UNREAL FEST EAST 2019開催。超高画素VRヘッドセットなど目立った展示を紹介

 2019年10月6日,神奈川県・パシフィコ横浜でEpic Games JapanによるUnreal Engineの総合イベント「UNREAL FEST EAST 2019」が開催された。
 西日本と東日本で年に1回ずつ行われるUNREAL FESTだが,秋に行われる東日本版は,同社のお膝元ともいえる横浜で開催されている。

 開会にあたって,Epic Games Japan代表の河崎高之氏は,今回のイベントは事前登録の時点で2000名を超えていたことを明かしていた。本来,「途中参加もOKなので気軽に立ち寄ってください」といった感じのイベントだったはずなのだが,残念ながら入場規制がかかってしまうほどの盛況となっていた。


 会場では,UNREAL ENGINEの最新情報や事例の講演のほか,UNREAL ENGINE関連の出展も行われており,さまざまな企業がUNREAL ENGINE対応製品やサービスなどを紹介していた。
 ここでは展示されていたものから,ほかの開発系イベントでは見られなかったものをいくつかピックアップして紹介してみたい。

●Varjo VR-1
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 まずELSAによるVRヘッドセット「Varjo VR-1」の展示だ。先月から日本でも販売が始まったという新製品だが,通常解像度の視野の中央部に高解像度の有機EL画面の視野が合成されるようにしており,中央部分では角度1度あたり60ピクセルという人の目の解像度に匹敵する性能を誇っている。

 スペックでいうと,周辺視野部は1440×1600×2,中央部は1920×1080×2という構成で有機ELディスプレイが使われている。

ちょっと見づらいが,左上の丸い部分が周辺視野用のレンダリング画像。その下にあるのが,中心視野用のレンダリング画像だ
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 実際に試用してみると,まず装着時に位置合わせを慎重に行う必要があることが分かる。上下左右に描かれたラインが外側と内側のディスプレイで一致するように装着位置を調整する。操作中に少しずれて境界が見えることもないではないのだが,ここできちんと合わせておけばそれほど気になることもないようだ。
 境目というか内側のディスプレイの存在は調整してあっても分かるというか,わざわざ分かるようにされているのか,薄く枠が表示されていた。
 中央部の視野はさすがというか,とくに文字などのソリッド感が素晴らしい。目の解像度と同じというのもうなずける。
 このヘッドセットにはフィンランド企業によるアイトラッキングシステムも搭載されている。残念ながら視線の位置の解像度を上げるといったことはできないのだが,装着時に自動的にIPD調整を行うほか,アプリケーションで視線位置を取得しての選択処理やUI操作などは可能になるようだ。
 VRヘッドセット自体のトラッキングではSteam VRのシステムがそのまま利用されており,ベースステーションでのヘッドトラッキングに対応している。

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 ハイエンドシステムであることや解像度が高いことなどもあってか,推奨グラフィックスカードはGeForce RTX 2080/Quadro RTX 6000以上となっている。価格は業務用なので80万を超えるのだが,高解像度での確認が必要な分野では唯一無二の製品だけに導入を検討する企業もあるのではないだろうか。


●Photoron TrackMan
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 リアルタイムでカメラからの映像とUE4のレンダリングを合成するという,AR的なデモが行われていた。ミラーレス一眼カメラで撮影した映像からマーカレスのAR表示が可能だ。
 隣にはNHKなどで使われるシステムが並べられており,普段はそちらを使っているようなのだが,今回はUE4であえてコンシューマレベルのノートPCでシステムを組んでの展示が行われていた。使われていたノートPCは2台で,Razer Bladeでキャプチャ画像からAR処理を行い,ZenbookでUE4を動かして映像を合成していたようだ。よく分からない機器が横に置いてあったのでなんだろうと聞いてみると,Zenbook側にはGPUが搭載されていないので,外付けのGPUボックスが使っているとのことだった。ゲーマー向けノートPCなら単体で大丈夫なのだろう。

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 昨今はスマートフォンなどでも同様のことはできるので新鮮味を感じない人もいるかもしれないが,放送局レベルの映像にUE4のレンダリングを重ねており,さらにトラッキングがとにかく高精度だった。ノートPCの画面には映像から抽出された特徴点の情報と,使える特徴点と使えない特徴点の区別などが表示されているのだが,そもそもの点自体がかなり多い。この部分での遅延は2フレームで合成表示でさらに2フレームということで,15分の1秒程度の遅延は発生するとのことだったが,デモを見ても遅れに気が付く人はまずいないだとうというレベルだ。

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 今回はカメラにはHDMIケーブルしか取り付けられていなかったが,ズームレンズにリグを取り付けて,USB接続で情報を取りつつ,ズームを使用することも可能とのことだった。レンズの歪み補正用のテストパネルも用意されているなど,プロレベルで使う機材はこういう風になるのかと興味深い展示だった。


●iClone+Unreal Live Link
 キャラクターアニメーションツールの老舗で,独自の路線を走っていた「iClone」だ。昔からデータの変換ツールは積極的に展開していたものの,ほかのツールとの連携は薄かったように思われる。
 最近はゲームエンジンとの連携が現実的になってきた。Kinectの時代から導入されるようになったモーションキャプチャ機能で,ツールとしての性格が一変したように思われる。この頃は,より本格的なモーションキャプチャ機器各種にも対応している。会場のTOOブースでデモされていたのはPerception NeuronとiPhone X系のデバイスだ。モーションキャプチャとフェイシャルキャプチャされたものが,iClone画面のキャラクターに反映され,さらにそれがそのまま隣に開かれたUE4のキャラクターに反映されていた。UE4とのLive Link機能が用意されているのだ。

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 モーションキャプチャ機材があれば,iCloneなしでもゲームエンジンに動きを取り込むことはできるだろうが,フェイシャルと合わせたりモーションライブラリなどを使うならアニメーションツールを介するのはアリだろう。またiCloneにはCharacter Creatorというツールも用意されているので,多彩なキャラクターを手軽に作成したいという向きにも適していそうだ。


●オフィスシミュレーター
 サードウェーブが出展していた,UE4を使った,オフィスのインテリアなどをコーディネートするためのツールが「オフィスシミュレーター」だ。実在のオフィス機器や壁紙,床材などをきわめてリアルに表示でき,VRにも対応する。B2B用だが,コンシューマ向けにもほしいツールかもしれない。


●AUTO City
 VerTechsでは,UE4を使った自動運転用のシミュレータAUTO Cityを出展していた。自動運転のアルゴリズムを提供するのではなく,その実験用の環境をUE4で提供するというものだ。自動車からの映像や各種センサー情報などを,自動運転シミュレータに渡して結果をビジュアライズする。UE4はゲームエンジンなので,リアルタイム以上に加速することは想定されておらず,その点だけやや残念な感じか。とはいえ,リアルタイムかつ高精度に再現できるのはゲームエンジンならではの強みだろう。