縦長になった黒い箱,Xbox Series Xの形状に迫る

 Microsoftの次世代ゲーム機,Xbox Sereis Xの外観が発表された。注目されるのは平たい箱型の形状を捨てたことだ。まだ大まかな形しか公開されていない段階ではあり,なにかを語るには早すぎるのは重々承知であるが,現状で推測できそうな部分を写真から見ていきたい。


 まず確認できるのが大きさだが,光学ディスクの大きさから推測すると,15×15×30cmくらいになるものと思われる。このあたりは「6×12インチ(15.24×30.48cm)でした」とか「縦はA4サイズ(29.7cm)です」と言われても納得できる範囲だ。Xbox One Xのサイズを見るとMicrosoftはインチ系は使わないようにも思える。なので15×15×30cmを推したいところだ。Xbox One X比だと容積は1.56倍くらいだ。


 A4用紙を使ってだいたいの大きさを見てみると,結構縦長にも感じられる。横倒しにしたくなる人もいそうだ。

縦長になった黒い箱,Xbox Series Xの形状に迫る
A4用紙を二つ折りにする
縦長になった黒い箱,Xbox Series Xの形状に迫る
折る
縦長になった黒い箱,Xbox Series Xの形状に迫る
折る
縦長になった黒い箱,Xbox Series Xの形状に迫る
開く。これくらいの大きさ

 上面を見ると中央部が丸く緑色に光っているように見えるのだが,これは上面が凹んでいるので中央部だけ内側が見えているだけであって,全面が光っているものと思われる。かといって,こんなマットな光を出すように拡散板が入っているわけもないので(冷却の邪魔になる),ここはただのイメージだろう。おそらく冷却ファンなどが緑色に光っているということではないだろうか。

縦長になった黒い箱,Xbox Series Xの形状に迫る

縦長になった黒い箱,Xbox Series Xの形状に迫る
 前面にはUSB Type-Aそのもののような端子が確認できる。前面のUSB端子はXbox Oneからの伝統みたいなものだが,Type-Cでないことに少し驚いた。もちろん,コントローラはワイヤレスだ。

 この端子が縦向きであることを考えると,右側面にマザーボードが入っていて直結されていると考えるのが自然だろう。この筐体はサイドフロー型のクーラーで熱気を出すにはちょうどよい形になっており,14cmファンがぴったり入る大きさでもある。側面にマザーボードを配置し,残りの空間はヒートパイプとクーラーのフィンで埋めて,上部の14cmファンでまとめて排気するといった構造が想像できる。

 まだCGデモの段階であり,実物とは細部が異なる可能性も高いのだが,少なくとも映像では左サイドは平坦だ。ちなみに,なにもないわけがない背面にあたる部分は切り替え時に少し表示されているものの,そちらも平坦なので省略されている部分は多そうである。右側面は一度も見えていない。要は,吸気はどこから行うのかという問題だが,底面は非常に大きな丸いインシュレータのようなものが配置されていて,左側面には光学ドライブがあり,右側面はおそらくマザーボードがあるため,それぞれほぼ吸気には使えない。もちろん前面には穴はないので,背面下部しか選択肢はない。そこに大きな吸気ファンを置くのがベストではあるが,パッシブかな? さて? 

よく見ると前面パネルと左面パネルでエッジの処理が違う。サイド+上面と前後面で別パーツか

 上部がほぼ丸ごとクーラーだとすると,マザーボードは結構長めで上端部あたりにAPUを配置か,もしくはマザーは下にまとめて上から下まで中身ほぼクーラーというのまでありうる。簡易液冷は……この大きさではやらないとは思う。
 なんにしてもバランス的にトップヘビーになりそうなので,下部に電源を内蔵してくる可能性はある。入るスペースはあり,重量バランスはよくなるが,熱処理を考えると微妙なところだ。底部の妙に大きなインシュレータぽいものは実は重石なのかもしれない。


Wraith Prism RGB
縦長になった黒い箱,Xbox Series Xの形状に迫る
 動作クロックは不明なものの,CPUコア部分に関しては,ほぼ現在のRyzen 3700Xと同等だろう。Ryzen 3700X純正のWraith Prism RGBクーラーのサイズを見れば,そこそこしっかり冷やす必要があることは言うまでもない。実際には,そこにさらにGPUコアが搭載される。規模は不明だが,CPUより熱が出ないなどと思っている人は少ないだろう。基本熱設計だとCPUは65Wくらいだろうが,GPUはその数倍になる。ちゃんとパフォーマンスを出そうと思えば,クーリングシステムがキーになるといっても過言ではない。

 性能は「Xbox One Xの4倍」とされているのだが,Xbox One XのCPUが8C8Tで2.3GHz動作だったとすると,8C16Tで3.6GHzのRyzen 3700Xは単純に考えても3倍くらい速そうという計算になる。マイクロアーキテクチャ的なIPCの改善やメモリ周りなども考えると「4倍速い」という表現は不自然ではなさそうだ。逆に考えると,統合型ということで熱や消費電力的に下げられる可能性がある動作クロックも,そう大きく下げられていないのではないかと思われる。

※4倍の性能はCPU部だと特定されているわけではないが,GPU部であることは想像しにくいので,現実的に考えてCPUと仮定している。Xbox One XのGPUはそれなりにパワフルだ。


 新世代Naviコアはまだ登場していないのでGPUの全貌を推し量ることは困難だが,レイトレーシング以外の部分では,現世代Naviに似たモノになると思われるので,その範囲においてはある程度の推測は可能だ。
 なお,ムービーではレイトレーシングを使っているのかもしれないシーンはあちこちに見られるが,レイトレを使わなくても同じようなことはできそうなので確信は持てない。

レイトレーシングを使ってくるだろうと思われる部分
縦長になった黒い箱,Xbox Series Xの形状に迫る
こちらもレイトレか(「ただの点光源です」と言われると身もふたもないが)
縦長になった黒い箱,Xbox Series Xの形状に迫る 縦長になった黒い箱,Xbox Series Xの形状に迫る

 分からないのは,その規模(=性能)だけだ。
 ここで鍵になるのは電源容量である。Radeon RX 5700 XTだと SP数2560基で9.8TFLOPS相当であり,TDPは225Wである。Ryzen 3700XのTDPは65Wなので,この組み合わせだとこれらだけで300W近くになる。それにレイトレ用コアやメモリ,PCI Express Gen.4対応のSSDなどが加味される。この時点で400W電源はまったく余裕のある容量とは言えないが,ギリギリ400Wでいけるかもしれないくらいの仕様ではある。
 ちなみに,SP数2560基というのはXbox One Xと同じ数値であり,クロック分だけ性能が上がっている計算だ。いくらなんでもGPUの規模は拡大されると思うので,これを最低線と考えておこう。かといって現状のPCハイエンドでもその倍までは積んでいないので,激増する可能性もあまり高くないと思われる。なお,価格.com調べでのRyzen 3700XとRadeon RX 5700 XTの最低価格製品の合計価格は8万6723円であった。

 ゲーム時において,CPUの消費電力はTDPより低くなることがほとんどだが,ちょっと重いことをするとTDPを遥かに超えることもあるので手抜きはできない。GPUの場合,ゲーム時にはほぼTDPくらいの電力を消費する。通常,電源容量はある程度マージンを取って設定されるものだが,用途の限られたゲーム機であれば,最適化されて詰められる可能性はないではない。なお,Xbox One Xの場合,PS4 Proより高性能なのだが,搭載電源は50W以上小さいので驚いた。ソニーとはマージンの取り方に関する考え方が違うようだ。

縦長になった黒い箱,Xbox Series Xの形状に迫る

 一方で,PCゲームで考えるとRadeon RX 5700 XTは「4K@60fps余裕」というところまではいかないGPUである。Microsoft的には,Xbox One Xで,すでに「4K@60fps余裕」なのかもしれないが,世間的には無理があるスペックだ。2K@120fpsは余裕で,設定を下げれば(むしろダイナミックレゾリューションか),4K60fpsや8K(10fpsくらい?)もいけなくはない規模ではあるが……。とにかく400Wではこのあたりが上限だろう。
 では500Wくらいまでいくか? 家電製品で500Wというのはちょっと厳しそうな気もする。ドライヤーや電子レンジなど,1000Wを超える消費電力の製品もあるが,そう長時間使わないものが多い(PC並みと言えばそれまでなのだが)。GPU性能と消費電力は必ずトレードオフになるので,このあたりの設定は判断の難しいところだ。
 仮に50WくらいをGPUに上乗せすると,それはなかなか結構な性能になる。GeForce RTX 2070 SUPER相当からRTX 2080 Tiくらいの差である。4Kで60fpsがいけるとされている性能だ。
 7nmプロセスの現世代Naviは,消費電力の割には発熱は低めな印象がある(関連記事)。とはいえ,熱的に考えると激アツCPUを3個分を冷やすくらいのクーラーは必要になりそうなのだが,ちゃんと冷えてくれるだろうか? 

 用意される電源ユニットが400Wくらいになるか,450〜500Wくらいになるかで性能の見積もりも変わるわけだが,どっちにしてもそれなりに電気を食うということだけはしっかり頭に入れておきたい。ACアダプタが外付けだとまたデカいんだろうなあ……。