さてさて，ゲームイベントというと……と，かつては決まり文句で写真集を記事を扱っていた（※4Gamerのほうで）。最近はコンパニオン写真集は卒業して若い者に任せているわけだが，はっきり言ってすでに飽きられているのではないかとも思う。「ChinaJoyのコンパニオンとか需要ある？」「もういいんじゃないですかね」「だよねー」みたいな感じで，かつての大人気記事もお蔵入りになる時代だ。もう少し新しいものでないと時代の流れから取り残されてしまう。

　今回は立体デバイスを立体で見せるために，Mirage Cameraを持ち歩いて会場内を回っていた。ということで，実験的にVR180版のコンパニオン写真集をやってみよう。2D版は4Gamerのほうでも写真集をやるはずなので，ちゃんと綺麗な写真が見たい人はそちらを当たってみてほしい。ここでは，あくまでも実験的にVR180でのやり方を模索している。
　「なんで4Gamerでやんないの？」という意見もあろうが，実験的なことはこっちのほうがいろいろとやりやすいという現場の問題と，そもそものところで，対応機材が必要な企画ということもあって，業界に近い人のほうが普及率も高いだろう。
　いきなり場違いなコンテンツが並ぶことになるが，そこはご了承いただきたい。

VR180とは？

　そういえばVR180自体の説明をしていなかった気がするので，簡単に紹介しておこう。
　リコーのThetaで一気に普及した360度写真は，その場の雰囲気を表現するにはよいものだ。とくにGoogle Mapなどとの相性はとてもよい。半面，被写体が決まっている場合には，360度では無駄な情報が多すぎる。というか，情報が散漫になる。「コンサート会場を360度映像で」みたいな企画は，「後ろ見たい奴いるの？」としか思えない。
　被写体が決まっているなら情報量はそこに集中すべきなのだ。たとえばモデルの女の子を撮るのに「広角で引きで撮るぞ」という人はまずいない。9割の人は望遠を使う。当たり前である。
　また，360度映像は立体化しにくい。できないわけではないのだが，民生用の機材ではちょっと無理だ。わざわざ左右の目に別々の映像を映し出せるVRヘッドセットを使って，左右の目に同じ平面視の映像を出す。現状ではそれがVRヘッドセットでの少なからぬ用途のひとつになっているのは馬鹿馬鹿しいことだ。せめて立体に。ということで，前方上下左右180度の範囲内ながら立体映像・画像を記録できるVR180というフォーマットは，VRヘッドセットをもう少しマシに使うようにするためにも重要ではあるのだ。
　「ローカルなフォーマットではない」という点も重要だ。立体版のコンパニオン写真を掲載したことは過去にもあるのだが，それは実験以前の段階だった。「3DSのフォーマットで配布かねえ？」みたいなことも考えないではなかったが，VR180は今後多くの機器で視聴が可能になると期待できそうなフォーマットであり，少なくともYouTubeで利用できる（重要）。

閲覧方法

　さてVR180映像・画像は，LenovoのMirage Cameraなどの専用カメラを使えば簡単に取得できる（逆に言えば，専用カメラがないとちょっと難しい）。手持ちに対応カメラがあるので，どんどん活用したいところではある。
　しかし，すでに掲載しているように（関連記事），映像のほうはYouTubeやFacebookでなんとかなるのだが，VR180画像のほうは共有の仕方がよく分からない。InstagramなどにはたくさんVR180画像が上がっているのだが，みんなどうやって見ているのだろうか。まあ追々調べることにしよう。

　ということで，今回はプレビュー的に裸眼立体視（平行法）で閲覧できる写真をページに並べ，データ自体はアーカイブしておくのでダウンロードしての閲覧をお勧めする。
　まずお断りというかお詫びから。一部で期待されている方もいるかもしれないが，Mirage Camera単体で撮影を行っているので，残念ながら画質が非常に低い。普段なら大半がボツ写真だ。
　撮影環境からして最悪なのは分かっていたが，とにかく逆光に弱い。
　普通はレンズフードや内部コーティングで鏡胴内反射を抑えるのだろうが，レンズの周りには何もなく，鏡胴といえるほどのものもない。あらゆる方向からの光が入ってくるのはよいのだが，強い光の影響がとくに強く出る傾向にあるように思われる。加えてラティチュードが狭く階調性も低い。ついでにタイムスタンプが無茶苦茶なのもお詫びしておく。

　GoogleのVR180 Creator ToolではVR180画像を左右画像に分離し，加工したあとでまたVR180画像に戻すようなこともできる。それを使って全体的な見栄えを上げる加工は簡単だ。しかし，ただでさえ多いノイズが増えることと，ただでさえ少ない情報量がさらに減ることから，今回はあえて無加工でアーカイブすることにした。サムネの見栄えは格段に上がっても，本体データはむしろ劣化しかしない。

　ということで，わりとひどい絵であることは確かなのだが，それでもMirage Soloなどで視聴するとそれなりの臨場感というか，立体感はいろいろと楽しめる。1枚ずつの絵を見たあとだと不思議に思えるくらい情報量も増える感じだ。なにより，立体であること自体の臨場感は平面の写真集とは比較にならない体験になることは，試していただければすぐに実感できるだろう。

VR180版コンパニオン写真集（実験版）のダウンロード

　Mirage Soloで視聴する場合は，microSDのルートに，

\DCIM\VR180

というフォルダを作ってデータを入れておくのが手っ取り早い。あとは，フォトを起動して「すべての写真」を選べばデータが見えるはずだ。

　Oculus Goの場合は，PCと接続して内部にデータを転送する必要がある。USBケーブルで接続して「データへのアクセスを許可」して，データを入れる。どこでもいいのだが，私はDCIMにVR180フォルダを作って入れている。この状態だと，あとはギャラリーで内部ストレージの「アルバム」から「VR180」を選べば3D画像を楽しめる。画像送りがある分だけこちらのほうがMirage Soloよりも閲覧はしやすい。内部ストレージを圧迫するのは多少問題だが……。

　試していないので申し訳ないが，Windows MRではストアアプリでVR180対応できそうなビューワが販売されていた。「MR Video Player for immersive headsets」という長い名前のソフトだが，なんでテキストコピペできないんだろう……。まあ「VR180」で検索すると1個しか出てこないので見つけるのは簡単だ。YouTubeなどには対応していなそうだったが，ファイルであれば再生できそうな雰囲気ではあった。「.vr.jpg」に対応というのだからたぶん大丈夫だと思う。

　RiftとViveはセットアップが面倒なのでまったく試していないが，Virtual Spaceで行けるはず（参考URL）。ほかにもなにかありそうな気もするので，探してみてほしい。
　Cardboardでもいけるはずなのだが，あいにく手持ちのAndroid機器がどれも普通ではないので確認ができていない。iPhone版のVR180アプリだと，リンクした3Dカメラ内のデータしか表示できなそうではあったが……。

　念のために，平行法での裸眼立体視による閲覧法も書いておこう。サムネイルは4つ並びで左右2個ずつのセットになっている。左右どちらかの画像群を選んで，左目用と右目用のそれぞれを左目と右目で眺める。ぼけーっとしていれば大丈夫だ。ぶれた画像が近づいて正面位置で像を結べばできあがりだ。
　だたし，サムネイルサイズが小さいと逆に難しくなるので，Webブラウザの表示サイズを調整することをお勧めする。左右二つの画像の中心間の距離が左右の眼の幅を超えないように。なお，クリックすると写真が拡大されるが，まったくもって意味がない。
　できるだけ大きなサイズで焦点が合ったら，そのままの状態で，画面を上下にスクロールしてほかの画像を見ていこう。カーソルキーを活用されたい。右側のペアが終わったら左側のペアで同じことを繰り返す感じだ。
　なお，この方法だと本来の立体感はほとんど体感できないので注意してほしい。

　以上，課題点と要確認事項が残されているが，今回はあくまでも実験版ということで，今後の環境改善などに期待してほしい。
　なんのかんの言って，画質に多少目をつぶっても，この手のモノの説得力はかなり高いものがあると確信している。「平面の写真集は時代遅れ」「平成かよ？」といった感じで，今後の布教ツールの一環としても使えるくらいのものにしていきたいところである。