Opinion:ソニーとMicrosoftは異なるカードゲームをプレイしている
ソニーとMicrosoftの次世代のコミュニケーション戦略は,技術仕様そのものとほぼ同じことを教えてくれる。
我々はPlayStation 5とXbox Series Xの両方について,以前よりも多くのことを知っている。ソニーとMicrosoftはどちらも,テーブルにカードを置き始めたのだ。本質的に同じAMDソースのCPUおよびGPUアーキテクチャに由来するデバイス間の類似性は長い間知られていたが,今では重要な違いが見え始めている。
大きな技術的な違いのメリットは ―Series Xはとくにパンチの効いたGPUを持ち,PS5は非常に高速なSSDを選択した― 専門家の間で何か月も熱く議論され,さらには無知な人々によって文字通り年単位でさらに熱く議論された。この対戦でのMicrosoftのハードウェアの技術的な優位性を過小評価したくはないが,生のグラフィックパワーが約20%勝っているように見えるものの(※正確には約17%),現実には,このハードウェア設計の違いがどれだけのものなのかは,完成したゲームが実稼働ハードウェアで実行されるのを見るまで確実に知ることはできない。あと数か月先だ。
ただし,現時点でも確認できるのは,これらの2社が採用している戦略的アプローチの非常に現実的な違いである。ゲーム機本体だけでなく,それらのゲーム機について一般に伝えるプロセス全体に対しても違いがある。
私が思い出す限り,これは,この冬にローンチするように設定されたシステムとしては,真に前例のないレベルのオープン性だ。重要なプライスポイント情報を除けば,Xbox Series Xについてはまだ知らないことはほとんどない。
対照的に,ソニーはより伝統的なゲームをプレイしている。今週のMark Cerny氏のプレゼンテーションでPS5の詳細が語られた(関連記事)。 ―そのハードウェアのパフォーマンスと機能についての詳細― しかし,ゲーム機に関する消費者関連の多くはまだ出ていない。もちろん,その価格については分からない。―製造コストダウンに関するトラブルがささやかれている― しかし,システムソフトウェア,ローンチエクスクルーシブタイトル,または決定的に,物理的なハードウェアデザインについても分からない。
Microsoftのオープンさに比べると,これは奇妙に控えめで疑わしいものに見え始めるが,実際には,これは通常,新しいゲーム機の情報に期待されるタイムラインに沿ったものだ。結局,まだ発売から7か月以上あり,Gamescomや東京ゲームショウなどの夏の終わりのイベントでさらなる情報を公開する前に,最初の主要な情報の塊はE3で公開されるのが普通である(現在はキャンセルされている)。
では,なぜMicrosoftはゲームの早い段階で非常に多くのカードをテーブルに置くことを選択したのか? 簡単な答えは,そうすることができるからだ。前世代のゲーム機は市場でのパフォーマンスが低かったため,ロングテールを踏むことを心配する必要はない。現世代機はそれほど売れていないので顧客の買い控えを心配する必要がないため,次世代システムの誇大宣伝を早めに打って安全を促進することができたのだ。―ソニー側はもう100万台売りたいといった違った計算をしている。
このタイミングのスマートさは,TFLOPSの比較の魅力的なシンプルさと相まって,すでにSeries Xを支持している「グラフィックスに強い」という議論を確立した可能性がある。他の点でのソニーのアプローチの利点に関する抗議に関係なく,Series Xは常に2つのシステムの中でより強力であると見なされる。
もちろん,生の馬力がゲーム機の対戦で決定的な要因になることは滅多にない(※Wii以外に例外がない気はするのだが)。Microsoftのハードウェアが大きな問題を提議していることは非常に明らかだが,ソニーの残りのカードが十分に印象的であることが判明した場合,「Series Xはより強力ですが……」は,任意の数のステートメントが続く可能性がある起句となりうる。
その点で,Microsoftが手札を早く公開する別の理由は,消費者に,Series Xが選択した率直に言って非常に珍しい(そしてやや厄介な)物理的フォームファクターに慣れてもらうことに利点があると考えられるからだ。ソニーのデバイスがどのような外観かは分からない(コントローラは別として,本質的にはDualShock 4のように見えるが,内部ではハードウェアの大きな違いがいくつかある)。しかし,Cerny氏のプレゼンテーションのコメントでは,PS5のエンジニアは,Series Xよりもやや小さいハードウェア放熱ソリューションを見つけたとあり,デバイスはより一般的なフォームファクターになる可能性がある。
では,なぜソニーは発表スケジュールを前倒しして,Microsoftからこういった先行者の優位性を奪おうとしなかったのだろうか。第一に,前述したように,ソニーはまだPS4の成功が続いていることに制約を感じている。―まだ次世代機を推すには時期が早く,ここで大宣伝して現行機の最後の1年を台なしにしたくなかったのだろう。第二に,ソニーが圧倒的な差で市場をリードしているという現実があるものの,今回は「次世代機は我々が口にしたときから始まる」というような馬鹿げた宣言をしないようにしたのはありがたい。競合他社がやっていることに過剰に反応することで,そのリーダーとしての地位を譲ってしまうように見られたくはないだろう。間違いなく,何か月も前に新しいシステムを公開して宣伝計画を立てており,Microsoftが通常よりもはるかに早く詳細を公開しているという理由だけで,そのタイムラインから逸脱するつもりもないだろう。
両社のこのすべての操作について心に留めておくべき重要なことの1つは,ゲーム機のライフサイクルのこの段階(詳細が明らかにされ,システムの概念が消費者の心の中に形成される月)が非常に重要だということだ。しかし非常にリスクの高い方法しかない。ゲーム機のライフサイクルのこの時点で成功が約束されることは滅多にないが,失敗は絶対にありうる。ソニーは,その発表の数か月間でPS3の初期の運勢を,ひどく計算された愚かな声明と決定で沈めた。Xbox Oneの発表の結果,Microsoftの貧弱なポジショニングは,1世代にわたって低いままだった。
しかし,罠は線路に張り巡らされ,一歩間違えれば完全な失敗を意味する。実際,このローンチ前の期間を無傷で通過しても成功を保証されるものではない。ゲーム機が靴ひもを結ばずにスタートラインに立つだけだ。ゲーム機が優れていることを消費者に納得させるには,長い時間と多くの優れたソフトウェアが必要になる。ゲーム機がゴミであると消費者に思わせるのは一瞬だ。 Microsoftとソニーは最近,後者によって炎上しており,両社のコミュニケーション戦略は,情報公開のタイミングを慎重にして,大きなサプライズを避けたり,あるいはビジネスモデルやデザインの変更に慣れるまでの時間を一般の人に与えて反発を避けるなど,二度と同じことを起さないようにしていると読むことができる。
これまでのところ,両社の異なる戦略にもかかわらず,どちらの企業も実際に失敗を犯してはいない。彼らが今後数か月間その状態を保つことができれば,この世代のゲームプラットフォームの競争は,我々がここ何十年も見た中で最もレベル高い接戦になるかもしれない。
我々はPlayStation 5とXbox Series Xの両方について,以前よりも多くのことを知っている。ソニーとMicrosoftはどちらも,テーブルにカードを置き始めたのだ。本質的に同じAMDソースのCPUおよびGPUアーキテクチャに由来するデバイス間の類似性は長い間知られていたが,今では重要な違いが見え始めている。
大きな技術的な違いのメリットは ―Series Xはとくにパンチの効いたGPUを持ち,PS5は非常に高速なSSDを選択した― 専門家の間で何か月も熱く議論され,さらには無知な人々によって文字通り年単位でさらに熱く議論された。この対戦でのMicrosoftのハードウェアの技術的な優位性を過小評価したくはないが,生のグラフィックパワーが約20%勝っているように見えるものの(※正確には約17%),現実には,このハードウェア設計の違いがどれだけのものなのかは,完成したゲームが実稼働ハードウェアで実行されるのを見るまで確実に知ることはできない。あと数か月先だ。
ただし,現時点でも確認できるのは,これらの2社が採用している戦略的アプローチの非常に現実的な違いである。ゲーム機本体だけでなく,それらのゲーム機について一般に伝えるプロセス全体に対しても違いがある。
価格情報以外に,我々が知らないXboxSeries X情報はほとんど何もない
おそらく,テーブルに置かれているカードと同じくらい興味深いのは,どのカードがいつ置かれるかだ。この点で,Microsoftとソニーは非常に異なるゲームをプレイしている。前者は非常にオープンであり(関連記事),メディアがXbox Series Xハードウェアの「スナップショット」バージョンを使用して,すべての内部コンポーネントを表示し,最終的なゲーム機とコントローラのデザイン,および新しいシステムソフトウェアの多くのコア機能を披露している。私が思い出す限り,これは,この冬にローンチするように設定されたシステムとしては,真に前例のないレベルのオープン性だ。重要なプライスポイント情報を除けば,Xbox Series Xについてはまだ知らないことはほとんどない。
対照的に,ソニーはより伝統的なゲームをプレイしている。今週のMark Cerny氏のプレゼンテーションでPS5の詳細が語られた(関連記事)。 ―そのハードウェアのパフォーマンスと機能についての詳細― しかし,ゲーム機に関する消費者関連の多くはまだ出ていない。もちろん,その価格については分からない。―製造コストダウンに関するトラブルがささやかれている― しかし,システムソフトウェア,ローンチエクスクルーシブタイトル,または決定的に,物理的なハードウェアデザインについても分からない。
Microsoftのオープンさに比べると,これは奇妙に控えめで疑わしいものに見え始めるが,実際には,これは通常,新しいゲーム機の情報に期待されるタイムラインに沿ったものだ。結局,まだ発売から7か月以上あり,Gamescomや東京ゲームショウなどの夏の終わりのイベントでさらなる情報を公開する前に,最初の主要な情報の塊はE3で公開されるのが普通である(現在はキャンセルされている)。
では,なぜMicrosoftはゲームの早い段階で非常に多くのカードをテーブルに置くことを選択したのか? 簡単な答えは,そうすることができるからだ。前世代のゲーム機は市場でのパフォーマンスが低かったため,ロングテールを踏むことを心配する必要はない。現世代機はそれほど売れていないので顧客の買い控えを心配する必要がないため,次世代システムの誇大宣伝を早めに打って安全を促進することができたのだ。―ソニー側はもう100万台売りたいといった違った計算をしている。
Microsoftのオープン性に比べて,ソニーは奇妙に控えめで疑わしくさえ見えている
しかし,Microsoftがカードをこれほど早く晒した理由はそれだけではない。また,とくに同社は,処理能力のTFLOPSの面でソニーに対して優位性があることを疑う余地がないため,ある程度の先駆者の優位性の問題もある。Microsoftはコミュニケーションの観点から非常にスマートだった。それは,ソニーが強調しようとした他のすべての側面,つまり非常に高速なSSD,ゲームの速度を落とすことなく可変クロック速度を可能にし,システムの消費電力のバランスをとる革新的な方法,予測不可能な方法で,これまでにないデータアクセス速度といくつかの非常に興味深いサウンド処理を可能にするために構築しているカスタムシリコンのさまざまな部分 ―これらが,結局Xbox Series Xの性能にかなわないことの言い訳のように聞こえたからだ。このタイミングのスマートさは,TFLOPSの比較の魅力的なシンプルさと相まって,すでにSeries Xを支持している「グラフィックスに強い」という議論を確立した可能性がある。他の点でのソニーのアプローチの利点に関する抗議に関係なく,Series Xは常に2つのシステムの中でより強力であると見なされる。
もちろん,生の馬力がゲーム機の対戦で決定的な要因になることは滅多にない(※Wii以外に例外がない気はするのだが)。Microsoftのハードウェアが大きな問題を提議していることは非常に明らかだが,ソニーの残りのカードが十分に印象的であることが判明した場合,「Series Xはより強力ですが……」は,任意の数のステートメントが続く可能性がある起句となりうる。
その点で,Microsoftが手札を早く公開する別の理由は,消費者に,Series Xが選択した率直に言って非常に珍しい(そしてやや厄介な)物理的フォームファクターに慣れてもらうことに利点があると考えられるからだ。ソニーのデバイスがどのような外観かは分からない(コントローラは別として,本質的にはDualShock 4のように見えるが,内部ではハードウェアの大きな違いがいくつかある)。しかし,Cerny氏のプレゼンテーションのコメントでは,PS5のエンジニアは,Series Xよりもやや小さいハードウェア放熱ソリューションを見つけたとあり,デバイスはより一般的なフォームファクターになる可能性がある。
ゲーム機のライフサイクルのこの時点において成功が約束されることはほとんどないが,失敗は絶対にありうる
その場合,PS5が明らかになる前に人々にSeries Xに慣れさせることは,おそらく賢明な動きだった。さらに,印象的なゲームリジューム機能といったSeries XのSSDで有効になった機能の一部を披露したことは,間違いなく,ソニーのさらに高性能なドライブで有効になるであろう機能の勢いを奪っている。では,なぜソニーは発表スケジュールを前倒しして,Microsoftからこういった先行者の優位性を奪おうとしなかったのだろうか。第一に,前述したように,ソニーはまだPS4の成功が続いていることに制約を感じている。―まだ次世代機を推すには時期が早く,ここで大宣伝して現行機の最後の1年を台なしにしたくなかったのだろう。第二に,ソニーが圧倒的な差で市場をリードしているという現実があるものの,今回は「次世代機は我々が口にしたときから始まる」というような馬鹿げた宣言をしないようにしたのはありがたい。競合他社がやっていることに過剰に反応することで,そのリーダーとしての地位を譲ってしまうように見られたくはないだろう。間違いなく,何か月も前に新しいシステムを公開して宣伝計画を立てており,Microsoftが通常よりもはるかに早く詳細を公開しているという理由だけで,そのタイムラインから逸脱するつもりもないだろう。
両社のこのすべての操作について心に留めておくべき重要なことの1つは,ゲーム機のライフサイクルのこの段階(詳細が明らかにされ,システムの概念が消費者の心の中に形成される月)が非常に重要だということだ。しかし非常にリスクの高い方法しかない。ゲーム機のライフサイクルのこの時点で成功が約束されることは滅多にないが,失敗は絶対にありうる。ソニーは,その発表の数か月間でPS3の初期の運勢を,ひどく計算された愚かな声明と決定で沈めた。Xbox Oneの発表の結果,Microsoftの貧弱なポジショニングは,1世代にわたって低いままだった。
しかし,罠は線路に張り巡らされ,一歩間違えれば完全な失敗を意味する。実際,このローンチ前の期間を無傷で通過しても成功を保証されるものではない。ゲーム機が靴ひもを結ばずにスタートラインに立つだけだ。ゲーム機が優れていることを消費者に納得させるには,長い時間と多くの優れたソフトウェアが必要になる。ゲーム機がゴミであると消費者に思わせるのは一瞬だ。 Microsoftとソニーは最近,後者によって炎上しており,両社のコミュニケーション戦略は,情報公開のタイミングを慎重にして,大きなサプライズを避けたり,あるいはビジネスモデルやデザインの変更に慣れるまでの時間を一般の人に与えて反発を避けるなど,二度と同じことを起さないようにしていると読むことができる。
これまでのところ,両社の異なる戦略にもかかわらず,どちらの企業も実際に失敗を犯してはいない。彼らが今後数か月間その状態を保つことができれば,この世代のゲームプラットフォームの競争は,我々がここ何十年も見た中で最もレベル高い接戦になるかもしれない。
※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)