がりに増加させることに成功しました。


まとめ


 本稿ではモバイルゲーム広告のエンゲージメントを高めるための6つの施策について紹介しました。モバイルゲームという媒体において,ユーザーに対して角度の高い広告を継続的に展開するためには,限られた広告配信時間の中で,いかにゲームの特徴を伝え,新規ユーザーとなりうる視聴者を引きつけられるか,日々の試行錯誤によるエンゲージメントを分析することが求められます。今回紹介した6つのポイントが,収益の最大化への第一歩として,少しでも皆様のお役に立てば幸いです。

林 宣多(はやし・のりかず)
AppLovin日本法人代表取締役。GREE,Yahoo! Japanでの広告プロダクト立ち上げ後,米国に拠点を移し,設立直後のAppLovinに参画する。AppLovin本社の営業責任者として事業の成長をけん引した後,2016年4月にAppLovin日本法人の代表取締役に就任する。